| バカ日記★愛しい体 |
「死ぬまでにしたい10のこと(原題はたしかmy life without meだったと思う)」というDVDを見たら、たまらなく切なくなった。 あらすじは、23歳の女の子が、余命2ヶ月といい渡され、それを親にも旦那にも子供にも友達にも知らせずに、でも彼らをとても大事にしながら、残りの人生、自分の決めた生き方をして行くというもの。 彼女は「死ぬまでにしたい10のこと」というリストに書いた、「夫以外の男の人と付き合ってみる」というのを実行するけど、結局、その恋人にも何も知らせない。 彼女はとても一人ぼっちで、でもとても優しすぎて、それが切ない。 大泣きはしないけど、ずーっとじんわり泣きそうな映画だった。 私が死ぬ時、こんなにも潔く、残される者の事を考えられるだろうか。
映画を見てセンチメンタルな気分で、眠るダーリンの体を撫でた。 私はこの人の、体のパーツの大きさや弾力や肌触りをすべて知っている。 最初は鼻をつっついてみる。彼はちょっと顔をしかめる。 瞼にキスをする。顎の下の肉に触れてみる。 耳に産毛が。彼は髭剃りの時、たまにこんな所の毛まで剃る。 耳かきをしてあげて、大きいのが取れたら、彼はいつまでもしげしげと眺める。 耳たぶの後ろに二つ、ピアスのように並ぶほくろを、彼はきっと、自分では気づかなかった。 こないだ間に合わせで1000円カットで切った髪は、襟足の毛を、変な風に分断してしまっていて、帰って来た時に剃ってあげた。 襟足のはしっこ。こんな所につむじ。まるでキスする為の標的のようだと、唇をつける。 髪を撫でる。 私より綺麗な髪をしているかもしれない。サラサラと気持ちがいい。 大きな肩を、少し強く掴む。 肩甲骨は、背中に寄りそうと、枕にできるほどごつごつと大きい。 彼がこんなに大きな肩をしているなんて、彼とセックスする時まで知らなかった。 子供の頃は乾燥肌でいじめられたという、カサカサとした腕。 それとは対照的にスベスベした広い背中。 この腕の筋肉と背中の筋肉を総動員して私を抱きしめて、抱き潰されそうになって、痛いと怒る。 ギュッとされるたび、肺から空気が漏れ出て、勝手に呼吸させられる。彼は笑いながら何度も私に呼吸をさせる。 手の甲には、小学生の時に、いじめられていた女の子を守ろうとして、窓ガラスを割ったときの怪我の後がくっきりと大きく残っている。 グロテスクだけど、優しい傷跡。何百回と、その傷跡を指で辿った。 その先にはごつごつした指と、すぐに伸びる爪。 寝てる間に爪を切ってあげても、大抵気づかない。 しなやかな胸の筋肉。ここは、彼独自の、「筋肉を意識しながら大きく呼吸するだけ」という鍛え方で分厚く形成されている。 私も胸を大きくしようともくろんで、真似をしたけれど、彼のように長く続けられなかった。 彼はもう、習慣になっていると言っていた。 もしかしたら私より敏感な乳首は、眠っている時に触れると真剣に怒ることがあるので、触らないで通り過ぎる。 お腹から、胸の間にかけて、うっすら生えた産毛。 ここの毛を逆なでするのが大好きだ。柔らかく、気持ちがいい。 でも私がここを堪能していると、彼はすぐにシャツで隠してしまう。 筋肉が発達した硬いお尻。尻の谷間に指を滑らせると、彼は眠っていても、顔をしかめて尻を引き締め、私の指をはさんでしまう。 尻の谷間を触られるのは、性器に触られるよりも不快らしい。 その、尻の谷間には、ふさふさとした毛が生えているが、彼は恥ずかしがって見せてくれないので、一度も見た事がない。 手を前に回して、ちんこを掴む。 寝立ちしたちんこは、まるで、炭酸でキンキンに張り詰めたペットボトルのような弾力だ。 指で強く押すと、少しへこむが、とても硬い。 どうしてこんなものが私の体の中でも一番柔らかいであろう私の中にはいれるのか、いつも不思議に思う。 濃い陰毛に指を入れる。 獣に触れているような安堵感。 学生時代は陸上をしていたという彼の足は、いかにも男だ。 もう何年も走っていないというのに、その筋肉は張り詰めたまま、いつでも走れる体勢にある。 彼はそのごつごつとした足を、私の柔らかい太ももに挟むのが好きで、眠っていても時々絡みついては「ふふふ」と得意げに笑う。 ちょっとした異常体質で、コレステロール値が低すぎて、いつも検査に引っかかると言う彼のくるぶしは、脂肪が少ないせいで細かい血管までが透けて見えて、彼は昔、それを気にしていた。 私はその足が好きだ。 彼の足の裏の皮は分厚く、ちっとも歩かない私の、薄い足の裏を、 「猿の足みたいだなぁ」 と言って笑いながら、足の裏で撫でる。 私は猿のように器用な足の指で、彼の足の指をつまんだり、足の指同士を、恋人同士が手をつなぐように組んでは、彼を喜ばせる。 頭のてっぺんから足の先まで、彼の体はこの三年半の思い出と思い入れで形成されている。 一つ一つは小さなものだけど、すべてが愛しい。
誰もがこの愛しいパーツを持っているのに、それは自分では気づけないほどちっぽけなものばかりで、自分に自信を持てないでいる。 彼も、私の体のパーツすべてを愛してくれているだろうか。
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2004年06月21日(月)
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