Leonna's Anahori Journal
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2003年10月20日(月) 開高健を読む

目下、私が抱えている切実な悩みは読書の時間がなかなかとれないこと。
一番まとまった読書時間は毎週土曜日に横浜の父の家へいく往復の時間で、電車に乗っている合計四時間程は貴重な読書タイムだ。

今読んでいるのは開高健の『輝ける闇』なのだけれど、これが滅法面白い。こういうしっかりとした重さのある小説(本当に小説らしい小説)を久しぶりに読んだ。この本を読んでいるうちに、どうして私が現在の若い小説家の作品を読まない(読む気がしない)のかがなんとなくわかったような気がした。

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『輝ける闇』は作家がヴェトナム戦争を体験して帰ってきてから書かれた小説なのだけれど、題材がヴェトナムだからシリアスで良いとかそういうことでもないのだ。なんというか、ああいうへヴィな状況を見て(体験して)きたにしては、小説が事実に負けていない。つまりテーマではなくてきちんと小説の出来そのもので勝負しているのだ。

しかも開高健はこのほかにも『ベトナム戦記』『夏の闇』というヴェトナムものを書いている。『ベトナム戦記』はルポルタージュだが、通常ならこれ一冊でハイ次となるところ、さらに同じテーマを小説に昇華させているところに尋常ならざるものを感じる。

(そしてこの種の尋常ならざるものを感じさせる作家は、近年激減してしまった)

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まだ途中だけれど『輝ける闇』を読み終えたら次は『夏の闇』、それを読み終えたら『ベトナム戦記』を読む、というのが一応の計画。通常ルート(書かれた順)の逆を行くのがミソ。

これは書かれた順に行こうとしたら何か自分の中に抵抗するものがあってうまく入れなかったからなのだけれど。逆順にしたらスラスラッと行けそうなのだ。こういうことまで含めて読書って本当に楽しいし、面白い。
 
 
 


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