夢見る汗牛充棟
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【戦場のピアニスト】ウワディスワフ・シュピルマン(春秋社)
すべてのことをどうやったらこのように淡々と描けるのか、と 思う位、静けさにみちた物語だった。 煽情的でなく、怒りがあるでもなく、なんていうか、不思議だ。 死体を乗り越えて歩く街通り。 クジに当たるように殺される人間。 一山いくらで効率的に処理される人々。 とても想像の及ばない世界で、そこに暮した人々の思いは 私には端っこすら理解できないだろう。
対して、巻末についていた、ドイツ軍将校の日記は、 加害者のやり場のない怒りと、それを招いた自らへの嫌悪に満ち 満ちている。端っこなりとも、その気分は共有できるもののような 気がする。そして痛みを感じます。
「私は街の中へ出かけて行くのが恥ずかしい。ポーランド人 なら誰でも、我々に唾する権利がある。ドイツ兵たちは毎日 射殺されることになるだろう。事態はますます悪化するだろう が、我々には嘆く権利はない。 我々は他の何者にも値しないのだから。毎日こうしていると、 だんだん気分が滅入ってくる。」
本当は優しい人間でした、といっても社会的には戦争の責任を 免れるものでないし。辛いですね。
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