蜜白玉のひとりごと
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神奈川近代文学館にて、講演会『私の本について話そう8 佐藤さとる×末吉暁子』開催。おそらく一生に一度の佐藤さとる先生のお話を聴きに行く。詳細は後日アップ予定のレポートにて。
講演がはじまる前に、元町商店街をぶらり。仮装した子どもを多数みかける。ハロウィンだった。
朝の本屋さん、無造作に積んであるように見えても、きっと秩序立っているのだろうから、それを壊さないようにして分け入る。
『ウェイクフィールド/ウェイクフィールドの妻』 柴田元幸さんの名前を見つけて手に取る。夫が失踪する話らしい。約160年前に書かれたこの小説を、今度は妻の立場から書き直してみたもの。それだけですごくおもしろそうだ。オリジナルとリメイクの2本立てになっている模様。
『かぎ針1本あれば・・・』 動きのあるかわいらしい表紙。そろそろ編み物がしたくなる季節だ。本当はこの冬の分を今頃から編み始めたのでは遅いのだけれど、やっぱり毛糸に触れたくなるのは寒くなってからなのだ。かぎ針しかできない私にはうれしい本。
今日も鼻がグズグズいっている。寒い。帰りがけ、相方が予約していたCDをタワレコで受け取り、夕飯はひとりなのをいいことにサボってSOUP STOCKでスープを買って帰る。鶏肉と野菜のトマトシチュー。かぼちゃが入っていておいしい。
週末、関東地方は雨になりそう。さあ明日も仕事だ。土曜日の出勤は憂鬱だけれど、いったん家を出てしまえば、いつもより人気の少ない都心がおもしろくも楽しくもあるのだ。そのことを今、思い出した。
のどの奥が痛いのでこの頃はマスクをして寝ている。いつの間にかはずれて(自分ではずして?)朝起きるとふとんの横に落ちているけれど、それなりに効果はあるらしく、2週間ほど続いていたのどの痛みはだいぶ楽になった。今朝はこの秋いちばんの冷え込みで部屋の空気がキンとつめたい。いつものことだけれど、今日こそふとんから出たくない。
雲ひとつない高い空は水彩絵具の水色だ。気になる山茶花はまだ咲かない。
休憩中、風邪はどうですか?と訊かれたので、だいぶよくなったよ、これこれこうで、とマスクをして寝ている話をしたら、不思議そうな顔をする。朝起きたとき乾燥でのど痛くない?と問い返すとさっぱり思い当たらないらしい。反対に、虚弱体質なんですね、と鼻で笑われてしまった。悪かったわね。よりにもよってあんたに話した私がバカだったよ。
ほぼ毎朝、本屋さんに立ち寄る。最寄り駅に到着して、そのまま出勤してもいいのだけれど、それじゃあ何だか味気ないので途中の本屋さんへ入る。本当は9時開店のはずが、行くともうお店は開いていて、店員が届いたばかりの本や雑誌を忙しく整理している。無造作に積まれた本の中からおもしろそうなものを探す。きれいに並んだ本屋さんもいいけれど、こんなふうに宝探しみたいなのもいい。
今日はこんなのを見つけた。題して「朝の本屋さん」。
『spoon』 北欧の特集。パラパラめくるだけで幸せな気分に。偶数月28日発売。ということはまさに今日。
『Hanako WEST Cafe 小さな世界の旅』 思わず手にとってしまう表紙。2004年秋冬号。10月26日発売。
『キレイになるヨガ(DVD付)』 今、買うかどうか迷っている1冊。迷ったって、遅かれ早かれ買うことになるとは思うのだけれど。・・・いつぞやの「ヨガ熱」は未だ低温ながら続行中。ちなみにアマゾンで「あわせて買いたい」に挙げられているエイムックの『Yogini−ヨガでシンプル・ビューティ・ライフ (Vol.1)』は既に持っている。本を読んで半分実践した気になって満足しているあたりが、私はお気楽なのだ。
昨日は仕事を休んだ。朝起きて顔を洗ってお化粧して服を着替えてご飯を作って・・・、と準備をしていたけれど、どうも体が重い。のどは痛いしお腹も痛い。だるい。やばい。これは無理をすると風邪をひくパターンだ、と思ったので、エイッ!と休んだ。
洗濯だけして、またパジャマに着替えて昏々と眠る。お昼頃、のどが乾いて目が覚める。いいともを見ながら、軽くお昼ごはんを食べて、薬を飲んでまた眠る。ときどきうっすらと意識が戻るが、すぐにめまいのような眠気がやってきて、ふとんに吸い込まれるように眠る。夕方、人の気配がして目が覚める。部屋は暗く、おもてはとっくに日が暮れている。枕元に感じた黒い人影のようなものは夢だったようで、家の中には誰もいない。心臓のドキドキが気になる。ふとんの左側に立って私の顔を見下ろし、ふとんをかけなおしていったあの人影はなんだったんだろう。怖くて寝たふりをしていたから、黒いシルエットと気配しかわからない。われながら、夢の中なのに寝たふりをするというのもおかしい。
昼間あれだけ眠ったにも関わらず、夜もまた眠れる。
