深海浮遊

しんとした湖で

目を覚ました事もあった

あまりに静か過ぎて耳が痛くなる

もう戻れないって何回も呟いてた

そんな頃にも戻れないと嘆く


いつからかふわふわと

漂う波に揺られて

初めて湖に居ない事を知った

だけど泣いたり喚いたりしなかった

きっともっと哀しくなる

だからただ

ゆっくり沈んでいく感覚を

何度も思い出していた


あの日を忘れられない







あの娘


あの子が居ない空間に慣れている自分に驚いてしまう。
慣れたらおしまいだと思っていたのに。
いつまでも新鮮な気持ちを持っていたいけれど・・・?

実際は慣れていることに慣れて生きている。
あの子が今この場所へやってきたなら
空気が変わってしまうんじゃないかって
恐れている僕がいる。

まるでTVドラマの撮影を見ている様に
みんなが遠くに見える。
どこかのもう一人の自分が
自分達を見ている様だ。

誰かが見ている。

もう一人の僕が僕を見ている。
少しづつこの不思議な感覚にも慣れていくんだ。
振り向いたら恐ろしい僕が僕を見ている。
振り返った僕が恐ろしく僕を見ている。

あの子がやってきたら
笑い出してしまいそうで怖いんだ とても。

だけど気持ちは慣れていく。




想わせぶり

貴方 今日はずいぶんと想わせぶりなんだね

いつもの優しさは相変わらず同じだけど

何か今日はいつもと違うんだね

貴方 そんなそぶりは逆に残酷だよ

わたしが勘違いをする前に

はやく はやく いつもの貴方に戻って

貴方が誘ってくるなんて

100年に一度の奇跡か・・・?

貴方 今日はずいぶんと想わせぶりなんだね

差し伸べた手さえ今日は温かいもの

ああでもそうか

このままでもいいのかも

後でわたしが途方に暮れても

想い出は勝手に残るものね






水死体

遠い 遠い夢のような現実よりも
すぐ傍の避ける事の出来ない現状の方が良いと
いつか思ってしまうんじゃないかって ずっと怖かったんだ
そうしてると ふと 思い出すのは水死体だ
波打ち際に打ち上げられた どこか遠い使者のように
ふと顔を上げ 一言 言うのはその言葉では?

「お前は間違っている」

だんだん現状の素晴らしさが胸に迫るんだ
その分だけ しかしまた つまらぬ世界が浮かび上がるのだ
すると大人になったと思うんだ
大人って言う死体にまた
近づいてるんだって泣くんだ

僕は人間だ
人間は悲しい生き物だろう
下らぬ事に腹を立て 喜び 泣き
最後には神に祈るんだ

こんなところでのさばってないで
君の思う通りに生きなさいって誰かが言うけど
思い通りに生きられるならきっとみんなそうしてる
自分を犠牲にして 人の為に生きている人もいるけど
変な同情を起さぬように
自分は本当は何で生きてるか迷ってるんだ
そうして遠い夢のような現実を捨てていくんだ

だけどいくら遠くても儚くても
それは現実
やろうと思えば出来る事

ああ だけど何故だろう

僕には今日もまた水死体が囁く

「お前は間違っている」




乾き

ああ・・・それは本当に突然起こるものだ

会いたい 君に会いたい

とくとくと渇きを潤す君の音に

欲情する






記憶

青く晴れ渡っている空に
吹く風にぬくもりを感じたら
あの頃の懐かしかった夏の頃を思い出す
風が止んだら桜の木の下で
懐かしかった春の日を思い出す
それは遠い過去の現実で
過ぎ去り日は戻らないんだってもう一度
実感させるんだ
白い雲がひとつ
頭上高くに浮かぶのが見えれば
肌寒い秋の夜を思い出す
大勢の笑い声も何処か聞こえていた
ひとときひとときの
一部分の様子が断片のように
明確に思い出される
あの頃のたくさんの人々
この場所で今は一人
静かに時は流れていく
もう二度と戻れないでしょう
青く高く晴れ渡っている空の下では
一人では寂しすぎるんだとあの人は泣くんだ
青い空の下では遠く深く蒼い湖の記憶を
思い出させるんだ





コンサート


どこからか素敵な音楽が聞こえてくるよ
コンサート会場はいつも大騒ぎでわたしの心をかき乱す
・・・大好きな音が聞こえてくるよ
彼はわたしに笑いかける

もう今では明日さえ見えている毎日
溜息は残された今日にかかり厭な感じを残してくるんだ
きっと明日はきっと明日はって
一体何に期待していると言うのだ?
愛しい彼よ もう笑いかけるのはやめてもいい
気持ちばかり浮遊しているのだ
彼よ 手を握り
わたしもその場所へ連れて行って欲しい





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