Tonight 今夜の気分
去るものは追わず、来るものは少し選んで …

2006年08月03日(木) 失われる日本人らしさ



「 ついに私は発見したのである。

  この地上にも、自然のままの簡素さを、最高の美としている国が

  あるのだと 」

                  フランク・ロイド・ライト ( アメリカの建築家 )

At last I had found one country on earth where simplicity,
as natural, is supreme.

                             Frank Lloyd Wright



帝国ホテルを設計した ライト は、日本の様式美を絶賛した。

他のどこにもない 「 らしさ 」 を、当時の日本は備えていたのだろう。


今夜は、ボクシングの世界タイトルマッチがあり、「 浪速の闘拳 」 の異名を持つ 亀田 興毅 選手が、判定で勝利を収めた。

終盤には押され気味で、イマイチ、彼の 「 らしさ 」 が十分に発揮できない冷や汗ものの勝利だったが、とりあえずは祝福したいと思う。

並みの選手なら、勝敗には期待されても、「 勝ち方 」 までは要求されないものだが、判定による勝利では釈然としないのも、彼の力量である。

今後、さらなる成長を遂げてもらいたいものだが、できるなら、次の試合では 「 らしさ 」 を発揮して、また日本を沸かせてもらいたいと願う。

ただ、この 「 らしさ 」 は、観客の抱くイメージ像であって、本当の彼らしさは、赤子のように泣いていた今夜の姿なのかもしれない。


時代は文化をつくり、時の流れは、それを変えてゆく。

我々が20代の頃、年配者の大部分は声を揃え、「 最近の若い者は 」 と、無知で未熟な新参者を嘆き、その非常識ぶりに呆れ返っていた。

いま、我々世代の人の多くは、電車の中で化粧をする娘さんや、コンビニの前でたむろする若者を指して、「 最近の若い者は 」 と顔をしかめる。

そう考えると、変わったのは 「 若い者 」 だけではない気がする。

20代、30代、40代、それぞれに昔の各年代とは違うわけで、変わったのは 「 最近の若い者 」 ではなく、「 最近の日本人 」 なのではないだろうか。


日本人の 「 らしさ 」 の一つに、「 勤勉 」 があるという。

真面目な働き者で、高度成長期には 「 エコノミックアニマル 」 などと揶揄もされ、欧米からは、それが貿易摩擦を引き起こす元凶とまで言われた。

いまでも、大半の日本人は、自分たちを真面目でよく働く民族だと自覚し、仕事に対するモチベーションが高いと、認識しているのではないだろうか。

それが、国際比較した場合の 「 日本人らしさ 」 であり、怠け者の欧米人とは違うところだと、信じて疑わない人が多いようだ。

それが事実であれば、世界に誇れる特徴と言えるだろう。


米国の大手人材コンサルタント会社である タワーズぺリン社 が、2005年に世界16カ国、約8万6千人の労働者に対して、アンケート調査を行った。

モチベーションの高さについて尋ねると、「 非常に意欲的である 」 と感じている従業員の割合が最も高かったのは、メキシコ ( 40% ) であった。

次いで、ブラジル ( 31% )、アメリカ ( 21% ) の順に続き、わが日本は 「 わずか 2% 」 で、最下位だった。

また、現実に 「 いまの仕事に対して意欲がない 」 と答えた日本の従業員は 41% に上り、インド ( 56% ) に次いで2番目に多かった。

統計の結果が必ずしも正しいとは断言できないが、これでもなお、国際比較して日本人が 「 世界一の勤勉 」 だと、信じてよいものだろうか。


いまの大人からみて、最近の若者は 「 正しい日本語を知らない 」 という。

昔は、「 こうじゃなかった 」、「 そんなことは通用しなかった 」、「 非常識が許されなかった 」 と、若者を批判することは簡単だ。

日本の素晴らしさや、独特の良さ、「 らしさ 」 が失われていくことを、すべて非常識な若者のせいにして嘆けば、多くの大人は共感する。

しかし、そういう大人は、日本人の長所、特徴、「 らしさ 」 を守り、かたくなに実践し続けていると言えるのだろうか。

すべての大人たちが、忍耐を美徳とし、不平不満を言わず、勤勉に働くことに生き甲斐を感じながら、「 らしさ 」 を踏襲しているようには見えない。


自分たちの若い頃と比較し、「 ニート 」 に代表される無気力な若者を蔑みながら、居酒屋で 「 最近の若い奴は 」 と愚痴をこぼす。

その一方、自分たちが 「 若い奴 」 だった当時の40代が、膨大なストレスに押し潰されながらも、愚痴をこぼさず耐えていた事は棚に上げられる。

たしかに昔の20代は、いまの20代よりも羞恥心があり、電車で化粧を直さなかったし、日本語を上手に操っていたかもしれない。

しかし、それと同様に、昔の40代は、過酷な仕事に追われても、簡単には挫折しなかったし、自制心をもって、窮しても品位を失わなかった。

家族を養う責任や、組織内での役割から逃れて、ふさぎこんだり、自分だけが楽になるために死を選んだりする人間は、ほとんどいなかったのだ。


世の中には、「 変えるべきもの 」 と、「 変えないほうがよいもの 」 があり、もし、「 日本人らしさ 」 を 「 良さ 」 と思うのなら、それは後者にあたる。

それを守る責任は、未熟な若者たちに委ねることが正しいと思うのなら、「 最近の若い者 」 を批難し、ことあるごとに罵声を浴びせればよい。

逆に、もう少し経験のある中高年こそが、その役割を担い、将来ある若者たちの模範になるべきだと考えるのなら、大人が襟を正すべきだろう。

けして、「 昔の日本人 」 を目指す必要などなく、いつの時代にも通用する本質的な 「 日本人らしい良さ 」 を体現していけばよいのである。

意図して美意識にこだわったり、勤勉につとめるのではなく、自然なままの姿で、「 simplicity 」 に回帰することから始めれば、難しいことでもない。






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