Deckard's Movie Diary
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2007年08月29日(水)  シッコ/SiCKO ベクシル

マイケル・ムーアの新作『シッコ/SiCKO』。題名は“SICK”から派生したスラングで日本語では「ほとんどビョーキ!」とか「病んでる!」みたいな意味だそうです。個人的には彼の作品では一番好きです。アメリカに国保が無いのは知っていましたが(『走れ走れ!救急車』なんて映画もありましたしね。ラクエル・ウェルチが出てました!)、ここまで酷いコトになっているとは夢にも思いませんでした。っつーか、ダメじゃん!仕事柄、アメリカ人とは何回も仕事をして来たのですが、その度にアメリカ人のスタッフ同士が必ずと言っていいほど保険の話をしている場面があるんですよ。で、コーディネーターに「何で、アメリカ人って保険の話が好きなんですか?」と聞いたことがあって、その時に国保が無いことを知ったんですけど、驚きましたねぇ!「じゃ、医療も資本主義原理なワケ?それって大丈夫なの?」って言ったら「特に問題ないよ!」って答えていましたが、この映画を観る限り問題大有りじゃん!

対比として国保のあるカナダ、イギリス、フランスを取り上げ、その中でも特にフランスをこの世の楽園のように描いていますが、この辺りの仕掛けの塩梅が上手くて、マイケル・ムーア節が円熟の境地に入ってきた印象を思わせます。つまり、この映画をそのまんま受け入れちゃうような人々にはアメリカの民間保健医療がいかにダメか!ってことになりますし、それなりの知識層には「本当かなぁ・・・」と疑わせる作りになっていて、結局は『サンキュー・スモーキング』のように“与えられた情報ばかり鵜呑みにしてんじゃねーぞ!”っつー感じで、面白おかしく見せながらも、自分でバンバンしなきゃダメ!という極上のドキュメンターテインメント(こんな言葉ねーよ!)になっています。さて、予告編で胡散臭く見えたグァンタナモへの旅は前フリで、その後に興味深い展開が待っているのですが、ちょっと泣けてしまいました。

それにしても、ムーアは20キロの減量がこの映画のきっかけだった言ってますが、全然痩せたように見えないばかりか、酷い目に遭っているアメリカの人々が揃いも揃って肥満体ってのは、ジャンクフードしか食べられないからでしょうか?これも狙いだったりするんでしょうか?

しかし、やはりどう転んでもアメリカの民間保健医療は間違っているし、この映画を観たアメリカ人がどう捉えているのか興味深いです。まぁ、置かれた立場によってかなり違うんでしょうね。今更、どうにもならないんでしょうかね?と、よその国の心配ばかりしている状況では無さそうですね・・・・・・・・( ̄。 ̄ )ボソ…



『ピンポン』で一躍名を挙げた曽利文彦監督の新作は3Dアニメを屈指した『べクシル』。まぁ、プロデューサーとして『アップルシード』に関わっていましたから今回の作品はその延長線上にあると言っていいでしょう。まぁ、『アップルシード』での映像よりは進化しましたが、結局のところ脚本はダメダメです。前半はそれなりに惹き付けられるのですが、後半はメチャクチャでした。大友克洋とかもそうなんだけど、ストーリーのツカミ(発想)は上手いのに、行きつく先はしょーもないんだよなぁ・・・それも、かなり低次元だし・・・コレって、どういうことなんでしょうか?誰か教えて下さい。というワケで、映像とSE以外は見所無し!で、その映像ですが、メインのキャラはもう少し頑張ればそれなりのステイタスを獲得するトコまで来てると思います。後は背景となるような人物達の描きこみかなぁ・・・。どちらにせよ、相当魅力的になって来ているのは間違いありません!


