くじら浜
 夢使い







真冬の台風   2002年02月01日(金)

遙かはるかかなたの南の島の
名もない海で小さなうねりが発生した

たったひとつのその小さきうねりは
でも溢れんばかりの情熱と
ありあまるエネルギーと
伝えたい欲望と
それらが一塊になって渦巻いたとき
その飛沫は辺りに飛び散り
その飛沫たちはまたひとつひとつのうねりとなり
大きくおおきく呼吸をしながら
轟々と脈をうちだした

幾層にもなったそのうねりは
山より高く
空より青く
あくまで気高く
そして太平洋を渡ってやって来た

怒涛のように押しよせる歓声は
その欲する欲望の奥ふかくまで浸入し
高波は大都会の渇いた岩壁に突進し
砕け散る波飛沫と珊瑚の結晶は
おりからの雪を一瞬で溶かす

その空間はたしかに夏であり
太陽はてぃだとなり
高層ビルはがじゅまるとなり
行き交う車はソテツ群となり
砂浜には褐色の少年たちが満面の笑みで走りまわっている

その空間はたしかに夏であり
てぃだは燦燦とふりそそぎ
いつまでもいつまでもふりそそぎ

その空間はたしかに夏であり
それは遥かはるかかなたの南の島に
ゆっくりとゆっくりと
またうねりとなって帰って行った





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