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2002年08月31日(土) ウーマン・オン・トップ

本日は、特に深い意味はなく、
軽〜い気持ちでそこそこ楽しめる1本をどうぞ。

そういえば、本日8月31日は「野(8)菜(3・1)の日」だとか。
料理のシーンがたっぷり楽しめるこの作品でも、
色鮮やかな野菜を含む食材が目を楽しませます。

ウーマン・オン・トップ Woman on Top
1999年アメリカ フィナ・トレス監督


美女ペネロペ・クルスに好感を持てるか、
魅力を感じるかで大分印象が変わる作品ではありますが、
映画の出来としても、そう悪くなかったと思います。

生まれつきの美貌を誇るイザベラ(P.クルス)は、
ブラジルの裕福な家庭に育ち、料理の才能にも恵まれましたが、
乗り物という乗り物ことごとく酔ってしまうという弱点があります。
世界をまたにかけた料理人という夢も、
飛行機にも乗れないのでは話になれません。

そんな彼女ですが、
ハンサムで歌のうまいトニーニョ(ムリロ・ベニチオ)と恋に落ち、
結婚して、彼の経営するレストランで腕をふるうようになります。
レストランは繁盛し、幸せな若夫婦、だったはずが、
さまざまな条件が悪く作用し合い、
トニーニョはよその女性と浮気をするようになって、
怒ったイザベラは、必死の思いで飛行機に乗り、
幼なじみのモニカ(ハロルド・ペリノー・ジュニア)が住む
アメリカ・サンフランシスコへと赴きます。
そこで料理学校講師の仕事を得、だんだんと元気を取り戻しました。

イザベラが身を寄せたモニカのアパートの近くには、
企画で行き詰まっていたテレビ番組のプロデューサー、
クリフ(マーク・フォイアスタイン)が住んでいましたが、
彼は、たまたま見かけたイザベラの生き生きとした美しさに惹かれ、
ふらふらと「にわかストーカー」になって彼女の後を追います。
成り行きで、イザベラが担当する料理学校の授業を受け、
彼女を起用して料理番組をつくってみたら…と思いつくのですが、
(ルックス的に非常に衝撃の強い)モニカを
アシスタントにしたいというイザベラの申し出には
面食らうものの、これが大当たり。
一躍人気者となり、全国ネットの話も浮上しました。

一方、イザベラに見限られたトニーニョは、
彼女がどうしても諦められず、ブラジルからやってきます。
さらに、彼女がテレビ番組に出ていることを知って、
その番組に、ボサ・ノヴァバンドを率いて乱入したりしますが、
これも視聴者には大好評で、イザベラ同様、
トニーニョも人気の的に。
浮気が原因で家出をしたイザベラでしたが、
トニーニョを完全に嫌いになったわけではありません。
イザベラのことが好きなクリフは、
トニーニョの出現に気が気ではなく、
何とか彼女の心をつかみたくて、
モニカにアドバイスを乞うたりしますが、
生真面目で淡白そうなユダヤ系(多分)の彼に、
情熱のブラジルノリは習得できるのでしょうか?

大抵の映画で、好いたらしい性格の女装の人が出てくると、
強い印象を残すものですが、
この映画でモニカを演じたH.ペリノーもチャーミングでした。
(96年版の『ロミオ+ジュリエット』で
マーキュシオを演じたヒト)
イザベラをしっかりとサポートしつつも、
個性をしっかりアピールし、
まさに愛すべきオカマちゃんでありました。
だから、ステロタイプと言えなくもないのですが、
好きになれない「今までにないタイプ」よりも、
適度に個性的でどこかにいそうな好人物の方が、
ラブコメディーには向くキャラクターと言えましょう。

ところで、トニーニョが浮気に走った一番の原因は、
「ダンスでも夜の営みでも、
何でもイザベラが主導権を握りたがる」

からでした。
ドライバーは、運転している間は車に酔わないといいますが、
彼女は、乗り物酔い克服の手段を夜の生活にも導入したのでした。
イザベルはイザベルで、愛想よくレストラン経営の表舞台に立ち、
自分は厨房(日蔭)で料理をするだけ…という状況に不満でした。
イザベルとトニーニョ、
双方の言い分や不満もわからないでないだけに、
「あ〜、ね〜」と、曖昧に同意したくなります。
美しい映像と、何ともお手軽に事が進む設定に、
結構シビアな夫婦の現実も張りついていて、それがまた、
料理のシーンに登場する数々のスパイスを彷彿とさせます。