2007年08月15日(水)  図鑑に載ってない虫 ファウンテン

巷で評判が良いので観てきました。監督はテレ朝深夜ドラマ『時効警察(オイラは未見)』で名を挙げた三木聡。う〜ん、何処が面白いのか全く分かりませんでした。テーマがあるとすれば“生きていても死んでいても大差無いんだから、だったら生きていようよ!”みたいな感じなんですが、全編に渡ってしょーもないコネタが散りばめられていて、そんなテーマなんてどーでもよくなってしまいます。その押し付けがましくない辺りが“脱力系”と言われる所以なのかもしれませんが、オイラは苦手です。まぁ、ギャグセンスというのは人それぞれですし、一概に否定する気もありませんが、他人様には絶対お薦めしません。例えば、水野美紀がキッツイおならをして「実が出ちゃったかもしれないから、トイレ行ってもいい?」とか、乾いてないコンクリートの上をはしゃいで歩くとか、呼び鈴にアロンアルファを塗るとか、ヤクザが電車移動しているとか、ホルモン屋の店名が“内臓”とか、ナンちゃってのポーズを強くやりすぎて頭から血がピュ〜!とか、そんな程度のギャグが笑えるんですかね?そういうコネタっていちいち“どうよ!”って描くより、もっとさりげなく描いた方がセンスの良さを感じるんですけどねぇ・・・ナンだか、コネタが中途半端なんですよ。リスカの痕で山葵を下ろすシーンがあるのですが、だったら、そういうブラックネタで行けよ!と言いたくなります。ギャグのセンスに多少なりとも魅力的な部分もあるので、次作はもっとキチっとストーリーを描いた上でそのセンスを発揮してもらいたいものです(オイラは何様だよ!)。というワケで次作はこの秋公開の三浦友和、オダジョー、小泉今日子共演の『転々―てんてん』だそうです。松尾スズキは出てないようですから、一応観るつもりです(苦笑)。


『π』で注目され『レクイエム・フォー・ドリーム』で映画ファンの度肝を抜いたダーレン・アロノフスキーの新作『ファウンテン』。いやぁ、ダメでしたわ!なんですかねぇ・・・言いたいことや描きたいことは分かるんですけど、いかんせん強引過ぎでしょ!力技とも言えますが、かなりイっちゃってるんでついて行くのに骨が折れます。個人的にはヒュー・ジャックマンのテンションの高い演技が鬱陶しくて疲れましたし、宗教色の強い演出に失笑モード(ヒューちゃん、耳の形ヘンじゃね?とか・・・)でした。様々な宗教からの引用、語り継がれる永遠や生命の概念、ビッグバンに代表される誕生、“源”と云われる大樹や泉、指輪に纏わる物語・・・ありとあらゆるそれらしいモノ(ソレらしいモノって何?(自爆))をごちゃ混ぜにして、♪現在過去未来〜by渡辺真知子 って、描かれてもなぁ・・・。それなりの予備知識が無いとチンプンカンプン!っつーか、そういう知識に溢れている人たちにはメチャクチャ受けそうな・・・ある意味、嫌らしい映画とも言えます。この作品が最初からそういう“線”を狙っているというワケではありませんが、結果的にそういう状況になっているような気もします。いくらなんだって、もう少し分かりやすく作れないですかね?この作品を観る限り、ダーレン・アロノフスキーは当分ハリウッドメジャーから声はかからないでしょうね。でも、この作品でも5年かかっているからあまり関係ないかな。まぁ、レイチェル・ワイズをカミさんにしたことだし、とりあえず食うのには困らないでしょうけどね。


2007年08月09日(木)  リトル・チルドレン トランスフォーマー フリーダム・ライターズ

監督としてのトッド・フィールドを一躍有名にしたのは初の長編だった前作『イン・ザ・ベッドルーム』ですが、そのストーリー展開にいまいち釈然しないモノがあり、個人的には苦手な作品でした。ただ、隙の無い演出力だけは記憶に残っていました。さて、5年ぶりの新作となる『リトル・チルドレン』ですが、コレは素晴らしい作品です!小生の大好きなジョン・アーヴィングの世界“人間は、しばしばこっけいであり、悲しいものだ by T.S.ガープ”にも通じる“ダメダメだからこそ愛すべき人間”に近い印象です。ただ、アーヴィング作品には前向きに生きていく人間模様(ある意味、楽観的な・・・)が描かれているのですが、トッド・フィールズ作品にはもう少し後ろ向きというか、生きていくのに足掻いている状況が見え隠れします。そういう意味ではアーヴィングよりシリアスな印象が残ります。また同じ名前持つトッド・ソロンズに通じる部分もありますが、彼ほどはシニカルではありません。

