singersong professor KMの日記

2002年02月22日(金) 雪印食品,再建を断念

 今日の日経で「雪印食品,再建を断念」という記事が一面に出ていました。これを読んで,日経ビジネス今週号(2月18日号)で,もう一つ印象に残った記事を思い出しました。

 それは雪印アクセスの湯淺社長へのインタビューです。当社はチルド・冷凍物流網で優良会社で,取引先メーカー4000社のうち雪印グループは3社だけという会社です。

 で,そのインタビューのタイトルが印象的で「雪印ブランドは「邪魔な存在」」というものです。そこで,「雪印乳業の再建への取り組みをどう見ているか」との問いに対して,「記者会見で「ブランドを守る」と言ってしまった。グループ会社の社長たちは,「(ブランドは)下ろさなければいけない」と言ってたんだ。私も雪印ブランドを捨てることが再建策の前提条件だと思っていた。消費者が不信感を抱いているのだから,未練はあっても下ろすしかない。」と言っていました。

 この事件は見事に経営とは何かが現れていて,私にはまことに興味深いのです。だから最近の松村通信41号でも触れたのです。そこでは会社が官僚化してしまっているという点に触れたのですが,何と言っても経営はトップである,ということを感じさせます。もう一つ過去の栄光によりかかるなと言うことです。成功体験は変化対応を遅らせます。これは今の日本全体に言えることではありますが。

 さらにもう一つ,3番目に,危機管理と言うことです。これは大学院の諸君に話したことですが,雪印食品本社に熊本の畜産家が抗議に押し寄せたとき,本社前で悶着が起こり,これが逐一報道されていたことです。銀行が取りつけ騒ぎになりそうなとき,マニュアルがあって,店頭で騒ぎがおきてそれが外に見えるのは拙い,かえって騒ぎを大きくする,だから,まずは預金を引き下ろしに押し寄せる人々を店内に誘導する。会議室であろうとどこであろうと,店内に誘導する,これがマニュアルです。これを知っていましたから,抗議に押し寄せた畜産家たちを,とりあえず社内に誘導し,それから策を講じるのが,あの場合良策だったと思います。

 危機管理マニュアル的にはその筈です。雪印が危機状況にあることを自覚しておれば,それができたはずではないかと思ったのです。牛乳の時から,危機管理が全然できていなかったことは間違いありません。だからこそ私も,「内向き」だと指摘したのでした。

 経営はトップである。成功体験に寄りかからず変化対応を機敏にする。それと,危機管理を行う(実はこれもトップの重要な仕事です)。この3つをつくづくと感じさせた事件でした。で,ついに「雪印食品」は完全消滅するわけです。


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