今日はマスクをして仕事へ行く。駅の人ごみにひるむ。仕事場の空気の悪さとひどい乾燥にへこむ。風邪完治はまだ先になりそうだ。寒いから夜はおでんにしようか。
窓の外の明るさにひかれてぱっとおもてへ出ると、思いのほかひんやりとした空気。それでも日なたでじっとしていると日ざしのあたたかさに体がぽかぽかしてくる。建物の裏手にはいろんな植物がごちゃごちゃと植えられていて、それらはみんな一様にほったらかし。その中で山茶花のつぼみがぷっくりとふくらんでいるのを見つけた。ごちゃごちゃの中で山茶花だけが急に存在感を増す。朝晩の冷え込みもなんのその、あと数日で咲き出しそうな気配。
さざんか さざんか さいたみち たきびだ たきびだ おちばたき
食後の眠気を吹っ飛ばすため、外でストレッチ。背中をぐーんと伸ばそうと手近な柵につかまる。ふと見ると、つかまっている手のまさにそのすぐ横に茶色のかまきりが。
ぎゃっ!と思ってあわてて手を引っ込め、今度は息をひそめてじっとかまきりを観察する。茶色の枯れ枝のようなかまきり。細くて小さめの体には、左のカマがない。首をぐるりとひねって三角の顔でこちらを睨んでいる。しかし本当のところはどこを見ているのかよくわからない目だ。あまり近づくと引っ掻かれそうなのでやめておく。
部屋は暑いのに、背中がぞくぞくする。早く帰ろう。
仕事休み。早朝こそ風が強かったものの、小雨もすぐにやみ、どうやら台風は通り過ぎたようだ。手早く家事を済ませ、おみやげに焼いたバナナマフィンを持って、実家へ。
新宿から40分ほど電車に乗る。ついこの前まで毎日のように見ていたはずの景色を眺める。どうもよそよそしく感じる。駅からはさらにバスに乗る。バスの運転手さんは聞き覚えのある声と、独特のせりふまわしで、ああ、あの人だ、とわかる。運転手さんのありがとうございますは「ア、リガトウゴザイマ」に聞こえる。
母もマロもいつもどおり元気だった。庭にはベンジャミンも来ていて、台風一過の日ざしを浴びて昼寝をしていた。お昼ごはんに母の作った焼きそばを食べ、お茶の時間には紅茶を入れてバナナマフィンを食べた。
3時過ぎ、マロの散歩にでかける。マロはウキウキとした足取りでいつになく軽快に歩く。それからいったん家へ戻り、4時半のバスに乗るために帰り支度をする。これがちょっとした騒動で、クローゼットからタートルネックのセーターを2枚引っ張り出し、本棚からCDを数枚と、母が昔から愛読していたお菓子作りの本など数冊を抜き出し、小さな電気ストーブ(結婚する前、自分の部屋で使っていたもので、今度は台所で使おうと思っている)を大きめの紙袋につめる。台所の流しの下からはボウルをひとつ失敬、冷蔵庫からは下ゆでした里芋をもらう。
母によれば、そのお菓子作りの本はかなり本格的なものなので、砂糖とバターの量が多いから少し減らすこと、それに作り方どおりに作るとひどく手間がかかるので、省略できると思ったところは省略してもいいということだ。この本に載っている象の形のバースデーケーキを作ってもらったことをぼんやりと覚えている。たしか2歳か3歳のときだ。食べてしまうにはあまりにもったいないかわいらしい象の形をした、それは大きなケーキだった。
じゃあ、そろそろ帰るね。玄関で靴を履く。そういえば、今日ここに来たとき「ただいま」って言ったよね。向こうについても私また「ただいま」って言うよ、たぶん。ふと気がついてそう言うと、玄関で見送る母は「ただいまのおうちがいっぱいあっていいじゃない」と言った。まったくそのとおりだ。背中に荷物を詰め込んだ大きなリュック背負い、右手に電気ストーブの入った紙袋を持って、玄関のドアを開ける。今出れば6時前には家に着く。相方はまだ帰っていないだろうから、誰もいない部屋に向かって私はただいまと言うだろう。家にたどり着いたときのホッとした気持ちで。
地下鉄の階段を上り、4丁目の交差点に出る。振り返って和光の時計を見上げ、資生堂ビルに向かう。ひさしぶりの銀座は雨だ。強く降っているから傘をさしていても服が濡れてしまう。7時から資生堂WORDで江國さんと角田さんの講演会、そのあとにはミニオフ会も待っている。浮き立つ気持ちを落ち着けようと深く息をする。ドキドキはおさまらない。
資生堂ビルの入り口で、ROCOさんと会う。ROCOさんがしきりに目配せをしている。え?なに?・・・気がつくのに時間がかかったけれど、私のすぐ横で江國さんがエレベーターを待っていたのだ。思っていたよりもずっと小柄で、背中までとどく長い髪はゆるくパーマがかかっている。茶色のジャケットと鞄、オフホワイトのパンツ。同じエレベーターに乗った江國さんは携帯電話でメールをしていて、会場のひとつ下の階で関係者の方とともに降りた。エレベーターに乗っている時間がとても長く感じた。
会場では端っこの後ろのほうに座る。遠くから眺めるくらいでちょうどいい。ここなら視線を気にせずにメモをとることができる。あまがえるさんとはお互いに目印を決めていたので、開演前に無事会えた。
