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2002年12月29日(日) 映画よろず屋週報 Vol38「映画連想リレー」

*****映画よろず屋週報 Vol38 2002.12.29*********************

皆さん、こんにちは。
2002年もあとわずかですね。
今年最も印象に残った映画は何ですか?
私は「I am Sam」をベストに推したいと思います。
先日DVDも購入し、また感動を新たにしました。

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特集「映画連想リレー」

先日、金曜深夜に放送されていた
10回シリーズの韓国ドラマ
「イヴのすべて」が終了しました。
私も毎週楽しみに見ていたので、
寂しく思っている1人です。

さて、「イヴのすべて」といえば、
全く同じタイトルの映画がありました。
本日は、そこからあれこれ連想し、
何本かの映画をリレーでつなきながら
御紹介したいと思います。

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イヴの総て All About Eve
1950年アメリカ
ジョゼフ・L・マンキーウィッツ監督

ハリウッド内幕物語の決定版ともいえる作品でしょう。
若い女優志願娘のイヴ(アン・バクスター)は
大女優マーゴ(ベティ・デイビス)に取り入って、
演劇界の頂点へとのぼり詰めようとしますが…
デビュー間もない
マリリン・モンローの初々しい姿も拝めます。

オール・アバウト・マイ・マザー
Todo sobre mi madre

1999年フランス/スペイン

ペドロ・アルモドバル監督
この映画の劇中映画として登場するのが
『イヴの総て』でした。
母、というよりは、いろいろな意味での「女性」が
見事に描き出された作品でした。
また、「女優を演じたすべての女優」に
捧げられた映画としての性質もあるようです。

アントニア Antonia
1995イギリス/ベルギー/オランダ
マルレーン・ゴリス監督

「母親」の映画といえば、これ!
多分、空前絶後と言えるほどに
この作品のアントニアは、「全人類の母親」然とした
独特の美しさを持っていました。

アムス→シベリア Siberia
1998年オランダ
ロバート・ヤン・ウェストダイク監督

好き嫌いは分かれそうだけれど、
ここ数年好調なオランダ映画の好編の1つ。
放埒の魅力を放つ街アムステルダムで、
女性観光客をナンパしては金をだまし取り、
パスポートの写真をコレクションするという
ワル2人組も、
シベリアから来たという触れ込みの
エキセントリックなララという女性には振り回されます。

出だしが正統派アカデミー賞受賞作でしたので、
最後は突拍子もない映画がいいなあと思いました。
だからまあ、成功といえましょう。

ところで、1972年12月29日は
美青年ジュード・ロウの誕生日だそうです。
30代の端くれとしては、
彼が30代に仲間入りしたことを
大いに歓迎したい気分です。

それから、もう1つトピックスを。
12月31日(1月1日深夜2時)、NHK教育にて
シンガポール映画
『フォーエバー・フィーバー』
放映されます。
70年代のシンガポール。
食料品店で働く中国系の若者ホックは、
ブルース・リーをヒーロー視していましたが、
たまたま見た映画『サタデーナイト・フィーバー』によって、
トラボルタにシビれ、ダンスに傾倒していくのでした…
以前どこかで見たような、それでいて新鮮な、
そんな独特の味わいがある作品ですので、
未見の方はお試しくださいませ。

フォーエバー・フィーバー
Forever Fever

1998年シンガポール グレン・ゴーイ監督



2002年12月22日(日) 映画よろず屋週報 Vol37 「女性?男性?」

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特集「女性?男性?」

1890年、作家のジョージ・エリオットが亡くなりました。
『サイラス・マーナー』などで知られる作家ですが、
この人は、御存じの方もありましょうが、
本名メアリー・アン・エバンズという、バリバリの女性です。
時代背景を考えれば、「女の書いたものなんて」と軽んじる
読み手の受け取り方を意識した筆名だったのでしょう。
(ディケンズは、この人を女性だと見抜いたという話ですが)

といっても、それから100年以上たった現在でも、
『ハリー・ポッター』シリーズのJ.K.ローリングですら、
「少年は女性作家の書いたものを読まない」との理由から
イニシャルで名乗らされたということですし、
その種の偏見というのは、げに根深いものだと思います。

……という話はともかくとして、
本日は、名前を聞いただけでは
男性か女性かわからない映画人や、
紛らわしい名前が登場する映画を御紹介します。

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(人物編)
ダナ・アンドリュース Dana Andrews
1909-1992

本名カーパー・ダン・アンドリュース。
1940〜70年代に活躍した、すっきりした二枚目さん。
ダナという名前の男性俳優はほかにもいますが、
この人の場合、1940年代初頭という舞台設定の映画
『ラジオ・デイズ』(ウディ・アレン監督)の中で、
少年たちが口々に好みの女優を言う中で、
「ダナ・アンドリュース!」と答えた子が、
「ダナは男だよ」「ダナなんて名前なのに?」
てな感じの会話のネタにされるという
「実績」があります。

グレン・クローズ Glenn Close
1947年生まれ

もともと演技派として鳴らしていたけれど、
『危険な情事』の烈女アレックス役で一躍ブレークした人。
学生時代から、名前のせいで
男性と間違われることが多かったそうです。

アシュレイ・ジャッド Ashley Judd
1968年生まれ

正統派美女ながらコメディーセンスも抜群で、
『恋する遺伝子』『あなたのために』などで
名コメディエンヌぶりを発揮しています。
ところで、この人の名前って
「男みたいだなー」と思っていたのは
私だけでしょうか。
アシュレイといえば、何といっても
『風と共に去りぬ』
スカーレット・オハラ(ヴィヴィアン・リー)の憧れの男性!を
思い出すのですが…
(でもって、アシュレイを演じたのがレスリー・ハワード。
レスリーという名前もまた女性的だし)

