異次元

独り暗闇の部屋に
僕は
異次元の入り口を見つけた
向こうに行くべきだと僕はとっさに悟る
そっと手を差し伸べている
誰かの影が見えていた
無言で立ち上がりそこへ歩み寄れば
ただずっと蒼い草原が続く
僕の真横で溜息をついた彼が
赤い実を食べて倒れていた
僕は確かにここは異次元だと言ったが?
口をついた彼の言葉に僕は立ち竦む
「ここはどこなんだ」
見渡せば瓦礫に埋もれた小さな花が見える
崩れた街並みが僕を脅かす
気が付くとまた僕は青い草原にいる
しかし空は赤く
記憶が映像のようにジグソーパズル仕立てで並んでいる
僕は後悔した
この場所に来た事に
彼に手を伸ばす・・・
ああ、彼は何処に?




水道

水道の蛇口を捻ったら

キュウという鈍い音がした

それは あの国の

人間の叫び声のようで

僕は怖くなって俯いた

僕の周りにたくさんの水・・・

水面に映った僕はにっこりと微笑んでいた




彷徨う

僕は切なさで壊れそうだ
淋しさに潰されそう
本当は大した事じゃないのかな?
大人になったら綺麗な思い出になるわ
あの人は一言二言そんな言葉を吐き出し
僕をもっと深いところへ押しやる
気持ちもいつしか消え去って
僕は必死で立ち直ろうとしている





ぼんやりと


ぼんやりとあなたをみていたら
涙が出てきました
はるか彼方の地平線で
いつの日か幾度も抱き合ったけれど

そっとあなたの声が届いて
立っていられなくなりました
遠い月の夜に
あなたの記憶を花飾りで包んだけれど

何処かふとあなたの視線が舞って
桜のように散っていきました

ただゆっくりと ゆっくりと





最後の願い

神様 最後の願いよ

もう二度とあなたの前には現れない

何度もここへどうして来たのか

不安で仕方なかった

闇が支配し始めるのを

よく 眺めていたものだ

小さな本質を守るのがわたしのすべてだ

本当の意味なんて判らない

神様 最後の願いよ







波があなたを連れ去ってからもう何年経つんだろう

僕も戻ってこない

いつまでも戻ってこない

寝ているときも起きているときも

同じくらいに・・・悲しみを・・・

不誠実な僕の心を

温かい海へ沈めるのはあなただけだ

何度も僕を突き放して

遠い あなたは きっと 永遠に

そうして僕の真実はまた汚れていくのだ





食べ物

大切なのは他人を思いやる気持ちで
本当は自分はどうなってもいい筈だった
けれどそれはいつの時代か
白けた奇麗事になってゆき
人々は相談の仮面で
悲劇のヒロインに成り下がっていった
たくさんたくさん考えたのに
何も知ってはいなかった
生まれた時に神が植え付けた脳という実に
僕の肉体も支配されているだけだった
・・・自由はどこにもない・・・
そのうち腐って神の大好きな食べ物になる
だから哲学は進歩しない
動かされてるのは体のほうで
行動に移さなければ意味が無いなんて
馬鹿達に振り回されてきた
それは神に賄賂を贈った下衆達で
もう魂さえ消えかけてるのを僕は見たんだ
考えているふりをして
僕は何も考えていなかった
大切なのは他人を思いやる気持ちだったのに





最新 履歴 戻る