どんぐり1号のときどき日記
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吉村昭氏が亡くなったそうだ。79歳とは意外と若い。なんだかもっと年を取っていたように思っていたのは勘違いだったようだ。
彼の作品は、大学の頃に「高熱隧道」「戦艦武蔵」「星への旅」の3冊を読んで非常に感動したものだ。 特に「高熱隧道」の面白さは、ある意味天下無敵と言えるだろう。内容はいわずと知れた、黒部第三発電所建設のために大量の殉職者を出しながら自然と闘った男たちの物語である(もちろん黒四ダムの話ではない)。 これはなんとなく新田次郎の「富士山頂」や「八甲田山」と較べたくなるが、事前調査の完璧さだけではなく、純文学の素養とも相まって、信じられない程の完成度となった(少し褒めすぎか?)。
その純文学方面だが、「星への旅」や「青い骨」を読むと実は本当に純文系の人なのだというのが良く判る。はっきり言って非常に上手い(実はひそかに純文系も好きだったりするのだな)。やはり本来は純文を書きたかったのかも知れないが、黒部第三発電所の取材によって、純文学をしのぐ世界があると気づいたのだろう。もちろん純文学も捨てられなかったと見えて、その後もいろいろと書いている。いずれどちらのジャンルも一流といえるだろう。
とにかく「高熱隧道」と「戦艦武蔵」は傑作である。これだけ資料満載でありながら物語としても非常に面白いというのは、実はかなり高度なテクニックを要するのであり、こんなのを大量に書いている吉村昭氏は、やはり天才的な作家と言って間違いない。 いい作品の条件の一つは、文章が上手い事なのである。
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