レスリー・マン Leslie Mann
1972年生まれ

金髪のまばゆいかわいい美女。
その独特のハイトーンの声のせいで、
どうしてもコミカルな役を振られがちなようですが、
よく合っています。
『ジャングル・ジョージ』『ビッグ・ダディ』
などに出演していました。


(映画編)
スケアクロウ Scarecrow
1973年アメリカ ジェリー・シャッツバーグ監督

刑務所帰りのマックス(ジーン・ハックマン)は、
ひょんなことから、船員上がりでちょっとヘラヘラしている
フランシス(アル・パチーノ)という男と知り合い、
それぞれの目的地に旅を共にするうちに、
またとない友情を温めていきます。
けんかっ早かったマックスが、フランシスに
「人とけんかになりそうになったら、
かかし(Scarecrow)みたいに笑わせてやればいい」
と言われ、だんだんに触発されていく姿がいいのです。
ところで、フランシスの呼び名ですが、
「何だか女みたいだから」とマックスが呼ぶのを嫌がり、
ミドルネームのライオネルからとって、
途中から“ライオン”になりました。

赤ちゃん泥棒 Raising Arizona
1987年アメリカ ジョエル・コーエン監督

御存じ、イーサン&ジョエルの、
コーエン兄弟の初期コメディーですが、
今を時めくニコラス・ケイジホリーハンター
主演なのに加え、
コーエン映画の常連の1人であるジョン・グッドマンが、
ケイジの刑務所仲間として出演していました。
コソ泥ハイ(N.ケイジ)は、
なじみの婦人警官(H.ハンター)と恋に落ちて結婚しますが、
彼女は大の子供好きなのに不妊症で、
加えて、自分の前科のせいで養子もとれない…
そして考えた手段が、邦題のとおりです。
ハンター演じる婦人警官の名前が「エド」で、
「女でエドって名前?」とからかわれるシーンがあります。

スリーサム Threesome
1994年アメリカ アンドリュー・フレミング監督

繊細な魅力のエディと、粗野なスチュワートは、
学生寮のルームメイトで、正反対ながら、
それなりにいい関係を保っていました。
その2人の部屋に、
アレックスという名の「女子」学生が
学校側の手違いで入ってきます。
アレックスはエディに知的な興味を示し、
スチュワートから「いい女だなぁ」とスケベな目で見られつつ、
ある出来事が起こるまでは、
絶妙のバランスで、そこそこうまくやっていくのでした。
エディを『いまを生きる』などのジョシュ・チャールズ
スチュワートが『ユージュアル・サスペクツ』などで知られる
スティーブ・ボールドウィン
そしてアレックスを演じたのは、
近作では『メン・イン・ブラック2』に姿を見せた
ララ・フリン・ボイルでした。


2002年12月15日(日) 映画よろず屋週報 Vol36「監督、何してるの?」

特集「監督、何してるの?」

自分の監督作、他人の監督作にかかわらず、
映画に出演する映画監督というのは特段珍しくありません。
アルフレッド・ヒッチコック御大に至っては、
必ず自作のどこかに姿を現すことで有名だったので、
「どこに出ているか」を探すのも
楽しみの1つというくらいです。
(また、あのインパクトあるルックスですし〜)

そこで、映画監督、映画に出演の巻〜ということで
特集したいと思います。

さて、ここで問題ですが、
バリー・レヴィンスン、M.ナイト・シャマラン、
アラン・パーカー
の3人に共通する
「役」は何でしょう?

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レインマン Rain Man
1988年アメリカ バリー・レヴィンスン監督

シックス・センス The Sixth Sense
1999年アメリカ M.ナイト・シャマラン監督

アンジェラの灰 Angela's Ashes
1999年アメリカ/アイルランド
アラン・パーカー監督


さて、問題の答えですが、
3人とも、それぞれ自分の監督作に
医者の役で登場しています。
参考までに、B.レヴィンスンはクレジットなしでしたが、
かなり終盤で登場する医者(セリフあり)
M.ナイト・シャマランは、
リン(トニ・コレット)の
息子コール(H.J.オスメント)に対する
虐待を疑う医者(見るからにインド系)、
A.パーカーは、主人公フランク少年がチフスにかかったとき、
彼を担当する医者の役でしたが、
トボケたいい感じの演技を披露なさっています。


ゲイリー・マーシャル Garry Marshall
1934年生まれ
代表作『潮風のいたずら』『フォーエバー・フレンズ』
『プリティ・ウーマン』『プリティ・プリンセス』
などなど、
なぜか女性の生きざまを見せる映画がお得意
自らの監督作以外では、
『25年目のキス』(1999)の新聞社主役など。

ウディ・アレン Woody Allen
1935年生まれ
この人の場合、「自作に出たり出なかったり」と表現した方が
より正確でしょう。
自作以外でも、もともとは大学に通う傍ら
ギャグを書いて稼いでいたという「豪のもの」ゆえ、
出演作品はコメディがほとんどです。
ピーター・フォークとの意外な名コンビぶりを見せた
『サンシャイン・ボーイズ』(1995)がお勧めです。
また、冒頭の医者つながりでいえば、
一緒にいる人と同化してしまうという奇癖を持つ男、
レナード・ゼリグを演じた『カメレオンマン』では、
彼と接触する精神分析医フレッチャー(ミア・ファロー)の
感化で、医者然となってしまいました。

ポール・マザースキー Paul Mazursky
1930年生まれ
『ハリーとトント』 で泣かせ、『結婚しない女』で考えさせ、
幾つかのコメディーでそこそこ笑わせてくれた、
そんな監督ですが、
自作を離れた出演作が結構ございますです。
個人的には、『パンチライン』の冒頭に登場したときの役が
なかなかおもしろかったと思います。

