Monologue

2007年08月17日(金) あなたへの花束

『童話づくり』(立原えりか著)を読了。

整体の帰りに立ち寄った古本屋で衝動買いし、あまりの面白さに一気に読んでしまった、
童話作家立原えりかさんのエッセイ。


“『童話作家』と云うと、幼少時代から沢山の本を読み、綺麗なドレスを着て、澄んだ水や草葉の露だけを食べている妖精みたいな人だとご想像される方が多いのですが、決してそんな事はありません。”

上記程に極端な想像はしていなかったが、立原さんの様に幻想的な物語を描かれる方は、ちょっと浮世離れした、ふんわりした方だと想っていたので、
戦争の為、本は総て焼けてしまい、読みたくても全然読めなかった事や、
当時二階建ての大きな家に住んでいたチアキちゃんと云うクラスメートの男の子に、
「ウチには本がいっぱい有るから、毎日でも読みにおいでよ」と誘われて遊びに行った次の日、彼の家が空襲で全焼してしまっていたり等、
あまりにも哀しい『現実』を体験なさって来られた方だと云う事実を、このエッセイで初めて知った。

“チアキちゃんや空襲で喪われてしまったクラスメート達を、自分が描く『童話』の中に登場させました”と立原さんは語る。

そして、
“空襲の所為で黒い灰燼と化してしまった、美しいお雛様や大好きだった人形のユキちゃんを抱き締めて大泣きした・・・あの哀しい朝の想い出が有るから、今でも3月になると人形の話を描かずにはいられなくなります。

もし自分が綺麗な人形や素敵なドレスを沢山持っていて、総てに満足していたら『童話』を書いていなかったでしょう”と云う立原さんの言葉には想わず頷いてしまった。

すぐ物欲が満たされる現代よりも、やはり貧しく苦しい生活の方が、大変では有っても『想像力』『創造力』は、格段に発達すると想う。

私も、最近のほほんと呑気に過ごしているので、もっと飢えた方がイイのかもしれないと、ちょっと反省した。
(ムリムリ甘ちゃんだから(^^ゞ)

また立原さんは、その秀でた筆力に導かれるまま、あまり労せず、ふんわりと『童話作家』になられたのだろうと勝手に考えていたのだが、
実は全く違っていた。

『童話作家』になるなんて『夢』のまた『夢』

到底叶えられないならば、せめて『ハタチ(二十歳)』になって純粋な心を失う前に一冊本を出そう、と決意する。

まだ『自費出版』なんて言葉も無い時代、
『名刺』やら『暑中見舞い』やらを刷っている街の印刷屋さんに相談し、提示された高額な印刷代を稼ぐ為、昼は事務職、夜はウェイトレスのアルバイトを始める。

苦しく辛いアルバイトの末、やっと初めての自分の『本』を111冊印刷した。
敬愛する作家や出版社に送りに送った内の1冊が『児童文学者協会』の新人賞を受賞する。

だが『賞』を取った後、来た仕事はたった一本。
その後も自費で『同人誌』の出版と『童話』の投稿を続け、
ついに一年掛かりで準備し書き上げた『でかでか人とちびちび人』が『講談社児童文学新人賞』を受賞。

だが、その後は、
貧しい生活を支える為の仕事として『童話』を描く日々が始まる。

“心をこめて描いた『童話』が、じゃがいもや人参や石鹸等、普段の生活に使う物と引換えられて行くのは、まるで魂を切売りしている様で寂しかった”

『夢』を叶えるのも大変だが、叶った後にも苦難の道が待っている。

だが、ひたむきに『夢』に向かい、力を尽くしている立原さんの言葉には、励まされ勇気付けられた。

今度久し振りに立原さんの『童話』を読んでみよう。
『朗読』もしてみたい。



2007年08月14日(火) ココロノタビ

ばかなワタシ

のろまなワタシ

なきむしなワタシ

ぶきようなワタシ


そんなワタシがありのままのワタシでいられる場所を
ワタシはずぅっと 探している

瞳をあけている時も 
瞳をとじている時も

ずっと ずっと ずぅっと・・・



2007年08月07日(火) てふてふ

『てのひらの蝶』(小笠原慧著)を、ようやく読了。

予想外に読むのに時間が掛かってしまった。
明日急いで某区立図書館に返却しに行かなければ・・・
(こんな私でスミマセン(^^ゞ)

『犯罪』を犯す人間は、先天的(或いは後天的)に脳や遺伝子に異常が有ると云う説に基づいて書かれた猟奇ミステリ。

たとえどんなに優しい心を持っている人間だとしても、身体内を流れる邪悪な黒い血が彼らを殺人へ駆り立て、犠牲者の血を啜らせる。

吸血鬼の弱点は『鏡』だが、この小説の哀れな殺人鬼は『鏡』に写った血濡れの自分自身の姿に戦慄し破滅して行く・・・
(ミステリなので、あまり詳しく内容を書けません。判り辛い文章で、すみません)

また作者の小笠原氏が現役の精神科医だけあって、ある生物の遺伝子が人体に及ぼす影響や変化の描写が専門的かつ説得力が有り、それが迫り来る恐怖にリアルな拍車を掛けていた。


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