かなしいうわさ
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地球のでかい画像 なんだか怖い
仲能健児 /猿王 ずっと前のコミックビームに載っていた不思議な感触のインド旅行記を読んでいらい、ずーっと気になっていた作家。90年代発表された作品が青林工藝舎から再発。ヤフオクで5000円とかしてたので、本当にありがたい再発だ。 インドを旅する日本人がなぜか猿に追いかけられる。どこまでもどこまでも。猿は神になるためにサドゥー(修行者)の脳を喰う。虎や巨大な川イルカを操り追っ手を殺す。オマエが死ねば奴は閉ざされるいやだ死にたくない殺してやる殺してやる助けてくれ助けてくれ。 そんなぐんにゃりと歪んだ世界がはじめから終わりまで全く途切れずに続く。ありえない事が起こりまくる。そんな状況にあってうろたえる主人公と同じように、読み手の俺もうろたえ、困惑し、狼狽する。なのに、なぜか全体の空気が醒めているのだ。ありえない話なのにファンタジーで終わっていない。インドを描いたマンガにはねこじるの「じるじる旅行記」というとっても優れたものがあったけど、ねこじるの異常なまでに冷めた目で切り取られたインドですら、やっぱり一種のファンタジーになっていて、どこか浮かれていて、浮世離れしていた。というか、身近な日本を舞台に描いたって、よくできた物語というものはたいていファンタジー的になるものだ。そうなっていないのが凄い。 よくありがちな、ただ混乱や恐怖を連発して煽りまくるような恐怖や高揚感ではなく、心の奥からぞわぞわっとせりあがってくるような感覚。これは他ではなかなか味わえないよ。オビにある 「まさしく奇書としか言いようがない。1990年代半ばのマンガ表現の一つの極」 という呉智英のことば、まさにそのとおり。
ほいで、
小池桂一 /ウルトラヘヴン 2巻 こちらは思いっきり浮世離れ。グイグイアゲまくる。圧倒的な画力とぶっとんだストーリー。初期の大友克洋のような、白っぽい、日常を描いてもなんだか異世界にいるような絵がいいんだな。
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