Monologue

2010年02月28日(日) Pの記憶/小さな恋のメロディ 7

「おい!何、ぼさっとしてんだ!」

男の怒声で僕はハッと我に返る。

先刻、初めて挿入したファングメモリの所為で理性が吹き飛び、
ファングジョーカーと化して暴走していた僕を止めたのは彼だった。

彼の左手が咄嗟にメモリを引き抜いて変身が解除されなかったら、
僕達は暴走し続け、そのまま人間には戻れなくなっていたかもしれない・・・。

変身解除した直後、
茫然自失して座り込んでいた僕の右手を掴むと、
ブレザーの男は満身の力を込めてグイ!と引っ張った。

「俺はおやっさんからお前を託された、
だから、お前が悪魔だろうが何だろうが、絶対に守ってやる!」

汗ばんだ熱い男の掌を、僕は強く握り返して、
夜空に爆炎を吹き上げながら燃え盛るガイアタワーに背を向けた。

海岸のゴツゴツした岩の鋭利な先端がまるで氷の棘の様に、
裸足の裏の皮膚に冷たく喰い込む。

漆黒の夜の海が紅蓮の炎の照り返しを波間のあちこちに赤く浮かべて、
視界一杯に拡がっていた。
まるで地獄へ向かう三途の河に・・・。

だが、何故か不安や恐怖は全く感じなかった。

『おやっさん』と呼ばれていた男がくれた『フィリップ』と云う名前と、
少し汗ばんだ男の熱い掌を強く強く握りしめて、僕は昏い海へと向かって駆けて行く。


この掌はもう絶対に離さない。
離すまいと・・・僕は決めた。

たとえ行き先が地獄の底であったとしても、
この熱い掌を離さずにいれば、
きっと僕は・・・・・・。
                                              



2010年02月27日(土) Pの記憶/小さな恋のメロディ 6

突然、背後から声を掛けられた。
振り返ると見覚えの無いブレザー姿の若い男が立っている。

侵入者か?
だが、諜報工作員にしてはスキだらけだし、組織の構成員候補か?
それにしては、あまりにも・・・。

「誰だい?キミは・・・。
組織に見出される程、知能が高そうな顔には見えないけど。」

「何だと?」

どうやら気に障ったらしく男は形の良い眉を顰めた。

構成員を呼んで捕まえさせようか?と一瞬考えたが、
この男はあまりにも緊張感が無さ過ぎる。

男達を呼ぶのも面倒臭いし、
しばらく放置しておいても特に害は無さそうだ。

好奇心に満ちた瞳を輝かせながら、
僕の後を追いて来る男を、
わざと視界の範疇外に締め出して作業室に入る。

キーボードの傍に置かれていた茶色のビンを取り上げる。
蓋を開けて斜目に傾けてザラザラザラ・・・ッと、
左掌に零れ出た白い錠剤を口に放り込み、
ポリポリと奥歯で噛み砕く。

PCの液晶画面を見ながら、再びビンを傾けて掌の上に錠剤を出そうとした途端、
右手首をガシッ!と強い力で掴まれた。

「おい!お前、何やってんだ?それ薬じゃねェのか?」

僕の後ろをうろうろ追いて来ていたあの若い男が、
鳶色の瞳を吊り上げながら厳しい口調で僕に言う。

「そうだけど・・・?」

僕は男の無礼な態度に嫌悪感を顕にして、掴まれた手首を思い切り振り払った。

予想外に男の力は強く、振り解くのにかなり力が要った。

「だったらその飲み方は、かなり間違ってるんじゃねェのか?
そんなに飲んだら却って身体に毒だろ!胃が荒れちまうぞ!」

「何だい?キミは?いちいちうるさいな!
僕は頭が痛いから飲んでるんだよ!放っておいてくれたまえ!」

「あん?」

訝しそうに男は首を傾げると、
スッ・・・と、
少し汗ばんだ熱い大きな掌を僕の額に当てた。

「・・・確かに少し熱有るみてぇだな?」

ドク・・・ン!と心臓が大きく音を立てて脈打つ。


「おい?これは何だ?」

男は液晶画面に映っている映像に視線を移すと、表示されている文字を読み上げた。

「ガ・イ・ア・・・メモリ?」

「ガイアメモリ。
これは地球上の事象を記憶した装置。これを使えば誰だって超人になれる。」

「そうか!これを使って犯罪を・・・。この悪魔野郎!」

突然、男は僕の胸倉をグィッと掴み上げ、ギッ!と鋭く睨み付けた。

この男も僕を『悪魔』と呼ぶのか・・・。

ふと僕は男が手にしている銀色のケースに瞳を留める。

何故か、
急にムラムラと好奇心が沸き起こり、僕はそのケースに指先を伸ばした。
僕が触れた弾みで床に落ちた銀色のケースを、男よりも先に拾い上げて、
蓋を開けてみると、
中には深赤色のドライバーと6本のガイアメモリが並んで収められていた。

「すごい!誰が作ったんだい?」

僕は思わず感嘆の声を上げた。

「これを使った人間は僕と一体になれる。
それに二本のメモリを同時に使えるなんて・・・!」

大した物だ・・・。
一目見ただけで、これを作った人間の技術力の高さを認識出来る。

「おい、俺の話を聞け!犯罪者!」

僕は男の無礼な言葉を聴き咎めて、
思わず額に縦皺を寄せながら反論する。

「じゃあ君は、拳銃を作る者は犯罪者だと言うのかい?」

ぐ・・・ッと男は返答に詰まった。

「それと同じさ、作る者でなく使う者。
僕はただ、より大きな力を生み出すメモリを作りたい・・・それだけさ。」

そうだ、
それだけの理由で、今まで僕はガイアメモリを作り続けて来た。
でも・・・。

「この野郎!」と怒声と共に、
バン!と思い切り突き飛ばされた次の瞬間、
シュンッと云う音と共に視界が掻き消え、周囲が白い闇に包まれる。

男に突き飛ばされた弾みで『ガイアタワー』の転送BOXに閉じ込められてしまった。


“この悪魔野郎!”

先刻の男が自分に向かって吐き捨てた言葉が耳に甦る。
ふと、右手首を見ると、あの男に掴まれた箇所が少し赤くなっていた。

頭だけじゃ無く、力もバカな男だね。
知能はともかく、
瞬発力は有るし・・・身体能力は、かなり高いと思われる。

ふと銀色のケース内に収められていた深赤色のドライバーを想起する。
彼ならば、
あのダブルドライバーの『ボディサイド』を任せられそうだ。

だが、彼はもう二度と悪魔の手を掴んでくれたりはしないだろう・・・。


“確かに少し熱有るみてぇだな?”

額に右掌を、そっと押し当ててみる。
やはり、少し熱が有るようだ・・・。



2010年02月26日(金) Pの記憶/小さな恋のメロディ 5

“いたぁ・・・い・・・いた・・いよぉ・・・”

どこか遠くで子供の泣き声が聴こえる。
その声が自分のモノだと気付くのに、しばらく時間が掛かった。

“どうしたの?ころんじゃったの?・・・・いと。

そよ風の様な声が僕の鼻先を擽る。
擦りむいた膝の傷口を気遣う様に、
ふわりと触れられた誰かの小さな掌・・・。

そのぬくもりは、
いつも夢で見ているのと同じ温かい感触。

“おまじないしてあげる、
いたいの、いたいの、とんでけ〜〜〜♪”

澄んだ声が唱える優しい呪文、
その人の美しい声はいつも僕を癒してくれた・・・。


瞳を覚ました。

いつの間にか拘束服は脱がされ、
白いシルクのパジャマに着替えさせられて、
硬く糊を効かせたシーツでメイキングされたベッドに寝かされていた。

生体コネクタを抉じ開けられた箇所に、そっと指先を触れてみると、
ご丁寧にコネクタ痕を塞ぐ処置が施されていた。

サディスト共め!
あんなメモリ作るんじゃなかった・・・。


“ギィァァァ・・・”

小さな咆哮が耳元で聴こえる。
視線を向けると、枕元にファングが小さな頭を垂れて、
心配そうに僕の顔を覗き込んでいた。

「ファング・・・。
僕を心配してくれてるのかい?大丈夫だよ。」

白いファングの小さな身体に向かって右手を伸ばす。
ヒヤリ・・・と硬質な金属の感触が指先に触れた。
冷たくて硬いファングの身体を、そっと右掌で包み込んで握り締める・・・。

ふいに、瞳から涙が溢れ出た。

“あ・・・く・・ま・・・・。”

“あのガキは悪魔だ。
あんなひどい人体実験を見ても平然としてやがる。
今に地獄に堕ちるぜ・・・。“

『地獄』か・・・
此処だって、大して変わらないよ・・・。

あの掌を、
僕は一体いつ離してしまったんだろう?
ずっと握ったまま、離さずにいれば良かった。

あの掌のぬくもりの記憶だけが、
かろうじて僕を『人間』に繋ぎ止めている様な気がした。


ズキズキズキ・・・とこめかみが激しい頭痛に疼く。
アミノフェンを飲まなきゃ・・・。
早く作業に取り掛かって、
遅れている分のメモリを作らないと、どんな目に合わされるか判らない。

ファングの身体を放してベッドに掌を着いて重い身体を起こす。
「ぐ・・・ッ!」
『Pain』を使われた余韻の痛みが全身の神経に針の様に鋭く突き刺さり、
くらくらと眩暈がした。