日本では20歳になると選挙権が与えられ、酒・煙草が許され、世間一般的には“大人”の仲間入りとなります。バヌアツ共和国ではバンジージャンプの原典であるナゴール儀式で大人の仲間入りとなります。つまり“大人”なんてのは便宜上の仕分けであって(肉体的な“ほぼ”成長終了という意味はあるでしょうけど・・・)、幾つになっても精神は成長?し続けているワケです。言い方を変えると、多くの人間は“子供”から“大人”になろうと、日々下手糞なクロールで終わりの無いプールを泳いでいるようなものです。この映画は大人になれない大人たちの話じゃなくて、少しずつ大人になっていく人間たちの話だと思いました。

プールサイドで隣の人妻の水着姿に目を奪われるのと、幼い異性に目が奪われるのは、異性に性的な欲望を持つという意味では同じです。例えばイスラム教では不倫は死刑に値するような行為(一夫多妻は許されていますが)だったりもします。もちろん、幼い性に異性としての度を越した興味を示すのは明らかに病気ですから、それなりに善悪の判断が出来る人間同士の泥沼不倫劇などと一緒に語れるモノではありません。どちらにしても人間とは出来損ないの塊で、その出来損ないの部分が人に寄って異なるだけで、場合に寄って滑稽な時もあれば悲しい時もあるというコトです。そして出来損ないの人間は、どうして自分ばっかり!と自分勝手に嘆き、ふと目にした隣の芝生が輝いて見え、まるで夏の虫が光り輝く炎に魅せられるのとなんら変わりもなく、炒られてしまう人も多かったりします(そうなの?)。

それにしても、かの二人が男は少年性、女は母性という定番の形で決着するのが(二人とも心の何処かで何かの理由が欲しかったのかもしれませんね・・・)、いかにも俗物的でいいですねぇ。物足りない人は渡辺淳一の小説でも読んでください(笑)。

<オマケ>
タッチダウンを決めて、その瞬間を自分だけのプロムクイーンが図らずも見てくれて居て、子供のように大喜びしてくれたら・・・二度と味わえるコトは無いと思っていた人生最良の時が!!!そんな時、男は何でも出来ると思うものです!そりゃ、スケボーなんて屁の河童でごわす!彼にしてみれば♪空も飛べるはず〜♪っつー気分なのは間違いありません(笑)。



ハリウッド系娯楽大作映画のフロントランナー!マイケル・ベイの新作はブラッカイマーではなくスピルバーグとのジョイントで実現した日本製アニメの実写『トランスフォーマー』!とにかく、お湯をかけて3分で出来るようなマイケル・ベイ節が炸裂ですなぁ。決して貶しているワケではなく、インスタント・ラーメンの素晴らしさも踏まえて言ってます。ただね、それぞれにキャラ付けされているトランスフォーマー達なんですけど、セリフだけの性格付けなんで薄っぺらいんですよ。その辺りも相変わらずのマイケル・ベイなんですけどね。で、巷ではCGが凄い!という話をよく耳にしますが、そんなに凄いかなぁ・・・個人的には『シュレック』の髪の毛のが凄い!と思ってしまいます。だって、機械なんてCGが一番の得意分野じゃないですか!だいたい、どう変身しているのかも良く分からんし、敵味方も分からんし、何であんな人での多いところを戦い場所に選んでいるのかも分からんし、たくさん生まれちゃったチッコイ連中はどうなったのか分からんし・・って、ツッコミがCGからズレてますね。まぁ、こういう映画に細かいコトをグズグズ言ってもねぇ(苦笑)。どうせ、1匹逃げたから『2』はあるんだろうし、楽しみましょ!



『フリーダム・ライターズ』ぶっちゃけた話、実話だから観られるような作品の作りでしたね。もちろん、悪い映画ではないし、観て損もないですけどオンエアで十分でしょ!興味をそそられたのは、生徒たちが変わっていくきっかけになっているのが“知識”ってコトなんです。どんだけ無知なんだよ!とツッコミを入れたくもなりますが、そんなものかもしれませんね。あまりに狭い世界しか知らない井の中の子供たちが大海を知った時に自分たちの小ささを知る!みたいな感じでしょうか。ただ、日記を書かせるという手法は分かるような気もします。今のブログ・ブームや携帯での日記ブームとか、結局は自分のコトを分かって欲しい、共感して欲しい、共有して欲しい、つまりは寂しいんですね。お父さん、お母さん、食事時にTVなんか観ないで、もっと子供と話しましょうよ!


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