a Day in Our Life
| 2003年11月18日(火) |
リスペクト海遊館�◆焚�雛)※未完です |
館内は思った以上に空いていた。 案内所を通過して(受付嬢の視線が強く感じたのは、自意識過剰だろうか)ガラス張りの通路の角を曲がった途端にアクアゲートが広がり、村上は思わず声を上げた。 「うわぁ」 ぐるりと180度広がるトンネルのあちこちを熱帯魚たちが泳ぎ抜ける。ライトアップされた海水が幻想的に揺らいで、足が止まった。 「きれいやなあ。前に来た時はこんなんなかったで」 きっと土日や昼間は人ごみで文字通り、通り抜けるしか出来ないであろうその海底トンネルは、平日の夕方という時間帯のせいか、完全に貸切状態だった。見上げる村上の横顔に、海底の青と熱帯魚の黄色が映える。車中それとわかるくらいには固かったその横顔が今、随分と和らいだことに、横山は来てよかった、と思った。止まった足がなかなか動かず、たっぷりと時間をかけて180度をぐるりと見渡してやっと、歩みを再開した。
長いエスカレーターで最上階に上り、まず着いた先は「日本の森」と称された森林だった。空調のせいか入ってすぐ、その空気の冷たさに一瞬ぶるりと体を震わせる。が、それもすぐ、村上の弾んだ声にかき消された。 「カワウソや!おるおる、2匹おるで」 水辺の岩場に同系色の生き物が2匹、仲良さげに動き回っていた。そういえば昔、オープンしたてのこの水族館に、当時付き合っていた女の子と来た時は、とにかく人人人でごったがえしてカワウソも満足に見れなかったことを思い出した。あのときあっさりと諦めた彼女は、無理して見たところで、こんなに喜んだかな、と思う。 「こっちにはオオサンショウウオがおるで」 なんやでっかいオタマジャクシみたいや、と笑う村上の機嫌は、すっかり直っているようだった。ここ数日の不穏な空気が嘘のように、屈託なく話し掛ける。次の水槽へ移動しながら、手でも繋ごうかな、と思った時、不意に温かい感触がして、滑るように村上の手が絡められた。驚いて思わず、強く握り込んでしまった。正面を向いたままの横顔が、条件反射のように軽く吹き出して、つられて横山も少し笑った。
「ラッコや!」 握った手を引っ張られて、着いた水槽の向こう側では、ラッコが仰向けに浮きながら、 「…寝てるんか?これ」 手を腹に、足は丸めて、舵でも取るように、尻尾だけふらふらと水中を彷徨う。2匹のラッコが水槽の端の狭いスペースで、重なり合うように眠っている様は、笑みを誘った。 「ブッサイクな顔なってるで」 思わず呟いた横山を、ちらりと見上げて。 「ホンマや。でも気持ちよさそうに寝とんなあ。幸せなんやろうなあ」 自分たちは今、幸せなんだろうか?唐突に思った。
3番目の水槽では、ラッコよりもだらしなく、アシカが眠っていた。 岩場の高いところで3頭のアシカがやはり、重なり合っていて、随分狭そうに見える。左のアシカはでれんと寝そべってピクリとも動かず、その隣、左右に挟まれたアシカより一回り小さなアシカは落ち着かなさげに身じろぎしながら眠っている。更にその隣、右端のアシカは弓なりに反った体の先、器用に折り曲げた頭部分を時折ピクピク動かしていた。微妙な立ち位置やけど、落ちへんのかな、と、口には出さずにふたり同時に、同じことを思っていた。 「なんやこの光景、見覚えあるわ」 まるで俺らみたいやな、横山がぽつりと言った。「左端が俺で真ん中がすばる、ほんで右端の落ちそうなんがおまえや」。 「俺、一番微妙ちゃう?」 村上が頬を膨らませてみせたのも束の間、でもそう言われるとだんだんそう見えてきたわと言って、満足そうに眺める。 「川の字で眠るってヤツやんな」 幸せ家族やね。言った村上の声が弾んだ。
「うゎ」 柱をひとつ隔てて隣の水槽を一瞥して、まず目に飛び込んできたものはゴマフアザラシの鼻の穴だった。 「なんやこれ…寝とるん?」 そこの光景は一種異様だとも言えた。水槽ギリギリに水面から縦につきだした、ひげもじゃの鼻。その穴が定期的に広がっては萎む。大きく欠伸をすると、全開に開いた口の奥に、尖った歯が覗いた。一定リズムで呼吸をしながら、3回に1回の欠伸。たまに水面に沈む。よく見ると大きな体をしていて、その体が、やがて怠慢な動きでゆっくりと横に流れた。 「なんか…」 「誰かに似とんな」 「うん」 水槽から目を離せずに、当ててみよか?と試すような口調になった。 「たぶんな、同じやつ思い浮かべた思うで。