えすぱっ子
清水エスパルスユース紹介サイト

2003年12月25日(木) Jユース杯 決勝トーナメント ジェフユナイテッド市原戦

03年12月25日13:30開始 長居第2陸上競技場
 第11回Jユースカップ2003 Jリーグユース選手権大会 決勝トーナメント準決勝
 対 ジェフユナイテッド市原ユース ※45分ハーフ
 天候:晴

▼布陣
−−−−−−阿部− 篠田悠 −−−−−

− 鈴木真 −−−−−−−−−大瀧−−

−−−−− 山本真 −枝村−−−−−−

− 高野美 −高柳−−石垣−−森安−−

−−−−−−− 山本海 −−−−−−−

控え:前田、杉山雄、篠田大、上埜、岡村、柴田、谷野
交代:後半15分:篠田悠輔→杉山雄也(そのままFWに)

ジェフユナイテッド市原ユース:

−−−−−−−−菊池−−−−−−−−

−−−−−−川淵−−伊藤−−−−−−

−−小西−−半田−−八角−−小泉−−

−−−− 林 −−秋葉−−竹田−−−−

−−−−−−−−塚原−−−−−−−−

控え:瀧本、中山、岩山、尾野、本田、矢代、務臺
交代:後半28分:小泉→岩山


▼試合展開

 築館監督はクラブ選手権の浦和戦、村越と真司が出場停止と怪我で出られなくなると、一挙に1年生5人を先発で起用するという大胆策を採ったが、結果として賭けは失敗に終わり、0−4の完敗を喫している。そうした経緯もあって、注目されたメンバーだが、大方の予想通り、出場停止の村越に代わって石垣が先発し、代わりのDFとして杉山雄也がベンチに入るだけに留まった。とはいえ、篠田悠輔や高野美臣の台頭もあって、先発した1年生は4人を数える。だが、普通に見えたメンバーに、大方の予想を裏切る罠が仕掛けられてることを知る由もなかった。
 一方の市原は、不動のメンバー。チーム得点王、鈴木良が1回戦で怪我で離脱してしまったが、彼の外れた2回戦でも、ヴェルディ相手に4−1の完勝を遂げ、不安を払拭している。市原とは、チビッ子のテクニックを活かすサッカーという点で共通するところが多く、共に長所を消し合って、中盤の潰し合いになることが多い。昨年冬の対決では、前半16分に喫したミスによる失点により、潰しに専念した市原に、主導権を奪われる結果となった。しかし、175cmを越える選手が7人を数える清水に、3バック&マンマークによる堅守速攻で勝ち上がってきた市原、今回は若干が違いそうな気配である。
 J's Goal の事前レビューは、こちら


(今年2度目の準決勝に臨むイレブン。堂々と中央で腕を組むブンちゃんに、3年間の(特に精神面の)成長の跡が見られる)


[前半]
 立ち上がりは清水。開始0分に、枝村のパスを受けた大瀧が中盤のスペースを突いてドリブルミドルを放つと、3分には真希の突破からCKの好機、そして6分には得意の対角線フィードからの展開が飛び出す。大きく右に張った大瀧が受けて戻すと、そのスペースに入ってきた森安が右クロス。DFのクリアを、PAの手前にいた真希が拾ってミドルは、殆ど弾道の浮かない強シュートが、ゴール左ポストを舐めるように外れた。直後には、GK海人のロングキックを受けた枝村が、真希のヒールでのリターンからワンツーで抜け出し、早くも3本目のシュートを放っている。
 だが、守備布陣を布く市原としても、中盤での清水の優勢は、覚悟の上だったろう。市原は竹田を阿部に、林を悠輔に厳重マークを付けたが、更に念入りなことに秋葉をスイーパーとして後方のスペースを消し、最も危険な阿部の裏への飛び出しを、未然に防いでいた。両翼の小泉・小西の位置も低く、5−2−3といった内容で、攻撃時は素早く前線の3人に当てる、縦に速いソリッドな戦術を採用。9分と12分には、川淵が単独突破からDFの寄せに構わず、強引にミドルを放っている。13分、菊池が高柳とロングボールの競り合いに勝って、伊藤が裏に抜け出した場面は、美臣の素早いカバーに防がれるが、そこからの右CKでGK海人がカブり、ファーの秋葉が頭で合わせた(枠上)。
 清水は中盤の数的有利のため、市原は展開の速さのため、攻撃ゾーンの手前まではボールを運べるのだが、そこからは相手の守備の枚数が整っていて、打開できない。審判の神経質な笛もあって、双方、オフェンスファウルが激増。特に清水は、この試合、一つもDFゾーンでのファウルを犯さずに、15回ものFKを与えている。個人能力で上回る清水が、21分に真希の突破から枝村、25分にGK海人のロングキックに悠輔が潰れて阿部と、ミドルで狙った場面はあったが、あれよあれよと時計は30分を回っていった。

