Tonight 今夜の気分
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2008年05月25日(日) 揺れる韓国の北朝鮮政策



「 どの港を目指すのか知らぬ者に、順風が吹くわけがない 」

      ルキウス・アンナエウス・セネカ ( 古代ローマの政治家、詩人 )

When a man doesn't know what harbour he is making for,
no wind is the right wind.

                         Lucius Annaeus Seneca



何事も、目的を明確に認識していない者が、成功するわけなどない。

そのような考えを比喩的に述べたのが、この言葉である。


韓国の 李 明博 ( イ・ミョンバク ) 政権が発足して約3ヶ月になるが、各種世論調査での支持率が20%台に急落し、早くも試練に直面している。

先ずは、政権発足に際して、閣僚を含む要職人事で、不動産投機疑惑などの “ 不適格人物 ” を起用したことに、世論の強い批判が起きた。

次に、親米路線への復帰ということで、米国産牛肉輸入の全面解禁に踏み切ったことが、“ 狂牛病 ” 対策の甘さとして、一部国民の反発を招いた。

就任前、「 経済に強い 」 ことを看板としていたのに、国内経済が物価高や低成長の見通しで、さらに苦しくなっていることへの失望も大きい。

この現象は、旧 盧 武鉉 ( ノ・ムヒョン ) 政権時代の “ 左翼・革新体質 ” を維持している主要テレビ各局の 「 執拗な批判体質 」 も影響している。


李 政権 の今後で、関心を集めているのが、「 北朝鮮に対する食糧支援 」 への姿勢であり、これは、日本にとっても無関心ではいられない問題だ。

大阪で生まれ、在日韓国人としての過去を持つ 李 明博 氏 は、日本との関係を悪化させることを好まず、これまでは、親日的な姿勢を見せている。

北朝鮮に対しては、拉致問題を中心とした 「 日本の国民感情 」 も配慮し、南北首脳会談には応じるが、支援の透明性を重視する姿勢をとってきた。

これは、「 太陽政策 」 を基礎に南北関係を最重視した 盧 武鉉 前政権 と
大きく異なる点で、日本の拉致被害者救済にも、期待が寄せられている。

ところが、北朝鮮への 「 無原則的な支援はしない 」、「 支援は北の要請が前提 」 と繰り返してきた 李 政権 の姿勢に、変化の兆しが出てきた。


まず、最近になって 「 北朝鮮の食糧危機 」 がしきりに伝えられ、核問題をめぐる米朝交渉の “ 進展 ” で、米国が50万トン分の食糧支援を決めた。

米国よりも支援が遅れている 李 政権 に対して、北朝鮮側は連日のように 「 民族の反逆者 」、「 逆賊 」 と誹謗中傷を続け、韓国世論を扇動する。

その結果、李 政権 は内外から “ 支援圧力 ” を受ける形となり、「 深刻な状況が確認されれば支援もあり得る 」 と、原則後退の兆しを見せ始めた。

支援に踏み切った場合は、対北政策の変質となり、保守派の反発がさらに政権の基盤を揺るがすことになりかねないため、動向は未だ不明である。

だが、前大統領の任期末期 27.9 % を下回る 25.4 % と、就任直後としては異例の低支持率に喘ぐ 李 政権 が、政策転換を図る可能性は高い。


6月には、日本の北朝鮮による拉致被害者家族連絡会が、ソウルで開催される 「 韓国拉致被害者家族会主催の国際会議 」 に代表団を派遣する。

日本の家族会は、過日、李 政権 が日本人拉致問題の解決に向け積極的な関心を表明したことで、韓国との連帯に大きな期待を寄せているのだ。

ここで、李 政権 が “ 不人気対策 ” のため、対北政策を一変させてしまうと、日本政府による北朝鮮への経済制裁措置などの効果も薄れる。

本来は、同盟国である米国が、拉致問題の解決に至るまでは、支援を凍結させてくれるべきところなのだが、いまは韓国の協力に頼らざるを得ない。

拉致被害者家族の高齢化などを思うと、早期解決は悲願であり、せっかく良い方向へ向かい始めた風が、韓国の内政事情で変動するのは虚しい。


北朝鮮に対して 「 追い詰めると暴発する 」 と語る御仁もいるが、この意見には、「 北朝鮮に譲歩すべきだ 」 という政治的主張が隠されている。

彼らの国家予算は日本のおよそ二百分の一以下、経済規模を計るGDPは五百分の一以下で、島根県や福井県以下の経済力でしかない。

愉快犯的に ミサイル を撃つことは可能だが、日本やら韓国を敵に回して、戦争を仕掛けることなど不可能で、この状況では 「 暴発 」 しようがない。

拉致問題の解決が遅れている最大の障壁は、北朝鮮を 「 実像より大きく見せようとする人たち 」 の存在で、これは日本にも、韓国にも居る。

人口80万人の島根県より少ない国家予算で、その三十倍の人口を抱え、核開発、ミサイル開発をして貧困に喘ぐ国など、攻略は簡単なのである。






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