2002年08月29日(木) 番外編 私的「幻の映画」

しつこいようですが、こちらで取り上げる映画の「基準」は、

その1 最低1回は自分の目で見ていること。
(週報でタイトルを挙げる場合のみ、この限りではありません)
その2 どこかしら好きになれるところがあること。
(とはいえ、例えば1シーンだけ、というのは除外します。
世間の評価はともかく、自分が好意的に紹介できる、
というのが概ねの基準)
その3 候補が2作以上あるときは、よりマイナーと思われる方を選ぶ。
(検索してヒット数が少ない、データベース系のサイトで
見つからないことが多いなど)

この3つであります。

さはさりながら、何にでも例外はあるものですし、
たまにはこういうのもありではないかと勝手に判断し、
本日は番外編「見たいけれど見られない」映画たちに捧げる企画です。

まずは単純に、「機会がない」映画から。

ミラクル・ペティント El milagro de P. Tinto
1998年スペイン ハビエル・フェセル監督

「まんが日本昔話」を彷彿とさせるプロットに惹かれます。
ぜひとも見たい〜。
福島県郡山市の方、このソフトが置いてあるお店を御存じすか?
私は
「創夢館郡山バイパス店」
「レオクラブTSUTAYA開成店」
「TSUTAYA桑野店」

の利用者ですが…

シッピング・ニュース The Shipping News
2001年アメリカ ラッセ・ハルストレム監督

ビデオ&DVDがリリースされたばかり…ということで、
いつ見てもレンタル中です。これはそのうち見られるでしょうが、
そうしたら今度は「手が伸びない」部門に入るかも。
大きな声では言えませんが、ハルストレムおじさんは、
だんだん映画撮るのが下手になっているように思えるので…


「手が伸びない・訳あって見られない」映画は…

女と男の名誉 Prizzi's Honor
1985年アメリカ ジョン・ヒューストン監督

学生時代、新宿の某名画座で見て、なぜか1時間たっぷり寝てしまい、
その後、フォローのためにビデオを2度借りましたが、
いずれもやはり途中で寝てしまったという映画です。
ちなみに、昨日8月28日はジョン・ヒューストンの命日(1987年)

ビッグ・ダディ Big Daddy
1999年アメリカ デニス・デューガン監督

コメディー大好き!アダム・サンドラー萌え〜でありながら、
どうしてもこれだけは手が伸びません。
「「スターウォーズ エピソード1」を抜いて
全米ナンバーワン」
という
うたい文句が気に入らないし、テーマも何となくユルそうだし…

この企画、卑怯者、手抜き!とのそしり覚悟で、
定期的にやっていこうと思います。
ここでタイトルを挙げられた映画について、何か一言お持ちの方は、
ぜひともBBSでの書き込みをお願いいたします。
(ちょっと公共の目にさらすのがはばかられる表現になりそう…
という場合は直メールもお待ちしています)


2002年08月25日(日) 映画よろず屋週報 Vol20『去りゆく夏』

*****映画よろず屋週報 Vol20 2002.8.25*********************

皆さん、こんにちは。
このメルマガも、おかげさまで20号目の配信となりました。
今後ともよろしくおつき合いくださいませ。

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特集「去りゆく夏」

私の住む福島の各学校は明日から始業式です。
皆さんのお住まいの地域は、どんな感じでしょうか?

8月最後の日曜日となる本日は、
「夏休み」が登場する映画にこだわってみました。

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ポケットモンスター ピカチュウの夏休み(短編)
Pocket Monsters: Pikachu's Summer Vacation
1998年日本

97年冬の、いわゆる「ポケモンパニック」と言われた事件を経て、
満を持して公開された長編「ポケットモンスター ミューツーの逆襲」と
併映された、ラブリーな短編(23分)映画です。
ポケモンオールスターズによる、ウキウキするような夏休みの1日。
当時少し話題になったANAの「ポケモンジェット」の中でも
上映されたとか。

冬冬の夏休み 冬冬的假期 A Summer At Grandpa's
1984年台湾 侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督


フランスの想い出 Le Grand Chemin
1987年フランス ジャン・ルー・ユベール監督


愛に翼を Paradise 
1991年アメリカ メリー・アグネス・ドナヒュー監督


上記3本は、驚くほどシチュエーションが似ているのですが、
(殊に『愛に翼を』は『フランスの想い出』のリメイクと言われています)
それぞれに違った魅力があります。
台湾の田舎、フランスの田舎、アメリカの田舎、
皆さんなら、どこで夏の休暇を過ごしたいと思いますか?
私は映画への好感度もあり、断然台湾です。

