どんぐり1号のときどき日記
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2009年06月20日(土) 山形で映画

 山形へ出かける。
 仙台は曇りで寒いし、川崎のあたりからは雨模様となるが、笹谷のトンネルを抜けると、なんと晴天の夏である。トンネルを抜けるだけでこうも違うのかと感心する。川端康成の「雪国」の冒頭が実感できるのはこういう時だ。ただしトンネルはそれほど長くはないのだが…。ちなみに後で合流した623ちゃんも同じ事を言っていた。そして山道の一般道は、走っていてやはり楽しい。

 今回は「本多猪四郎監督特集」が開催されるので、半分まで観る予定である。内容は以下の通り。
  10:30〜『空の大怪獣 ラドン』
  12:30〜『妖星ゴラス』
  14:30〜『井上ひさし講演 「ゴジラと僕と山形と」』

 あとの2本は「マタンゴ」と「ガス人間第一号」なのだが、こちらは結構映画館で観ているし、一日座りっぱなしと言うのも、もうきつい歳なのである(椅子はまあまあ立派ではあったが、一日自由座っていられるようなタイプではない)。そもそもスクリーンで見るなら怪獣物の方が絶対に楽しい。

 だいぶ早く着いたので、斜め向かいの観光物産館を覗いてみる。だがお土産として買うような物がないのには驚いた。特にお菓子類が全滅だ。自分で食べてみたいというレヴェルの物がない。仕方がないのでシベールの工場でラスクを買う。ここには簡易包装の少し安い袋の物があったので、うちと実家の両方に買ってお土産は終了。
 しばらくすると、会場のシベール・アリーナ(あのラスクを作っている工場だ)にチャウチャウ、キョーノさん、まさいちさん、さたけさんが集合し、5人組となる。623ちゃんは井上ひさしの講演のみ参加だそうだ。

 会場に入ると、予想はしていたがスクリーンの大きさは映画館ほどに大きくはない。それでもこのサイズで古い怪獣映画を見ることなど滅多にないから充分だ。
 最初の「ラドン」が始まるとやはりわくわくする。観るのは久々だが、やはり冒頭からのめり込める程まじめに作られている。思ったよりメガヌロンのシークエンスが長いので、人物描写の部分もかなり丁寧だ。しかし後半出てくるラドンの、羽ばたくシーンは全てダメだ。もともとプテラノドンは翼竜であって、基本的には羽ばたかないのであるが、とにかく操演に無理がありすぎる。ミニチュア・ワークが素晴らしいだけに、この部分はかなり惜しまれる。
 ちなみに映画の途中で、なんとフィルムが切れた。しかも2回である。驚いたが懐かしいというか、こんなトラブルはこの先二度と見る事はないかもしれないので、むしろ嬉しいトラブルかも知れない。
 しかしこの映画、意外とカメラワークが下手だ。もしかしたらフィックスがメインで、パンが苦手なカメラマンなのだろうか。もしそうだとしても暗所の露出はうまいので、それはそれで納得出来る。
 いずれ見終わって満足である。

 終わって次の映画まで30分あるので、みんなで軽い昼食。私はキョーノさんやチャウチャウから分けてもらった。なんだかんだと雑談が楽しい。この辺はSFファンの集まりだからだろう。

 続いて「妖星ゴラス」を観る。ワイド・サイズになるので「ラドン」より画面がかなり大きくなる。しかもフィルムがリマスター版らしく、自分が持っているLDソフトよりクリアで綺麗である。なんだか悔しい…。
 だがゴラスの衝突を避けるために地球を動かすという、とんでもなく荒唐無稽なホラ話をきわめてまじめに演出してあるので、これまた楽しい映画だ。雰囲気は日本沈没に通じるものがある。
 ただあの「おいら、宇宙のパイロット」は腰が砕ける歌で、あのシーンはカットした方がテンポが良くなるからこの映画には不要だし、そもそも私は好きになれない歌だ。トラック野郎じゃないんだから。
 いずれラストは結構感動する。こんな荒唐無稽な話なのに感動するのはひとえにまじめに作ってあるからだ。なぜゴジラ映画はコミカルな方向へ走ってしまったのか、こういうまじめな演出路線を続けていれば、もっとまともなゴジラ映画を生めたかも知れないのに、残念である。もっともゴジラではないからまじめな空想特撮映画を作れたのかも知れない。
 しかし、「ラドン」と「ゴラス」のどちらも主人公が記憶喪失にかかるのだが、それを続けて観るとちょっと笑える。

 終わって休憩。しばらくして623ちゃん登場。いつもながら明るい。ちょっと話をしてから会場へ入る。
 さすがに「井上ひさし」の講演だけあって満員で、みんなで最後尾に座る。内容はやはり山形にちなんだ物で、こういうのはあまり中央では聞けない内容だろう。だが当然普遍的な事も話す。映画と小説との違いの部分で、小説は読者による主張の理解のぶれが少ないが、映画は正反対の意見も普通で、だから映画評論家という職が成り立つという話は、なんとなく判っていた事を明確な言葉にしてくれた。やはり小説と映画を比較するという事が判りやすい内容につながったのである。

 また井上ひさしは小説家だけあって、映画の物語性を重視している。だから小津監督の作品がおもしろいとは思えないのだという。これは一つの真理だ。結局、必要以上に権威主義に陥っては、単純に面白いかどうかの判断が出来なくなるのである、その例えでイーストウッドの最新作である「グラン・トリノ」はつまらないと明言した(ここで623ちゃんが拍手。数を見ているから即座に反応できるのであり、この辺はさすがだ)。最近のイーストウッドは確かに巨匠のような雰囲気になってきたが、巨匠だから面白いかというと、そんな事はない。そのへんをきちんと説明するのが映画評論家の役割だ。
 だが彼は、公開当時の「ゴジラ」を全うに評価した評論家が皆無だったので、評論家の意見は信用しないのだそうだ。まあそれは良く判る。
 ちなみに物語性を重視していると言うことは、「2001年宇宙の旅」をどう評価するのか、聞いてみたいものである。

 あと本多監督と対談した時に、小学校の頃の村祭り(暗い祭りというのは照明が少ない物理的な暗さだと強調していた)で見たほのかな明かりに浮かぶ少女の美しさの事を話したら、自身で是非映画にすれば良いと言われたそうだ。だが井上ひさしという人は物語性を重視するから、このシーンのためだけに映画は撮れない。これについては、押井監督に作らせたら良いだろう。そのイメージだけを伝えて、あとは自由に作らせるのである。良い方法だと思うのだが…(623ちゃんは同意したぞ)。

 これが終わって、アリーナ内の喫茶店に入ってみんなでダベリング。例によって楽しい。
 まさいちさんとさたけさんは残りの2本も観るとの事で、途中の休憩時に戻ってくる。私は翌日の事もあるので、18時過ぎに退散する事にしたが、この時まさいちさんからサクランボをもらう。不揃いのアメリカン・チェリーだそうで、商品にならないとの事。しかし皮が柔らかい。スーパーで売っているあれは何なんだ。あ、アメリカンか…。

 帰路も笹谷峠以外は一般道を通ったが、やはり山道は楽しい。こうして楽しい一日も終わったのだった。


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