どんぐり1号のときどき日記
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2009年05月07日(木) 立体感とノイズ

 子どんぐりの風邪がうつったようだ。鼻水が結構でるのでとりあえず薬を飲んでおく。困ったものだ。

 ところで、フィルムで撮った写真に比べると、デジタル写真は立体感が乏しいとは以前から言われているし、私もカメラ雑誌を見る度にそれは感じていた。しかしそれが何に由来するのかは良く判らなかったのだが、自分のこういう感覚は確かだという自信はあるので、多分何らかの要因があって実際に立体感に差が出ているのだとは思っていた。
 それについて、今月のアサヒカメラにある程度の報告が載っていた。業界としてようやくこの手の記事がまともに扱われるようになった訳である。

 結論から言えば、立体感の正体の一つはフィルムにおけるノイズであり、それを記憶している人間の心理なのだという。
 もともと汚れとなるデジタル・ノイズは均一な細かい粒子として現われるが、フィルムにおけるノイズはこれとは全く異なり、均一ではない俗に1/fと一般的には言われているノイズで、つまりサイズも密度もある程度不規則になる。だがデジタル写真には元々この不規則なノイズが含まれない上に、デジタル・ノイズ自体も除去されつつある。
 普段から人間は外界を見て情報を記憶にとどめているのだが、それにはこのアナログなノイズが初めから入っているために、そのノイズを除去した風景などには違和感を感じるのだそうだ。

 デジタルカメラは一般に普及してからまだ10年程度だが、それ以前からノイズの除去は重要課題の一つとして、技術者は必死になって研究していた。だが実はフィルムとデジタルではその描写方法が元々違うので、ノイズもパターンが異なる物であり、それを知らずに除去していたため、人間にとって必要な立体感すらも削除されてしまったのである。
 だからわざとフィルムのようなノイズを加えると、とたんに立体感が得られるようになる。

 ちなみにフィルム・メーカーはその長い歴史の間で、人間の記憶の再生を念頭にフィルムを開発しており、決して忠実な色再現だけを目標にしていたのではないそうだ。この辺は数値には決して現われないが、写真の描写には絶対に必要な部分で、人間としての勘と経験をおろそかにしていなかったから品質の高い表情豊かなフィルムが提供され続けたのである。

 ただしこのノイズを加えるのも、実験によれば金属のような光沢のある物や人間の顔には効果がないそうで、だからこれだけデジタル写真が普及しても気づかない人が多い訳である。何故ならデジタル・カメラでは、基本的に家族の写真を撮る人が圧倒的に多く、しかもそれは顔がメインになるし、そもそも以前からフィルムカメラを撮っていた人でないとこの立体感の有無など判らないのである。

 こう考えると、映画におけるCGIの不自然さも、これが原因のひとつだと想像される。いつも金属などの描写には違和感がないのに、それ以外にはどうしても違和感があるからだ(顔の表情については、デス・マスクを見る時の違和感と同じだろう)。いずれ誰かがそれを解決するシステムを作りそうだが、現在の映像の世界はコスト・パフォーマンス最優先なので、仮に誰かが作っても普及までには時間がかかるかも知れない。なぜならこの違いが判るのは、一部の人間でしかないからだ。
 90%の人間が満足しているのに、わざわざ大金をかけてまで新しい技術の導入はしないものなのである。それが映画界という物の現状なのだ。


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