Tonight 今夜の気分
去るものは追わず、来るものは少し選んで …

2005年06月26日(日) 名誉や栄光のためでなく



「 仕事は、選ぶものではなく、巻き込まれるものだ 」

                           ジョン・ドス・パソス ( 作家 )

People don't choose their careers; they are engulfed by them.

                           JOHN DOS PASSOS



感動的な仕事に出会い、それをやり遂げることは至上の喜びである。

そんな瞬間に立ち会えたことが、先週の最大の成果だった。


最近、某国営機関からの受託事業として、未就労の若者を預かり、彼らにカウンセリングを施した上で職業の斡旋をする仕事を請け負っている。

彼らは、はっきりと 「 ○○病 」 だなどと名付けられる精神病ではないが、それぞれに心の闇や、就労できない事情を抱えているケースが多い。

我々の目的は、治癒を目的とするカウンセリングではなく、就労意欲を湧かせること、その動機付けを行うことが主旨となっている。

しかしながら、あまりにもストレス耐性が低かったり、メンタル面の健康度が不足していたりする場合には、それなりの対応が必要となる。

世間から 「 落ちこぼれ 」 と見られることで、さらに傷つき、焦燥感を増している人も多く、なかなか簡単には解決できない。


学校を出てから30歳になるまで、短期のアルバイトしか経験したことのない若者を、どのように指導するか、どこにもマニュアルはない。

誰も作らなかったというより、作れないというのが実態である。

なぜならば、そこに至った理由も、解決する方法も、人それぞれに一様ではなく、何が正しいというベースなど存在しないからだ。

もしも、私が10歳若かったら、ただ叱責するだけで、彼らを見守ることも、根気よく指導することもできなかっただろう。

過去に体験した 「 ビジネスマンに対する教育 」 とは180度違う接し方で、向き合う姿勢が求められている。


その一人が、世界的大企業の一員として、活躍する機会を与えられた。

4月に初めて対面したときには、満足に会話も交わせないほど無気力で、自信のカケラもなく、暗い印象だった彼が、勝ち取った就職である。

良い方向に変わったキッカケは、アルバイトで経験した職務内容を事細かに洗い出し、職務経歴書に記入していった段階からだった。

何もできないと思い込んでいた彼だったが、客観的に分析していくと、社会で役立つ様々な経験を踏んでいることに、自分で気づき始めた。

自信を取り戻した彼は、見違えるほど明るくなり、自分の潜在的な対人能力や、認知していなかった職業適性にも、徐々に目を向け始めたのである。


就職が決まった直後、彼は真っ先に私のもとへ訪れ、礼を言ってくれた。

彼の人生に何らかの支援ができたことは嬉しいが、功績は彼自身のものであり、私は少し 「 背中を押した 」 だけのことである。

我々カウンセラーは、もともと彼らが持っている長所を見出し、それがうまく表現できるように導くことが仕事で、何一つ彼らを変えたわけではない。

それでも、大の男が半泣きになって礼を言うものだから、こちらまで目頭が熱くなってしまった。

こんなことぐらいで、いちいち感動していたら仕事にならないとは知っていながらも、単純に 「 仕事だ 」 と割り切れない自分がいる。


そのあたりについては、自分はまだ未熟だと思っていたが、女性スタッフの一人から、励まされる一言を携帯のメールでもらった。

それは、「 これからも若者たちに熱いハートで接してあげて 」 といった内容で、なんだか未熟者なりの良さというものを認められた気がした。

たぶん自分は 「 先生と生徒 」 という関係ではなく、これからも、彼らと一緒に苦労していくタイプのカウンセラーを続けていくだろう。

一緒に泣いたり、笑ったりしながら、人に教えることで自分も再び学ぶような、そんな仕事が自分には向いているのかもしれない。

他に収入源があるので 「 儲からないけど引き受けた仕事 」 だったけれど、しばらくは続けてみようと確信した、そんな一週間だった。






↑ エンピツ投票ボタン です。 一度クリックする毎に筆者が踊ります。

My追加


 < PAST  INDEX  NEXT >


Oldsoldier TAKA [MAIL]

My追加