Monologue

2008年05月10日(土) 伝導

今日は某デパ地下にてピザの試食販売のバイト。

どうせ次の仕事が決まる迄の短期バイトだし、
とりあえず大声を張り上げて、試食を配っていれば良いや、と云うスタンスで始めたのだった・・・が、
「いらっしゃいませ!○○製品の『マルガリータ・ピッツァ』!!」と、
マニュアルに書かれているセールス・トークを言う度に、
頭の中で、
(メーカー名と商品名は絶対に間違わずに丁寧に言う事!
 このメーカーさんからお仕事を頂いて、この商品を売る事でお金を頂いているのだから・・・)とか、
(たとえ今日一日だけでも、本気でこの商品を大好きになって、心から「美味しい!」と想いながら言ってごらんなさい)と云う、
朗読の先生のダメ出しが聴こえて来るのだ。

「美味しいですよ!いかがですかぁ〜!!」と叫べば、
すかさず、
(嘘!今のは全然「美味しい」と想って言ってない!)と云う声が聴こえる。

ダメ出しに負けるまいと、
開店前に少しだけ食べたピザの味を必死に想い出し、
その時の美味しさを心の中で何十倍にも増幅させて「美味しいピザですよ〜!」と言ってみた。

お客様はとても正直な反応で、
「美味しいですよ!」と心から言えている時は集まって来てくれて、
ちゃんと商品も購入して頂けた。
もちろん言っているつもりでも言えていないであろう時は全くダメ・・・

このバイトを私は過去に何度も何度も何度もやったが、
こんな風に商品名を大切に言おうとか、
心から美味しいと想ってお客様に奨めた事は全く無かった。


人に何かを伝える事は全て『表現』なのだ。
『表現』は舞台の上でだけ一生懸命やれば良いのでは無い。
日常生活で、仕事で、お客様に心を込めて伝え様として来なかった私が、
舞台の上でちゃんとした『表現』が出来る筈が無い。

当初、嫌で嫌で堪らなかったこのバイトから、
こんなに大切な事を学べるなんて想ってもみなかった。

丸一日叫び続けたお陰で声はガラガラに枯れてしまったが、
一晩寝たら元に戻っていた。

しかも歌のレッスンでは、いつも以上に声が良く出ていると先生に褒めて頂いてしまった。


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