異動に転勤、辞令の飛び交う時期ですね。
さて、本日は、この時期に取り上げてみたかった、 私の愛する友則の、 千年前の辞令のやりとりをご紹介します。
紀友則は、 長く認められず、 四十を超えてもいまだ無官であったのですが。
あるとき、太政大臣に呼び止められ、
「きみは年は幾つになったのかね」
と尋ねられます。
これに友則、
「四十あまりになりましたが」
と大臣に答えたところ。
大臣は、 こんな歌を友則に詠んでよこしたのです。
今までになどかは花の咲かずして 四十(よとせ)までに年ぎりのする
超意訳:
あなたという木はこれまで何故、 花を咲かせることもなく、 無官のままで四十過ぎにもなったのか…
友則はこの歌を聴き、 大臣に返歌を返します。
春々の数はまどはずありながら 花咲かぬ木を何に植へけん
超意訳:
毎年毎年、 春は数をたがえず巡ってくるというのに…
まったく何故、私のような花咲かぬ木をお植えになったのでしょうね。
……うわ…………
この返歌、官をさずけない大臣への 痛烈な返しであったのですが。
そんな歌さえ調べが美しいのに なおさら参ってしまいます。
「ひさかたの」「君ならで」「宵々に」、等々、 数々の美しい雅な歌で知られる 三十六歌仙・友則ですが。
田辺聖子も白洲正子も褒めちぎっている友則でありますが。
実は、こんなにびしりと鋭い矢を 歌で放ててしまう、 めちゃめちゃ萌えな男でもあり、 実はそのへんにわたくし、どっぷりはまってしまったのでした…
(甥っ子である貫之も、歌はもちろん、 友則のこういうところに、惚れていたのでないかと思ったり。)
ご紹介したやりとりは、 古今集に載っておりますが、 意訳したやりとりをことば書きごと書き出しますと。
本院の大臣の、四十余になるまで無官にて侍る(はべる)由 申侍る(もうしはべる)に、 大臣
今までになどかは花の咲かずして 四十(よとせ)までに年ぎりのする
とある御返しに
春々の数はまどはずありながら 花咲かぬ木を何に植へけん
となります。
もう、これだけでショートストリー一編ができそうです…!
友則にはほかにも、 この手の萌えエピソードが幾つかありますが。
そのご紹介は、また別の機会にと思います。
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