「・・・う・・ッ!」

ベッドから降り、
部屋の壁に掌を着いて、ふらつく身体をかろうじて支えながら、
アミノフェンのビンを置いてある機械室に向かって廊下を歩いている・・・と、


「・・・おい、おまえが『運命の子』か?」



2010年02月25日(木) Pの記憶/小さな恋のメロディ 4

“坊っちゃま?一体どうなさったのですか?“

インターフォンから漏れる男の声を僕はわざと無視する。

“何故、作業をなさらないのですか?もう一週間以上になります。
メモリの納期スケジュールに、かなり支障を来たしておりまして・・・“

「・・・頭が痛いんだよ。」

“先日の精密検査では特に異常は認められなかった筈ですが・・・。”

「うるさいな!頭が痛くて作る気が起きないって言ってるじゃないか!」

僕は椅子から立ち上がると、
インターフォンのコードを掴んで力任せに引き抜き、そのまま床に投げ捨てた。

「“異常は認められなかった。”だって?
ちゃんとした原因も何も解かっちゃいない癖に!!」

ズキズキズキズキ・・・と、左のこめかみで頭痛が激しく脈打っている。

“あ・・・く・・・ま・・・。”

あの男の憎しみに満ちた瞳と、
あの言葉が耳からずっと離れない。

僕はただ、より大きな力を生み出すメモリを作りたかった。
その為には実験用の被験者の犠牲は最低限の必要悪だ。

あの被験者達は、
皆、わずかな金銭に目が眩んで、
自ら進んで実験体に志願した軽率で愚かな人間だ。
自分の身体が一体どうされるのかなんて考えてみようともせずに・・・。
でも・・・。

“頼む!・・・か・・・家族に、家族にィ・・・”

「・・・かぞ・・・く?」

“MY FAMILY・・・?”

「・・・う・・・ッ!」

あの単語を思い出す度、更にズキ・・・ン!と鋭痛が脳を貫き、
意識が薄れてしまいそうになる・・・。


“シュン!”と電子音が鳴り、突然、僕の部屋のドアが開いた。
黒スーツ姿の男達が入って来て、数人掛かりで僕の身体を押さえ付ける。

「な・・・!?」

男達の中の何人かが、
大きな白い袋状の布をバッと拡げて僕の身体を包み込むと、
布に付いている数本のベルトの金具をカチッカチッと頑丈に締め上げた。

「離せ!何で、拘束服なんか・・・?・・・アゥッ!」

「おとなしくしろ!この餓鬼!」

普段、僕には敬語を使っている男達が浴びせる罵声が得体の知れない不安を募らせる。

白い拘束服を着せられ、冷たい床の上に転がされた僕の身体は、
まるで芋虫の様に惨めで身動きが取れない。

「坊っちゃま、
あなたの我儘なストライキの所為で、
『ガイアメモリ』は今回の予定納品数に達せず、一部欠品を起こしてしまいました。
我々は大変迷惑を蒙っております。」

黒スーツ姿の男達の中でも、特にスラリとした細身で長身の男が冷ややかに言う。
その顔は逆光になっていて、はっきりとは見えない。

「『Taboo』様が、
あなたにはおしおきが必要だ、とおっしゃいました・・・。」

しなやかな男の指先には『ガイアメモリ』が握られ、
表面には『Pain』と云う文字が書かれている。
その文字を見た途端、恐怖に全身が総毛立った。


“ねぇ、このメモリ、
・・・・いらないから、あげようか?“

何時だったか、
黒いスーツ姿の男の一人に何気無く言った僕自身の言葉が耳の奥底に甦る。

“何ですか?このメモリは?”

“失敗作さ。

『ガイアメモリ』は基本的に『脳内快楽物質』を増幅させるけど、
このメモリは知覚神経に刺激を与えて『発痛物質』を異常生成させる。

試しに作ってみたんだけどね、
苦痛と云うのは、結局、脳を萎縮させるだけで潜在意識の開放には至らないんだ。
だから、もちろんドーパントにはなれない。

このメモリを挿入すると、
『発痛物質』が異常生成され、
耐え難い激痛が脊髄から大脳皮質に、そして全神経の末端にまで伝わる。

苦痛があまりにも激しいから、おそらく気絶する事も出来ないよ。
まぁ、激痛に耐え兼ねて発狂する寸前にメモリを強制排出すれば、
後遺症も残らないから
この研究所に
ちょくちょく忍び込んで来る諜報工作員への尋問か拷問にでも使えばいいんじゃないの?“


「やめて!許してよ!何でも言う事聴くから!
どんなタイプのメモリだって作るから!それだけは・・・アゥ・・・ッ!」

唯一自由になる頭を振って必死に抵抗しようと試みたが、
一人の男の掌に掴まれ、
床に思い切り押さえ付けられる。

その時、
シュッ!と白い影が視界を過り、
僕を押さえ付けている男達数人の腕や胸、頭に閃光の様な体当たりを喰らわせた。

「ファング!」

「な!何だ!こいつ!」

ファングの素速く鋭い攻撃に男達は一瞬怯んだが、
すぐに男達の無数の腕に振り払われ、
開け放たれたドアの外にみるみる追いやられてしまう。

「ファング!来るな!来ちゃダメだ!」

再び室内に戻ろうとしたファングの眼前でシュン!と音を立ててドアが閉まった。
“ガツ・・・ッ!ガツ・・・ン!”とドアの向こう側で、
小さな身体をぶつけているらしい鈍い音が微かに聴こえた。

「ねェ!頼むから・・・
それだけは勘弁して!そのメモリだけは・・・!」

『Pain』と云う文字を表面に浮かべたレモンイエローのメモリが、
男が手にした生体コネクタ手術装置にカチッ!と金属音を立てて装填される。

「許して!いい子にするから・・・ッ!!」

僕は怖くて怖くて、思わず涙を流した。
冷たいコネクタの発射口が首筋に冷たく押し当てられ、
ゾクッと鳥肌が立つ。

「ヒ・・・ッ!」

ズブゥッ!と頚動脈近くに打ち込まれたメモリは、
僕の皮膚を無理矢理抉じ開けて、
ズズズズズズズゥッ・・・と細胞組織を犯しながら身体の奥へ深く喰い込んで行った。

「ぁぁぁあああああーーーーッ!!

普段とは到底比べ物にならない程、
ガツンガツン!ガンガンガンガンガンッ!と、凄まじい頭痛が脳下垂体を鋭く突き上げ、
何千本もの楔を打ち込まれているかの様な激痛が全身の痛覚神経を情け容赦無く貫き、
責め苛む。

「いやぁ・・・ッ!やだぁぁぁッ!許してェェェッ!」

狂った獣が吼えている様な叫び声が鼓膜を震わせる。

「ぬ・・・抜いて・・・は、早く・・・痛・・・ィ・・・ァァァアアッ!!」

追い出されたファングがドアの外で吼えているのかと思ったが、
それは僕が泣き叫んでいる声だった・・・。



「ガイアメモリを作るか作らないか・・・それはお前が決める事では無い。」

フッ・・・と、
突然、身体中から全ての痛みが消え失せた。

だが長時間、激痛に責め苛まれ続けた身体は疲弊し、
僕は床に倒れたまま、指一本動かす事も出来ず、
頭上から降り掛かるその男の声を聴いていた。

「お前が自分で何か決断する必要は無い。
お前は私の云う通り、
此処にいて、ガイアメモリを作ってさえいればいい。」

この研究所内にいる、どの男の声とも一致しない、
他人を威圧感する重厚な低音は、
僕の頭の中の記憶の断片をズキズキズキ・・・と疼かせる。

「『Terror』様、そろそろお時間でございます。」

構成員の一人が丁重な口調で言うと、男は“うむ”と肯いて踵を返した。
“カツン、カツン・・・と云う男の硬い靴音が次第に遠ざかって行くのが床越しに伝わって来る。

『Terror』・・・様?

一体誰なんだ?
もしかして、あの男は僕の・・・。


僕は暗闇の中に滑り落ちて行く意識を、ゆっくりと手放した・・・



2010年02月24日(水) Pの記憶/小さな恋のメロディ 3

「ごぐぅわぁぁぁぁぁぁーーーーーーッ!!」

硬質ガラスの向こう側で被験者の男が、
熟れ過ぎた果実の様にドロドロドロドロ・・・・リと崩れ始めた手足をばたつかせながら、
獣じみた叫声を上げている。

「頼む!もうッ!もう止めてくれェェェッ!ぉぉぉおおおお!!
メ・・・ッ!メモリを抜いてくれぇぇっ!」

「坊っちゃま、どうなさいますか?」

すぐ隣りに立っている男が不安気な口調で囁く。

「そうだね、
ここまで体細胞が『ガイア言語』に拒絶反応を起こすのは珍しい。
予定外だけどメモリを強制排出して・・・。」

「頼む!・・・か・・・家族に、家族にィ・・・ぅわぁぁーーーッ!!」


“MY FAMILY・・・?”

