Tonight 今夜の気分
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2008年02月06日(水) 「 人財 」 と 「 人在 」 と 「 人罪 」 の見極め



「 鋼鉄の救命ボートには、全員を助ける席はない 」

              J・ブルース・ジョンストン ( USスティール副社長 )

There are not enough seats in the steel lifeboat for everybody.

                              J. Bruce Johnston



これは、ストライキ中の社員に宛てた 「 警告の手紙 」 の一文である。

全員で不幸になるわけにはいかないので、企業に解雇はつきものだ。


この時期、副業でやってる中国の事業は 「 旧正月 ( 春節 ) 」 でお休みだが、本業のほうは最盛期にあたり、とかく忙しい日々が続いている。

現在、数社の企業とコンサルタント契約を結んでいるが、特に私は、人事 ( 採用、評定、教育 など全般 ) マネージメントに関する依頼が多い。

最近では 「 七五三現象 」 といって、新入社員を採用しても、中卒の七割、高卒の五割、大卒の三割が、三年以内に退社してしまう。

三年以内といえば聞こえがよいけれど、その中には、一年どころか、一ヶ月もしない間に辞めてしまう人が含まれ、どうにも定着性が悪い。

新人教育もさることながら、管理職や、ベテラン社員の意識改革も必要で、気力と忍耐、時間と手間の掛かる作業になっている。


転職自体は悪いことでもないが、厳しい審査を勝ち残り、せっかく意気揚々と入社されたのに、何も吸収せず立ち去る姿を見送るのは、実に虚しい。

よく 「 人材 ( ジンザイ ) 」 という言葉を使うが、正確にいうと、各企業には 「 人財 」 と 「 人在 」 と 「 人罪 」 の 三種類 の ジンザイ がいる。

まず 「 人財 」 は、活き活きと働き、苦しい立場にあっても工夫して楽しさ、やりがいを見出し、全体を牽引するタイプの ジンザイ である。

第二の 「 人在 」 は、さしたる貢献度はないものの、歳月と共に成長して、とりあえず人並みの仕事をし、周囲の邪魔にはならない ジンザイ だ。

最後の 「 人罪 」 は、嫌々ながら職場に通い、周囲のやる気やら生産性を低下させ、企業に害を与える ジンザイ で、なんとも性質が悪い。


ある昆虫学者が、「 働きアリ ( 蟻 ) 」 の生態を研究するため、それぞれにマーキングを施して、じっくりと個々の動きを観察したという。

すると、まったく働かない輩や、周囲に合わせて働く フリ をしながら、ただ、意味の無い動きを繰り返すだけの輩もいて、なかなか面白いらしい。

世界的に、昔から 「 日本人は勤勉 」 の イメージ が定着しているけれど、「 働かない働きアリ 」 と同じで、すべてがそうとは言い切れないのである。

実際に巷では、社会問題化するほど数多くの ニート がいて、仕事が面白くないと愚痴っては、能率の悪い作業に明け暮れる 「 人罪 」 も無数にいる。

過去、厚労省と民間が協力した事業に参加し、100名近くの ニート を就職させたが、彼らに共通するのは 「 仕事の楽しさを知らない 」 点だった。


働いたことのない ニート が、仕事の楽しさを 「 知らない 」 のに対し、仕事が面白くない 人罪 は、仕事の楽しさを 「 学べなかった 」 のである。

働かず、納税しない ニート も、周囲を不快にして、迷惑を掛ける 人罪 も、それ以外の人からみれば 「 目くそ鼻くそ 」 だが、前者は更生しやすい。

まったく経験のない 「 未知の恐怖 」 に怯えているだけなので、“ 仕事とは楽しいものだから、恐れる必要はない ” ことを、誰かが教えれば済む。

それに対し、何年も、何十年も働いてきたのに、仕事の楽しさを見出すことのできなかった御仁は、“ 他人も自分と同じだ ” と、先入観を持っている。

せっかく新人に情熱を植え付けても、そんな 「 仕事が面白くないよ病 」 の蔓延する職場へ配属すれば、文字通り 「 悪化は良貨を駆逐する 」 のだ。


企業にもよるが、一般的に 「 人財 」 は 5%、「 人在 」 は90%、「 人罪 」 は 5% というのが、およその構成比だといわれている。

当然、すべての人に 「 人財 」 を目指して欲しいが、資質や、その職業への適性もあるので、努力すれば全員がなれるというものでもない。

私の仕事は、一人でも多くの 「 人財 」 を育成することと、改善する余地のみられない 「 人罪 」 を見極めて、早急に対処するよう進言することだ。

誤解のないように付け加えるが、解雇して不幸にさせることが目的でなく、彼らが 「 人罪 」 から脱け出す “ 新しい門出 ” を助けるのが使命である。

厳しい経済環境にあって、企業は 「 全員が不幸になる 」 のでなく、残る人は残り、辞める人は新天地で頑張り、各々 ハッピー になるのが望ましい。






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