蜜白玉のひとりごと
もくじかこみらい


2014年09月17日(水) 夏は過ぎ、また富士日記

昨年の夏を教訓に、文句を言い言いただひたすら耐える「猛暑日+熱帯夜」×連続何十日を覚悟していたのに、結局雨ばっかりザーザー降って今年の夏はあっけなく過ぎてしまった。最高気温30度以上の真夏日もどうやら最後になりそうだという、昨日の東京は29.5度で真夏日ですらなく、何となく蒸し暑いけれどこれは夏ではないのだな。

気温はともかく日照時間が少ないと、いろいろカビが生えるし、気持ちもくさくさして、いいことない。洗濯物がおかしなくらい短時間でパリッと乾く、あの夏が少し恋しい。

もはや夏の名残りといえば蚊くらいで、こいつらは今年はなんとデング熱をうつしていくかもしれないから、いつも以上に厄介だ。虫よけスプレーをして長そでシャツを着ていても、シャツの布地の網目から刺されて、一体どうしろと!と吠えた。さいわい今のところ発熱はしていない。油断ならない。熱が出たら解熱剤も選ばないと重篤化するから危険だ。それにしてもいつから日本に居たのか、デング(もちろん今まで天狗だと思っていたよ)。

この頃は図書館で借りてきた本は放りっぱなしで、家にある『富士日記』をパッと開いたところから読むという消極的読書生活を送っている。武田百合子はいつ読んでも裏切りなくおもしろく、食べ合わせが悪くて胃が痛くなりそうな献立を見ては、クククと笑いともつかない息が口の端から漏れる。

山の家の食事、管理所での支払いに買い物。大岡さんとの行き来、誰彼の話。眠たい車の運転。時折山が見せる目の覚めるような景色、草花の様子、季節の移ろい。口に出して言ったこと、思ったけど口に出さなかったこと。何でも書いてある。よく見ているしよく聞いているから、あれだけ細かに書けるのだと思う。他人の言ったことなんてそうそう覚えていられないものだ。


2014年09月13日(土) 腹・裏腹

笑えるくらいの不調続きで、今週は週の半ばに腹痛に襲われついでに背中も痛くなり、いったい腹の中で何が起きているというの。貧血のため鉄剤を処方してもらっているいつもの先生のところで、先生いままさにお腹がこのように痛いのですが、と訴えるとどれどれとていねいに診てくださる。結果、尿路結石の疑いで、8月の子宮筋腫に続き、自分のことながら思いもよらなくてまた驚く。

はたして結石疑いの腹痛と背中痛は薬を飲んだら翌日にはうっすらと、ぐらいまでになり平常運転へ。次はさて何でしょうか。自分の体にお伺いをたてれば、以前よりますます気になってきているのは、夕方に突如やってくる倦怠感と脱力感と手の震えだけれど、これに気がついたのは20代半ばくらいのことで、それも毎日ではなくて週に2、3回、午後3時くらいから夜にかけてで、その頃かかっていた別の先生には低血糖じゃないの?何か口にして、と言われ納得していたものの、それからも特に治ることもなく、今の先生には貧血を相談した折に甲状腺かもね、と言われ、検索してみればあらゆる症状が自分に当てはまるように思われ、しかも女性は30人にひとりは甲状腺の病気になるのに意外と知られていない上に、自律神経失調症やらうつ状態やら不定愁訴なんてことで治療を受けるに至っていないというから、おいおい。甲状腺ホルモンはまずは血液検査でできるようなので、これも貧血のその後を調べるついでにいっとくかというところ。

その場で取り出して見せることのできない、痛みや疲れというものの取り扱いは本当に難しい。他人より我慢弱い(我慢強いの反対)のかと思っていたけれど、こと生理痛に関しては明らかに痛くて当然の状態だったことが判明し、私の我慢が足りなかったわけではないことがわかり、痛みそのものがなくなったわけでもないのに、痛みに伴う真っ黒いいやな感情はすうっと消えてなくなっていくようであった。不思議なことである。倦怠感や腕のだるさ、手に力の入らなさ加減についても、この際甲状腺が説明してくださらないものかな、と淡い期待というとなんだか変だけれども、可能性として考慮してもいいんじゃないかなと思いはじめている。

食事や睡眠はそりゃあ完ぺきではないにしろそれなりに気をつけているし、日常生活が特にハードってわけでもないし、職場のストレスも大したことないのに、なぜかやる気が出ない、疲れて仕方ない、こんなことくらいでどうしてと、自分の体力と耐力のなさにがっかりしている3連休のはじまり。さわやかな空気と秋の空とはまったく裏腹よ。


2014年09月04日(木) 突然のマリモ愛

事の発端は職場での昼休みの会話にて、北海道土産に買ってきたマリモが部屋にあるんだけど、あれってどうやって育てるんだろうね、と誰かが軽い気持ちで空中に放った質問だった。小瓶に入った定番のお土産品として、沖縄土産が「星の砂」ならば、北海道土産のそれは「マリモ」である。

−マリモって海だっけ?海水?塩水?え、水道水でいいの?

マリモは北海道の阿寒湖にいるんだよ。マリモはたしか天然記念物で、だからお土産用のマリモはどこか別の、取っていい箇所の、マリモじゃないかな。マリモっていうからには藻だよね、ってことは光合成して成長してるはず。

−てか、なんで丸いの?

転がるからじゃないかな。お土産のはときどき瓶をゆすってあげるんだよね。

−これって半分に裂いても成長するかね?