おもひでぽろぽろ Memories of Teardrops
1999年日本 高畑勲監督

実はこの評判の悪い映画、私は嫌いではないと思っていたのですが、
最近、原作を読む機会があり、何となく「違う」と思ってしまいました。
原作の持つオトボケ味が、全く表現されていないと感じたからです。
……と言いつつ、かなり頑張っているなと感じる点もあるので、
もしも食わず嫌いの方がいらしたら、
テレビ放映の折にでもごらんになることをお勧めします。

スタンド・バイ・ミー Stand by me
1986年アメリカ ロブ・ライナー監督

スティーブン・キング原作の非ホラー作品。
1959年、アメリカの片田舎を舞台に、
夏休み明けには中学生になる4人の少年の小さな冒険の旅を描き、
その4人の演技も大評判になりましたが、
個人的には、「男の子ってしんどいなぁ…」という感想だけが残りました。
4人の中で最もかっこよく成長したのは、意外や意外、
おでぶのバーン少年を演じたジェリー・オコネルでした…が、
生きていれば一昨日で32歳になっていたリヴァー・フェニックスは、
一体どんな青年になっていたでしょうか。

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お誕生日1週間(8月25日〜8月31日)
8/25 ショーン・コネリー(1930)
8/26 マコーレー・カルキン(1980)
8/27 チューズディ・ウェルド(1943)
8/28 ジェイソン・プリーストリー(1969)
8/29 イングリット・バークマン(1929−1982.8.28)
8/30 キャメロン・ディアス(1972)
8/31 ジェームズ・コバーン(1928)
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2002年08月24日(土) 24時間4万回の記録

このコーナーで今まで取り上げた作品や、今後取り上げる中でも、
多分、1,2を争うアホ映画になるであろう映画を
御紹介いたします。

24時間4万回の記録 Les Convoyeurs Attendent
(英語タイトル:The Carriers Are Waiting )
1999年ベルギー・フランス・スイス合作
ブノワ・マリアージュ監督

この映画を買いつけてきた人は、一体何を考えていたのでしょうか。
そして、このストレート過ぎる邦題ときたら……
原題『(鳩の)運搬人は待っている』は、中心キャストの1人である、
軽い知的障碍のある優しい青年のことだと思いますが、
映画全体にまとまりというものが全くないので、
どうしてこのタイトルなのかも解しかねます。

ある小さな村に住むロジェは、
平凡で退屈な貧乏暮らしにうんざりしていました。
そんなある日、
何でもいいから記録をつくったら車をプレゼントというコンテストを知り、
御しやすい息子ミシェルに仕込んで、
24時間で4万回ドアの開閉をするという記録づくりに
チャレンジさせます。
(はっきり言って、これで記録を持っている人がいたこと自体
驚きなのですが…)
そのために、何やら恰幅のいい感じのコーチまで雇いますが、
これがまた、何でもかんでもアメリカ式で押し通すような人で、
心優しいミシェルは、このバカ父とバカコーチに
身も心も破壊されかけます。

そんなこんなでやってきたコンテスト当日ですが、
さてさて、結果は?

大爆笑というよりは、力なく「ははは…」と笑うのにぴったりの映画です。
冒頭に書いた青年は、鳩の飼育をしていて、
ロジェの娘ルイーズ(ミシェルの妹)と仲がいいのですが、
こんなバカ映画の中で、この2人の関係だけが、
何やら『シベールの日曜日』をほうふつとさせるものがありました。
(ヨーロッパ映画って、その独特の雰囲気だけでも得していますね)

比較的最近、カラー版のDVDがリリースされたという情報がありますが、
公開時(及びビデオ)はモノクロでした。
そして、これがまた、かつてないほど意味のないモノクロでして……。
世の中そうそう説明のつく事柄ばかりでないことは判っていても、
それでも「何のためにつくられた映画なのかが全く判らない…」
敢えてそう口に出すことでこだわりたくなるような、そんな映画です。
(少なくとも、私にとってはそうです)

余りにも癖が強いので、すべての人にオススメはいたしませんが、
「トホホなもの見たさ」の気分になったときにどうぞ。
ただ1つ言えることは、
私、この映画がかな〜り好きです、と、これだけですね。


2002年08月20日(火) カーラの結婚宣言

とっくに取り上げたと思い込んでいたら、
過去の日記のどこにもない!という映画が、結構ありました。
そこで、ちょっとサボってしまっていた8月20〜22日の間に
それを取り上げたいと思います。
(これを書いているのは、既に23日……)

