およそプロ棋士にとって、自分の読み筋どおり局面が進んでいるときほど怖いものはない。なぜなら相手も同じように読んで、「よし。」と考えているからである。両方がそうした結論を出して局面のバランスが取れているケースは極めて稀で、どちらかの結論が間違っていることがほとんどだ。 そして、形成のはっきりした局面になって大局観の誤りに気がついてももうおそいのである。だから形勢のバランスが取れているときほど、互いの読み筋が食い違いというのは気づきにくい真理といえる。島 朗『純粋なるもの』より