十夜一夜...Marizo

 

 

三人の意思。 - 2004年04月10日(土)



我が家は 母と姉と私の三人家族。


まぁいくら血を分けた親兄弟とはいえ
一つの肉体を己の意思で動かす別々の生き物なので
時々 三人の意思を確認する事がある。



例えば「臓器提供意思表示カード」



姉が医療関係の仕事をしている事もあり
あの黄色いカードが出る前から
姉と私は「献眼登録証」を持っていた。


姉の意志は「臓器はもちろんの事、皮膚から
血から骨まで全て」である。

私は「棺の窓から見えるところの皮膚は
いやだけどあとは全て。」

そして母は 
「久しぶりに大好きな父とあの世で
会った時に目が見えなかったり身体に穴があいているのは
嫌なので 臓器提供しない」のでカードを持っていない。




例えば 「私がバイクに乗る事」


母は私がバイクで死んだ場合
葬式は出さないときっぱりと私に言った。

姉は私がロングのツーリングに出る時は
必ず「気をつけて」でも「いってらっしゃい」でもなく

「臓器提供カード持った?」と言う(笑)





例えば「母が海外にスキー旅行に行く事」


母は今年67歳であるが
ここ5年ほど 毎年海外にスキー旅行に行く
恐るべき人である(笑)


ある年、初めて「ヘリスキー」をする事になった。
ヘリコプターで標高何千メートルか知らないが
高いところにまで上がり 一気に滑り降りるという。

時にクレパスが口をあけている事もあるだろう。

なので ヘリスキー中に母がクレパスに落ち
どう考えてももう生存は無理だろうという時は

「救出や捜索をお願いしないし 
私たちも現地には行かない。」


という意志を 三人で確認しあった。



◆□◆□◆□



三日間で自衛隊を撤退させろという要求の
リミットまで あと22時間。


三人のうち 二人は道民、しかもかなり近い。
地下鉄の中や郊外の道の駅などで
すれ違っていてもおかしくはない近さだ。

家族の「痛い思いはしてないか」
「水とかは飲めているのだろうか」という
心配は本当に辛いだろうと思う。



なんとか 無事に帰ってきて欲しいと思う反面
三人の意志はどうなのかと思う。



戦闘区域へ自ら行くと決めた時に


「撃たれた場合」
「ホテルが攻撃された場合」
「人質にされて身代金を要求された場合」
「人質にされてフセインの釈放を要求された場合」
「人質にされて自衛隊の撤退を要求された場合」


起こるかもしれない事に対する
三人の意志はどうだったんだろうと思う。


なんとか、なんとか無事に帰って欲しい。
Marizo








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