カーラの結婚宣言 The Other Sister
1999年アメリカ ゲイリー・マーシャル監督

裕福で、夫婦仲もまあまあ円満。かわいい娘3人にも恵まれた
テイト夫妻(ダイアン・キートントム・スケリット)ですが、
実は、一番下の娘カーラ(ジュリエット・リュイス)には
軽い知的障碍があり、施設に預けられていました。
そんな彼女も、24歳という年齢もあり、
自宅から通える職業訓練校に入り、自立の道を模索するのですが、
そこで知り合ったダニー(ジョバンニ・リビシー)と親しくなり、
結婚を考えるまでに愛し合うようになります。
けれども、いつまでもカーラを子供扱いの母エリザベスは、
カーラの力強い決意とは裏腹に、
「やっていけるわけがない」と心配し、反対するのですが…

金銭的な心配がほとんどない分、
そうした点でのリアリティに欠けるというのは否めないものの、
その分、そのほかの部分を厚く描けていたと思いました。
原題「もう一人の姉妹」は、彼女が三人姉妹の末っ子で、
上の2人の娘に対し、「実はもう1人いましてね…」というような
ニュアンスを感じます。
特に障碍もなく、一見自立しているように思える上の娘たちすら、
エリザベスにとっては、やれ好き勝手ばっかりしてだの、
レズビアンでは困るだのと、何かしら文句のつけどころはあります。
この、エリザベスが何やかやと1人で気を揉んで、
父ラドリーは、どうもこの気揉み性の妻に完全にはついていけず、
「やれやれ…」というため息が聞こえてきそうなところが、
何だか印象に残りました。
それが、この映画なりのリアリティだったのではないでしょうか。

私だって人を愛することはできる」というカーラの“結婚宣言”は、
一歩間違えば、非常に差別的になってしまったと思います。
とはいえ、これがある種のラブコメディである以上、
カップルは好感度が高い方がいいに決まっています。
自分がエリザベスの立場だったら、益体もない意見を娘に押しつけ、
「ママはちっともわかっていない!」と怒らせてしまうのが
オチではないかと思いますが、映画の観客としては、
「カーラもダニーもいい子だなあ。母親が分からず屋でかわいそう」と、
無責任に思うのが楽しいものです。

障碍を持つ人がメインキャストの映画だと、なぜか「障碍者モノ」と、
非常に失礼な一括りをしてしまいがちなところがありますが、
だとしたら、彼らが生活していく上でのさまざまな悩みなど、
ごく当たり前の実態を、悪意や変な同情なく描くのが正義だと思います。
この映画はその点で成功していたと、個人的には思うのですが…

ところで、ゲイリー・マーシャルの映画といえば、
必ず味な演技で印象を残す役者さんがいます。
その名も、ヘクター・エリゾンドー氏。
この映画でも、ダニーと同じアパートに住んでいる、
若いカップルの数少ない応援者として、
風変わりにしてあったかい演技を見せてくれています。


2002年08月19日(月) アメリカン・ヒストリーX

昨日配信の「映画よろず屋週報」で、
本日8月19日の「バイクの日」ネタを使ってしまったので、
代替として、8月18日生まれの役者さんの映画を。

1969年8月18日、エドワード・ノートンが生まれました。
癖のない優しげなルックスを補って余りある演技で、
デビュー以来、実力派の名をほしいままにしている人ですが、
特にこの映画では「1人3役」のノリがあり、すさまじいものでした。

アメリカン・ヒストリーX American History X
1998年アメリカ トニー・ケイ監督


デレク(E.ノートン)は、消防士だった父を黒人に殺されて以来、
人種差別主義になったネオナチのリーダーでしたが、
黒人の車泥棒を殺し、刑務所に入れられます。

弟ダニー(エドワード・ファーロング)には、そんな兄が自慢で、
兄と同じようにスキンヘッドに剃り上げ、マイノリティーを蔑視し、
自分に親身になって接する校長スウィーニー(エイプリー・ブルックス)にも、
彼が黒人だということもあり、反抗的な態度をとります。
そのスウィーニーがダニーに課した宿題レポートのタイトルが、
「アメリカン・ヒストリーX」でした。あるアメリカの歴史、というわけです。

デレクは3年で出所してきますが、
ダニーが大好きだった尖った感じがなくなり、
しかも、黒人を擁護する発言すらします。
昔のお仲間の訪問にも、いい顔をしません。
お務めのおかげで、デレクはすっかり変わってしまったのでした。

