「隙 間」

2012年07月16日(月) 「永遠の僕達」と、飲み物です。

「永遠の僕達」

をギンレイにて。
この作品は、予想外に「お薦め」な作品である。

イーノックは両親を交通事故で亡くし自分も臨死体験をした。
以来、イーノックにしか見えない特攻隊で戦死したヒロシだけが友人らしい友人で、他人の葬儀に勝手に紛れ込んで日々を過ごしてばかりいた。

やはり紛れ込んだ告別式で、アナベルと出会う。

アナベルはガンで余命いくばくもない身だったが、イーノックはそんな彼女の「準備」を手伝う約束をし、しかしやがてふたりはかけがえのない存在となってゆく。

そして。



イーノックにとりついている幽霊として登場するヒロシを加瀬亮が演じている。

なぜカミカゼ?
なぜ長崎の爆撃シーン?

という細かい疑問点は置いといて、その加瀬亮がなかなかよい。

お人好しで気の弱そうな永瀬正敏、という印象があるが、瑛太よりも実直な人物を演じるのにふさわしいようにわたしは思う。

公開当時、このヒロシの存在がいかにも胡散臭く感じたために、はしごする候補から外していたのである。

しかし、それをこうして掬い上げてわたしに観させてくれる「ギンレイホール」は、もはや生涯のパートナーといっても過言ではない。

ギンレイがいかに当たりかは、わたし個人の問題である。

「永遠の僕達」は、お薦めしたい作品である。

さて。

歯抜けで墓参りである。

「いっそ、まっ金金の差し歯にしたらどうだ?」

父のありがたいアドバイスである。

貴重なるそのアドバイスは、そのユーモアのみいただいて、わたしは上野の歯科にトンボ返りである。

担当医が休みなので、仮処置、ということであった。

「これが、抜け落ちた歯です」

サランラップに幾重にも巻かれたひと歯を懐から取り出す。

「牛丼を食べていたら、前触れもなくぼろっと」
「それじゃ自然に折れたんですね」

事実は「スタ丼」であるが、ニンニク生姜醤油の豚肉が、醤油出汁の牛肉の「牛丼」にかわったとて大した害はない。

「担当医が治療方針を決めるまで、仮のセメントで接着だけしときますからね」

担当医はたしか副院長的だが若々しい紳士的な男性医師だったが、今回は女性医師でなかなか快活な方であった。

「麺類以外、噛まないで下さいね。パンも、サンドイッチも。簡単にまた取れちゃいますから」
「コンビニのおにぎりも、巻いてある海苔はアウトですか?」

うーん。

しばし考えた後に、

「アウトですね。引っ張られちゃうので」

真面目にだが、ユーモアをちゃんと含み返してくれたのである。

「とにかく、前歯で噛みきらなければいいですから。奥に一気に流し込んで、奥歯ですりつぶして下さいね」

日常的に、無理である。
自宅ならまだよいが、勤務中の昼食は、もはや「ざるそば」「冷やし中華」の類いしか、選択肢が残されていない。

これは否応なしに、痩せられる。

二キロくらいは、自然に体重が落ちてくれるに違いない。

食えないとなると、上野から秋葉原にかけて軒を連ねる飲食店の看板やらが、やけに目につく。

世の中には、かくも食べ物が溢れているというのに。

この悲哀、いや怨唆の叫びを、とりあえず友に投げる。
申し訳ないが、今は投げれる相手が友しかいないのだから、そこはいつかそうでなくなるときまで辛抱して欲しい。

しかしその後、わたしは悪魔にも似た閃きを手にしたのである。

「噛めないなら、飲めばいい」

なんとシンプルで容易な回答だろう。
これならば、問題ない。

「おにぎりは飲み物」です。
「唐揚げも、飲み物」です。


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