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2003年09月27日(土) 高円宮杯 コンサドーレ札幌戦

03年09月27日12:00開始 藤枝市総合運動公園サッカー場
 高円宮杯 第14回全日本ユース(U-18)サッカー選手権大会
 対 コンサドーレ札幌U-18 ※45分ハーフ

▼布陣
−−−−−真司−−阿部−−−−−

−大瀧−−−−−−−−−−谷野−

−−−−−真希−−枝村−−−−−

−篠田−−高柳−−村越−−森安−

−−−−−−−海人−−−−−−−

控え:前田、石垣、高野、上埜、岡村、柴田、獅子内
交代:後半13分:谷野→柴田 (そのまま右MFに)
   後半19分:篠田→高野 (そのまま左SBに)
   後半38分:真司→獅子内(そのままFWに)

コンサドーレ札幌U-18:

−−−−−−−酒井−−−−−−−

−−−石井−−渡邊−−三浦−−−

−−−−−鈴木−−斉藤−−−−−

−西田−−吉田−−松下−−石郷−

−−−−−−−蛯沢−−−−−−−

交代:前半36分:渡邊→藤田、後半16分:西田→小川、後半39分:三浦→外崎


▼試合展開

 遂に高円宮杯開幕。今年から大会方式が変わり、JFAが本腰を入れてアピールしているため、混雑を恐れてタクシーを使ったが、意外に少ない客入り。500名ほどだろうか。選手権県予選と重なったこと、エスパルスのトップの試合があったこと、1000円という有料試合であることなどが理由として考えられるが、少々拍子抜けさせられた。だが、500円のプログラムは全ページカラーになり、川淵キャプテンの尊大な対談もあり、どこに貼ればよいのか大会エンブレムのシールまでついて、実にお得な内容である。…要らないものも多いが。
 しかし、会場の藤枝市総合運動公園サッカー場は、相変わらず素晴らしい専用スタジアム。芝も国体の影響も感じさせず、短く刈り揃えられている。この規模の大会を行う会場としては、全国でも五指に入るだろう。天気も暑くない程度に穏やかな好天に恵まれ、嫌が応にも胸を踊らされるものがあった。

 清水は注目の篠田悠輔と高野一也は、メンバー入りせず。報道では怪我が理由とされていたが、練習や練習試合には参加しているようなので(篠田悠はゴールも決めているらしい)、恐らく協会への選手登録が大会メンバー期限に間に合わなかったためだと思われる(以下、篠田=篠田大輔、高野=高野美臣)。代わりといっては何だが、杉崎と望月に代わってJrユースの岩本大が背番号12に、池田康彦が背番号18に登録された。両名は全チームを通じて唯二の中学生選手であり、昨年の山本真希に続く2人目、3人目の大会出場を期待したいが、この日はベンチ入り18名から外れてしまった。
 清水のメンバーは、先週の湘南戦と全く変わらない面子。今週は阿部と海人、森安がトップの練習に合流したそうで、まあユース本来の趣旨から考えれば当然なのだが、大会に向けたチームの総仕上げという点では、やや気になるところ。
 一方の札幌、金曜早朝に起きた十勝沖地震は、札幌周辺の選手とその家族には、あまり影響がなかったと祈りたい。スタメンは予想に反して4バックの4−2−3−1(発表ポジションに従えば4−3−3)。札幌は3バックと4バックを使い分けるチームだが、全国では3バックを用いることが多く、また4バックの清水に1トップ+3トップ下を採用したのも意外だった。真っ向勝負を挑むという意志の顕れだろうか。メンバー的にはほぼベスト、注目の1年生、藤田はベンチスタートになった。

 
(新生高円宮が遂に開幕。入場する両イレブン。10月を前に、枝村は既に衣替え済みの長袖! 選手は前(右)から大瀧、真司、真希、村越、枝村、篠田、谷野、阿部、高柳、海人、森安。キャプテン1人を前にして、残りの3年生が後ろとはどういうことだ(笑))


