かなしいうわさ
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2005年11月27日(日) 492

FISHMANS presents The Long Season Review

滅茶苦茶楽しかった。とてもとても幸せな気分になることができた。


佐藤在籍時のフィッシュマンズを観たことがなくて、今回のライブがはじめての生フィッシュマンズだったという人も多いんだろう。来ているお客さんも意外と若い人多かったし、きっとそうだと思う。そういう人たちが、もしここを読んでいたのなら、過去20回はフィッシュマンズのライブを観てきたアホとして自信を持って言いたい。

今回のライブは良かったよ。
佐藤在籍時の「アタリ」なライブの時と同じくらい楽しかった。

今回のライブを観られたのなら、「佐藤がいる頃のライブ観たことないし...」だなんてもう引け目に感じることないよ。少なくとも、楽しさだけなら今回のライブだって当時にちっとも引けを取っていない。実力のある人たちが「楽しむ」ために全員持てる力を全力で注ぎ込んで、それが見事に結実していた。本当に楽しかった。楽しかったでしょ? それでいい。 過去の記憶なんて増幅されたり薄れたりするし、いい悪いなんて俺の主観でしかないから、過去のライブと今日のライブを比較するのに意味はないのかもしれない。でもまあ良いじゃない。今回のライブには佐藤は居なかった。でも俺はいまとても幸せな気分に浸っている。これは確かだよヽ(´ー`)
今回のライブには、新曲も無かったし、革新性もなかった。佐藤が居た頃はあったよ。ビシバシあった。どんどん進化していく彼らに毎回ぶっとばされていた。(ハズレなライブもあったけど。)今回のライブにはそういう革新性は無かったけど、ゲストボーカルが素晴らしくて「新しい何か」が発生している曲はたくさんたくさんあった。だからこそ楽しいライブになったんだろうな。









当日のリスト。
戸田さんの日記から転載し、一部改変させていただきました

Go Go Round This World! (vo: 欣ちゃん)
Weather Report  (vo:原田郁子)
いい言葉ちょうだい  (vo:原田郁子)
エヴリデイ・エヴリナイト  (vo:原田郁子)
BABY BLUE  (vo:Pod)
なんてったの  (vo:Pod)
Smilin' Days, Summer Holiday  (vo:Pod)
忘れちゃうひととき  (vo:蔡忠浩)
MELODY  (vo:蔡忠浩)
感謝(驚) (vo:蔡忠浩)
むらさきの空から  (vo:pocopen)
あの娘が眠ってる  (vo:pocopen)
Just Thing  (vo:pocopen)
Walking In The Rhythm  (vo:UA)
新しい人  (vo:UA)
頼りない天使  (vo:UA)
MAGIC LOVE  (vo:永積タカシ)
ナイトクルージング  (vo:永積タカシ)
いかれたBaby  (vo:永積タカシ)
LONG SEASON  (vo:山崎まさよし)

【アンコール】
チャンス  (vo:全員)

【アンコール2回目】
ひこうき (vo:全員、楽器演奏なし)
いかれたBaby (vo:全員)


欣ちゃんの歌うGoGo Round This Worldからスタート。佐藤と声質の似ている欣ちゃんだけど、ピンで歌うにはちょっと厳しいか。でも、「あー、おれはフィッシュマンズのライブ観に来たんだなぁ」という気分にはさせてくれた。

次のボーカリストは原田郁子@クラムボン。これはちょっといただけなかった。郁子ちゃんは本当に素晴らしい唄うたいだけど、「他人の歌」は歌えない人なんだろう。カバーをやるにしても、アレンジも含めて自分のものとして消化しないとダメなんだ。矢野顕子とおなじ。自分の世界観が確立されているから、そこの中でならいくらでも自由に泳げるけど、おしきせの他人の歌のなかではうまく泳げない。つぶしがきかないのは全く悪いことではない。でもこの日のライブでは、カラオケになっちゃってたんだよね。「あー今日は楽しめないかもしれない...」と落ち込みながら3曲をボケーと拝聴。

次は、タイのModern DogというバンドのヴォーカリストPod。すごく良かった。甘い声を張り裂けんばかりにふりしぼって、カタコトの日本語で歌う。フィッシュマンズのセンチメンタルな部分が出ている「Baby Blue」と「なんてったの」を、甘い声のPodくんに歌わせたのはNice Choiceだった。すごくはまっていた。とくにBaby Blueはせつなさが増幅されていてずっぱまり。「スマイリン・デイズ」が途中でもにゃもにゃと英語になっちゃってるのもなんか良かった。本人、すごく緊張してたみたいで、それを欣ちゃんが必死にMCでフォローしてるのも微笑ましい。
Modern Dogというバンドは、Zakがエンジニアをしているようだ。音源はまったく聴いた事なかったけど、この日のライブを観て俄然興味が湧いてきた。タイでのライブの模様を観ても楽しそうだねえ。ディスコグラフィが全く読めないが(´ー`) いちばん新しいやつを買ってみようと思う。

次は、蔡くん@ボノボ。これも良かったなあ。クリカンがやってるルパンを彷彿とさせたり... とはいえ、ただのマネっ子では当然無い。声質や歌い方は似ているけれど、佐藤が言葉を練り上げてとろけさせる感じなのに比べて、蔡くんのほうが言葉をピシっと言い放って、断言する感じ。それがなかなか格好良い。今回の新たな発見。「MELODY」〜「感謝(驚)」の流れが良かった。「感謝」はフィッシュマンズの大ファンである蔡くんの思いがギューと込められているのが伝わってくる熱唱だった。演奏もホットで盛り上がる。