「・・・か・・・ぞく?」

その単語を聴いた瞬間、
瞳の前をチカチカチカと光が明滅し、
意識が、す・・・っと遠のいていく・・・。

・・・僕は誰かと一緒に歩いている。
僕の両側に立っている背の高い大人達の掌が僕の両掌を握り締めている。
その温かい感触・・・。

「あぐぅおぉぉぉええええッ!!」

凄まじい絶叫に鼓膜を劈かれ、ハッと現実に返る。

ガラスケースの向こう側で被験者の男は、
ピン!と引き攣った様に身体を大きく直立させると、
右手の指を顔面に突っ込んで右の眼球をずぶぅ!と抉り出し
そのまま壊れた人形の様にゲラゲラゲラゲラ・・・と笑い始めた。

「ダメです!体組織よりも先に精神崩壊を起こしました!」

「メモリ強制排出!急いで!!」

慌ててマイクに向かって叫ぶと、
『Planaria』・・・・とガイアウィスパーを発しながらメモリが排出され、
床の上に落ちてパキ・・・ンと粉々に砕け散った。

男は操り糸が切れたかの様にドサッと床に立て膝を付いて、ガクッと首を垂れた。

「ダメだ・・・失敗か・・・。」
「見た目より、かなり弱い精神構造だった様だな。」

傍らに立っている黒メガネの男達がボソボソと囁き合っている。
だが、彼らの会話は何故かほとんど耳に入らなかった。

“頼む!・・・か・・・家族に、家族にィ・・・”

「かぞ・・く・・・?」

先程、男が口走った言葉が、
まるで棘の様に僕のこめかみにズキズキズキと鋭く突き刺さる。

僕はコンピューターの操作卓から離れて、
実験室内部に通じるドアを開けて、ふら・・・りと中に入った。

“坊っちゃま!お戻り下さい!危険です!”

ガラス越しに聴こえる声を無視して、
身体の組織の大部分が軟体化し、ぬめぬめと蠢く残骸と化した被験者に近付くと、

「ゥ・・・グゥウウゥ・・・」

突然、粘液に塗れた男の唇から漏れた呻き声が周囲の空気を震撼させた。

「・・・まだ生きてるのか?」

その場に立ち竦んでいると、
男の変色して黄緑色を帯びた左の眼球がギロリ・・・と、動いて僕の顔を認識した。

次の瞬間、
血走った瞳がグワワァッ!と大きく見開かれ、
男の崩れた右腕が僕の顔面に向かってズバッ!と勢い良く突き出された。

「・・・うわっ!」

僕は思わず息を呑んで後ずさる。

“坊っちゃま!”と叫ぶ声がガラスの向こう側から微かに漏れ聴こえ、
数人の男達がドアを開けて入って来た。

伸ばされた指は僕の顔面に触れると同時にズルズルズルッと溶解した。
ポタ、ポタ、ポタッ!と、イヤな臭いを発するネバネバした液が僕の頬や額に降り掛かり、
嫌悪感に思わず反射的に頭を振る。

焦茶色の涎をダラダラ垂れ流している蒼黒い唇がぎこちなく動いて、
虚ろに渇いた声が男の喉の奥から搾り出された。

「あ・・・く・・・ま・・・。」

まるで地の底から響く様な・・・
ゾッとする声で言うと、
被験者の男の身体は焦茶色の粘液状にドロドロドロ・・・リと崩れ落ちて、
そのまま絶命した。



実験室を出て、
シャワールームへ行き、死んだ男に浴びせられた粘液を洗い流す。
だが、何度スポンジで擦り洗いしても、
あの男の崩れた身体から漂っていた腐敗臭は、どうしても取れなかった。

バスタオルで身体を拭いて、
構成員の誰かが持って来た新しいシャツと白いスラックスに着替え、
自分の部屋へ戻ろうとしていた時、
ヒソヒソ・・・と人目を憚る様な声が白い廊下の向こう側から漏れ聴こえた。

「・・・まったく、気味の悪い餓鬼だぜ!。」

「おい!坊っちゃまの悪口は言わない方がイイぜ。
誰かに聞かれたらどうするんだ?」

「だけどよ、あの餓鬼、
まるで悪魔だ!。
あんなひどい人体実験を見ても平然としてやがる。
今にきっと地獄に堕ちるぜ・・・。」

また・・・頭痛が起き始めていた。



2010年02月23日(火) Pの記憶/小さな恋のメロディ 2

僕は冷たい床に両掌を着いて重い身体を起こして、ゆっくりと立ち上がる。
キーボードの脇に置かれている茶色のビンを取り上げ、
蓋を開けて、逆さにして振ってみたが、カラッポだった。

空ビンを蓋と一緒に屑篭へポイと投げ捨ててから、
壁に付いている白いインターフォンを取り上げて耳に押し当て、呼び出しボタンを押した。

“どうなさいました?坊っちゃま”
無感情に乾いた男の声が事務的に問い掛ける。

「僕だけど、アミノフェン持って来てくれない?」

“またですか?最近飲み過ぎですよ、お身体に障りま・・・”

「うるさいな!頭が痛くて割れそうなんだよ!こんなんじゃ作業する気も起きない!
早く持って来てよ!」

ガシャッ!と、怒鳴り付けた勢いに任せて、インターフォンを思い切り叩き付けた。
弾みで外れたインターフォンが螺旋状のコードに釣られて、ゆらゆらと揺れている。
面倒臭いので、そのままにしておいた。

この研究所にいる人間達・・・
組織『ミュージアム』の構成員達とは、
こうやってインターフォンを通してドア越しにやり取りするだけで、
彼らが必要以上に僕に接触して来る事はない。
どうしても顔を合わせなければならない時は、
黒いサングラスか白いマスクを着用し、必ず顔を隠している。

僕は組織『ミュージアム』の研究所に監禁されている。

監禁と云っても、
自分の部屋と作業室、
そして研究所の中の決められたスペースの範疇内であれば、
比較的自由行動を許されている。

外に出る事は許されないが、
此処では衣食住は充分保障されているし、
欲しいと望んだ物は大抵供給されるから不自由は無い。
監視カメラの存在も特に気にならない。

それに他人に干渉される事無く、
『地球の本棚』での『検索』と、
ガイアメモリの研究と製作に没頭出来る生活に不満は無かった。


しばらくすると作業室のドアの下にある小さな差入れ口が開いて、
黒いスーツを着用した男の右手首だけがスッ・・・と入って来て、
茶色の薬ビンが床の上に置かれた。

「坊っちゃま、
あまり、飲みすぎませんよう・・・。」

彼らは僕を『坊っちゃま』と呼ぶ。

僕が名前で呼ばれる事は無い。
そもそも僕に名前が有るのかどうかも判らない。
それ以前に、僕には研究所で暮らし始める以前の記憶が無い。

ある朝、目覚めたら此処に居た。
僕を取り囲んでいたのは見知らぬ白い天井と白い壁・・・。
枕元にはファングだけがいた。

自分の名前も、それまで何処でどんな生活をしていたのかも、
何もわからない、想い出せない。
自分の過去を『検索』してみたが何の答えもヒットしない。
ただ真っ白な空間が脳の中に虚ろに拡がっているだけ・・・。

どうやら誰かの手に寄って、記憶を削除されてしまったらしい。

だが記憶を削除された事に対しての怒りや哀しみ、憤りなどの感情は
特に湧いて来なかった。
奪われた記憶の正体がほとんど判らない所為だろう。

ただ・・・
削除されてしまった記憶の断片、
『僕の過去』と云う名の本の中から破り捨てられたページの破片が、時折、脳内で疼く。
そして、
その度に、こうやって激しい頭痛に襲われる。

いまいましい!
どうせ削除するのならば、
もっと徹底的に白紙化しなければ意味が無いんじゃないのかい?

僕がやれば、もっと上手く行った筈なのに・・・。


取り上げた茶色いビンの蓋を開けて、
逆さに傾けると白い錠剤が数錠、ザラザラザラ・・・ッと、
右掌の中に零れ出た。
出した分を全部口に放り込んで、奥歯でガリガリと噛み砕くと、
粉っぽい苦味が舌の上に拡がる。
冷蔵庫から取り出したミネラルウォーターに直接口を付けて、
ゴクゴクゴクッと飲み下した。

こんなに飲んでるのに、何でちっとも効かないんだろう?


僕は脳の中に『地球の本棚』を持っている。
『地球の本棚』で『検索』した項目を『ガイア言語』に置き換えて、
『ガイアメモリ』にインストールするのが主な作業。

『ガイア言語』はプログラム信号の一種で、
その基本言語は人間のDNA塩基配列と酷似している。

ガイアメモリを身体内に挿入すると、
直接、細胞の核内に注入された外来性DNA『ガイア言語』の遺伝子情報を読み取り、
RNAやタンパク質が特殊変異合成される。
またメモリ内の『ガイア言語』は神経細胞を異常活性化させ、
人間の神経伝達物質(ドーパミン)の分子配列を強制的に覚醒剤物質(ガイア・ドーパミン)に置き替えてしまう。
過剰分泌した『ガイア・ドーパミン』は大脳に刺激を与え、
人間の潜在能力を引き出し増強させ超人に変身させる。

『検索』のキーワードに特に規則性は無い。
思い付きに等しい単語を片端から『検索』し、それに依って得られた『項目』を
『ガイア言語』に翻訳する。
だから『キーワード』に依っては『超人』に変身出来るモノと出来ないモノが有る。
それを確認する為には・・・。

“ピーーーーッ!”と、
突然、壁のインターフォンから甲高い電子音が鳴り響いた。
先程、怒りに任せて投げつけた後、
戻すのを忘れていたインターフォンを取り上げ、右耳に押し当てると、
男の声が事務的に告げた。

“坊っちゃま、
これから試作品の動作テストを行いますので実験室にいらしていただけますか?”



2010年02月22日(月) Pの記憶/小さな恋のメロディ 1

“なんで・・・わたしをおこらせるの?”

そう呟くと、
僕の瞳の前の人影は、落ちていた石を拾い上げて、
遥か向こうに立っている冷たい瞳をした人物に向かって投げ付け様とした。

“・・・ダメ!”

僕は駆け寄って、その人の振り上げられた右拳を掴んで引き止める。

“そんなことするの、本当の・・・・ちゃん・・・じゃないよ!”