ジェームズ・キャメロン James Cameron
1954年生まれ
『タイタニック』の大ヒットで、
なんだ、恋愛モノも撮(れ)るんだ〜と
一躍有名になった感のある人。
その後、シャロン・ストーン主演の『ハリウッド・ミューズ』
『タイタニック』の楽屋落ち的なギャグ演技を見せています。
因みに、『ハリウッド〜』で主演と監督を兼ねたのは、
『ブロードキャスト・ニュース』などでおなじみの
アルバート・ブルックスでした。

サリー・ポッター Sally Potter
1949年生まれ
「あの少年」の出現以来、名前の字面を見ると
何だか笑いを誘ってしまうかわいそうな人ですが、
ヴァージニア・ウルフ原作に材を撮った『オルランド』(1992)や
『タンゴ・レッスン』(1997)では、監督・脚本のみならず、
音楽も担当したそうです。
(そして、『タンゴ・レッスン』には出演も)
近作は『耳に残るは君の歌声』(2000)

実は、冒頭の「3人の医者を演じた監督」で
もっと引っ張れないかと思ったのですが、
ほかに思い出せなかったので、
あれこれと手を広げようとして、
ちょっと中途半端になってしまいました。
また少しネタを貯めてから、
同種の特集をさせていただきます。


2002年12月13日(金) イーナちゃんとテディベア

イーナちゃんとテディベア
En Liten julsaga
(A Little Christmas Story)

1999年スウェーデン
Asa Sjostrom監督


監督の名前ですが、IMDbからコピーしただけで、
正確な発音がわかりません。
日本語では、
アーサー・ジェステムと表記してあるページが
多かったようです。
(でもって、もし特殊な記号が文字化けしていたらごめんなさい)

日本未公開ですし、
英語タイトルも映画祭で公開されたときのものですが、
ビデオやテレビでごらんになるチャンスがあるかと思います。
私は去年のクリスマスシーズンに、
教育テレビで放映されているものを見ましたし、
ビデオショップで見かけたこともあります。

スウェーデンはストックホルムに、
イーナちゃんという小さな少女がいて、
彼女は優しい両親と、ノノーという名のテディベアと
暮らしていました。

どうやら、パパはかなり年食ってからの再婚のようで、
アメリカに、イーナとは腹違いの兄に当たる
ティーンエイジャーの息子がいるようです。
クリスマスということで、
その彼がスウェーデンに来ることになっていますが、
イーナは、まだ会ったことのない「お兄ちゃん」と仲良くなれるか、
非常に心配していました。

ちょうどそんなとき、
イーナは、大事にしていたノノーをなくしてしまい、
すっかり気落ちします。
けれども、ノノーはスウェーデン狭しと
あらゆる人々の手をめぐりめぐり、
意外な方法でイーナのもとに戻ってくるのでした。

「戻ってくるのでした」と書くと、ネタバレになるのかもしれませんが、
1時間足らずの、小さな女の子が主人公の家族向けドラマで、
残酷だったり悲惨だったりする結末を
誰が期待しましょうか?
軽いハラハラ、ドキドキを味わいながら、
好ましいラストまで見守りたい、本当にかわいらしい話です。

スウェーデンの人々の生活を垣間見られるのも魅力で、
イーナたちが暮らす都会だけでなく、
より雪深い地方の生活も窺い知ることができます。
スノースクートで最寄り駅まで行って、
列車に乗り継いで郵便局に勤めている女性が登場しますが、
顔だちからして、少数民族(サーミ人?)かなと
想像できたりします。


ところで、先日「所さんの目がテン」の「寒さ特集」を見ていたら、
実験モデルになっていたフィンランド人の男性が、
肌こそ真っ白いものの、日本人に近い顔だちで
びっくりしたのですが、
それより以前、
「どうしてビョークはあんなに東洋的な顔だちなのだろう」
ある映画関係の掲示板に書き込んだら、
フィンランドに留学していたという人から、
「フィンランドでも、ああいう感じの東洋的な顔の人が多い」
とのレスをいただきました。
そこで、「北極圏には意外と多い顔だちなのでは?」
落ち着くところに落ち着いたのですが、
そういえば、アラスカなどのイヌイットの人たちでも、
日本人に近い顔だちの人がいるイメージですね。


2002年12月12日(木) ジングル・オール・ザ・ウェイ

唐突ですが、
「12日間のクリスマス」という曲を御存じですか?
とっても楽しくてかわいらしい、
クリスマスを連想しやすい曲調が魅力です。

そういうわけで、本日からクリスマスまでの間、
クリスマスが重要な意味を持っている映画を
少しずつ取り上げたいと思います。

ジングル・オール・ザ・ウェイ
Jingle All the Way

1996年アメリカ ブライアン・レバント監督


サンタクロースから委託を受けた親たちが
トイザらスなどに集結する季節となってまいりました。
やっぱり、クリスマスプレゼントの定番はおもちゃでしょう。

この映画のジェーミー(ジェーク・ロイド)少年も、
流行りのターボマン人形が欲しいと思っていました。
でも、大好きなパパはいつも忙しくて、
買ってほしいけど、あてにならない……。

本当は子煩悩だけれど、
いつも約束をすっぽかしてしまうパパ、
ハーウィ(アーノルド・シュワルツェネッガー)にとっても、
これは1つの父権奪還チャンスでした。
何が何でも手に入れるぜ!
とはいえ、まあ、所詮はおもちゃだし…とたかをくくっていたら、
とんでもない、この超人気のおもちゃ購入は、
まさに争奪戦でした。

おまけに、なぜか郵便配達員のマイロン(シンバット)という男と
どこへ行ってもことごとに衝突し、張り合うはめになって、
ちょっとした小競り合いが、肉弾戦へと変わっていくのでした…

