a Day in Our Life


2004年04月01日(木) ハッピー?エイプリルフール。(横雛)


 「今日って、エイプリルフールやってんな」
 ラジオのオープニングで、何を喋ろうかと思案していた横山に、ふと村上が話し掛けた。
 「あぁ、そういやそうやったな」
 「嘘吐くん忘れてたわぁ」
 「(笑)別に必ず吐かなアカンもんでもないやろ」
 「そうやけど。折角やし誰か騙したかったなぁ、て」
 「言うてもぅたからもう、俺は騙されへんしな」
 じっと目線を合わせてくる横山にあれ、と思う。
 「もしかしてヨコも何か企んどった?」
 「…ちょっとな」
 軽く肩を竦めて、僅かに顔を顰めて笑った横山が子供みたいで。一体どんな嘘を吐くつもりだったのか、村上は興味が沸いた。
 「俺を騙すつもりやったん?」
 「そぅ」
 「何、何言おうとしてたん」
 「内緒」
 「何ょ、教えてや」
 テーブル越しに袖を掴んで、やや乱暴に揺すれば更に笑った横山が、大したことちゃうよ、と益々口を噤むので。村上は余計に気になって更にしつこく問い掛けた。まるで子供みたいに、ひとつの嘘を挟んで言い争う自分達がバカらしくて、それが可笑しくてつい、笑ってしまう。くすくすと笑いながら諦めたように両手を挙げた横山が、ふと笑うのをやめて。
 「別れよ、言おうと思ってん」
 「え?」
 「そう言うたらおまえはどんな顔するんかなって」
 笑うのか怒るのか、それとも単に驚くのか。どんな反応をするのかと、それは気になったのだけれど。
 「やけどどうやら、言われへんかったわ」
 例え冗談でも、そんなことは言えなかった、と横山は言う。
 「アホやろ?笑えや」
 照れ隠しのようにぶっきらぼうに言って、横山はもう、視線を逸らしてしまう。まともに見れない村上の目線を強烈に感じた。
 「大丈夫。アホは俺もやわ」
 「え?」
 目線を上げた先で、村上が笑う。緩やかな曲線が、美しい楕円を描く。
 「同じこと考えとったもん。ヨコに嘘吐くんならそれやなって思ったけど、」
 「けど?」
 「言いたくなかった」
 嘘吐くんは得意なんやけどなぁ。ぼやく村上はそれでも、笑みを崩さない。
 「何や俺ら、ラブラブやんけ」
 「そうみたいやな」
 「って、その言葉が嘘やん」
 「やって今日はエイプリルフールやから」
 互いに笑い合いながら。
 軽口を叩くように、ぽんぽんと投げ返される会話のたったひとつでさえ、嘘がないのを知ってる。



*****
ベタな4月1日。

過去 未来 目次 マイエンピツに追加