[前半]
 財前監督の意図は分からないが、札幌の4−2−3−1は明らかに失敗であった。MFに5人の選手を集めたことで、結果として清水の最も得意とする中盤での勝負となってしまったからである。清水は3分の村越のロングシュートで口火を切ると、4分に真司が捌いたボールを大瀧がドリブルから左10度シュートと機先を制す。札幌は石井と渡邊のドリブルからそれぞれ1分と7分にFKのチャンス、11分には森安のマークが遅れた隙に石井が裏に突破して渡邊に左クロスを渡したが、最後にDFのクリアに遭い、シュートまで至らない。
 清水は徐々に攻勢を強め、12分に海人のキックをDFが跳ね返したのを真司が拾い、早くも長袖な枝村のドリブルから大瀧、戻して篠田の左クロス。13分は村越のキックを阿部が落として今度は大瀧がドリブル、枝村に戻してチェンジサイドに再び篠田が左クロスを送る。長短を交えた素早いパス回しに翻弄されて遂にエースの阿部へのマークが空き出すが、13分の阿部のミドルは当たり損ね、16分は真希が大瀧のワンツーから突破、ライン寸前で上げた左クロスに阿部が合わせたが枠外(というか、左からのクロスにニアで左足で合わせても決まらんて)。未だ国体の重しを引きずるエースだが、空中戦で圧倒し、20分にも阿部の落としたボールを枝村が拾ってスルーパス。大瀧の左クロスのコボレを真司が拾って戻し、真希のPA外シュートは大きく外れた。

 攻め込みながら得点の奪えない清水に、大して暑くもないのに何故かこの試合の前半だけあった給水休憩の余裕が与えられる。仕切直しの26分、最終ラインで暫く溜めた村越が、阿部の動き出しを確認して60Mロングフィード。だが、一度外に回って中に入ろうとした阿部の動きに反し、ボールは外の右SB石郷の守備範囲に向かう。だが、石郷がクリアミス、ふわりとゴール前へ。GK蛯沢が飛び出すが、突っ込む阿部と競り合ってバウンドするボールをキャッチしきれず、再び上空へ。第二回戦、互いに反転するが慌てた蛯沢はお手玉で逃れ、もう一度上空へ。三回戦、蛯沢は倒れ込みながらキャッチにいくが、無情にも届かずに阿部の不戦勝。左ポスト付近に転がったボールを詰めたが、これが国体の呪縛なのかDFブロック。だが、阿部はこぼれを今度は自らの体ごと押し込み、実に泥臭いシュートで先制点をもぎ取った。1−0。ブンちゃん、虚に包まれたまま駆け寄る大瀧を見て初めて笑顔。観客は拍手しつつも苦笑。
 得点直後にも森安のチェンジサイドから真希、枝村と渡ってワントラップからヒールスルーパス、大瀧が裏に抜けて逆サイドに振るが、谷野の右クロスはファーに流れる。28分、大瀧のスルーパスに真希の強烈なシュートはバー。その後、村越が鼻血の止血でフィールドから離れて攻勢も一休みとなるが、32分、真司がPA内で奪うとライン際から角度0度シュート、って、そんなの「オフサイド」の阿部弘志でもあるまいに、決まるわけもなくサイドネット。

 だが、このあたりから真司の世界(ワールド)が全開。札幌は34分に、石郷の絶妙なクロスがファーに逃げるのを、海人が体の柔らかさを活かして掴まえたのが、唯一の効果的な攻撃。36分に藤田を投入、三浦をFWに上げて2トップに修正するが、奏功しなかった。
 35分、真司の突破のクリアを村越が拾ってフィード、大瀧がスルーパスを送ると、阿部が抜け出してファーに流し込もうとするが、ここは蛯沢がキャッチ。36分、森安の右クロスをファーで大瀧が受け、右→左と切り返し2発。折り返したボールはDFがクリアしたが運悪く森安の元へ、転がるボールにタイミングを図り、ダイレクトで得意のミドルを放ったが、ニアポストの下を狙ったボールを、蛯沢が一度はこぼしたものの何とか抑えた。
 しかし、真司劇場は続く。38分、阿部の右クロスをバックヘッドで左に流し、大瀧のクロスを導く。これはDFにクリアされるが、続けて森安のチェンジサイドを真司が柔らかく落とし、左外から走り込んできた大瀧が凄絶なシュート。バーを激しく揺さぶって垂直に落下、バウンドしてフィールドに戻ってきたのを、思い出したようにDFがクリアする。

 すると40分、一度枝村に当てて受けた森安が、自陣右サイドから速いパスを縦に送る。谷野と入れ替わって右に開いていた真司、今度はボールに触れないままパススピードに合わせて走る、坂本轍平的ドリブルを見せる(本当に真司の世界は漫画だ)。PA右横で西田が応対に来たところでボールに触れて止まり、一息入れるかと思いや、股抜き。爆発的ダッシュで自らは西田の右をすり抜け、満を持して右クロスを送る。ニアに待ち構えた谷野はワントラップする余裕があり、冷静にGK蛯沢の左脇下を狙ってゴールニアに決めた。2−0。
 これで札幌は意気消沈したか、42分にパスミスを犯すと、「たまたまそこにいた」といった感じの中盤左よりの枝村、軸足に重心が乗らない状態ながら、体の後ろにあった右足で巧みにトラップ。次の瞬間、アウト回転に掛けたダイレクトスルーパスを送る。札幌ゴール前でただ一人、このパスに反応していた阿部が中央から右斜めに抜け出し、蛯沢の位置をよく見て、丁寧にインサイドでゴールニア右に決めた。3−0。湘南戦の反省が活きた模様(笑)。
 その後、阿部が腿トラップからスルーパス、枝村の右クロスを大瀧がアクロバティックなボレーで合わせる場面があったが、蛯沢が更なる失点は許さず、試合を折り返した。