僕がそう言った途端、
その人の右拳は一瞬、硬直し、僕の掌の中でぶるぶる小刻みに震え始めた。
まるで敵に怯えた小動物の様な、柔らかくてほんわりと温かい、拳の感触・・・ 。


瞳が覚めた。
左のこめかみがズキズキズキズキ・・・と激しい頭痛に疼いている。

ああ、また、あの夢か・・・。
あの冷たい瞳をした人物による理不尽な暴力に対して、
怒りを込めて拳を振り上げた人物に駆け寄って引き止める夢。

この研究所内では誰かの手に触れる機会など無いに等しいから、
これは削除される前の記憶の欠片に違いない。

記憶は無いのに、残像だけが時折フラッシュバックする・・・。


暗闇に等しい薄明の中で、身体を横たえた状態のまま視線だけを上に泳がせる。
部屋の主電灯は点いていないが、
PCの液晶画面やこの部屋内を埋め尽くす機械類のボタンやランプの明かりだけでも、
充分周囲の状況を把握出来る。
どうやら、また作業室で『ガイア言語』の入力をしながら、
うっかり床で眠ってしまったらしい。

それにしても、この頭痛・・・
頭が割れそうにズキズキする。

“ギィァァアア・・・!”
フッ!と、瞳の前に降り立った小さな白い影が、尖った尻尾を上げながら、
高く咆哮を上げる。

「やぁ、ファング。」

そう僕が呼ぶと、
白銀の恐竜型のメモリガジェットは“ギィァァ・・・”と甘える様な声を上げて、
尻尾を振りながら、僕の眼前でピョン、ピョンと可愛らしく跳ねた。

このガイアメモリ・・・ファングには『牙の記憶』が封じ込められている。
だがファングには他のメモリには無い特殊性が2つ有る。

第1は、僕の生体DNAコードがインストールされており、
離れた処に居ても、
僕の居場所はもちろん、僕の呼吸の変化や心拍数の増減まで把握する事が可能である事。

第2は高い知能と自分の意思を持ち、自由に動き回る事が出来る事。

このメモリガジェットは僕の前任者が作ったらしい。
直接会った事は無いが、僕以上の技術を持っていた人物である事は間違い無い。



2010年02月21日(日) JOKERには敵わない 2

「口ほどにも無い男だね・・・。」

約20分後、勝負は明らかにフィリップが優勢だった。

少年は無情かつ冷酷に白の駒を進め、
竜の赤い駒を奪い取り、情け容赦無く攻撃する。

「この俺に冷や汗をかかせるとは・・・さすがだな。」

「キミは僕に勝てない・・・と言っただろう?
どうやら、あと1、2手でこの勝負は決まりそうだね・・・。」と、
フィリップは不敵に唇の端を上げた。

その時、

「たっだいま〜!あぁ〜寒いかったぁ〜!」

「うぅ〜寒ぃ寒ぃ・・・今、帰ったぜェ!。」

聴き込み捜査から戻った翔太郎と亜樹子が寒さに震えながら、
事務所のドアを開けて入って来た。

「あ!何だよ照井!
お前ェ、また来てんのかよ?
『超常犯罪捜査課』ってのは、よっぽど暇なんだな・・・。」

「ちょっと翔太郎君ッ!」

亜樹子は小声で翔太郎を嗜めるとにこやかに明るい笑顔で竜に尋ねた。

「いらっしゃいませ、照井さん、
もしかして捜査のご依頼ですかぁ?」

「ん?・・・お前ら何やってんだ?」

翔太郎は黒のトレンチコートを脱ぐと、
フィリップと竜が向かい合って座っている丸テーブルに近付き、
何気無くc3に置かれていた赤のクイーンを取り上げた。

「な!何をするんだ?左!」
「ちょっ・・・!翔太郎、邪魔しないでよ!」

反射的に声を上げた二人を無視して、
しばし赤い象牙製の駒をしげしげと見つめていた翔太郎は、
突然、鳶色の瞳を大きく見開くと、

「あ〜ッ!これ、おやっさんがすっげェ大事にしてたチェス盤じゃねェかよ!
おい!フィリップ!お前、これ何処から出して来たんだ?!
棚の奥の奥の方に仕舞ってあっただろうが・・・ったく油断も隙も無ェな!」

吐き捨てる様に言いながら、
タン!と赤のクイーンをf3に置く・・・と、

「チェックメイト!」

そう言いながら竜が上半身を乗り出して宣言した。
同時にフィリップも黒い瞳を丸く見開き呆然と盤上を見つめる。

「・・・白の負けだ。でも、今のは翔太郎が・・・。」

「あん?」

一人だけ状況を把握していない翔太郎の帽子の黒いソフト帽の真上に、
亜樹子が『なにやっとんねん!』と金文字で書かれた緑のスリッパを
“パッコ〜ン!”と叩き込む。

「痛ってェな!何すんだよ!?」

「翔太郎君こそ何やってんのよ!今のでフィリップ君、負けちゃったみたいよ?!」

「えッ?マジかよ?」と翔太郎は思わず驚きの声を上げる。

「そうだ、フィリップ・・・この勝負、キミの負けだ。」

「そ、そんな・・・。」

冷ややかな瞳で断言する竜から、
まるで逃げるかの様に瞳を逸らすと、
フィリップはこの勝負で賭けていた物を想起し、
戸惑いながら右手の指先で艶やかな下唇を撫でる・・・。

「・・・そして、俺もな。」

「え?」

「誰が見てもノーゲームだろう?この勝負・・・。」

フッ・・・と竜は唇の端を薄く緩める。

「つまり・・・今の勝負は無しって事か?」

「まぁ、そう云う事だ。」

翔太郎の問いに竜が微苦笑しながら肯くのを見て、
フィリップはホッと胸を撫で下ろした。

「ごめん、亜樹ちゃん。3割増しダメになっちゃったよ。」

「え?どぉいぅコト?アタシ聞いてないよ?!」

「気分転換にコーヒーでも淹れるか、
久し振りに脳を酷使したら、カフェインが欲しくなった・・・。」

竜は事務所の奥へと歩を進め、
食料類が収められている棚の扉を開けると、
迷わずコーヒー豆が入ったブルーの缶を取り出し、
冷蔵庫から取り出したミネラルウォーターのペットボトルから
細口のステンレス製コーヒーケトルに水を注いで火に掛け、
コーヒーフィルターの端を折る。

まるで自分の事務所に居るかの様に手際が良い。

「ええっ?フィリップ君が勝ってたら、次の依頼料3割増しだったの?
ちょっと!翔太郎君!」

亜樹子は残念そうに声を上げ、翔太郎をキッと鋭く睨み付ける。

「そうだったのか、悪い事しちまったな・・・。ところで、お前は一体何を賭けてたんだ?」

「え・・・?あ!・・・そ、それは・・・。」

翔太郎に尋かれたフィリップは、
黒い瞳を空に彷徨わせ、しどろもどろしながら答える。

「べ、別に・・・
何も取られなかったんだから良いじゃないか!」

「何も取られてない・・・か。」

芳しい香りを漂わせる黒いカップをフィリップの手元にトンと置きながら、
竜はフィリップにしか聴こえない程度の声で囁く。

「フィリップ、
もう、キミはとっくに全部奪られてしまっている様だな・・・。」

「・・・え?」

竜の言葉の意味が理解出来ずにフィリップは不思議そうに細い首を傾げる。
だが竜はフィリップには答えず、
亜樹子と翔太郎の手元にカップを置くと、

「左・・・
今度は俺と直接勝負してもらおうか?」

「あん?」

“コイツ、いきなり何言ってんだ?”と言わんばかりに眉を顰める翔太郎に向かって、
竜は真剣な表情で言う。

「ビリヤードでもダーツでも、
チェスでもオセロでもカラオケでも料理でも・・・
何でも構わないぜ、
種目はお前に選ばせてやる。
もし俺が負けたら、次回の依頼料は3割増しで払おう。」

