「・・・私もなきたいわ」
「え?」
「子供になりたい。 駄々をこねて、 ほしいものを欲しいと主張して、 道に転がって、 大声で泣いて、 そんな子供に戻りたい」
「君はそういう子供じゃなかったじゃないか」
「今からなりたいの」
「大人でもそれをする人はいるよ」
「いるわ。でも私にはできない。 したくない気持ちのほうが強いのね。」
「したくない気持ちのほうが強いなら諦めなければ。 ありたい自分でいるためには、何かを引き渡さなければならないことが出てくる。」
「そうね・・・。でも・・・」
「何をなくしたんだい」
「何も・・・なにもなくしてないわ。ただ・・・ 私が駄々をこねなかったことで、 私が欲しいのに欲しいといわなかったことで、傷つけたかもしれない子がいるの。 私にとって大事な子だったの。 でも、、 別れのときに、泣き顔すら見せてあげられなかった。 これでまた傷つけたかもしれない。」
「いい友達だったんだね」
「友達なんかじゃなかったわ」
「誰のことかはきかないけど、僕はその子がうらやましいよ。 君の想いがその子を人からうらやましがられるような子にしている。 君の嘆きは無駄じゃないよ。 君の涙が、 流してもらった人の 誇りになることもあるよ−−−−−−−−−−−」
|