不安な刑務所暮らしで、自分に親しく話しかけ、
どう考えても黒人受刑者の攻撃のターゲットになりそうだった自分を
守ってくれたのが、黒人受刑者のラモント(ガイ・トリー)だったこと、
また、自分よりも罪状が軽そうなラモントの刑期が、
自分よりはるかに長かったことなどなど、
もともと聡明だったデレクに物を考えさせるに十分な材料がありました。
(頭いいんだから、さっさと気づけよって話ですが)
さらに、亡き父は尊敬に値する人物ではあったものの、
そもそもが根拠の薄い黒人差別主義者だったことにも思い当たります。
(いわゆる“逆差別批判者”)

最初は、兄貴は腑抜けになったと失望するダニーでしたが、
徐々に彼の説得に耳を傾けるようになって、
それらの経験を踏まえ、スウィーニーの課した宿題にも
まじめに取り組むのですが……。


昔、ドイツのジョーク集で、こんなのを読んだことがあります。
 「ドイツ人は知的で誠実でナチ的だが、
  この3つが鼎立することはなく、
  知的で誠実だとナチ的でなく、
  知的でナチ的だと誠実でなく、
  誠実でナチ的だと、知的ではない」

デレクは、刑務所という海で、
ナチズムを取られた代わりに誠実さを与えられた
人魚だったのかもしれませんね。道理で上半身裸だったわけです。
(鍛え上げられたノートンの胸板や腹筋は、かなりせくすぃーです)


もともとは黒人文学の歴史を目を輝かせて話す少年だったのに、
ナチズムに傾倒し、触ればケガをしそうな風情の男になって、
刑務所で、また「当たり前に物が考えられる」好青年になって
戻ってきたデレク……この三態の演じ分けはお見事!です。

また、これは何か含みがあったのか偶然なのかわかりませんが、
兄デレク、弟ダニーはもちろんのこと、
母ドリス、姉(妹?)ダヴィーナ、そして亡き父がデニスと、
軸になるヴィンヤード一家は、全員が「頭文字D」でした。
Dが一体何の略なのか、ちょっと深読みしたい気もします。


2002年08月18日(日) 映画よろず屋週報Vol19『映画の中のバイク』

*****映画よろず屋週報 Vol19 2002.8.18*********************

皆さん、こんにちは。
本日8月18日は、「猛暑の特異日」だそうです。
けれども、当地(福島)の予想最高気温は25℃…
ま、涼しい分にはいいのですが、台風の進路が気になるところです。

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特集「映画の中のバイク」

1日先取りですが、8月19日は「バイクの日」だそうです。

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ウォレスとグルミット 危機一髪! A Close Shave
1995年イギリス ニック・パーク監督

クレイアニメの大傑作「ウォレスとグルミット」シリーズの3作目。
賢いわんこ・グルミットは、飛行機にもなるサイドカーに乗り、
飼い主(というより相棒)のウォレスと窓磨きの仕事に出かけます。

八月のクリスマス Cristmas in August
1998年大韓民国 ホ・ジノ監督

余命幾許もない、小さな写真店のあんちゃん(ハン・ソッキュ)と、
かわいいけれど、ちょっと厚かましい交通巡視員(シム・ウナ)の
じれったいような純愛物語。
2人がタンデムしたスクーターの、ラストシーンでの使い方に注目!

踊れトスカーナ! IL CICLONE
1996年イタリア レオナルド・ピエラッチョーニ監督

アメリ Le fabuleux destin d'Amelie Poulain
2001年フランス ジャン・ピエール・ジュネ監督

上記の2作に共通して登場するバイク…ペダル式。
前者は、1982年サッカーワールドカップ・スペイン大会で
イタリアが優勝の折には、5人を乗せて走った…とか。
後者では、主人公アメリ(オドレィ・トトゥ)が一目惚れした
ニノ(マチュー・カソヴィッツ)の愛車でした。

さらば青春の光 Quadrophenia
1979年イギリス フランク・ロッダム監督

ポリス時代のスティングも出演している、
60年代イギリスの、いわゆるモッズの若者たちを描いた青春映画。
キメキメのファッションを汚さないようにという配慮から、
みんなスクーター(ベスパ)に乗っていました。

エバースマイル・ニュージャージー 
Eversmile, New Jersey

1989年イギリス=アルゼンチン カルロス・ソリン監督

虫歯撲滅のために、ハーレーにまたがって
南米を走る歯医者さんって、どう思います?

