十夜一夜...Marizo

 

 

強い心。 - 2004年02月23日(月)



この猛吹雪の中 開店とほぼ同時に
女性のお客様が来店した。


本当にすごい吹雪だし
ロードヒーティングのお陰で
街中の歩道はグシャグシャで
ところどころ大きな水溜まりが
出来ているし。


自動ドアが開いて入って来た
女性のお客様(Sさん)は 私の顔を見て 足が止まり
「えーっ?」と言って口を抑えた。



昨年の2月の「システム再構築」で
店頭サービス課になった私は
その時点で どのお客さんの担当からも外れた。
その後、何度か電話のやり取りはあったものの
最終的に5月で退職したと思っていたSさんは
滅多に店頭に来る事がないお客様なので
私が7月から復帰している事も
店頭に出ている事も知らなかったのだ。



「お久しぶりです。お元気でしたか?」と
声をかける私の目の前で

「どうして?どうしているの?」と言いながらも
口を抑え ハラハラと泣き出してしまった。




やっと落ち着いたSさんに
5月で辞めたけれど
たまたまお声がかかって復活した事。

復活したけれど 昔の私とは違って
派遣の場合 お客さんを持てない事。
もうすでに担当者が決まっている
Sさんにその担当者を飛び越えて
派遣の私が電話をする事は無理な事。




等などを 順を追ってゆっくりと
説明をしていった。



金融関係のサービス業ではあるけれど
この仕事は そこに「お金」という
欲というか色というか
そういう物が関わってくる。


物を売って「はい、終わり」ではなく
そのお客様の担当になった瞬間から

「お父さんが入院した」とか「孫が生まれた」とか
そのお客様の生活の中に嫌が応でも
入り込んでしまう自分がいた。


誰に給料をもらっているかと言うと
それは間違いなく お客様であって
もちろん そういう気持ちに付け込んで
あーだ、こーだと我が侭をいう人もいるけれど
どちらかと言うと 多くはない。


私が担当してきたお客様は
ほとんどが 人の良い年配のお客様で
多分ほんの少しだけ 欲好きなだけである。



もっともっと「欲」の部分に
付け込めれば楽に仕事が出来ただろうなと、
心が関わる事で辛い思いをしなくて
すんだかもしれないなと、
思うことはあるけれど
それが 出来ない性分なのが
この 私なのだ。



Sさんは 約一時間半。
ずーっと 私が居なくなってからの
いろいろな出来事や、その時の自分の気持ちを
一通り吐き出したらすっきりしたらしく

「また、来るね」と言って帰っていった。





ああぁ。強い心が欲しい。
Marizo



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