大倉やろ」 「当たり」 考えることは一緒やな、と笑いながら目線を変えたその先。水槽の端っこの狭いところで大倉(仮)と同じく縦に揺られながら、こちらに背中を向けて眠っているアザラシの姿が目に入る。 「…マルや!」 同時に呟いて、同時に笑った。 「ほんだらあれは安田かなぁ」 だらだらと水面に揺られる大倉(仮)の周りをちょろちょろ、たまに丸山(仮)を窺うように旋回する小さいアザラシを指指す。うつらうつらしているらしいその小さなアザラシは、時おり起きて動き、また止まって揺られる。 「さっきの水槽が俺らん家で、ここはV.westん家か」 「ほな、内と亮は?」 言いかけた矢先、アシカ側の水槽を、縦に真っ直ぐ落ちていくアザラシが目に入る。 「…あれが亮ちゃうか(笑)」 指差す間にも、アザラシはゆっくりと階下に沈んでいった。
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ここで力尽きました。 ちなみに当時のレポはこちら。
| 2003年11月17日(月) |
リスペクト海遊館� 焚�雛) |
分かりやすく喧嘩をしたというわけではなかったけれど、なんとなくここ数日噛みあわないな、と思うことが多かった。互いの小さいところが無性に気に障って、その相乗効果で余計に空気が悪くなる。成り立たない会話を放棄することで、更に事態は深刻になった。こういうのをいわゆる倦怠期、と言うのかもしれない。さすがに危機感を感じ始めたころ、以前交わした約束を思い出した。
その日は互いに全くのオフで、それならどこか出かけようか、と話していた。幸いなことに、というのか。生憎、というのか。珍しく急な仕事が入ることもなく、かねてのスケジュール通り、どちらともがオフとしてその日を迎えた。 横山が約束通り、律儀に村上の家を訪ねたのは、昼を大きく回った頃だった。彼の住むマンションの下に車を止めて、村上が出てくるのを待つ。道路沿いに面した玄関ドアが開いて、村上が出てくるのが見えた。廊下を移動する横顔が一度建物に消え、やがてこちらに真っ直ぐ近づいて来る。黙って助手席のドアを開けると、村上が乗り込み、静かにドアを閉めた。 どこに行くん、と聞くのも億劫な気がして、村上は黙った。その横顔を一瞬ちらりと見やって横山は、車を発進させた。
道幅の狭い山道を下り、JR高槻駅を経由して国道171号線に入る。茨木市街を横断しながら府道14号線に逸れそのまま、車はゆっくりと中央環状線に合流した。エキスポランドの観覧車を横目に、一瞬万博にでも行くのかと思った自分に内心苦笑する。休みの日に友達を呼んで当時バイトしていたアトラクションにタダで乗らせていたのは、随分前のことだ。しかも今日は自分も休日、そもそも遊園地でのアルバイトなどもう、何年も前に辞めてしまっている。平日の中途半端な時間帯のせいか空いている道を、車は快調に飛ばしていく。このまま神戸にでも行くつもりだろうか、と村上がふと考えたとき、ハンドルが左に旋回して新御堂筋へと左折し、そこで村上は考えるのをやめた。横山が行きたいところなら、どこだって異論はなかった。 車は淀川を越え、大阪市に入る。梅田の繁華街をあっさりと通過し国道2号線へ、野田の駅を越えてそれもあっさりと道を逸れる。それから北港通を経由して43号線へ、弁天町を真上に中央通へと折れた時、あれ、と思い至る。案の定フロントガラスの前方に、大きな観覧車が目に入った。色とりどりにライトアップされたそれに咄嗟に時計を見ると、まだ5時台だった。随分と日が短くなったな、とぼんやりと思う。 駐車場に車を停め、外に出るとほんのり海の匂いがした。そうしている間に、黙って横山が歩き出すのに続く。横山の足は迷わず進み、しみじみ何年か振りに訪れたそのエントランスに到着してやっと、村上は口を開いた。
「海遊館に来たかったん?」
問いを背中に受けて、横山はゆっくりと振り返る。 「…ジンベイザメ、まだ生きてるんかなぁ思て」 言って小さく笑った。
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横丸がデートしたという海◎館(今更伏せても意味なし)で、横雛ならこんな感じ?という捏造話。 ちなみに→�△愨海�も未完です。(最悪ですな)
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