変態事件の顛末。
1.変態出現
去年の十一月ごろから、変態が乗り始める。 十二月過ぎ、大型ガス馬車のねーさんが諸事情で運行を遅らせてしまい、その仕返しだと思い込む。そうではなかったが。 二月ごろからいたずらが頻発するようになる。
・運転席のねーさんの顔をまじまじとのぞき見てにたーっとする。 ・コンビニの袋をわしゃわしゃと狂ったように音を立てる。 ・窓を脂ぎった手でギトギトに汚していく。 ・休憩中のガス馬車をねーさんごと写真に収めていく。 ・不必要に周回コースを乗り続け、ずっとそばにい続ける。
ねーさんにきいた話ではこの程度だが、実際はさらにあるかもしれない。
2.会社に対しての告白
いい加減ノイローゼになりそうだという苦情をうけて、初めてそういった事実があることをおいらが知る。無理もない。実際にされているいたずらそのものは、法に抵触するかどうかのぎりぎりのところだが、それを半年も続けられていて、会社も何も手を打たないということになれば、その先の事態に発展しかねないし、女性である以上、身の危険も感じざるを得ない。
3.行動開始!
個人をおいらが見ておくとともに、会社が動き出したことを奴に知らせるため、あえて背広で大型ガス馬車にのる。変態はおいらの存在に気づいた模様。 変態は、おいらが乗ってプレッシャーをかけてからも、おいらが乗らない時間を見計らってはいたずらをし続ける。朝乗ったら帰りも乗っていたが、朝乗っても帰り乗らなかったり、といろいろタイミングをずらして、おいらが仕事上乗れない時間を向こうも割り出していたようだ。 同時進行で内偵をすすめ、某会社の期間工であることを突き止める。
4.進まぬ調査、続くいたずら
某会社の期間工も、宿に400人以上いて、期間工同士も互いの顔を知らない状態であるため、個人の特定までには至らない。 それでも、某会社に期間工でいることを突き止めただけでも、威嚇になると考えたのだろうか。ねーさんのうちの一人が、止まぬいたずらに業を煮やし、「これ以上いたずらを続けると、●●の会社に言うよ!」と啖呵を切った。 今まで薄ら笑いを浮かべ続けていた変態は、そのとき初めてあぜんくらった顔をしたという。 それからはほとんど乗らなくなった。乗っても黙って乗り、いたずらはしなくなった。事態は収束したかに思えた……が。
5.遅れてきた変態
一ヶ月ほどたったころ、今度は誰も乗らぬ大型ガス馬車で、ねーさんたちと二人っきりのときのみいたずらをするようになったのだ。 いたずらが再開して二日目。ねーさんがもう一度啖呵を切る。 「あんた、なんかうらみでもあるの? 言いたいことがあるならはっきりいえば? これ以上意味なくいたずら続けるようなら、大型ガス馬車に乗れなくなるよ!」 だが、一ヶ月前の啖呵とは違い、変態は実際には言ってこないだろうとたかをくくったのだろう。にたーっとして降りていったという。
6.告発
先週の金曜日。 営業報告書を持っていくのと同時に、役場に行き、変態について、役場から正式に某企業に抗議をしてもらうように、大型ガス馬車担当の人間に依頼をする。 これ以上つづけるなら某企業に報告するという警告も無視し、いたずらを続けるのだ。これ以上放置しておけば、何か起きる可能性は十分にある。性的な感覚をもってねーさんたちに接している変態。何かあって、会社も役場も何もしなければ、逆に訴えられるのは役場だ。 役場は、名前は特定できないのか、と尋ねたが、期間工は多くてだめだという旨を伝えると、了承したようだ。
7.事態の収束
依頼をした午後には、某企業から連絡が入る。 そこで、担当に上記の内容のいたずらと、実際には反撃が怖くて手を下さなかったが、警告を無視して続けるいたずらに、これ以上は本当に身の危険を感じざるを得ないことを説明すると、人物特定のために会社に来てほしい旨を告げられた。 そこで、バスのねーさんの一人を引き連れ、その企業の事務所で十時過ぎまでかかって人物特定を完了させる。 それから一週間、連絡を待っていたが、やっと連絡が来たときは、変態はやめてしまった、ということだった。 某企業の人間が注意をしたところ、しらを切っていたらしいが、うしろめたかったのだろうか、注意した翌日にはやめてしまい、そのさらに翌日には寮からもでていってしまったらしい。
そこまでやる必要があったかは、疑問だが、放置もできない状態だったので、おいらは致し方ないと思っている。 変態だって変態なりの生活があるはず。いきなりやめさせる方向で話を進めたわけではないし、変態には逃げるチャンスを何度も与えたのだ。それでもやめないということは、それなりの悪意があると判断せざるを得ないだろう。 少なくとも、流れを追っていった上での対応だったので、結果だけを見たら、やめる状況に追い込んだといわれても仕方のない部分が往々にしてあるが、逆に放置はできないし、走り出した自体をとめることはできない。
8.倅の苦情
今日、倅と弁当を買いに行ったときのこと。 何の気なしに、これで大型ガス馬車に一日乗ってみて、何もなければこの件は片付いたという判断をして間違いないと思う、といった。 すると、倅の反応には驚かされた。
・やめさせるまで追い込んで、何かあったらおいらにも責任がかかってくるよ ・そもそも、根本的に違う ・あまりガス馬車を甘やかせると、危険手当を出せといいかねない
いやいや、ちょっとまて。 根本的に違うというのはどういうことだ? 今回の変態対応をするなということか? やめさせるまで追い込んで、というが、やめさせることを念頭において動いたわけではない。結果がそうなってしまったにすぎない。途中でやめるわけにもいかず、放置をするわけにもいかず。であれば、どうすべきであったのか。 危険手当をつけろといいかねないってのは、あまりに勝手な経営者の言い分。 危険手当をつける必要はないだろうし、それをつけろといったところで、おいらは受け付けないだろう。何より、今回の件はイレギュラーだったのだ。 イレギュラーであれば、その手当ては発生しないだろう。
要は今回の対応は倅にしてみれば不満だったということのようだ。 しかも、社長も同意見だという。あくまで倅の話だが。 月曜日、社長に話を聞いてみようと思っている。 もちろん、食って掛かるつもりはない。 今回は全力を尽くして対応したが、未経験だったゆえにいろいろと不手際もあった気がする。経験豊かな社長の見解と、さらに好ましい選択肢があったかどうかという話。 その答えによっては、今度の勤務態度を変える必要があるような気がする。 倅のあほに付き合って壊されたPCの修復に手伝ってあげる必要もないし、その他もろもろ。勤務時間内だけ仕事して、後はさっさと帰る。 おいらはそうするつもり。 仕事がないので、いきなりけんかを売ってやめることは無理だろうしね。子供ができたらそうもできない。
PS 今回の件は、倅をすっ飛ばして直接社長とやり取りをしていた。 もちろん連絡は密に。 それゆえ、倅もおいらが「社長の意見だよ」といわれればおとなしく聞くのではないか、と高をくくっているように思えるのだが……。
|