早い話が、体のでかい2人のいい大人が
子供のおもちゃを争うという、かなりみっともない画ヅラの
ドタバタコメディーなのですが、
(多分)「少年の心を持ち続けたいものだ」
何もてらわずに口にできるスタッフたちが、
1つのおもちゃが人生すら変えることもあるという
思い入れや思い込みや思い出を、
どどーんと映画の形にしてしまったのが
この作品なのだと思います。
その誠意みたいなものが、
この映画を感じのいいものにしていると思います。
アカンと言う人は、「そういう」ところがダメだと思いますが。


小5までは、枕元のプレゼントに喜び、
カードを見て、
「サンタクロースの字って、ママの字そっくり」
言ってくれちゃっていた長女が、
今年になってから、特に意味はない、という調子で、
「ママ、サンタクロースって幾つまで信じてた?」
と尋ねてきました。
少し寂しかったものの、私としては、
「何言ってんの。今も信じてるよー」
と答えるよりほかありませんでした。
私たちは、あくまでサンタクロースの下請けのつもりです。


2002年12月11日(水) ライフ・イズ・ビューティフルの「悲劇」はどっち?

ライフ・イズ・ビューティフル
La Vita è bella

1998年イタリア ロベルト・ベニーニ監督

ライフ・イズ・ビューティフルの「悲劇」はどっち?
(徹底的に擁護します!)


この映画は昨年4月20日に
(紹介にならない)紹介をさせていただきましたが、
思うところあって、ネタバレ大放出、
私情ムキ出しの感想を書きたくなり、
再びここに書かせていただくことにしました。

以前、「好きになれない映画」特集でもしたように、
あぶりだし方式をとらせていただきますので、
読んでも差し支えない方のみ、お手数ですが、
空白部分をマウスでこすってお読みくださいませ。

前半はドタバタ喜劇で、後半は悲劇……だと、
この映画についてはしばしば説明されますが、

バカ言うんじゃありません。
後半の収容所のシーンなんて、
それこそギャグそのものではありませんか。
体験したことのない者でも、
強制収容所はあんなに甘っちょろい所ではなかろうと
容易に想像のつくショボさです。

後半の悲劇といえば、
ジョズエ坊やの目を意識して、
「トテチテタ歩き」でおどけた数秒後には、
グイド(ロベルト・ベニーニ)は
この世とお別れしましたが、
思い出してみてください、
あれは蜂の巣状態の死体を
見せられたいシーン
でしたか?
私だったら御免こうむります。
そして、だからこそ涙を誘うシーンでもありました。
スケベと悲哀は、隠した方が強調されるものです。

そして、前後しますが前半……
田舎から出てきたグイドは、
叔父(伯父?)さんが物置に使っている家を借り、
叔父(伯父?)さんと同じホテルのレストランで働きます。
物置に使っている、というのは、
叔父(伯父?)さんは、
実際はホテル暮らしをしているからですが、
その理由はというと、
始まって何分もしないうちに差し挟まれた
暴漢に襲われるシーンで説明がつくでしょう。
イザヤ・ベンダサンの「日本人とユダヤ人」の冒頭でも、
高級ホテルでケチケチ暮らす
ユダヤ人一家の話が出てきました。
ユダヤ人は、安全を金で買わなければならない
人種だということでしょう。

ところで、私があの映画で最も泣けたのは、
実は小学校の演説のシーンでした。
「この美しい結び目!アーリア人のおへそだよ〜ん」と、
演壇でストリップを始めるグイドは、
言うまでもなく、ユダヤ人という設定です。
その心中いかばかりか…
嫌らしいといえば嫌らしい泣かされ方ですが、
汗と涙とお金は、1度出たら元には戻りません。
はいはい、私はあそこでベーベー泣きましたとも。

悲劇は前半で既に始まっていて、
喜劇は後半まで持ち越された、
そんなバランスのいい人情悲劇が
この映画だったと思うのです。

そうそう、グイドが決して人格者ではなかったのも
ポイント高いですよね。
惚れた女性ドーラ(ニコレッタ・ブラスキ)に
アピールすることしか考えず、
友人フィルッチョの大事な商売道具をダメにし、
無免許運転でドーラの生命を危険にさらし、
あの生き地獄で、自分の子供さえ助かりゃいいと考える、
そんな卑小な男が、姑息な嘘で場をつないで、
何だかわからないけど子供の夢だけはかなえて、
だから、子供にとってはヒーローのまま死ねたとは、
ああ、ずるいずるい。


でも、私はこの映画が大好きなんです。


2002年12月10日(火) 図書館が出てくる映画

1851年12月10日は、
図書館の本の十進法による分類を提案した
図書館員メルヴィル・デューイの誕生日です。

それに因み、
図書館や図書室のシーンが出てくる映画を特集します。
(これについてはプロの方の本も何冊か出ているような、
いわば「人気ジャンル」ではあるのですが、
私なりに、思い出したものを取り上げたいと思います)


ゴーストバスターズ Ghostbusters
1984年アメリカ アイヴァン・ライトマン監督

超常現象の研究家ピーター(ビル・マーレィ)らが
オバケ退治の会社「ゴーストバスターズ」を
結成するきっかけとなったのは、
ニューヨーク市立図書館のゴースト騒動と……
研究費打ち切りによる解雇でした。
「パーティしないか」が口癖のアパートの管理人
リック・モラニス)や、
秘書ジェニー(アニー・ポッツ)など、
コメディーセンス抜群の脇役たちの存在も嬉しい
肩の凝らない娯楽作品でした。