札幌        清水エスパルス
0(0) シュート 15(9) ×村越、○大瀧、○阿部、×阿部、×真希、◎阿部、×真希
               ×真司、○阿部、○森安、×大瀧、○阿部、◎谷野、◎阿部
               ○大瀧
2(0) 右クロス 8(2) ×真司、×谷野、×谷野、×森安、×真希、×森安、◎真司
               ○枝村
2(1) 左クロス 10(2) ×大瀧、○真司、×篠田、×篠田、×篠田、○真希、×大瀧
               ×大瀧、×大瀧、×大瀧
0(0) 右側CK 0(0)
0(0) 左側CK 0(0)
2(−)  犯OS  2(−) 阿部、大瀧
3(−) ファウル 6(−) 森安、村越、谷野、枝村、阿部、森安、??


[後半]
 後半も開始早々、枝村のパスから大瀧が反転シュートを放ち、清水の攻勢ではじまるが、札幌も4−4−2のシステム変更の効果が少しずつ出てくる。2トップが最終ラインをある程度、上がらせない時間が生まれ、一瞬、SBの位置で数的有利になることがあった。生命線は藤田のキープ力と右SB石郷の走力で、2分に藤田のヒールパスから石郷が裏に抜けて右クロス、4分に藤田が三浦に当ててワンツーで抜け出し右クロスと、前半殆どなかった攻撃の形は作り出す。5分には石井の突破から得たFKで、惜しい鈴木のシュート(初シュート!)もあった。
 だが、清水の攻勢が緩んだわけでもなく、7分に谷野の突破で右CKを得る。大瀧のキックはGKがフィスティングで掻き出すも、そこで待っていたのは1試合で1度はミドルを打たねば気の済まない男、枝村。トラップで軽く左にスライドしてコースを空けると、右足一閃。が、このシュートもバーの下を強かに打ち付けて垂直に落下、バウンドして戻ってくるが、今度は清水の真司が先に反応して頭で押し込もうとしたが、シュートの勢いが残っていたか、左上に外れた。
 12分、真司のポストから真希が大きくチェンジサイドすると、左サイドライン際でゴール方向を向いた大瀧が十分なスペースを得て、石郷と1対1。本日ノリノリの大瀧、上半身を揺さぶるフェイントと足下の切り返しと跨ぎで完全に相手を翻弄し、最後左への切り返しで半身ズレて左クロスを送る。そこに猛然と走り込んできた阿部が強烈なダイビングヘッドを決めて、ハット達成御礼、4−0。阿部はジャンピングガッツポーズで喜びを爆発させた。

 さすがに清水も一段落。札幌が中盤で持てる時間も長くなり、16分には藤田のキープから石郷が追い越してパスをもらい、右クロスに海人がカブるが森安クリア。だが、その背後で石井が拾い、今度は左から折り返すが、混戦の中央で誰も合わせられず。この場面で篠田が痛み、高野と交代。清水も21分に、森安のチェンジサイドを左の大瀧がダイレクトで中央に戻すと、足下深くに入ったボールを真希が足首柔らかにトラップし、ドリブル開始。自陣から30M余りを一気に踏破してPA内に侵入、コースを塞いだDFの前で急速進路変更して右に切り返した瞬間、右足のシュート。だが、ボールは左ポストの僅か外に外れた。清水の攻撃は、最短距離で効率的に攻めるものが多くなり、24分には海人のロングキック→真希がチェンジサイド→阿部が右アーリークロスと3本の長いパスで好機を作るが、飛び込む真司より一つ早く、蛯沢が抑えた。
 札幌はその直後、藤田がドリブルで突っかけ、村越を半身ズラしてシュートを放ったが、当たりが弱くて高柳に引っ掛かり、海人が危なげなくキャッチ。清水は26分に枝村の斜めのフィードで阿部が抜け出し、右クロスが大きなワンツーとなって枝村が合わせるが宇宙開発。28分、今度は真希の対角線フィードに再び阿部が抜けて右クロス、今度合わせたのは札幌DFだったが、これが本日4度目の札幌ゴールバー直撃となる。
 何とか1点でも返したい札幌は30分の藤田、高野の的確にスライディングに一瞬怯んだものの素早く体勢を立て直し、体を倒した高野を逆に置き去りにして強引な突破に成功する。十分にサイドを抉った右クロスは、村越と森安の間に生まれたスポットに上手く入り込んだ酒井が遂にフリーに。漸く巡り合わせた札幌の決定機だったが、宇宙開発ボレーで潰してしまう。