ランブルフィッシュ Rumble Fish
1983年アメリカ フランシス・コッポラ監督

ランブルフィッシユ(闘魚)だけをパートカラーにし、
全編モノクロ映像で見せてくれた、シブめの青春映画。
今思い出すと、映像美はともかく、結構薄っぺらいお話ですが、
とりあえず、若かりし日のニコラス・ケイジが拝めます。
主人公ラスティ(マット・ディロン)が尊敬する兄【バイクボーイ】を
ミッキー・ロークがカリスマ性たっぷりに演じました。


まことに恐れ入りますが、とんだボロ出し企画となりました。
私自身、バイクはバイクでも、
エンジンのついたものには乗れないような人間です。
(タンデムシートはこの限りでありませんが)
ですので、あくまで印象に残ったものだけを羅列しましたが、
詳しい方は、車種やタイプも特定できることと思いますし、
オートバイが効果的に使われている映画は、まだまだたくさんあります。
何がお気づきの点等ありましたら、
当方HPの掲示板までどんどん書き込んでくださいませ。

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お誕生日1週間(8月18日〜8月24日)★は故人
8/18 エドワード・ノートン(1969)
8/19 マシュー・ペリー(1969)
8/20 ジョアン・アレン(1956)
8/21 キャリー=アン・モス(1967)
8/22 レネ・リーフェンシュタール(1902・映画監督)
8/23 リヴァー・フェニックス(1970−1993)★
8/24 マーリー・マトリン(1965)
     ※IMDbに準拠しています。
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2002年08月16日(金) ハネムーン・イン・ベガス

1977年8月16日、最近生存説が(また)浮上している
エルヴィス・プレスリーが亡くなりました(享年42歳)。

プレスリーといえば、
その名も高きお屋敷「グレイスランド」を構えたメンフィスのほかに、
ラスベガスにも縁の深かった人ですが、
ラスベガスといえば、こんな映画がありました。

ハネムーン・イン・ベガス Honeymoon in Vegas
1992年アメリカ アンドリュー・バーグマン監督


比較的古くからのニコラス・ケージのファンならば、
先日、彼がプレスリーの愛娘リサ・マリーと再婚したことに、
何か偶然と思えないものを感じたのではないかと思います。
(それはもちろん、彼女がプレスリーの娘「だから」結婚した、
という意味ではありません。念のため)

亡き母の遺言に縛られ、
結婚できないでいる私立探偵ジャック(N.ケージ)は、
愛する恋人ベッツィ(サラ・ジェシカ・パーカー)に押し切られる格好で
ラスベガスに赴き、結婚することになります。
よく海外ドラマ等にも登場しますが、
ベガスといえば、「アメリカ一簡単に結婚できる場所」として有名ですね。


さて、ベガスへとやってきた2人ですが、
ベッツィはプールサイドで、とんでもない人物に見初められます。
大金持ちのギャンブラー、トミー(ジェームズ・カーン)です。
亡き妻によく似たベッツィを手に入れたいと考えた彼は、
どうやらギャンブルが「嫌いな方ではない」らしいジャックを
まんまとはめ、
借金のかたとして、ベッツィを手に入れようとします…

デミー・ムーアなどが出演した『幸福の条件』を思い起こさせますが、
幸い?こちらの方が製作が先でしたし、
あの映画ほど嫌らしい拝金主義の色合いも強くないので、
「ジャック、かわいそうになー」と同情の余地も少しはあるし、
(少しは自業自得でもありますが)
ベッツィの態度にも、納得できるところがあります。
(と言いつつ、実は私、『幸福の条件』も、そんなに嫌いではありません。
人間の弱さをごくひねりなく描いたという言い方もできなくはないし)
見た後に、非常にさわやかな感想を抱くことができます。

もしも映画観光という言葉があるとしたら、
それに非常に向く、ラスベガスという街を楽しめる映画でもあります。
もちろん、この文章の冒頭に登場した人物の特別出演もありますよ。


2002年08月15日(木) テイラー・オブ・パナマ

8月15日は、パナマ・シティ創設記念日です。
これは、パナマの首都であるシティのみの祝日だそうですが、
パナマといえば、最近、こんな映画がありました。

テイラー・オブ・パナマ The Tailor of Panama
2001年アメリカ ジョン・ブアマン監督


『エメラルド・フォレスト』『戦場の小さな天使たち』などで知られる
J.ブアマン監督作品ですが、製作総指揮に当たったのは、
スパイ小説でおなじみの作家ジョン・ル・カレだそうです。

女性問題によりパナマに左遷させられた英国諜報部員
アンディ・オズナード(ピアーズ・ブロスナン)は、
諜報活動のために、ハリー・ペンドル(ジェフリー・ラッシュ)という
イギリス人の仕立屋(つまりTailor)に目をつけます。
仕事柄、高官や王室とも少し接触があることと、
前科者である過去を、妻(ジェーミー・リー・カーティス)にも
打ち明けていないという後ろ暗さが、
脅しをかけてしゃべらせるのにぴったりだったためです。