マチルダ Matilda
1996年アメリカ ダニー・デビート監督

アホウな夫婦(ダニー・デビート&レア・パールマン)に授かった
掃き溜めに鶴のようなかわいい天才児マチルダ
(マーラ・ウィルソン)は、
本を読むのに否定的な家族の協力が得られないので、
図書館までラジオ・フライヤー(台車)を引っ張って通うのでした。
原作はロアルド・ダールの「マチルダはちいさな天才児」
夫婦を演じたデビート&パールマンは、実生活でも夫婦ですが、
マチルダ役にウィルソンを発掘するあたり、
さすがに本当にアホウということはないようです。


ある愛の詩 Love Story
1971年アメリカ アーサー・ヒラー監督

貧しい女子学生ジェニー(アリ・マッグロウ)と
お坊っちゃま育ちのオリバー(ライアン・オニール)は、
ジェニーがバイトをしている大学図書館で出会い、
やがて恋に落ちて結婚しますが……
大ヒットした恋愛映画の王道ですが、
出会いのシーンでは「ヤな奴!」って感じだったのも
いかにも「恋愛映画の王道」。
「(私は頭がいいから)あなたみたいなバカな男の
お茶の誘いには乗らないわ」
「誰が君なんか誘うもんか」
「だからあなたはバカなのよ」

という一連のやつです。

クレヨンしんちゃん
嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦

2002年日本 原恵一監督

庭に野原家の飼い犬シロが開けた大きな穴の中に、
古文書風置き手紙?をして行方不明になった
しんのすけ(声・矢島晶子)…
父ひろし(同・藤原啓治)は、
その謎を解くべく図書館へ向かい、
春我部の歴史が書かれた書物をひもといて、
意外な事実を突き止めるのでした。

ラジュー出世する
Raju Ban Gaya Gentleman

1992年インド アズィーズ・ミルザー監督

ダージリンの大学を卒業し、就職のために
都会に出てきたラジュー(シャー・ルク・カーン)は、
あてにしていた親戚のコネを失い、
ひょんなことから知り合った
レヌ(ジュヒー・チャーウラー)という美女の紹介で、
とりあえず、図書館の整理係の仕事を得ますが、
ここで、若干訛りがある(らしい)上司のセリフ字幕が
なぜか関西弁になっていました。

ほかにも『ハムナプトラ』
(棚が崩れてパニクるレイチェル・ワイズがかわいい!)
『シティ・オブ・エンジェル』『耳をすませば』
『ハリー・ポッターと賢者の石』
など、
思い出されるものは何本もありますが、
とりあえず、次の機会に譲りたいと思います。
(因みに図書館記念日は、4月2日と4月30日の2説あります)


2002年12月09日(月) 脇で光る60年代生まれの女優

今、ハリウッドで一番「主役を張りやすい女優」といえば、
年齢に限定して言えばですが、30代の人たちでしょう。
ジュリア・ロバーツ然り、ニコール・キッドマン然り…で。
とはいえ、映画ファン以外への知名度はイマイチでも、
有り余る実力で、しっかり脇を固める人たちも多数います。
今日はそんな中でも1960年代生まれの人たちに絞り、
4人ほど御紹介したいと思います。


リリー・テイラー
Lili Taylor 1967年2月20日生まれ

決して美人とは言えないけれど、
確かな演技力と親しみやすさが強い武器で、
息が長そうな女優さんです。
『ミスティック・ピザ』『セイ・エニシング』
『I love ペッカー』『ハイ・フィディリティ』
などがお勧めです。
主演作では『あなたに言えなかったこと』など。

モイラ・ケリー
Moira Kelly 1968年3月6日生まれ

正直、「よくこの世界で生き残ってるな…」と思わせる、
その辺のねーちゃんにしてはキレイ、という部類の人。
とはいえ、『きっと忘れない』の発展家の女子大生、
『ミルドレッド』のジーナ・ローランズの反抗的な娘など、
印象に残る役も多く演じています。
現在NHK総合で放映中のテレビシリーズ
『ザ・ホワイトハウス』では、
広報部メディア担当のマンディを好演しています。

メーリー=ルイーズ・パーカー
Mary-Louise Parker 1964年8月2日生まれ

初体験でHIVに感染する
生真面目で不運な女性(『ボーイズ・オン・ザ・サイド』)から
子供たちを愛しながらも生活に疲れる母親(『依頼人』)まで
なかなか芸域の広いヒト。
清潔感あふれる白い肌がすてきです。
あ、よく考えたら、『ボーイズ…』は主演級ですね
でも、使い方さえ誤らなければ、絶対「いい女優」だと思うので、
やはりここに挙げさせていただきます


ケイト・ブランシェット
Cate Blanchett 1969年5月14日生まれ

この人に限っては、「脇でも光る」と言いたいほど、
主役もいっぱい張っています。
最近、妊娠が発覚し、[自分たちに役が回ってくる!]と
多くの女優が小躍りした…と言われるほどの売れっ子ぶりで、
話題作も多数。
『耳に残るは君の歌声』のロシア人ダンサーや
『シッピング・ニュース』の主人公クォイルも亡妻などが、
個人的にはお勧めの脇役ですが、
アカデミー賞主演女優賞にノミネートされた
『エリザベス』は壮絶でした。


2002年12月08日(日) 映画よろず屋週報Vol.35「三村ツッコミをかましたくなる映画」

特集「三村ツッコミをかましたくなる映画」

1967年12月8日、お笑いコンビ“さまぁ〜ず”の
大竹一樹さんが生まれました。
大竹さんといえば、無気力なボケに対する
相方・三村さんの、あからさまなツッコミが思い出されます。

ということで、あの「○○かよっ!」の名調子?で
突っ込んでもらいたい映画たちの特集です。

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エバースマイル・ニュージャージー
Eversmile, New Jersey

1989年イギリス/アルゼンチン カルロス・ソリン監督

パタゴニアをバイクで旅する歯科医
ダニエル・ディ・ルイス)が見つけた、
究極の「口腔疾患治療法?……抜くのかよっ!

