「市場原理」だ,個人金融資産がこんなにあるなどなどと言われ,投資家教育の必要も叫ばれている。ところが,現実は決してそんなに甘くない。昨日のゼミナールでこんな本があるよと学生諸君に紹介した。で,その内容はイマイチだとも話した。
「高校生のためのファイナンス入門」(金融広報中央委員会)という本がそれだ。この委員会の事務局は「日本銀行情報サービス局」となっている。ただ,執筆者には申し訳ないけれど,これでは投資家教育はできない。執筆者の責任ではない。この本を送って貰っておいて言うのは悪いけれど,やはり執筆者選定の段階で問題があると思う。
つまり,執筆者たちは消費者金融で多重債務者救済などに関わっている人たちのようである。まともな銀行に預けなさいというメッセージが込められているのかどうかわからないけれど,やはり「ファイナンス入門」とうたうにはにしては,ミスキャストではないかと思う。少なくとも経済をよくわかっている人に執筆して貰うべきはなかったか。もっともバリバリの「経済学者」に書いて貰うと,威勢はよいが暴走の心配がないわけではない。
たしかに,はじめから投資家教育のための本ではない。とはいえ,預金者といえども投資家であるには違いない。一家庭人としても金融資産の選択は,これからますます重要になってくるはずだ。そのことがよいか悪いかの価値判断はここでは論じない。客観的にある程度「賢い投資家,賢い家庭人」である必要はますます高まっている。愚民化政策には賛成できない。この本がそうだとは言わないが,結果的にそうなってしまわないか心配だ。
この本の作成に関わったそれぞれの人々は善意だろう。善意の結果がこれでは悲しい。
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