最初は拒否するハリーでしたが、実は彼は大嘘つきでした。
情報を求められれば、あることないことでっちあげるのです。
その上、結構ちゃっかりしていて、
今はもう勢力を失っている、ノリエガ圧政時代の政治活動家だった
友人ミッキー(ブレンダン・グリースン)の借金返済のための金を、
「活動資金」と称してアンディから巻き上げようとするほどでした。

もとの地位に返り咲きたいというスケベ根性もあり、
アンディが、ハリー提供のパナマ運河に関する超弩級の情報を
利用したばかりに、嘘から出たまことの、
まさにシャレにならない状態に陥り……

最初にこの映画のことを知ったとき、
きっと「Tailor」と「Taler(語り部)」をひっかけたんだろうなと
勝手に一人判断しましたが、
そうではなく、Tailorに「話を仕立てる人」の意味も持たせたようです。
やはりノリエガ時代の闘士だったマルタ(レオノラ・バレラ)という女性が、
ハリーの仕立屋を手伝っていますが、
彼を称して「あなたはTailorではなくてDreamer(夢見る人)だ」と言う
シーンがありました。
ちょっと聞きには、保身のためにちょこちょこと嘘をついて、
虚勢を張ってきた卑小な男……に思えるハリーですが、
実は、愛すべきロマンチストでもあることが窺われます。
そもそも発音が全く違うというのに、よくもまあこういう一人判断ができたものです。


P.ブロスナンの伊達スパイぶりは、
まるで「007」のセルフパロディのようですが、
ただのスキだらけのニヤケ男にも見えなくもないので、
よくあれでスパイが務まるものだと思ってしまいます。
対して、J.ラッシュは文句のつけられないすばらしさ。
前科持ちで、嘘つきで、臆病で、その上マイホームパパの一面も持つ
仕立屋という役どころを、説得力をもって演じていました。
ちなみに、ハリーには子供が2人いましたが、
兄マーク役を、『ハリ・ーポッター』でスターになったダニエル・ラドクリフ
妹サラ役を、ブアマン監督の実子ローラ・ブアマンが演じています。
考えてみたら、妻J.L.カーティスは、
『トゥルーライズ』に続き、“スパイの夫”にだまされる役は2度目?
ムダに巨乳で、個性的な美貌の持ち主ですが、
意外とそういうお人好しっぽい役もイケるのが強みでしょうか。


2002年08月13日(火) リトルマン・テイト

8月13日は、女神ヘカテに捧げる日だそうです。
ヘカテは、出産時の女性の家に宿る女神だとか。
出産という一大イベントは、古今東西のあらゆる映画に登場しますが、
真っ先に思い出した1本を。

リトルマン・テイト Little Man Tate
1991年アメリカ ジョディ・フォスター監督


ハリウッドきっての才色兼備の呼び声も高いJ.フォスターが
初監督した作品です。
シングルマザーのディディは、忙しく働く毎日の中でも、
息子のフレッド(アダム・ハン・バード)を愛情いっぱいに育てています。
ほんの赤ん坊の頃から、その片鱗は覗かせていたものの、
フレッドは実は天才児で、ごく普通の学校で、明らかに浮いていました。

そこに、自身ももともと天才児だったという
ジェーン(ダイアン・ウィースト)という女性から、
英才教育のために特別プログラムを組む学校に
フレッドを入学させないかという申し出がありました。
最初は反発するディディでしたが、説得の末に参加させることを決意し、
フレッドは、自分と同じような天才児が「ごく普通」である世界で、
時には傷つきながらも、徐々に自分というものを確立していくのでした。

静かで上品なトーンの映画です。
俯瞰で見下ろしている静かな出産のシーンなど、
ジョン・アーヴィング原作の映画化?などと思ってしまうような
独特の香気を感じました。
かわいいとかかっこいいというより、
賢くて繊細なところが魅力的なA.ハン・バードは、
97年の『アイス・ストーム』でも、ちょっと成長した姿で、
ひんやりした映画の雰囲気を壊さない好演を見せました。
(この映画、人間関係がちょっと複雑なんですよね…
とりあえず、シガーニー・ウィーバーの息子役でしたが)