 しかし、34分、阿部の突破から右CKを掴んだ清水は、大瀧のキックにニアで悠輔が僅かに頭ですらせ、GK塚原が逆を取られる決定機。ゴールファーに控えていたDFが掻き出すと、PA外で拾ってドリブルでDFの網を切り裂いた枝村だが、GK塚原の素早い飛び出しに阻まれる。更に37分、森安の右スローインを大瀧が戻し、暫く持たされていた森安が、突如としてPA内に小さく、鋭く、横パスを送る。そこに、いつの間にか流れてきた悠輔が、刹那の足の振りから、角度10度シュート。緩慢な展開からは信じられないほどの苛烈なボールだったが、GK塚原が辛くも弾いた。市原は、秋葉がより危険な阿部の飛び出しをケアしている時間が長く、一方で悠輔はちょこまか動くものの、林が1対1で殆ど上回っており、その油断を突かれたものであった。消えてるように見えても、悠輔は一瞬の仕事ができる、正しくストライカーである。
 何はともあれ、塚原の機敏な動きで凌いだ市原は41分、ロングボールにGK海人と石垣の呼吸が合わず、ゴール方向への危険なクリアとなって、期せずして右CKを得る。小西が蹴ったボールはDFが跳ね返したが、小泉が拾って右アーリークロス。それがPA内に残っていた市原選手の足下に入るが、反転して正にシュートを放とうかというところで、清水のクリアが間に合った。その後、44分に大瀧がスローイングで戻したボールを、森安が右45度からドリブルミドルを放つ場面があったが、GK塚原が際どくCKに逃れる。結局、前半はスコアレスのまま、試合は折り返しに。清水優勢、は確かだが、市原から見れば、前半スコアレスで折り返したのは、事前の計算通りというところだろう。…って、大分戦と同じ展開じゃん。勝負は後半へ。

市原        清水エスパルスユース
4(1) シュート 10(4) ×大瀧、×真希、×枝村、×枝村、○阿部、○悠輔
               ○悠輔、○森安
2(1) 右クロス 4(1) ×森安、○森安、×大瀧、×森安
3(0) 左クロス 3(0) ×美臣、×美臣、×真司
3(2) 右側CK 2(1) ○大瀧、×大瀧
0(0) 左側CK 1(1) ○枝村
6(−)  犯OS  0(−)
10(2) ファウル 10(0) ・阿部、・悠輔、・悠輔、・阿部、・真希。・悠輔、・阿部、・悠輔
               ・悠輔、・真司

 ◎は得点/得点に繋がったもの。○は枠内/味方に繋がったもの。
 ×は枠外/味方に繋がらなかったもの/DFゾーン(フィールドの自陣側1/3)での反則。
 ( )内は◎と○の総計、ファウルのみ×の総計

[後半]
 開始2分、市原のロングボールから伊藤が単独、裏を取るが、GK海人がお株の素早い飛び出しで、それを未然に防いだ。に、思われたが、ペナルティーラインの確認に戸惑ったのか、188cmの海人とのクロスプレーに競り勝ったのは、なんと168cmの伊藤の方。放ったシュートが、転々と空っぽのゴールに引き寄せられると、しかし、高柳がカバーし、何とか失点を逃れる。


(被決定機後の5分、真司のクロスがカットされて得た左CK。枝村のキックに石垣が合わせたが、ヘッドは枠上に。ペースを取り戻せない)