 札幌は集中力が切れたか、一方の清水は試合終了に向けてパス回しが復活。33分、真希の粘りから高野→真希→真司と繋いで左クロスは、阿部が当てきれず。35分、高野のチェンジサイドから柴田→枝村→高野→枝村→阿部→枝村と繋いでシュートは、威力十分もGK正面。札幌は40分、CKのワンチャンスに藤田が思いきってボレーを放ったが、大きく上。なおも清水の攻撃は続き、43分、大瀧が追い込んで獅子内がカット、前の阿部に繋ぐと1人交わして左クロスに柴田が突っ込むが、今度は清水が宇宙開発に終わった
 ロスタイムに入り、海人の時間も考えたロングボール。なんでもないボールだったが、前でジャンプした阿部がブラインドになったのか、吉田が痛恨の後逸。阿部にCB2人が引きつけらたため、その裏に入った獅子内はポカンとフリー。落ちてくるボールを待ち構え、PA手前でワントラップから15Mミドルは、反応の遅れた蛯沢から逃げるようにサイドネットに低く突き刺さった。5−0。怪我から公式戦復帰した獅子内、両手を挙げて存在を高らかにアピール。
 その後も札幌は高柳のクリアミスから左CKを得ながら、これを海人にキャッチされると、海人のロングキックを今度は松下がクリアミスして清水にCKを与えるなど、最後までピリッとしない内容。清水の完勝で、試合を終えることになった。

札幌        清水エスパルス
5(1) シュート 11(4) ○大瀧、×枝村、×真司、◎阿部、×枝村、×真希、×枝村
               ○枝村、×柴田、×村越、◎獅子
8(1) 右クロス 5(1) ×阿部、○阿部、×阿部、×柴田、×枝村
3(0) 左クロス 8(5) ◎大瀧、×阿部、○真司、×枝村、×大瀧、○阿部、○大瀧
               ○枝村
1(0) 右側CK 2(0) ×大瀧、×大瀧
2(1) 左側CK 2(0) △枝村、×枝村
1(−)  犯OS  1(−) 阿部
5(−) ファウル 7(−) 森安、大瀧、阿部、柴田、柴田、高野、柴田


(試合終了後の挨拶。列も間隔が空いてしまった札幌イレブンの疲れ方が、清水と対照的である)


(観客への挨拶。性格がよく出ている。一番はしゃいでるのは勿論、真司(笑))


▼試合結果
清水エスパルスユース 5−0 コンサドーレ札幌U-18
 得点:前半26分:清水・阿部文一朗(なし)
    前半40分:清水・谷野由紘 (鈴木真司・右クロス)
    前半42分:清水・阿部文一朗(枝村匠馬・スルーパス)
    後半12分:清水・阿部文一朗(大瀧義史・左クロス)
    後半44分:清水・獅子内善雄(なし)


▼選手寸評

●阿部文一郎 90分出場:シュート7(枠内6、得点3)、クロス5(成功2、右3左2)
 序盤こそ力みが見られたが、湘南戦に続いての爆発で、完全に国体を過去のものとした。本人が試合後に答えた通り、清水ではエースとしての自覚と周囲の支援が明確。高いシュート枠内率が、それを雄弁に物語っている。一方、後半はサイドに流れて力強い突破でチャンスメイクする場面もあった。

●大瀧義史 90分出場:シュート4(枠内3)、クロス8(成功2、左8)、アシスト1
 左サイドだけでなく盛んなポジションチェンジでトップ下に入り、ゴールに近い位置で多彩なアイデア(とそれを可能にする技術)を披露した。だが後半、全体の運動量が落ちてポジションチェンジが少なくなると、消える時間も長くなって逆に石郷の果敢なサイドアタックを許すこともあった。

●鈴木真司 83分出場:シュート2(枠内0)、クロス4(成功2、右2左2)、アシスト1
 「真司の世界」が発動した前半の15分間ほどは圧巻。漫画の発想を実現する技量以上に、それを実行する行動力が凄い。一方で阿部と中盤を繋ぐセカンドFWとしての役割も、忠実にこなしている。課題はやはりシュート数。真司の得意なエリアにMF4人が走り込む戦術上、難しい部分はあるのだが。


個人的好印象選手:藤田征也(1年)、石郷裕二(3年)


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ひかる。 @H.P. [MAIL]

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