バッファロー’66 Buffalo '66
1998年アメリカ ヴィンセント・ギャロ監督

自分の手前勝手な目的のために、
罪もない少女(クリスティーナ・リッチー)を誘拐し、
あまつさえ、彼女と恋仲になる
挙動不審で優柔不断な男ビリー(ヴィンセント・ギャロ)。
彼が落ち着きなく街をうろうろ徘徊する訳は……
トイレかよっ!

キラー・コンドーム
Kondom Des Grauens

1996年ドイツ/スイス マルティン・バルツ監督

ニューヨークを舞台にしながら、皆ドイツ語を話し、
コンドームが男根を食いちぎるという珍事件が続発し、
それに翻弄される刑事はホモセクシャル……
その果てしない珍奇さは、
ただでさえツッコミどころが多いものの、
やはり、一番ツッコミたいのは、
ウド・ザメール扮する刑事の名前が“マカロニ”って……
萩原健一(ショーケン)かよっ!

七年目の浮気
The Seven Year Itch

1955年アメリカ ビリー・ワイルダー監督
罪もない悩める中年男(トム・イーウェル)に、
“7年目のうずうず”(The Seven Year Itch)を
味わわせる謎の美女…
彼女が「下着を冷蔵庫で冷やす」だの、
水風呂入るだのと、思わせぶりな言動に走るのは……
暑いのかよっ!

クィーン・コング Queen Kong
1976年イギリス/イタリア
フランク・アグラマ監督

アフリカの密林に撮影に行った映画クルーたちが、
巨大メスゴリラ発見!
彼女を捕獲し、ロンドンで見世物にしようと企むが、
胸と股間を鎖でがんじがらめはかわいそう……って、
ブラ&パンティかよ
(良識ある方は、この作品は避けることをお勧めします)


2002年12月06日(金) すてきな「お姉さん」に会える映画

12月6日は姉の日だそうです。
そこで、いい感じの「お姉さん」が出てくる映画を特集します。

八月の鯨 The Whales of August
1987年アメリカ リンゼイ・アンダーソン監督

アメリカはメイン州の別荘を舞台に、
盲目で気難しい姉リビー(ベティ・デイヴィス)の世話をする
妹セイラ(リリアン・ギッシュ)の、
ふとした表情が若々しくてお茶目なのが印象的な、
この上なくのどかで滋味豊かな老人映画の傑作。
私の記憶に間違いがなければ、
実年齢はずっと上のL.ギッシュの方が妹役だったかと思います。
そして、B.デイヴィスは1989年10月に81歳でこの世を去り、
ギッシュは1993年2月に、
100歳の誕生日まで8カ月を残して永遠の眠りについたのでした。
2人とも年老いてなお美しく、また長生きでした。


愛に迷った時 Something to Talk About
1995年アメリカ ラッセ・ハルストレム監督

ハルストレム監督作品中、
最も評判が悪いと思われる作品ですが、
1人1人のキャラクターにそれなりの愛情を持って見れば、
結構悪くない1本かと思います。
特に、妹グレース(ジュリア・ロバーツ)のダンナ、
エディ(デニス・クエード)の浮気に腹を立て、
彼に蹴りを入れる姉エマ(キラ・セジウィック)が頼もしい!
そして、この姉妹を演じた2人は顔のタイプがよく似ていて、
妙に納得できるキャスティングでもありました。

ザ・エージェント Jerry Maguire
1997年アメリカ キャメロン・クロウ監督

高邁な理想を掲げ、大手エージェントから独立した
ジェリー・マッガイア(トム・クルーズ)の数少ない味方は、
シングルマザーのドロシー(レニー・ゼルヴェガー)だけでした。
そのドロシーがジェリーにホレているのをお見通しで、
「あんなオトコはやめときな」と、ドロシーの“シングル仲間”でもある
姉のローレル(ボニー・ハント)は忠言を呈するのですが……

ビッグ・ダディ Big Daddy
1999年アメリカ デニス・デューガン監督

事故に遭ったときの賠償金を株につぎ込み、
その配当で食えるので、
性根を入れて働こうとしないソニー(アダム・サンドラー)は、
ルームメイト・ケビン(ジョン・スチュワート)の婚約者である
コリーン(レスリー・マン)には忌み嫌われていましたが、
姉妹でも、男の好みは違うようで、
コリーンの姉レイラ(ジョーイ・ローレン・アダムス)は、
ソニーの気取らない温かさに惹かれ、恋仲になるのでした。
それにしても、役柄だけとはいえ、
こんなに似ていない姉妹も珍しいと思いました。
この映画、日本ではお粗末な扱いでしたが、
アメリカでは、人気者A.サンドラーの映画ということもあり、
『スターウォーズ エピソード1』の興行収入連続1位の記録を
ストップさせる大ヒットに。
チャランポラン人生から一転、
父親になることをまじめに考える男の奮闘が光る好編です。
Big Daddyとは、この場合、よき父親と解すべきだとか。


2002年12月05日(木) サム・サフィ

サム・サフィ Sam Saffit
1992年日本/フランス
ビルジニ・テブネ監督


派手なコスチュームでストリップ小屋で踊っていた
エヴァ(オーレ・アッテカ )は、
ある日突然、「まともな生活」に憧れ、
Sam Saffitと戸口に書かれた海辺の家で暮らし始めます。
フランス語で「もうたくさん!」という意味だとか。
彼女は自由きままな生活にうんざりしていたのです。
……………。
マジメそうに見えるスーツを着て、ごくごく普通に働いて、
そんでもって、ごくごく普通に暮らすことに、
彼女は「憧れ」ました。
……………。