 けれども、市原はこれで立ち上がりのペースを掴む。前半の終盤にも、裏への狙いを強めていた市原だが、その時は清水のオフサイドトラップに、際どく阻まれていた。それが、ミスで動揺したのか、清水は集中力を乱して、全くオフサイドを奪えなくなる。攻める市原だが、それでもチャンスメイクの時点でアウトサイドの選手が森安・美臣の清水SBを突破することができず、徐々に清水が流れを取り戻していった。13分、自陣右サイドに流れた清水のクリアミスを市原・川淵が追い掛けるが、真希がそれをカバー、まず川淵を背中でスクリーンする。そして、ゴールライン手前で体重を川淵に預けながら体を右に開き、ロブで森安へ。が、ボールが渡ったのは、市原の左WBの小西の足下。想像外の格好でのターンオーバーにマークに付くのが遅れ、フリーで上げた左クロスを、高柳の背後でファーの菊池が頭で合わせる。振られたGK海人も間に合わず、思わぬ形で市原が先制する。0−1。

 反撃したい清水だが、4人+1人(秋葉)で防ぐ市原DFを、どうしても突破できない。清水SBと市原WBとの対決では、清水側が鉄壁を築いており、そのWBの裏を左右MFが狙いたいところだが、突破口となるべき真司が絶不調。J's Goal では「「1人で何とかしてください」という状況でしかボールを受けられな」かったとあるが、和田・太田・高木純・日高と「一人で何とかできる」サイドプレイヤーを育ててきたのが、清水エスパルスユースなのである。一方、大瀧の場合、そもそもタイプでないのもあるが、左足に持ち替えて後ろに切り返す場面が多く、縦への突破が皆無。FW2人は孤立していた。
 ここで築館監督は、185cmの長身、杉山雄也を用意。交代するのは、篠田悠輔。筆者の周囲では、悠輔のゴール前のセンスは、膠着状態を破るには不可欠ではないか、との疑問の声も多かったが、筆者は「雄也を右SBに入れて、森安をボランチ、真希か真司をFWに入れるのだろう」と、交代の趣旨を説明。事実、東海プリンスの静学戦では、ボランチの位置から森安がミドルで勝ち越し弾を決めている。ところが…。
 雄也の入ったのは、そのまま悠輔の位置、FW。雄也がエスパルスでFWをやるのは、少なくとも公式戦では、記憶にない。確かに阿部の地上戦の速さを活かすため、ポストプレーヤーと組ますのは悪くないアイデアであり、市原DFが高さに欠けるのも事実である。だが、この試合の問題は、そもそも空中戦で勝負できるボールが入っていないこと。戦術の経験値的にも、清水の選手達は単純な放り込みに慣れていない。
 結局、清水の選手達は、特にプレースタイルを変えることはなく、雄也のポストが目立つ場面は殆どなかった。交代の意図が今ひとつ活かされてない状態なわけだが、それでも好機を創り出すのだから、さすがである。20分、大瀧のスローインを裏に抜けながら受けた枝村が、ゴールライン上のドリブルで一人抜いて、右クロス。DFに弾かれたのを、阿部が反転シュートで狙うが、枠を捉えない。21分、大瀧の右クロスをクリアされ、森安のスローイン。受けた大瀧、ここまで悉く左足に持ち替えてたのだが、この場面は逆に左足インサイドフックで縦に抉り、遂に右足での右クロス。大瀧にシンクロした阿部が、ファーに素早く飛び込んで頭で反らせたが、GK塚本も横っ飛びでディフレクトし、CKに逃れる。22分、枝村の左CKはニアでDFがクリアしたが、PA外で拾ったのは真希。詰め寄るDFを一人、弾むようなサイドステップで外すと、PA手前中央から弾丸ミドルが一直線に放たれた。ブラインドになったか、GK塚本の反応は完全に狂い、ゴール右に突き刺さる。1−1。

 想定したパワープレーからではなかったとはいえ同点に追いつき、交代の“目的”は果たした清水。次の動きが注目されたが、雄也はそのままFWを務め、特攻状態が継続される。結果論ではあるが、同点後にFWの放ったシュートが1本もなかったことを考えると、普段のサッカーでどこまでできるか、試してみるべきだったと思うが…。清水は、悠輔が抜けたため、2トップが共に前線に張る時間が長くなり、トップ下(バイタルエリア)から中盤の底までの広大なエリアを両ボランチ(+大瀧)だけで見ることになった。元より市原は、5−2−3と言うべき、堅守速攻体勢で、中盤中央は薄い。そのため、中盤のスペースがぽっかり空いて、互いに簡単にボールは前線まで運べるのだが、逆に最終ラインが揃っていて、それを崩せなかった。
 同点後は暫く、市原が反発する時間帯となったが、35Mを越える位置からのミドル2本と、八角のパスから半田がトラップミスにめげず、2段シュートを放った程度。


