夢見る汗牛充棟
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2003年04月23日(水) 戦場のピアニスト

【戦場のピアニスト】ウワディスワフ・シュピルマン(春秋社)

すべてのことをどうやったらこのように淡々と描けるのか、と
思う位、静けさにみちた物語だった。
煽情的でなく、怒りがあるでもなく、なんていうか、不思議だ。
死体を乗り越えて歩く街通り。
クジに当たるように殺される人間。
一山いくらで効率的に処理される人々。
とても想像の及ばない世界で、そこに暮した人々の思いは
私には端っこすら理解できないだろう。

対して、巻末についていた、ドイツ軍将校の日記は、
加害者のやり場のない怒りと、それを招いた自らへの嫌悪に満ち
満ちている。端っこなりとも、その気分は共有できるもののような
気がする。そして痛みを感じます。

「私は街の中へ出かけて行くのが恥ずかしい。ポーランド人
なら誰でも、我々に唾する権利がある。ドイツ兵たちは毎日
射殺されることになるだろう。事態はますます悪化するだろう
が、我々には嘆く権利はない。
我々は他の何者にも値しないのだから。毎日こうしていると、
だんだん気分が滅入ってくる。」


本当は優しい人間でした、といっても社会的には戦争の責任を
免れるものでないし。辛いですね。


恵 |MAIL