江國さんと角田さん、おふたりのお話は文句なしに楽しかった。あっという間の2時間で、盛りだくさんな内容はメモをとるのも忙しかった。ほとんど前を向いたままとったメモは、字が大きいせいで10数ページにのぼり、ところどころ解読不能だった。講演の内容は講演録を見ていただきたい。
講演後、ふわふわさん、あまがえるさん、ROCOさんと一緒に近くの喫茶店へ移動する。大きな柱時計のそばのテーブルにつき、めいめい好きなものを注文する。私はカプチーノ。
ホームページでは2年以上の長いお付き合いでも、面と向かって会うのは初めてだったり、ほんの数回だったりで、それなのにこうもしっくりきてしまう関係というのはいったい何なのだろうと、頭の片隅で不思議に思いながら、とても楽しく過ごした。それぞれの簡単な自己紹介、さっきの講演の感想、それにつづくさまざまなエピソード、話は尽きない。講演会直後の興奮も手伝って、夢とも現実ともつかない気持ちのせいで、まるで平衡感覚を失ったようにくらくらする。ときどき横の柱時計で時間を確認する。刻々と過ぎる時間が恨めしい。
電車のあるうちに帰らなければ。11時半を回ったところで喫茶店をあとにする。今日はありがとう、また会いましょう。再会を約束してそれぞれの場所へ帰る。
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実はこれを書いたのはあれから10日以上たってからだ。あの日は関東地方に「非常に強い台風」が迫っていて、強い雨と風が吹いていた(確かにそれはとても強い台風で、翌日には上陸し、地下鉄に水が流れ込んだり、電車が止まったり、ひどいありさまだった。近所の川は増水警報が鳴った)。
今日も似たような天気で、これから台風が来る。雨は昨日の夜から降り続いて、明日の朝までの降水量は300ミリ近くになるという。低くたれこめた空の下、あの日のそわそわした感じを思い出す。
2004年10月04日(月) |
やっとここまできたか |
筑摩書房のPR誌「ちくま」は毎月1日、書店に並ぶ。レジ横とか店先でただでもらえる。今「ちくま」の連載を2本追いかけているので何としてでも手に入れなければならない。うっかりすると2、3日でなくなってしまうのだが、ここ3ヶ月は難なくクリア。連載は岸本佐知子「ネにもつタイプ」と石田千「屋上がえり」。どちらもエッセイ。
翻訳家・岸本佐知子はかなりおもしろい人かと思う。訳書は知らないが、エッセイはおかしい。特に「実録気になる部分」は抱腹絶倒。決して静かな場所や人前で読んではいけない。笑いをこらえて変な顔になること必至。知らずに昼休みの職場で読んでえらい目にあった。もったいないので一気読みはせず、今は毎日少しずつ楽しんでいるところだ。彼女の本業である訳書は実はまだ読んだことがないが、「eとらんす」(2004年2月号)掲載のインタビューで翻訳業について語っているのを読んだところでは、こちらもまたおもしろそうだ。
今週の金曜日は資生堂WORDの講演会へ行く。ゲストは江國香織×角田光代。どんな話が聞けるのかとても楽しみにしている。江國さんファンと言えども過去に2回ほどサイン会に行けただけ。見逃したり抽選にはずれたり遠方だったりで講演会はこれがはじめてなのだ。やっとここまできたか、という感じ。今回は思いのほかたくさんの人が抽選に当たったようなので、夜には江國さんつながりでミニオフを開催することになりそうだ。詳しくはふわふわさんくちこみ情報にて。
この頃よくバウンドケーキやマフィンを焼く。だから、小麦粉・バター・卵・砂糖の減りが早い。本当にみるみるうちになくなる。パウンドケーキやマフィンはボールひとつでとにかく簡単だ。思い立ったら夕方だろうが夜中だろうがいつでも行動に移せる。夜10時過ぎ、家中にお菓子を焼く甘い匂いが漂う。
そよちゃんも言うように(江國香織『流しのしたの骨』参照)、お菓子作りは精神を集中させる。分量をきっちりはかる。作り方にしたがって一工程ずつ進む。余計なことは考えない。バターを練ったり、卵を泡立てたりするときには渾身の力をこめる。電動のは持っていないから、泡立てるのはもっぱら手動だ。右腕が痛くなったら左腕に持ちかえる。練習すれば左腕もそこそこ使える。あとはつぶしたバナナを入れたり、くだいたナッツを入れたり、ココアパウダーを入れたり、シナモンを入れたり、少しだけ全粒粉を使ってみたり、その日の気分でアレンジする。
オーブンで焼いている間はときどき窓からのぞいて、生地がぐーんとふくらんでいくのを見守る。夜に焼き上げたら、翌日の朝ごはんにしたり、職場に持って行っておやつにする。
今日は1日だから、スーパーは大安売りをしていた。砂糖1キロを100円で買った。また作ろう。
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