(後半27分、八角の蹴った市原・左CKのチャンスも、ニアで石垣?が跳ね返す)

 すると、30分、森安?の対角線フィードから真司が抜け出し、クロスに飛び込んだ枝村がDF2枚のブロックを割り込むようにボレーを狙うが、コースを外れる。続けて34分、大瀧の低い右クロスに林が空振りし、ゴールエリア内の雄也に届くが、スイーパーの秋葉がトラップが乱れた隙に、鋭いスライディングでクリア。一方の市原は40分、伊藤の左スローインから、半田が左クロスを送り込むと、川淵がDFに体を寄せられながら、踏ん張って右足を合わせたがが、威力なく、GK海人。市原の好機はそのぐらいだったが、清水も一押しが足りない。
 ならばと、42分、枝村が阿部とのワンツーで30Mミドルを放つ(GKキャッチ)と、続けざまに阿部が突破口となって右サイドを突き崩し、クロスを入れるがファーで小泉がクリア。それを拾った枝村、慌てて距離を詰める林を華麗かつ痛快な切り返しで翻弄し、中央に移動しながら試合を決める15Mミドルを放った。だが、GK塚原が自らの瞬発力を全開にし、CKにディフレクトする。最後に頼れる枝村だが、2分強のロスタイムにも両者決め手なく、遂に試合終了の笛。大分戦に引き続き、PKで勝負を決めることとなった。

市原        清水エスパルスユース
7(4) シュート 8(5) ×石垣、○枝村、×阿部、○阿部、◎真希、×枝村、○枝村、○枝村
4(0) 右クロス 8(1) ×大瀧、×枝村、×大瀧、○大瀧、×大瀧、×大瀧、×大瀧、×阿部
7(2) 左クロス 2(0) ×阿部、×美臣
2(0) 右側CK 1(0) ×大瀧
0(0) 左側CK 4(2) ○枝村、×枝村、×枝村、○枝村
4(−)  犯OS  3(−) ・阿部、・悠輔、・阿部
1(0) ファウル 5(0) ・大瀧、・阿部、・悠輔、・雄也、・阿部

[PK戦]

(完全にGKの裏を突いた枝村のキックは、僅かに枠の右へと…)

先攻・市原:○八角、○半田、○小西、○伊藤、○川淵 | ○秋葉、○菊池、○竹田、○林
後攻・清水:○森安、○真希、○高柳、○阿部、○大瀧 | ○雄也、○真司、○石垣、×枝村


(深々と頭を下げる、2003年清水エスパルスユース主将、大瀧義史。その右から、海人、森安、阿部、枝村、雄也、真希、高柳、真司、石垣、美臣)


▼試合結果

清水エスパルスユース 1−1 ジェフユナイテッド市原ユース
      (PK戦 8−9)
 得点:後半13分:市原・菊池匡樹(小西雄士・左クロス)
    後半22分:清水・山本真希
 警告:前半39分:清水・鈴木真司(ラフプレイ)


▼選手寸評

[私撰MVP]
●高野美臣 90分間出場:クロス3(左3)
 大分戦の汚名を返上する盤石ぶり。対面の小泉との1対1を食い止めただけでなく、高柳のチェックに対応し、盛んに中央へカバーリングに入った。焦らずに、リスクを考えた守備ができていた。

[私撰MIP]
●森安洋文 90分間出場:シュート1(枠内1)、クロス3(右3、成功1)
 小西に対してフィジカルで完全に上回り、完膚無きまでに押し潰した。攻撃の第一司令塔の役割も果たしたが、ボールを持った場面で焦りと色気が出たのか、手段と目的が曖昧だったのが残念。

●山本真希 90分間出場:シュート2(枠内1、得点1)
 失点に繋がったミスが評価を一段階下げたが、同点弾は見るものに強烈な印象を残した。細かいパスミスが散見されるも、相変わらず攻守に精力的な運動量は、新人(新人だったのだ!)離れしている。

[個人的好印象選手(相手方)]
 竹田忠嗣(2年):阿部のマークを全う。ポストはともかく、裏への飛び出しは秋葉と2人で封印した。
 塚原晃太郎(3年):瞬発力に支えられた素晴らしいシュートへの反応で、ミドルを次々に叩き落とす。


 < 前  目次  後 >


ひかる。 @H.P. [MAIL]

My追加