「よぉし!いつでも受けて立つぜ!」

「ちょ、ちょっと翔太郎・・・。」

“俺が勝ったら・・・”と言う竜の言葉を聴く前に、
迷わずそう宣言した翔太郎を、
フィリップは眉間に縦皺を寄せながら不安気に嗜める。

「ほぅ・・・随分と自信満々だな?では何で勝負する?」

「決まってるだろ?『ババ抜き』だ。」

翔太郎はフィリップに視線を投げると、
形の良い唇を上げてニヤリと不敵に微笑ってみせた。



2010年02月20日(土) JOKERには敵わない 1

“ガチャッ”と『鳴海探偵事務所』のドアが開けられ、
丸テーブルの側の椅子に腰掛けていたフィリップは突然の来訪者の姿に困惑した。

「照井竜・・・。」

「相変わらず無用心な事務所だな?
せめて『セ○ムシステム』位、付けたらどうだ?」

朱赤のレザージャケットとパンツ姿の男は、
まるで自分の事務所に帰って来たかの様に室内にズカズカと足を踏み入れた。

「毎日、毎日、懲りない男だね・・・
この事務所に超常犯罪捜査課の分室でも設立するつもりかい?」

招かれざる客に向かってフィリップは冷淡に言い放つ。

「そうしても良いぜ・・・
キミの『検索』は我が超常犯罪捜査課にとって掛け替えの無い能力だからな。」

ふと、竜はフィリップが座っている丸テーブル上に置かれたチェス盤と、
盤上に並べられた赤と白の象牙の駒に瞳を留めた。

「ほぅ・・・チェスか、そんな物がこの事務所に有ったのか?。」

「鳴海荘吉・・・この事務所の前の所長がかなり好きだったらしい。」

素っ気無く答えながら、
フィリップは、赤のナイトをf3へ移動し、白のナイトをc6へ移動させた。
どうやら頭の中で二手に分かれて一人チェスを打っているらしい。

「今度はチェスにハマっているのか?『検索小僧』」

「さっき若菜さんがラジオでチェスの話をしてたんだ・・・。」

独り言の様に呟きながらフィリップは、
赤のビショップをb5に移動させ、白のポーンをa6に移動させる。

「若菜さんは、
たまにお父さんと対戦するけど、強くて全然敵わないって話をしていて、
それを聴いたら、つい・・・。」

す・・・っと脇から伸ばされた竜の細長い指が赤のビショップを取り上げ、
c6の白のナイトを盤上から奪い去った。

「一手、お手合わせ願おうか?
俺もチェスには自信が有る・・・それに、キミとの勝負はなかなか楽しめそうだ。」

ムッと不機嫌そうに眉間に縦皺を寄せ、
不躾な乱入者を睨み付けながらフィリップは白のナイトを奪った赤のビショップを
dファイルの白のポーンで取る。

「照井竜・・・
キミは僕には勝てないよ。」

「大した自信だな?そんなに勝つ自信があるなら、
どうだ?一つ賭けでもするか?」

竜は赤のポーンをd4に移動させながらフィリップに問う。

「賭け?」

「キミが勝ったら、次に事件の『検索』を頼む時は依頼料を3割増しで払う。」

「悪くないね・・・亜樹ちゃんが大喜びするよ。」

竜が移動させた赤のポーンをe5に置かれていた白のポーンで取りながら、
フィリップは艶やかな唇にふわりと微笑を浮かべた。

「じゃ俺が勝ったら・・・キミを貰う。」

竜は赤のナイトでd4に置かれた白のポーンを奪った。

「・・・僕は物じゃない。」

フィリップは白のポーンをc5に移動させた。
彼の口元から途端に微笑みが消え、唇がキュッと硬く引き結ばれる。

竜は赤のナイトをb3に移動させた。

「フィリップ、キミの能力は素晴らしい。
そして何よりもキミの『ガイアメモリ』に対する知識が、今後の俺には必要だ。」

「僕に復讐の片棒を担げとでも言うのかい?」

フィリップは不快さを露にしながら、白のクイーンで赤のクイーンを取る。
すると、

「俺から家族を奪い、この街を悪魔の巣窟にした『ガイアメモリ』、
それに関してはフィリップ、キミにも責任の一端はある筈だ・・・。」

赤のルークで白のクイーンを奪い取る竜の言葉に、
いつに無く底冷えのする響きが含まれているのをフィリップは肌で感じ取る。

(照井竜、
ひょっとしてキミは・・・)

もしかして知っているのだろうか?
ミュージアムの研究所で『ガイアメモリ』を作っていたのがフィリップだと云う事実、
フィリップもまた、風都に災いを齎した悪魔の一人であると云う事を・・・。

「判ったよ、受けて立とう。
もしキミが勝てたら、僕を相棒にでも何でも好きにすればいい。」

「じゃ、このまま俺が赤でキミが白で勝負と行こうか・・・。」

竜は赤のビショップをf4に移動させた。
フィリップはクィーンサイドにキャスリングを行う・・・。



2010年02月19日(金) こんな『妄想日記』はイヤだ!

もしフィリップ君がDVD特典映像『翔太郎ハードボイルド妄想日記』に登場した様な
コテコテの大阪人だったら・・・?と『妄想』して書いてみました。

(映画『ビギンズナイト』にて、
翔太郎がミュージアムの研究所でフィリップを発見するシーン。)

機械類がみっしりと並べられた暗い部屋の中に、
黒いスカジャンを羽織り『通天閣』と云う文字が刺繍されたピンクのキャップを被った
16歳位の少年が携帯電話に向かって饒舌に喋っている。

「え!?先週納品した分が3日で完売?マジでっか?」

(あれが・・・『運命の子』か?)

「いやァ・・・
さすが霧彦さん!冴子姉ちゃんが見込んだ男だけの事はあるわ!
せやけど、いくら何でも明日までに20本の納品は無理でっせ!
『ガイアメモリ』は僕一人で作ってますさかいな。

もう何日も寝てなくて、正直しんどいですわ!
勘弁して下さい、て・・・。」

少年は相手から一方的に電話を切られたらしく、チッと悔しそうに舌打ちした後、
「ハァ、もうやっとれんわ・・・」と“猫背やねん”な背中を丸めた。

「おい・・・お前が『運命の子』か?」

翔太郎は思い切ってその少年に声を掛けた。
少年は訝しそうに眉間に縦皺を刻みながら翔太郎をチラ見する。

「なんやねん自分、新しいバイト君か?」

「いや・・・あの・・・俺は、そのおやっさんと一緒に・・・」

しどろもどろ答えている翔太郎を少年は呆れた風な顔付きで見下しながら、

「ふぅん・・・あんまりかしこそうや無いな、自分。」

“カッツ〜〜〜ン!”と、
少年の言葉が翔太郎の脳天に不快な感情となって響き渡る。

「あんだと?コラ!」

「はっきり言うて『ミュージアム』の仕事はキッツいで!ハンパや無いで!
人使いは荒いし・・・
『マスカレード』のヤツらなんか日給8000円に交通費上限1000円までやで!
やっとれんわ!」

更に少年に詰め寄ろうとした翔太郎は、
機械類の中に混じって並べられた沢山のUSBメモリの様な物体に瞳を留めた。

「『ガ・イ・ア・メ・モ・リ』・・・何だコレ?」

「コラ!勝手に触ったらアカン!」

少年にピシャリと怒鳴られて、翔太郎は伸ばし掛けた指を反射的に引っ込める。

「そこに並べてある『ガイアメモリ』・・・末端価格いくらやと思てんねん?!
兄ちゃんの年収じゃ基盤一枚だって買えん代物やさかいな!」

「一体何なんだ?『ガイアメモリ』って・・・?」

「はっきり言うて兄ちゃんみたいな素人さんが手ェ出すモンやないで
『ガイアメモリ』はな・・・
挿した人間を超人に変えてまう、
この世で一番自分が偉ぅて強い人間やと勘違い出来る機械やねん。

試しに兄ちゃんも一発キメてみっか?
かなり気持ちエエから、死ぬまで止められなくなってまうで・・・」

クククク・・・ッと少年は白い喉を鳴らして微笑った。
その邪気に満ちた表情は翔太郎の背筋をゾッと冷たく凍えさせた。

「お前がこの機械を作ってるのか?・・・この悪魔野郎!」

翔太郎が少年の胸倉をガシッと掴み上げると少年は全く悪びれた処の無い口調で答える。

「そうやねん・・・ホンマは僕も売る方に廻りたいんやけど、
『ガイアメモリ』作れるのは僕しかおらんねん。超天才はホンマ辛いわ〜。」

その時、少年は翔太郎が持っていたジェラルミン製のケースに、ふと瞳を留めた。
少年は好奇心に瞳を輝かせながら銀色のケースを翔太郎から奪い取ると、
ガチャガチャ弄って強引に蓋を開け、
中に収められたダブルドライバーと6本のメモリを見て感嘆の声を上げた。

「こらスゲェわ!どこのシマのモンが作ったんや?」

少年はメモリの内一本をケースから取り出すと、ぺろっと舌先で舐め、
満足そうにウンウンと肯いた。

「混じりっけ無しの極上モンや!こら末端価格1億は下らへんで!
それにこのドライバーを使たら、僕と一体化出来る!」

少年は呆然と佇んでいる翔太郎の右肩にぐいと顔を近付け、妖しげに微笑しながら囁いた。

「兄ちゃん・・・僕と組まへんか?」

「はぁ・・・?」

「正直、もうこの仕事にほとほと嫌気が差してんねん。」

少年はハァ・・・と溜息を吐きながら、ガックリ肩を落とす。

「『ガイアメモリ』の上がりは、
ほとんどオヤジと冴子姉ちゃんにピンハネされてますさかい、
実入りが少ない癖にノルマばっかりキツぅて・・・。
お陰で毎日、徹夜続き。
休みもろくに貰えへんから、
最近パチスロもカラオケもとんとご無沙汰ですわ。」

少年は改めて銀のケースの中身を眺めながら黒い瞳をキラキラ輝かせながら、
まるで翔太郎を誘惑するかの様な口調で囁いた。

「このドライバーとメモリが有ったら、僕ら無敵の超人に変身出来るで!
向かう処、敵無しや!
金も女もぎょうさん手に入るで!エエ想いさしたるさかい・・・

なぁ兄ちゃん・・・『悪魔』と相乗りせぇへんか?」

“パッコ〜ンッ!”と、
翔太郎がズボンの後ろポケットから取り出した
『こんなDVD特典はイヤだ!』と金文字で書かれた緑のスリッパが
少年の頭の上に小気味良い音を立てて鳴った。

「なッ・・・!なにすんねん!自分!」

「てっめェ!本っ当に可愛くねェくそガキだな!
来い!俺とおやっさんでお前を真っ当な道に更生させてやる!」

ガシッ!と翔太郎は少年の左手首を掴んで思い切り引き寄せる。

だが少年は激しく抵抗し、翔太郎の手を振り払った弾みで身体のバランスを崩し、
大きな箱の様な転送装置の中に倒れ込み、“シュン”と云う音と共に姿を消してしまった・・・。

(以下本編へ続く・・・のかな?(^^;))



2010年02月18日(木) こんな色紙はイヤだ!