次は、ポコペン@さかな。「気分はコール天」という初期のミニアルバムに収録されていた佳曲「むらさきの空から」からスタート。フィッシュマンズっぽくないほっこりジャジーな感じでカバー。これが滅茶苦茶良かった。佐藤が作る曲のなかでも、やさしさとしみったれた感じがあけすけに出ているこの曲に、ポコペンの凛としたヴォーカルとアレンジの妙が合わさり、新しい魅力が引き出されていた。これだよ、俺がこのライブに求めていたものは! 「コール天」から引き続き初期の名曲「あの娘が眠ってる」をやってくれたのも良かったな。その後に自作のみじかい詩を朗読。一寸ウルっときた。

続くはUA。いままでの人たちも良かったけど、UAは別格だ。あれ、この曲ってもともとUAの曲だったっけ?と思ってしまうくらい、自分に引き寄せて、自分のものとして歌っていた。「新しい人」も良かったけど「頼りない天使」は凄かった。トリビュートアルバムに入っていたバージョンよりも断然良かった。
ちょっと変な話だけど
■「なんて不思議な話だろう/世界の真ん中で/僕が頼りだなんてね」(フィッシュマンズ『頼りない天使』)。これは恋愛の歌ではない。育児の歌である。俺はそう聴いた。いつまで続くのかは分からないが、子供は俺を頼りにしており、俺はそのことを頼りに生きている。何て不思議な話だろう。「あの子は僕に言うさ/天使は今来ますって/ほんとさ ウソじゃないんだよ/未来は ねえ 明るいって/あの子の信じた確かな気持ちは/きっと僕を変えるだろう/なんて素敵な話だろう/こんな確かなことが/今もそばにあるなんて」。
これまた戸田さんの日記の9/25日ぶんの引用なんだけど
このこと思い出してしまって、ああ、なんていい歌なんだ、本当にすごい歌だ、なんて不思議な話だろう?! と思って、ヒクヒク言いながら号泣してしまった。これは佐藤のフィッシュマンズじゃなくて新しいフィッシュマンズだなあ、と心から思えたひととき。

続いてはハナレ永積。これもとても良かった。この人は郁子ちゃんに近くて、自分のフィールドのなかで自由に泳ぐ人なんだけど、すごくしっくり来ていた。郁子ちゃんよりも器用でバランス感覚が良いんだろう。UAと違うのは、自分の曲にしちゃうんじゃなくて、自分が曲に溶け込んでいくところ。フィッシュマンズを全く知らない人がこのライブを観ても、永積がオリジナルのボーカリストであると信じて疑わないと思う。それほどしっくり来ていた。個人的にフィッシュマンズのブレイク・ポイントだったと思っているド名曲「ナイトクルージング」をこの人の唄で聴けてよかった。当時と同じようにフワフワと舞えたよ。「ハダカの自分で勝負しまっす!」とか言ってメガネ外してから、最後までずっと外しっぱなしだったのが面白かったな。確かに、気合十分、渾身の唄。

最後は山崎まさよしによる「Long Season」。この「Long Season」という曲はとても評価が高いけど、俺は好きじゃない。(短縮バージョンの「Season」はまあまあ好き。) リリース当時のライブでもこの曲がはじまると「あー早く終わらねえかなぁ」と思っていた。確かにフィッシュマンズのサウンドは凄い。あの頭をドカっと揺さぶるサウンドあってのフィッシュマンズ。それはそうだ。でも、やっぱり佐藤の歌が核にあってこそ、あの世界になるんだ。だから、ダラダラと演奏が続くこの曲のせいで佐藤の歌が少なくなってしまうのが勿体ない。なのでこの日もあまり楽しめず。浅ちゃんVS欣ちゃんのパーカッションバトルはまぁ良いけど、別にこれをフィッシュマンズでやる必要はないだろう...と今回も思った。山崎まさよしは巧かった。でも曲には合っていなかった。
ここで本編終わり。

アンコール。ゲスト全員で出てきて「チャンス」。混んでいるから控えてきたけど、この曲ばかりは声に出して歌った。会場は大合唱。同窓会でカラオケに行って大いに盛り上がったときのような類の楽しさに包まれる。楽しいという感情に質とか貴賎はないから、これでいいのだ。その後、鳴り止まないアンコールの拍手に応えて2回目のアンコール。やる曲がないので、「ひこうき」をアカペラで合唱。山崎まさよしがパンディロでリズムを刻み、譲が口でベース。会場が大合唱。続いて2回目の「いかれたBaby」。これまた大合唱。いやいや、フィッシュマンズ知らない人はドン引きしてたのかもしれないけど、会場が一体になって楽しんだから、やっぱりこれはこれでいいのだ。
もう一度ゲスト全員を紹介し、エンジニアのZAKをはじめ、照明さん、マネージャーまで呼び出して紹介。本当におしまい。

「またやるよ!絶対やるよ!また来年逢おうぜ!」と何度も欣ちゃんは言っていた。
うーん、次は固定のヴォーカリストで新曲をやってほしいなぁ。









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