Tonight 今夜の気分
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2005年03月03日(木) 営業と 「 物売り 」 の違い



「 不満を持っている人間には、安楽な椅子は見つからない 」

     ベンジャミン・フランクリン ( アメリカの科学者、政治家、文筆家 )

The discontented man finds no easy chair.

                           BENJAMIN FRANKLIN



多彩な天才 ベンジャミン・フランクリン は、数々の名言を遺している。

彼の 「 人間観察における優れた洞察力 」 は、毎回、とても勉強になる。


ご自分を 「 不遇 」 だと嘆き、いつも世の中を憂いておられる方がいる。

彼の日記は、毎度、同じような調子で、「 自分はエリートなのに恵まれていない 」 とか、「 世の中は馬鹿ばかりだ 」 といった書き込みが多い。

政治ネタでは、たいてい与党、特に総理大臣の悪口が多く、アメリカ人への不信感、ブッシュ批判など、いわゆる 「 この手の人の専売特許 」 が続く。

微妙なのは、体制批判をするのだけれど、自分は 「 大企業のエリート 」 という自負があるので、心のどこかで 「 権威主義への信奉 」 も秘めている。

気の毒だが、あまり 「 重圧に耐えれるタイプ 」 ではないのに、過激な思想を持っているために、お決まり通り 「 心の病気 」 で悩んでおられる。


カウンセラーをしているので、そんな人は何人も見てきているし、別に珍しくもないのだが、それを 「 WEB日記に書き綴る 」 ような知り合いはいない。

ストレスの解消になっているのならよいが、書くことでさらに症状が悪化し、ネガティブ思考が進行して、かえって苦しんでいる様子も窺える。

こちらとしては、「 臨床例 」 として仕事の参考になる部分もあり、欠かさず拝見しては分析しているのだが、最近、何が問題なのか、理解できてきた。

たとえば、最近の日記で 「 営業とは、ただひたすら頭を下げ続ける仕事 」 という記述があり、この人の 「 不幸 」 について、少し推察できる。

それは、「 限られた世界の知識しかない 」 という不幸だ。


私は二十年以上 「 営業 」 に関係する仕事をしているが、頭を下げることを 「 営業の仕事 」 だと思ったことは一度も無い。

また、「 頭を下げてりゃ済む 」 ほど、簡単な仕事だと思ったことも無い。

ひたすら頭を下げ、「 お願い 」 して買ってもらうのは、単なる 「 物売り 」 であって、私の知る世界では 「 営業 」 とは言わない。

そのような間違った認識が備わった背景には、過去の職場や、上司に問題があったか、ご自身が 「 誤った解釈 」 をされたか、原因があるのだろう。

たしかに、営業の仕事を 「 その程度 」 に思っている人には、仕事がつまらなく、苦痛でしかないという心情も理解できる。


営業マンのレベルを判断する際に、私は 「 販売の完了とはなにか? 」 という質問をすることが多い。

前述のような 「 お願いセールス 」 をしているタイプの営業員で、最も多い回答例は、「 商品を納めて、代金を回収した時点 」 というものだ。

たしかに、それも 「 不正解 」 ではない。

しかしながら、もう少し成熟した組織で営業を学んだ人の回答例をみると、「 CS ( 消費者満足 ) を得た時点 」 というものが圧倒的に多い。

簡単なテストなので、周囲の営業マンに対して、お試しになると面白い。


ちなみに、東京ディズニーランドでは 「 お客様が再来園をされたとき 」 を 「 販売の完了 」 と位置付ける思想が定着している。

適当なことを言って誤魔化したり、騙したり、ひたすら頭を下げることにより、とりあえず 「 最初の一回 」 は、モノを売ることができる。

いわゆる 「 飛び込みセールス 」 のような 「 ワンショットビジネス 」 ならば、そういう売り方も可能だろう。

しかしながら、同じ顧客と何年も付き合っていくような 「 ルート営業 」 をする場合は、そのような稚拙な手法が通用するわけがない。

じっくりと、相手の信頼を勝ち取っていくような 「 コミュニケーション能力 」 が不可欠で、相手の満足度を果たすことが最終目標となる。


狭い世界に自分を押し込め、仕事を 「 つまらなく 」 する人がいる。

どんな世界でも、上には上がいて、崇高な志を持って取り組んでいる人や、自分の仕事に誇りを感じながら働いている人もいる。

たまに、自分の仕事を 「 雑用です 」 と言う人もいるが、会社には 「 雑用 」 などなく、仕事を雑にやるから 「 雑用 」 になってしまっているだけだ。

自分の仕事、キャリアについて、もっと上を目指し、意義を感じることこそが、それぞれの 「 やる気 」 につながるのである。

不平不満を言う前に、自分の仕事の 「 完了とはなにか 」、「 どこまでやれば十分か 」 ということを、見つめなおす姿勢が肝要だろう。






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