路上詩人さちおの色紙を手にガックリと肩を落としたまま『鳴海探偵事務所』に帰って来た
翔太郎と亜樹子は事務所のドアを開けると、
床に座っているフィリップに声を“ただいま”と声を掛けた。

「あ、お帰り。」

そう答えて、またすぐに手元のハードカバーの本に視線を落としたフィリップに、
スッと翔太郎は1枚の色紙を手渡した。

「ほらよ、土産だ。」

「・・・何コレ?」

「詩人のさちおさんが書いた心にズン!と来る言葉だってよ。」

「ふぅん?」

ツヤツヤの唇を左手の人差し指で撫でながら、フィリップは色紙の言葉を読み上げた。

「・・・・・・『私はお前のご主人さまだ』?」

「ちょっ!ちょっと翔太郎君!」

思わず亜樹子が大声を上げる。

「あッ!ヤベ!間違えた!フィリップ!こっちだ!こっち!」

慌ててフィリップの手から色紙をひったくり、
改めてフィリップ宛に書かれた詩人の色紙を手渡す。

翔太郎の手からポロッと滑り落ちたもう1枚の色紙は詩人の言葉を、
事務所の床の上に、
ズン!・・・では無く、静かに響かせた。


『半人前でもいいじゃん』




次回『Nの苦痛/イタイのはおまえだ!ななか!』

「私は他に楽しい事が1つも無いの!私の人生に『仮面ライダーW』が必要なの!!」

・・・書いてて心に刺さるなぁ、マジで(涙)



2010年02月17日(水) こんな詩人はイヤだ!

(23話・路上詩人沢口さちおの車の前で翔太郎と亜樹子が聞き込みをするシーン)

「さちおさんは詩人でストリートの皆の兄貴分なんだ。」と、
サンタちゃんが紹介すると翔太郎と亜樹子は、
路上詩人沢田さちおと、
彼の前にずらりと並べられた色紙の前に腰掛けた。

色紙には彼自身の手で書かれた『心にズン!と響く言葉』が書かれている。

「ジミーなぁ・・・あいつもさぁ、夢だけはデカくてなぁ。無理だよなぁ・・・」と
呟きながら詩人は2枚の色紙に筆でさらさらさらっと言葉を書き、

「ほぉれ、お二人さん!」と翔太郎と亜樹子にそれぞれ色紙を差し出す。

「うっ!」
翔太郎は渡された色紙の文面を瞳にした途端、思わず呻き声を発した。

彼に渡された色紙には、
『半人前でもいいじゃん』と書かれていた。

「あぁぁぁぁぁ・・・・!」と色紙を手にしたまま、
ガタガタガタ・・・と翔太郎は小刻みに震え始める。

隣りの亜樹子に差し出された色紙には、
『金無くたっていいじゃん』と書かれている。

「良くないじゃん・・・!」と亜樹子も色紙を持ったままブルブル震え、
「良くないじゃんッ!!」と後ろでニヤニヤ微笑いながら立っているサンタちゃんに向かって
涙目で怒鳴り付けた。

「サービスだよ、お近付きの印に・・・どうだ?心にズン!と響くイイ言葉だろう?」

“あはははは・・・”と乾いた笑い声を立て、
「どうも・・・。」と、
翔太郎は怒りに硬く握りしめた左手の拳を懸命に抑え込んだ。

“うんうん・・・”と満足気に肯きながら、詩人は新しい色紙を取り上げて、
さらさらさら・・・っと筆を走らせた。

「ほぃ、これは事務所で留守番しているキミの相棒に・・・」と、
詩人は翔太郎にその色紙を差し出した。

「フィリップ君の分も有るの?」

「え?マジっすか?」

軽く頭を下げながら翔太郎が受け取った色紙には鮮やかな墨文字でこう書かれてあった。

『私はお前のご主人さまだ』

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

想わず絶句してしまった翔太郎と亜樹子に向かって詩人は、

「どうた?心にズン!と響くだろう?」

二人はフルフルフル・・・と首を横に振り、
色紙の文面が詩人に見える様にくるりと裏返して見せた。

「へ?・・・ああ!スマンスマン!ちょ〜っと間違えた!」と、
詩人は再びさらさらさら〜っと筆を滑らせ、
「ほぃ!」と2枚目の色紙を差し出した。

『良かったよ、昨夜の君は・・・もっとイイ、今夜の君は・・・』

「なッ!なんじゃこりゃぁぁぁッ!」

思わずスピックさながらに大絶叫してしまった翔太郎の手から、
詩人は慌ててバッ!と色紙を取り返すと、

「あ、いやスマンスマン!
慌てて後ろの車に貼ってある言葉を書いちまったよ!」と明るく声を立てて微笑った。

「車に貼ってあるのとは、またちょっと違うみたいだけど・・・」

隣りに座っている亜樹子は訝しそうに首を傾げる。

「あ、もうこれでイイっす・・・。」

ハァと肩を落としながら溜息を吐くと、
翔太郎は詩人から視線を避ける様に黒い帽子の鍔をツィ・・・と深く被り直し、
自分の分と『私はお前のご主人さまだ』と書かれた色紙の2枚だけを持ち
椅子から立ち上がろうと腰を浮かせた。

「あ!待ちなさい!
今度はちゃんと書いたから・・・心にズン!と来るのをな。」

そう言いながら詩人は翔太郎に“ほい!”と色紙を手渡した。
その色紙には・・・

『悪魔だってカワイイじゃんvv』

「・・・何でハートマーク付きなんだよ?」と翔太郎は呟いた。



2010年02月16日(火) こんな刃野刑事はイヤだ!(『仮面ライダーW』ネタ)

「なぁ翔太郎、お前んトコの探偵事務所にいるあの子・・・一体何モンだ?」

風麺の屋台に並んで腰を下ろし、無口なラーメン屋の主人への注文を終えた後、
ふいに刃野刑事が翔太郎に尋ねた。

「・・・フィリップの事ですか?」

“ああ”と肯きながら、刃野はおしぼりをビニール袋から出し、
両手と顔をゴシゴシ拭った。

「真倉が話してたんだが、なかなか頭の切れる子らしいじゃねェか?
九条刑事の右足の怪我を一目見ただけで彼女の正体を見抜いた洞察力、
そして照井警視のガジェットの映像を一見しただけで、
即座に『超常犯罪捜査課』に駆け付け、
俺のピンチを救ったあの勘の鋭さ・・・大したモンだ。」

刃野は主人が出したビールを翔太郎のグラスに注ぎ、
自分の分は手酌で注いで、グッと一口飲んだ。

「翔太郎・・・俺が思うにあの子は普通の子供じゃないんじゃないのか?」

ハッ!と反射的に息を呑んだ翔太郎の表情を見て、刃野は満足そうにニヤリと微笑った。

「・・・図星だな?
 翔太郎、もう一度尋くぞ・・・あの子は一体何モンだ?」

(やるな、ジンさん・・・なかなか鋭いぜ。)と、翔太郎は内心ヒソカに感心する。

だが、フィリップが組織ミュージアムの研究所でガイアメモリを作っていた事実を
刃野に話す訳には行かない。

グラスに注がれたビールに口を付け様ともせず、
重い表情で黙り込んでしまった翔太郎の左肩を刃野はポンと叩いた。

「まあ、お前が言いたくない気持ちは判る。
だがな翔太郎、俺に隠し立てしても無駄だ。
俺は俺なりに推理して、あの子の正体を突き止めた!。」

「え?マジっすか?」

驚きに鳶色の瞳を丸く見開いた翔太郎の鼻先に人差し指をビシッ!と突き付けると、
刃野はこう言い放った。

「あの子の正体は・・・鳴海荘吉だ!どうだ?当たりだろ?」

「・・・はァ?」

予想外の答えに思わず声を上げた翔太郎を尻目に刃野は熱く自説を語り始めた。

「俺の推理はこうだ!
謎の組織を追っていた鳴海荘吉はある日、
組織の構成員に捕らえられ、新型の毒薬を飲まされてしまい、
その副作用に依って身体が縮んで子供の姿になってしまった!」

「・・・何か、どっかで聴いた様な話ッスね。」

「鳴海荘吉が生きている事が判れば、、
周りの人間にも危害が及ぶと考えた彼は、
敬愛する名探偵フィリップ・マーロウの名前を名乗り、
探偵事務所の居候として身柄を隠しつつ時々お前の捜査に協力している。

鳴海荘吉が行方を眩ましたのと、あの子が『鳴海探偵事務所』に現われたのは、
ほぼ同時期だしな。

どうだ!バッチリだろ!俺の推理!」

「いや、ジンさん、全然当たってないんですけど・・・。」

“Pririri・・・”と、突然、翔太郎のジャケットのポケットから電子音が鳴り響いた。

ポケットから取り出したスタッグフォンの受信ボタンを押して耳に当てると、
かなり動揺しているらしい相棒の声が響いて来た。

“翔太郎!ファングに変身するよ!”

「ちょっ・・・!おい!フィリップ!どう云う状況にハマってんだ?!」

“いいから!早くドライバーを装着して!”

翔太郎はスタッグフォンを切ってポケットにしまい、刃野に背を向けると、
こっそりダブルドライバーを装着し、小声で“変身!”と唱え、
ジョーカーメモリを挿入した・・・。

「はい、風麺ナルト入り、おまちどうさん!」

ラーメン屋の主人が湯気を立てている丼を刃野の前に置き、
続いて翔太郎の前に置こうとして、思わず手を止めた。

「おい?翔太郎・・・?」

翔太郎は屋台のテーブルに突っ伏して意識を失っていた。

「おい?おい!起きろ!翔太郎!ラーメン伸びちまうぞ!おい!」

刃野は翔太郎の左肩に右手を掛けて揺さ振ってみたが一向に目覚める気配を見せない。

「・・・ったく、しょうがねェなぁ。」

刃野は割箸をパキッ!と割り、ナルトと丼の縁の隙間に挿し込みながら、

「まさか、
これから翔太郎の声色を使ってあの子が推理ショーでも始めたりして・・・な?」

誰にともなく一人そう呟くと、
フゥフゥ・・・と息を吹き掛けながら、ラーメンをズルズル啜った。

その時、
背後の道路をカツカツカツ・・・と硬い靴音を響かせて来る者の気配が通った。

「ん・・・?」

振り返って見ると、黒いトレンチコートを着た一人の男が刃野の背後を通り過ぎて、
向こうの曲がり角へ消えて行く処だった。
男にしては珍しく腰まで長い銀色の髪を垂らしている。

(この辺りでは見掛けない顔だな・・・?)

