BENJAMIN TREE
kouya



 ばばちゃん・1

一昨日、ムンテラ受けて、ばばちゃんの余命が2ヶ月という宣告を受けた。
下剤を使った直後だったためばばちゃんは同席しなくて、おかんとオレだけで説明をうけた。
痛みについては今飲んでいるモルヒネと麻酔科でのブロック注射でなんとかコントロールがつきそうなこと、下肢のむくみについては、肝臓癌の増大により下大静脈が圧迫されているためにおきていること、そのためむくみの改善は難しいこと、癌の成長がここ2ヶ月加速していること、肝機能障害による諸症状の出現も時間の問題だということ、悪ければ2〜3週間での容態の悪化もあり得ること。
そんなに悪いとは、正直思っていなかった。
CT上、肝臓に転移した癌は八月の時点で6cmだったのに、今月に撮ったものではほぼ3倍。
正常な肝臓の組織を探すのが困難なくらいになっていた。

ムンテラから二日。
まだ本人には宣告されていない。
外泊の許可が出ていることから、ばばちゃんは「まだ先は長いな」と、機嫌がいい。
今週末の外泊許可はおりている。

今日は千葉から叔父が来た。
ばばちゃんの次男にあたる人だ。
八月にコンビニを開店したばかりでまだ大変な頃なのだが、事情が事情だからなんとか人員をやりくりして来てくれた。
駅まで向かう途中、ばばちゃんのことをよろしくと託された。

今現在、ばばちゃんに全てを話すかどうか、皆が迷っている。
主治医はムンテラ前に「あとで説明するから」とばばちゃんに声を掛けていた。
それがどういう内容で話すつもりなのか、いつ話されるのか全く分からない。
自宅で最後を迎えるのなら訪問看護や往診をしてもらいように手続きをしなければならないし、話し合わなければいけないことは沢山あるのに、ばばちゃん本人が何も知らない今の状態ではなにもできない。

ばばちゃんに、どう伝えるべきなのだろうか。

2003年10月29日(水)



 ばばちゃん・2

告知すべきかどうか、悩んでる。

「余命2ヶ月、もって3ヶ月ですよ」

そんなこと、聞いて嬉しいはずもないが。
知らなくていいのだろうか。
色々な考えが頭の中を交錯する。
すぐに答えなんか出ないけれど。
大事な人だからこそ、うやむやにしていいものかどうか悩む。

昨夜は病棟の電話が壊れていたらしく、一階まで降りて公衆電話で電話をくれたらしい。
息を切らして。
そりゃ苦しいだろうな、肺が半分ないんだし、残りの肺も一部は虚脱してるらしいから。
下半身のむくみもひどくて、まるで象の足みたいに重そうだ。


何をどうやって伝えてあげたら良いんだろう。
誰の口から?


ばばちゃんの笑顔が痛い。


2003年10月30日(木)



 ばばちゃん・3

今週末はばばちゃん外泊。
そんで、うちに来てる。

今しか出来ないことをしよう。
今だからできることをしよう。
楽しく。楽しく。

2003年10月31日(金)



 ばばちゃん・4

ばばちゃんがうちに来て二日。

うちには、家を建てた当時(17年前)から通称「おばあちゃんの部屋」という部屋があった。
けれど、ばばちゃんは独居を決め込んでいくら誘ってもうちに来てはくれなかった。
それが、やっときてくれたと思えばそのころには死期を宣告された後。。。
あとどれだけ、この部屋にばばちゃんがいてくれるだろうか。
どうしても悪い方へ考えてしまうけれど、「この調子ならまだまだ大丈夫だな」
というばばちゃんと一緒に笑いながら、笑顔がぎこちなくはないか心配している自分がいる。
疲れて寝ているばばちゃんを夕飯だと起こしに行ったとき、声を掛けてもなかなか目を覚まさないと呼吸を忘れそうになる。

ムンテラを聞いたことを後悔してしまう。

今日は、頓服の塩モヒを飲んだ。

2003年11月01日(土)



 ばばちゃん・5

ホントは、明日までってことで外泊の許可を取ったんだけど、具合もいいし先生も調子良ければまだ外泊してていいって言ってくれてたので、期間延長することになった。
あとは病棟に電話して薬だけ処方してもらえれば大丈夫。
うちにいれば結構ご飯も食べてるし、顔色も悪くないし、目の届くところにいてくれるわけだから安心できる。


◆ばばちゃん5.5(ホントのこと)


ばばちゃんは主治医から余命わずかと言われていることを知らない。

ばばちゃんは、あと5年先のことを話している。

どれだけ生きられるかは、ばばちゃん自身がどれだけ生きようとするかで違ってくるのだろうけど、ホントのことは教えないでおくべきなのだろうか。
告知について、いつも頭の隅にひっかかっている。
誰のための告知なのだろうか。
両親は、知らない方が幸せ、と隠すことを決め込んでいる。
それでいいのか、と思う。
その反面、例えば教えた方がいいのだとしたらその確固たる理由を、オレは言えない。

ばばちゃん。
あなたの肝臓は癌に侵されてめちゃめちゃです。
その肝臓がどれだけ耐えてくれるのか。。。
オレには祈るしかできません。



2003年11月02日(日)



 ばばちゃん・6

今日は出かけていて夜、10時過ぎに帰ったから知らなかったけど、4時ごろ、塩モヒを飲んだらしい。
で、今(夜11時)塩モヒ追加。
何か、無理して起きてたせいだとは言っているけれど、どんな様子だったのか分からなくて心配だ。

2003年11月03日(月)



 ばばちゃん・7

昨日の朝、「脱腸かもしれない」とばばちゃんが青い顔してた。
さすがに陰部のことでみせてはくれなかったけれど、とにかく病院へ行くということでおかんに任せてオレは仕事へ。

夕方話を聞いたら「塩分の摂りすぎ」と言われたらしい。

「?」

訳分からん。

塩分の摂りすぎで陰部に浮腫が起きたってことか?
・・・分からん。
でもまぁ、もし脱腸おこしてたとしたら体力的に手術という方向になるかどうかは疑問なわけで、外科的な処置が必要でないならそれに越したことはないわけで。
とりあえず利尿剤が再開になったし、早く改善されることを期待するのみである。

今日は千葉から叔母さんといとこがばばちゃんに面会に来てた。
ばばちゃんからすると次男の嫁と孫。
二時間くらい話してた。
駅〜病院〜駅の送り迎えをして、ミルクティーおごってもらいましたとさ。
・・・実はおいしくなくってちょっとがっかり。
時間があればもっとおいしい喫茶店に行ったんだけど、新幹線の時間もあったから駅にある喫茶店に入ったのでした。

あそこのミルクティーはもう飲まないぞ

2003年11月07日(金)
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