その後、年老いたホモカップルの家に住み込みで家政婦をしたり、
役所の窓口で働きながら、マジメそうな男(=結婚相手)を探したり、
そんな日々を送るようになるのですが、
ひょんなことから、人生の方向を変える出来事が2つ起こり、
結局彼女は「華やかな幸せ」をつかむのでした……。

途中、二重に所得を得ていたために、
税金をバカ高く請求されたり、
遅刻や事務能力の低さに対して嫌みを言われたり、
それなりに「やなこと」や「しがらみ」もあるにはあるものの、
結局、余り物事を深く考えない愛すべき女性が、
それなりに幸せになってしまうという、それだけの話です。

ごく私的な感想を述べれば、
自由奔放に生きてきた彼女が憧れる「普通」って、
すごく紋切り型なんですね。
でも、大抵の人が体験する「普通の生活」というのは、
確かに平凡ではあるものの、
決して紋切り型ではないと思いませんか。
全く適切とは言いがたいものの、
「幸せな家庭は皆似ているが、
不幸な家庭はそれぞれに不幸」

ってやつです。 トルストイ『アンナ・カレーニナ』より
不幸、というのは、そう大仰な意味での「不幸」でなくても、
ちょっと嫌なこととか、悩みとか、そういう意味で。
これもいわゆる、「隣の芝生は青い」ということなのでしょうが。

この種の映画の常とも言えますが、とにかく画ヅラはおしゃれです。
色使いはポップそのものだし。
ここ数年はやりの、雑誌によくある「私の部屋見て!」っぽくて、
まねしたくなるようなアイディアがぎっしり詰まっています。
(特に金魚の水槽……金魚的にはどうかわかりませんが)
「これが本当の金魚(近所)迷惑」などと口が滑ったらブチコワシと思いつつ、やっぱり言ってみる


2002年12月04日(水) スターマン 愛・宇宙はるかに

1949年12月4日、
俳優のジェフ・ブリッジズが生まれました。
彼は過去に、ちょっと意外な役で
オスカー主演男優賞にノミネートされています。

スターマン 愛・宇宙はるかに
Starman

1984年アメリカ ジョン・カーペンター監督


ジョン・カーペンターといえば、どちらかというと
マニアの見る映画の監督というイメージを抱いていました。
まあ実際、そうなんでしょう。
だから、これ以外は全く見たことがありません。
が、あのジェームズ・キャメロンが
『タイタニック』を撮ったように、
この作品もまた、臀部がむずがゆくなるような邦題に恥じず、
とってもファンタジックなラブロマンスに仕上がっていました。

まだ若くして夫を亡くしたばかりの
ジェニー(カレン・アレン)は、
2人の思い出の曲、エヴァリー・ブラザーズの
All I Have To Do Is Dream(夢を見るだけ)
ギターを爪弾きながら歌い、嘆き悲しむ毎日でした。

時を同じくして、ボイジャー2の呼びかけに応じたエイリアンが
地球に飛来してきますが、軍隊に宇宙船を攻撃されて不時着し、
たまたま近所にあったジェニーの家にやってきて、
亡き夫の姿(ジェフ・ブリッジズ)に変身します。

不器用にローリング・ストーンズの
“サティスファクション”を歌ったり、
(NASAが交信時に、「地球の歌」として教えたらしい…)
人の話す言葉を一々模倣したり、どこか様子がおかしいものの、
愛する夫と全く同じ姿をした彼“スターマン”の出現に、
ジェニーは大いに動揺しますが、事情を何とか酌み取り、
彼の帰還の手助けをすることになります。
けれどもそれは、
政府・警察などの追手から逃れる旅になるのでした……。

敬愛する中崎タツヤ氏のまんがの中で、
「もし、攻撃的でも特に友好的でもない、
普通の宇宙人が地球に来たら?」
と、
少年たちが話し合うというものがありました。
その宇宙人は、世界平和を願いつつも、
自分では何も積極行動をしないし、
ゴミのポイ捨てはするし、人の噂話もするし、
本当にその辺にいる地球人と全く変わらないのです。
こうなると、ただ単に地球の人口が増えるだけで、
いいことはひとつもないのでは?
てか、宇宙人とか言ってるけど、
これってオレたちそのものでは……?と思いつつ、
「オレは違うぞ」と必死で弁解し合うというオチでした。

考えてみれば、地球人とコミュニケートできる地球外生命体が
本当に存在するとして、我々の前に姿を現すとしたら、
いわゆる宇宙人宇宙人した姿で現れるとは限りませんね。
ジョン・カーペンターは、このテーマで『ゼイリブ』なんてのも撮っていますが

逃走する2人は、当たり前のように恋に落ちますが、
それはかなわぬ恋でもあります。
異星人と地球人のコミュニケートというと、
どうしても『E.T.』を思い出しますが、
(そういえば、『E.T.』は、20年前の今日に本公開されたそうです)
この映画も、単純な観客に徹してみれば、
「何するかわかったもんじゃないエイリアンから
罪なきオンナコドモを救わねば」
という余計なお世話感が漂い、
そんなところがまた魅力でもあります。

『アンタッチャブル』のちんちくりんの会計士を演じた
チャールズ・マーティン・スミスが、
スターマンと何とかコミュニケートしようとする天文学者を演じました。
最初は友好メッセージを伝えたはずなのに、
本当に来ちゃったら、何故か侵略だと思って攻撃する、
こんな政府の身勝手な対応に不満を漏らすシーンが印象的です。


2002年12月01日(日) 映画よろず屋週報 Vol34「映画の中で映画」

特集「映画の中で映画」

映画の日にちなみ、映画作品中で映画を見ていたり、
映画を話題にしていたり、というものを御紹介いたします。
これも数限りなくありますから、
とりあえずの「第1弾」ということで、
今日たまたま思いついたものだけを少し取り上げてみます。