刃野が首を傾げながら、再びラーメンを啜ろうとした時、
“タッタッタッタ・・・”と、
軽快な足音がトレンチコートの男の後を追うかの様に走って来た。
紺色のブレザーに赤い蝶ネクタイを付け、大きな黒縁メガネを掛けた小学生位の少年は、
周囲をキョロキョロと見回し、
刃野に気付くと、いかにも子供らしい丁寧な口調で尋ねた。

「ねぇねぇ、おじさん・・・。
さっきこの辺を黒いコートを着た背の高ぁ〜い男の人が通らなかった?」

「その男なら向こうへ行ったよ、坊や。」

刃野が答えると、その子供は急に大人びた声になって、こう吐き捨てた。

「くそっ!ジンのヤツ・・・!
この街に来たのは一体何の目的だ?まさか『ガイアメモリ』を?!」

「ジン・・・?俺もジンさんだが、何か用か?」

刃野に掛けられた声にハッと我に返ったらしい少年は、再び子供らしい口調に戻って、

「何でも無いよ!ありがとうね!おじさん!」

そう言いながら可愛らしい仕草で手を振りながら駆け出して行った。

「おい!坊や!子供がこんな遅い時間に一人で出歩くんじゃ無いぞ!」

すると少年は刃野を振り向いて背中越しに微笑いながら、


「坊やじゃないよ!僕は・・・通りすがりの名探偵さ!」



次回『Kの孫/ジッチャンの名にかけて!』

「おやっさんの名にかけて、この簡単な事件!俺が二週間保たせてやるぜ!」
「いいよ、翔太郎!5分で解決して残り時間はカラオケに行こう!」

これで決まりだ!



2010年02月15日(月) こんな死なない男はイヤだ!(『仮面ライダーW』ネタ)

(22話、ボロボロに傷付いた照井竜が登場するシーン)

「俺は死なない・・・!まだやらなきゃならない事が、あるからな!」

喉の奥から絞り出す様な声で言うと、
竜はヨロヨロしながら、
トライセラトップス・ドーパントの脇をスッと素通りし、
ファングジョーカーの右側の赤い瞳に向かって話し掛けた。

「フィリップ、俺のビートルフォンは受け取ってくれたか?」

「え?・・・ええ!後で返します。」

「いや、あれはキミの分のビートルフォンだ、フィリップ。
俺の『恋活』・・・じゃなかった『復讐』を支えるシュラウドに頼んで作ってもらった。」

「え?」
「はぁ・・・?」
フィリップは不思議そうに首を傾げ、翔太郎は呆れた様な声を上げる。

「俺との電話なら24時間通話無料、もちろんメールもし放題。
警察電話同様、地下や室内外関係無く、何処にいても繋がる。
キミからの電話にはどんな事があろうとマッハで出てみせるぜ。
左の様に女の子達とのカラオケでうつつを抜かして、
キミからの大切な電話に出られなかったりする事は断じて無い!」

「おい!照井!てめェまた人の相棒にちょっかい出そうってのか?」
翔太郎の憤りに合わせてファングジョーカーの左拳がグッ!と握り締められる。

だが右側は、

「そうだね・・・
もしまた翔太郎が電話に出てくれなかったら、
今度は照井さんの電話に掛ける事にするよ。」

「何ぃ!?」

「翔太郎!少しは反省したまえ!」

ファングジョーカーの右瞳が激しい憤りにチカチカ点滅する。

「キミは九条綾を二度も取り逃がした!
そもそも最初に彼女と闘った後に九条綾の右足の怪我から
トライセラトップス・ドーパントの正体に気付かないなんて・・・。
キミは探偵に必要な洞察力、観察力が足りなさ過ぎだ。
照井警視の方がよほど頼りになる。」

「フィリップ・・・。」

相棒の厳しくも的を得た指摘にファングジョーカーの左瞳が苦々しく煌めく。

「それに、
僕だってカラオケに行きたかったのに・・・。」

“翔太郎や亜樹ちゃんだけズルいよ・・・。”とブツブツブツ・・・呟くフィリップの声に連動して
右瞳が点滅する。

「しょうがねェじゃねェかよ!だって、お前は組織に狙われてっから外出させられないし・・・。」

「今回はキミが電話に出てくれないから、
仕方無く外出して風都署に行ったけど、別に危険な事は無かったよ!
大体、翔太郎は・・・!」

激しく左右交互の点滅を繰り返すファングジョーカーに向かって竜は熱く囁く。

「フィリップ・・・
キミの為なら『鳴海探偵事務所』から『カラオケ店』までの道路に特別警戒態勢を配備し、
風都署の警察官を総動員してキミの警備に当たらせる。
もちろん『カラオケ店』はビルごと貸切るぜ!
絶対に組織に手出しはさせない!」

「バカ!そんな事したら、余計目立つだろうがッ!」

「ありがとう、照井さん!今度是非カラオケに連れて行って下さいね。」

嬉しそうに答えながら明滅する右瞳の輝きに左瞳は動揺を隠せない。

「なッ!?おい!フィリップ!」

「俺は死なない!
カラオケでフィリップと『Naturally』をデュエットするまではな!」

「・・・復讐じゃないの?!」と、
トライセラトップス・ドーパントこと九条綾が呆れた声で叫んだ。



次回!『Pの熱唱/怪しいマスク着用でのご入店はお断りさせていただきます。』
「そんな!僕は組織に狙われているんだよ!」

(狙われてる人間があんな怪しさMAXのマスク着用のみで
TV出演しちゃったら、余計に危ないゼェェェッッ!!)



2010年02月14日(日) Sweet Memories

「こんにちは!フィリップ君いますか?」

元気130%の美声と共に『鳴海探偵事務所』のドアを開けて入って来たのは、
何と!風都のシティエンジェル園咲若菜だった。

「えっ?わ!わ!わ!若菜さん・・・っ?!」

ほとんど条件反射の勢いでフィリップは床から立ち上がると、
ソフト帽が掛かっているドアを開け、その向こう側にさっと隠れてしまった。

「フィリップ!おい!フィリップ!」
「フィリップく〜ん!お〜い!」と翔太郎と亜樹子がドアを叩いて呼んでも
全く現れる気配は無い。

翔太郎は仕方無く、
チャコールグレーのスーツを着て、以前より大人びて見える若菜に軽く頭を下げた。

「すいません、ウチの相棒、
超!恥ずかしがり屋なんで・・・。」

「じゃ、これをフィリップ君に渡してもらえますか?」

そう言うと若菜は持っていた白い紙袋から、
赤地に白の水玉の包装紙でラッピングされ、
白いレースを縁取ったピンクのリボンで飾られたハート型の箱を取り出した。

「えっ!アイツにですか?!」
「スッゴ〜イ!若菜姫からバレンタインチョコなんて!」

二人は思わず驚嘆の声を揃えて上げた。

「あ、助手さん達の分も有りますから・・・。」

「誰が助手さんだッ!」
「アタシ、所長なんですけどぉ・・・?」

ごそごそ・・・と紙袋から取り出されたのは、アルミホイルの小さな包みが二つ。

「・・・何か、露骨に差が付いてねェか?」
「・・・てゆーか、いくら『義理』でもアルミホイルは無いんじゃないの?」

ヒソヒソ小声で囁き合う二人には瞳もくれず、
若菜は恥ずかしそうに頬を紅く染めながら、
「フィリップ君によろしくお伝え下さい。」と、頭を下げて出て行った。

“バタン!”とドアが閉まると、
ソフト帽が掛かったドアが開いて、
白黒のボーダーTシャツにレモンイエローのパーカーを纏ったフィリップが
フラリ・・・と現れた。

「やったじゃねェか!フィリップ!」
「良かったわね!フィリップ君!」

翔太郎に差し出されたハート型の箱をフィリップは、
「え?あ・・・はぁ、どうも・・・。」と、しどろもどろ答えながら受け取る。

ドアの向こうでやり取りは聴いていたらしく、
黒い瞳が熱を帯びてぼんやり潤み、何だか足取りがふわふわとおぼつかない。

ドサッ!と事務所の床に座り込み、ハート型の箱を呆然と眺めているフィリップの頭を
翔太郎は右拳で軽くコツンと小突き、

「オラ!開けてみろよ、相棒!」
「そうよ!開けてみて!開けてみて!
若菜姫の愛の手作りチョコレート、見た〜い!」

「キ、キミ達だってもらったじゃないか!自分達のを開けたまえ!」

好奇心旺盛な瞳で覗き込む翔太郎と亜樹子から
隠す様にハート型の箱を胸に抱えながら叫ぶフィリップの頬は赤く紅潮している。

「だってアタシ達のは・・・」
そう言いながら、
亜樹子と翔太郎はそれぞれの指先に摘まれたアルミホイルの包みを淋しそうに見つめる。

渋々・・・と云った顔付きでフィリップはピンクのリボンを解き、
赤白水玉の包装紙を開け、ローズピンクのハート型の箱の蓋を開けた。

中には薄紙に乗せられ、金箔をトッピングされたチョコレートトリュフが6個
可愛らしく並べられていた。

「お!ウマそう!さすが若菜姫!!」
「わ!カワイイ!さすが若菜姫!!」

フィリップは、箱の中のトリュフをしばし、
じ・・・っと眺めた後、
そっと一粒指で取り出し、唇に入れた。

「美味しい!
まさに天使が作ったチョコレートだ!さすが若菜さん・・・。」

フィリップは黒い瞳をキラキラ輝かせて、感嘆の声を上げる。

「え?マジかよ!じゃ俺もさっそく・・・。」
「アンタ甘いものは嫌いじゃなかったの?
ハードボイルドに女と甘い物は不要なんでしょ?」
ウキウキとアルミホイルを解き始めた翔太郎の腰を肘鉄で軽く小突き、
亜樹子もアルミホイルからトリュフを取り出し、ほぼ二人同時に口に入れた。

