singersong professor KMの日記

2002年07月21日(日) 南草津,そして階級

 今日は「南草津」駅前に新しく出来た「フェリエ」に行ってみた。大勢の客でごった返していた。大学がこちらへ移転してきたとき,駅前には何にもなかったのに,今では「西友」「ニノミヤムセン」などなど駅前はにぎやかになってきた。そして今回,まさに駅の真ん前にこれが出来たわけだ。

 駅の改札口のフロアと直結している。そのまま水平に歩くと,そこは「フェリエ」の3階となっている。3階には,韓式食堂,カフェ,オムライスとスパゲティの店,創作和食を標榜する店,手打ちトンカツと銘打った店,ラーメン専門店,お好み焼き・焼きそばの店,といった食堂街と「ブックWOWフェリエ」という貸しCDや書籍などを扱う店がある。

 専門書はあまりないが,店は結構広い。一般書やちょっとしたはやりの本,雑誌などなら買えそうだ。本は買わなかったが,丁度昼になったので韓式食堂「よしもと王の家」なる店で,「ビビンバ」を食べた。オープンセールで,スープとサラダが無料になった。

 食後,5階へ上がって草津市立市民交流プラザ・南草津図書館へ行った。そして早速貸出証を作った。立命館大学の教職員は有資格者だ。私の前にいた滋賀医大の人は大津市だから無資格で,貸出証を作って貰えなかった。

 出る前に「フェリエカード会員」にも登録した。とにかく,18日オープンのこの施設の見学という次第。また誰かから物好きだねと言われそうだ。

 閑話休題。
 卒業生で高校の先生をしているW君からメールが届いた。底辺高校に勤務中だとか。そのメールを読んで考えさせられた。紹介しておこう。


「現在、教員生活も20年目に入りました。去年より、学区のボトムといわれている高校に勤務しています。神奈川県では教育困難校を指定校などといっていますが、生徒の大変さには目線を同じ高さにしてあげることでなれてきましたが、次から次へといろいろな出来事を起こしてくれます。ただ、この学校に1年以上勤務して思うことは、私ども勤務校の生徒達は本当に経済的に困窮している家庭の子が多く、失業、生活保護、授業料未納・滞納、など日本経済のひずみの一部分が教育の分野に及ぼしていることが手に取るようにわかります。離婚して、片親の家庭はクラスによっては3分の1の比率にもなります。必然的に家計を助けるためにアルバイトをしなくてならない子も多く、それがきっかっけの一つとなり、次第に学校から離れていきます。また部活動に参加する生徒も少ないです。
 240名が入学して、卒業していく生徒は160名ほどです。我々は少しでも卒業生の数を増やす努力をしているのですが、経済的な事も含めて、どうにも手が出ないことが多いです。

 逆に県下の進学校の生徒は、体力的にも経済的にも恵まれた子が多く、部活も盛んです。何だか、どんどんこの不況下で、日本の経済的階層の分化が進んでいるような気がします。これが10年後、20年後どんな歪みを生み出すのだろうかなんて考えたりもします。」

 深刻だ。明らかに今後の日本を暗示している。つまり階級社会だ。以前「松村通信」で紹介したことがあるが,佐藤俊樹「不平等社会日本,さよなら総中流」(中公新書,2000年)とか,橘木俊詔「日本の経済格差−所得と資産から考える−」(岩波新書,1998年)というのがあったが,明らかに階層分化は進んでいる。これが実証的にも明らかにされている。大学などにいると,ほぼ同質の階層出身者が多いから気付かないかもしれないが,現実はW君が実感しているとおりだろう。彼の言うとおり,10年後,20年後どうなっているのだろうかと心配になる。

 いわゆる構造改革,新自由主義がこういう弱者を生み出していることは間違いない。何のセフティネットも用意しないで,構造改革を進めるとこうなるという典型である。アメリカで1970年代以後一貫して階級分化がすすみ,社会不安も高まってきている。アメリカの1990年代の好況がその問題を少しは和らげているが,ここへ来てのNYダウ暴落などが,さらに不動産価格に波及したら,これはもう大変なことになる。不安定さは日本以上であろう。

 ところが,日本はそのアメリカを真似ようとしている。厄介なことだ。確かに日本も改善が必要なことは認めるが,行きすぎた構造改革が何をもたらすか注意しなければならない。何事もバランスが大切だ。


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