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さよなら子供たち
Au Revoir, Les Enfants

1987年フランス/ドイツ ルイ・マル監督

ドイツ占領下のフランスの片田舎にある寄宿学校を舞台に、
ナチスがもたらした悲劇を淡々と描いた作品。
作中、少年たちが『チャップリンの移民』を見るシーンがあります。
(『さよなら子供たち』は、単独では来年1月17日に御紹介予定)

交渉人 The Negotiator
1988年 F・ゲイリー・グレイ監督

同僚の殺害容疑をかけられた
人質交渉のプロ(サミュエル・L.ジャクソン)が、
身の潔白を証明するために、警察に立てこもるため、
その彼の“御指名”で、
別の名うての交渉人(ケビン・スペイシー)を
召還する……というお話。
K.スペイシーが、西部劇フリークという設定でした。
(だから、ある古典名作映画のネタバレが若干あるので御用心を…)

ショーシャンクの空に
The Shawshank Redemption

1994年アメリカ フランク・ダラボン監督

無実の罪でショーシャンク刑務所に投獄された
アンディ(ティム・ロビンス)と、
刑務所の古株で、“調達屋”レッド
モーガン・フリーマン)の友情や、
どんな状況下でも抱くことができる希望の光を描いた作品。
アンディがレッドに
「リタ・ヘイワースを調達してくれ」と頼むのは、
刑務所の数少ないお楽しみ、映画上映の真っ最中でしたが、
映画はそのリタ・ヘイワースの『ギルダ』でした。
ちなみに原作では、『失われた週末』を見ている最中だったかと記憶しています。

アメリ
Le fabuleux destin d'Amelie Poulain

2001年フランス ジャン・ピエール・ジュネ監督

「金曜の夜、たまに映画を見にいく」アメリは、
他の人が気づかないようなシーンを探すのが大好きで、
トリュフォーの『突然炎のごとく』を見にいったときは、
スクリーンの中で、小さな虫がうごめいているのを見逃しません。
そして、「アメリカ映画の中のよそ見運転のシーンが嫌い」
とも彼女は言いますが、
このとき例に引かれていた映画のタイトルがわかりません。
御存じの方、ぜひとも御一報を!

ウディ・アレンの重罪と軽罪
Crimes and Misdemeanors

1989年アメリカ ウディ・アレン監督

タイトルは、いろいろな解釈ができなくもありませんが、
取り返しのつかない罪がもみ消され、
しょーもない小さな小さな悪事は
神のお目こぼしもなし…というのが
妥当なところでしょうか。
2人の対照的な境遇の男、
眼科医(マーティン・ランドー)、
貧乏映画監督(ウディ・アレン)、
アホだけど力のあるプロデューサー(アラン・アルダ)などの
男性キャラを中心に、彼らを取り巻く男と女、
皆さん達者な演技で持ち分を全うしています。
(もちろん、例によって豪華キャスト)
まだ、アレンとミア・ファローがうまくいっていた頃なので、
アレンの思い人として彼女も出演していますが、
彼女に、プライベートで所有している
『雨に唄えば』のフィルムを見せるシーンがありました。
ミュージカル好きだったというアレンの素の顔が見える演出?

チャーリング・クロス街84番地
84CharingCrossRoad

1986年アメリカ デヴィッド・ジョーンズ監督

なぜか映画館内でタバコをくゆらせながら、
売れない作家ヘレン・ハンフ(アン・バンクロフト)が
泣きながら『逢いびき』を見ているシーンがあります。
イギリスびいきの彼女らしい映画と言えなくもないものの、
年中ジンの入ったグラス片手にくわえタバコ、というスタイルで、
髪を振り乱して仕事をしている色気イマイチの彼女が
この作品が大好き(らしい)という演出が、
ミスマッチでおかしかったです。

マネキン Mannequin
1987年アメリカ マイケル・ゴッドリーブ監督

古代エジプトから、結婚を嫌がって
現代にタイプトリップした姫(キム・キャトラル)の魂が、
アーチスト気質が災いしてマネキン工場の仕事を首になった
ジョナサン(アンドリュー・マッカーシー)が
丹精こめて作ったマネキンに宿って……という筋立ての
ファンタジックなコメディー。
ジョナサンは、あるデパートオーナーを助けたことがきっかけで、
そのデパートのディスプレイの仕事を得ますが、
かつてはハリウッドの大女優もお得意さんだったという
店のオーナーが、「若いから知らないわね」と言いつつ
往年の女優の名前を挙げると、
不眠症で深夜映画をたっぷり見ていたジョナサンは、
次々と代表作を挙げていく…というシーンが
妙に印象に残りました。

ぼくの国、パパの国 East is east
1999年イギリス ダミアン・オドネル監督

キプリングの詩からとられたという原題のとおり、
ちょっと皮肉な味わいのある、コミカルな家族ドラマ。
70年代のイギリスの小都市で、
イギリス女性と結婚したパキスタン人の男が、
子供たちをイスラム教徒にしようと教育(というか強制)するものの、
無理やりあてがわれた結婚相手を嫌がる長男が家出したり、
次三男の見合いもめちゃくちゃくにされたりと、もう大変。
この一家が、親戚が経営する映画館に映画を見にいくと、
上映中のインド映画をいきなり休止させ、
パキスタン映画に差し替えさせる…なんてシーンが登場しました。
インドとパキスタンの仲の悪さも随所に表現されていましたが、
ヨーロッパ人からしたら「どっちも変わんねーじゃん」に
見えるんだろうな…と思わせる演出がちょっと痛いかも。
ここ最近もてはやされているイギリス映画とは一味う、
ある国の中のもう1つの国、
という描写に興味深いものがあります。
キプリング「東西のバラード」
※East is East, and West is West, and never the twain shall meet



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