「うわっ!何コレ!苦・・・ッ!!」
「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁッ!!」

一口食べると同時に思わずペッと吐き捨てた。

舌の上に乗せた途端に拡がる奇妙な青臭さとカカオの香りのミスマッチング、
ツーンと鼻を突くアルコール臭とボソボソゴロゴロしたイヤ〜んな舌触り・・・

はっきり言って・・・・・・・・・・・・・マズイ。


「なぁ・・・確か手作りチョコ作んのって、そんなに難しいモンじゃねェだろ?」

翔太郎の問いに亜樹子はコクと肯き、

「『手作り』って言っても、
実際には売ってるチョコレートを湯煎で溶かして
生クリームとかナッツとか混ぜて固め直して、トッピングするだけよ。」

「じゃあ!なんでこんなクソ不味く仕上がるんだよッ!有り得ねェだろ?」

だが・・・

「美味しい!さすが若菜さんだ!
このピスタチオと生姜とセロリと紹興酒、
レーズンとパプリカの複雑な配合には神秘さえ感じる・・・。」

フィリップは嬉しそうにモグモグ食べながら、
陶酔した瞳をうっとりと空に彷徨わせている。

「あのさ?フィリップ君?
そのチョコ・・・本当に・・・美味しいの?」

亜樹子が恐る恐る尋ねるとフィリップはムッと眉間に縦ジワを寄せた。

「キミ達、何を言ってるんだい?
いくら自分達の口には合わないからと言って、
その言い方は若菜さんに失礼じゃないのかい?」

どうやら彼は本気で美味しいと想って食べているらしい。

「じゃぁ・・・コレ、もし良かったら食べる?」
「あ、俺のもやるよ。」

亜樹子と翔太郎が申し訳無さそうに自分達のチョコを差し出すと、
フィリップは表情を輝かせて微笑った。

「いいのかい?ありがとう!」

「フィリップ君て・・・やっぱりマニアック?」
「つーか、恋は盲目ってヤツじゃねェの?」

ヒソヒソヒソ・・・と小声で囁き合っている翔太郎と亜樹子には全く無関心な様子で、
チョコを食べていたフィリップは、

「あ!そうだ!若菜さんにお礼の電話をしなくちゃ。」

そう言うとパンツのポケットからスタッグフォンを取り出して、
メモリしてある若菜のTELナンバーをプッシュした。


「まぁどうしたの?この有様は!」

次の晩餐会の料理の打ち合わせの為に園咲家の調理場に入った冴子は、
調理場の壁や床、天井のあちこちに飛散しているチョコレートの滓や、
シンクに積み上げられたチョコまみれの鍋やヘラなどの汚れ物を、
使用人達が総動員で拭き、洗い、
後始末している場面を見て、思わず声を上げた。

「若菜お嬢様が、
また今年もバレンタインのチョコレートをお作りになられまして・・・。」

「何?あの子ったら、またあのクソ不味いチョコを作ったの?
恋わずらいの相手にでも贈ったのかしら?自虐的だこと・・・。」

冴子は心底、呆れ返った様に言いながら溜息を吐く。

「あの、若菜お嬢様のチョコは、そんなに不味いんでございますか?
お嬢様から
「台所を使わせてもらったお礼に」・・・と、
私共使用人全員に義理チョコを下さったのでございますが・・・。」

園咲家に入りたての若いメイドが躊躇いがちに尋ねると、
冴子は右掌をピラピラと振りながらピシャリと言った。

「ああ!無理して食べなくていいわよ!捨てちゃいなさい!

あの子、昔っから手作りチョコを毎年毎年毎年!作るんだけど、
とてつもなくマズいから、
お父様もアタシも大嫌いだし、
貰っても、誰も食べやしないのよ。
霧彦さんだって一口だけ食べて、後でトイレで吐いてたんだから!!

あ、でも・・・
そう云えば一人だけいたわね、物好きが。」

ふと冴子は何かを想い出したかの様に、
長い睫毛に縁取られた切れ長の瞳を薄く伏せた。

「あの子だけは、
あのチョコを毎年喜んで食べていたわね・・・」


“あ、若菜さんですか?フィリップです。
チョコレートありがとうございました。
すごく美味しかったです。

え?何言ってるんですか?
僕はお世辞なんかで言っていません。
ええ、本当に。

なんだかとても 懐かしい味がしました・・・。”



2010年02月04日(木) こんなアクセルドライバーはイヤだ!

「やった!ついに完成したぞ!。」

“バン!”と大きな音を立てて『鳴海探偵事務所』の扉が開いて、
照井竜が意気揚々とした表情で飛び込んで来た。

「何だ?!てめェ!また来たのかよ?
二度と来んな!って言ってんのに懲りずに毎日、毎日、毎日、来やがって!。」

翔太郎が形の良い眉を不機嫌そうに顰めながら怒鳴り付けたが、
竜は全く耳を貸さず、もちろん視界にも入れず、
事務所の床に座ってお気に入りのハードカバーの本を眺めているフィリップの前へ直行し、
その前にスッとひざまづいた。

「フィリップ!ついに完成したんだ!『ダブルアクセルドライバー』がな!」

満面の笑みを浮かべながら、竜はフィリップの眼前にドライバーを差し出した。
一見『アクセルドライバー』と大差無い様に想えたが、改めて良く見ると、
メモリの挿入口が二箇所に増えている。

「『ダブルアクセルドライバー』?何だそりゃ?」

「見ての通り、二つのガイアメモリを挿して変身出来るアクセルドライバーだ。
シュラウドに頼んで作ってもらった。
アイツは俺の『恋活』・・・じゃない『復讐』を支えると言ってくれているからな。
さあ、フィリップ、これでついに俺とキミは身も心も1つになれるぜ。」

「人の相棒に気持ち悪ィ事言ってんじゃねェよ!この性悪刑事め!」

翔太郎が思いッ切り竜の頭上に向かって振り下ろした緑のスリッパを、
軽い身のこなしでヒョイ!とかわすと、

「さあ!フィリップ!そんなヘボ探偵はマッハで振り切るぜ!
天国の果てが俺達の・・・ゴールだ!」

「ふぅん、『ダブルアクセルドライバー』か・・・。」

フィリップはツヤツヤの下唇を右手の人差し指でなぞりながら、
竜の手に握られた『ダブルアクセルドライバー』をしげしげ眺めていたが、
やがて、フッと唇の端を上げて微笑すると、

「興味深い・・・。
照井竜、試しに僕と合体してみようか?」

「何ぃッ!?」

翔太郎は思わず耳を疑った。

「おい!どういうつもりだ?フィリップ?
お前は俺と・・・地獄の底まで相乗りするんじゃなかったのかよ?」

「僕は新しい超人の能力に興味が有るだけだよ。
さあ、ドライバーを装着してみたまえ。」

フィリップに促された竜が嬉しそうに『ダブルアクセルドライバー』を腹上に装着すると同時に
全く同型のドライバーがブワン!と出現した
・・・・・・・・・・・・・・翔太郎の腰に。

「なっ!なんじゃこりゃぁぁぁ〜〜〜ッ!?」

「どっ!どういうことだぁぁぁ〜〜〜ッ!?」

思わず声を上げた二人の腰のドライバーを“ふんふん・・・なるほど・・・。”と、
ブツブツ呟きながら眺めていたフィリップは可笑しそうにクスクス微笑いながら、

「どうやら僕よりも翔太郎の方が照井竜との生態DNAコードの相性は良い様だね。
キミ達、試しに合体して身も心も1つになってみたらどうだい?」

「バッ・・・!?おい!冗談じゃねェ!
大体、このドライバーってばよ!
こうやって二人で並んで装着してると、
「轢き殺されてェのか!バカやろこのやろ!おめぇ!」の、
お笑いコンビみてェじゃねェかよ!」

「古いッ!ネタが古過ぎて耐えられんッ!」

「ハーフ・ボイルド・・・だね。」


次回「Aの行進/歴代仮面ライダーの皆さんといっしょ」
一歩進んで前ならえ!これで決まりだ!


(『A』はアルゴリズム行進の事です。
『いつもここから』繋がり・・・と云う事で。
『ピタゴラスイッチ』観てないと判らないネタですみません)


おまけ(『ピタゴラスイッチ』ネタ)

『翔太郎スイッチ(照井竜は不可!)』行きますよ〜♪

翔太郎スイッチ 『あ』

悪魔と相乗りしてやるぜ!

『い』

行こうぜ!地獄の底まで!

『う』

動いてから立てりゃ良いんだ!対策は!

『え』

エリート警視なんかに相棒は渡さねェ!

『お』

俺たちは二人で一人の仮面ライダーだ!


・・・・よくできました。(←自画自賛?)


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