そ、それはどうかな。いけると思うけどやったことない。

ちょっと知ってるからっていい気になって話していたら質問攻めにあった。その後、気になってマリモマリモと調べていたら、ちょうどNHKスペシャルでマリモ特集があり、喜んでばっちり見ることに。

以下、テレビからわかったこと。

・マリモはあの繊維みたいな1本1本が「毬藻」という藻で、光合成で成長し、伸びて絡まって球体を構成している。まるくなるのはめずらしいことで、そのほとんどは糸状のまま水中を漂っていたり、岩にくっついたりして生息している。

・阿寒湖のマリモは7年間で直径30センチにも成長する。マリモは大きくなると中心部分に光が当たらず中から崩壊していくが、それは死んだのではなく、バラバラになって岸に打ち上げられたマリモはまた新しい小さなマリモとして引き波に乗って湖に戻っていく。

・世界中のマリモ群生地はこの十数年で激減し、今となっては阿寒湖だけになってしまった。阿寒湖でもそのごく一部分(サッカーコート半分くらいのスペース)にしか群生しておらず、阿寒湖周辺の風や波や湧水などの絶妙なバランスがあってこそ、あの、たくさんの、まんまるのマリモが生きていける。

・かつて阿寒湖よりはるかに規模の大きなマリモ群生地だったアイルランドのある湖では、たった2年でマリモが全滅してしまったという。調査の結果、湖岸にできた工場からの排水により、ユスリカの幼虫が激減し、ユスリカの幼虫によって分解されていた湖底の泥が分解されなくなり、マリモは堆積した泥に埋もれて死んでしまったということだった。だめになるときはあっという間なのだ。

マリモへの興味は尽きず、会う人ごとにマリモの話をしていたら、観葉植物や苔玉を扱っているお店の片隅にマリモが売っていることを友人が教えてくれた。ついにマリモを飼うことになった。植物を「飼う」って変だけれど、緑の球体は水の中で何かを考えていそうで、「買い求める」というより「飼いはじめる」という感覚に近い。

それは直径1センチくらいの小さなやつで、添付の説明書には、阿寒湖のではなくてヨーロッパの毬藻をていねいに丸めた、とある。汲み置きの水で週1〜2回水かえをすること、ときどき転がすときれいな球体になること、直射日光を避け日の光が届くところで水温28度以下、季節ごとに液肥を1滴入れれば緑が濃くなることが書いてあった。

了解した。私もマリモについては少し詳しいからまかせて。30センチとまでは行かなくても、大きく育ってほしい。我が家のマリモは今日もいちごジャムの瓶で、私が揺らす波をじっと待っている。


2014年09月03日(水) 「焼き肉」考

焼き肉が消化不良なんだよね。といっても、食べた肉がお腹で消化不良を起こしているわけではない。およそ半月前、お盆休みのど真ん中に夫の実家に帰省したとき、姪たちと行った焼き肉がどうも不完全燃焼だったようなのだ。あの日から焼き肉がチラチラと頭のすみをよぎる。

夫の妹とその旦那さん、姪っ子、義理のお母さんと私たち夫婦の6人で、彼女たちがいつも行くという焼肉屋さんに連れて行ってもらった。予約していったら、人気店らしく6時を回ればあっという間に満席。のんびりメニューを見ている暇もなく、かろうじてタン塩をお願いして、あとは店員さんとお客さんの熱気に飲まれた。

テーブルの中央にはおそろしく小ぶりな焼き網が埋め込まれており、そこに6人分の肉がびっしりと敷き詰められては焼かれていく。視線を上げれば、目の前では姪っ子が大盛りご飯にユッケをのせて、口いっぱいに頬張っている。つい半年前に会ったときはまだ食が細かったはずなのに、思春期の女子は想像を超えて変貌するものだ。肉のおかわりの他、石焼ビビンバやスープやキムチ、さらには焼き肉定食(!)まで注文する。焼き肉しながらの焼き肉定食には驚いた。おそるべし、焼き肉の二重構造。この焼き肉合戦には本当に終わりが来るのかといぶかしく思いながら、その量とスピードに圧倒されっぱなしだった。

遠慮すると場がシラけるから遠慮しているそぶりは見せず、それでもやっぱりどこかで気を遣いながら、ホルモン(食べられない)以外の肉をパッと小皿に取る。生焼けだったり焦げていたり、まったくペースがつかめない。誰もお酒を飲まないからビールの「ビ」の字が出ることもなく、おとなしくウーロン茶と白いご飯でお肉をいただいた。だめだ、調子が出ない。焼き肉はもっと、前のめりに食べるものだ。

おいしかったはずなのに、と昨日の夜また思い出しながら夫に訴えると、それは自分たちの焼き肉ができなかったってことだね、と断言された。自分たちの焼き肉、どこかで聞いたようなセリフだ。自分たちのサッカーができなかった。そう、それそれ。

自分たちの焼き肉。そんなものがあれば、の話だけれど、確かに夫と二人で行くいつもの焼き肉のようにはふるまえなかった。我が家がよく利用する吉祥寺のGとはお店の勝手が違ったからかもしれない、と返せば、でもこの前はじめて行ったRでも大丈夫だったじゃない?と言われ、そうだったと思いなおす。自分たちの焼き肉とは何なのかをよく考え、今度こそ自分たちの焼き肉を発揮するべく、週末は焼き肉へ行くぞ。


蜜白玉 |MAILHomePage