天才児教育に熱心なお国柄がよく出ているとはいえ、
従来のアメリカ映画とは違った雰囲気のあるこの作品は、
自分自身も天才少女と言われたフォスターならではでしょう。

なお、同時期に『メンフィス・ベル』に出演した
ハリー・コニック・ジュニアも、
結果的にはそう重要ではないものの、
フレッド少年にある種の示唆を与えるオポンチ大学生を好演しました。
この人、もともとジャズシンガーとしてデビューし、
『恋人たちの予感』のサントラを20代前半で手がけ、
才能を大いに見せつけましたが、
最近は映画出演も多く、しかもなかなか多彩な役なので、
【俳優】とカテゴリーしても差し支えない気がします、ね。


2002年08月11日(日) 映画よろず屋週報 Vol18 2002.8.11

*****映画よろず屋週報 Vol18 2002.8.11*********************

皆さん、こんにちは。
いわゆるお盆休みに突入し、どこ行っても「混んでるなぁ」と感じるのは、
地方在住の証でしょうか?
でも、とりあえず、映画くらいは見にいきたいものだと思っています。

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特集「女の意地」

8月11日の花はベニバナ(サフラワー)
花言葉は「女の意地」だそうです。

そこで、女の意地が成し遂げた復讐や頑張りについて描いた映画を
少し御紹介いたします。

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マルサの女2 A Taxing Woman's Return
1988年日本 伊丹十三監督

某巨大宗教団体教祖、鬼沢(三國連太郎)を相手に奮闘する宮本信子、
鬼沢の愛人(加藤治子)と、
父親によって鬼沢の人身御供として差し出されたナナ(洞口依子)の
壮絶なる女の闘い……女たちがアツい映画です。

黒いオルフェ Orfeu Negro
1959年フランス・ブラジル マルセル・カミュ監督

ギリシャの古典悲劇に材を得た、オルフェとユリディスの運命の悲恋
……の陰で、恋人オルフェの愛を失って激昂したミラは、
真の意味での「悲劇のヒロイン」かもしれません。

赤ちゃんはトップレディがお好き Baby Boom
1987年アメリカ  チャールズ・シャイアー監督

都会のバリバリキャリア女性J.C.(ダイアン・キートン
失脚した……かに見えて、
かわいい姪エリザベスとの田舎暮らしの中で手に入れた
返り咲きのチャンス、さてさて、どう生かすか?

ベスト・フレンズ・ウェディング My Best Friend's Wedding
1997年アメリカ P.J.ホーガン

昔の恋人の結婚を知った途端、
俄然惜しくなった見苦しい女(ジュリア・ロバーツ)と、
完璧な婚約者(キャメロン・ディアス)とでは、勝負は見えている気が…
とはいえ、ジュリアの見苦しさは、ちょっと見物です。

シー・デビル She-Devil
1989年アメリカ スーザン・シーデルマン監督

しかしこの2人、そもそも何で結婚したんだっけ?と思うほど
何ともミスマッチな夫婦でしたが……
夫の浮気、のみならず、その暴言にマジギレした妻の
(人によっては)痛快復讐劇です。

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お誕生日1週間(8月11日〜8月17日)★は故人
8/11 中尾彬(1942)
8/12 ケーシー・アフレック(1975・ベンの弟)
8/13 アルフレッド・ヒッチコック(1899−1980)★
8/14 ヴィム・ヴェンダース(1945・映画監督)
8/15 ベン・アフレック(1972)
8/16 ティモシー・ハットン(1960)
8/17 ショーン・ペン(1960)
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2002年08月10日(土) 忘れられない人

8月10日はハートの日(健康ハートの日)だそうです。
というわけで、こちらを。

忘れられない人 Untamed Heart
1993年アメリカ トニー・ビル監督


ある種、カルト的に支持されている映画ではないかと思います。
実は私自身は、結構最近見たのですが、
この映画を見た人が、「おすすめ」として挙げるのをよく聞きました。

ミネソタ州ミネアポリス、冬。
ウェートレスのキャロライン(マリサ・トメー)は、
仕事から猛ダッシュで帰り、いそいそと身支度をしたというのに、
車が走り出す前に、何人目かの彼氏にあっさり振られました。
本当ならば、大好きなアイスホッケーを見にいく予定でした。

同じダイナーに勤めるシンディ(ロージー・ペレス)たちに
自分の男運のなさを愚痴るのも、何だか妙に板についた感じです。
魅力的な彼女に目をつける客もいましたし、
彼女をじっと見守る同僚アダム(クリスチャン・スレイター)もいました。

そんなある日、キャロラインは、2人組の男(客)に
帰り道でレイプされかけます。
男たちをのし、乱暴されて気を失ってしまった彼女を助けたのは
アダムでした。
彼は、キャロラインが帰るとき毎日後をつけ、
無事を見届けていたのです。
そして、未遂とはいえレイプされたことがトラウマになりそうだった
彼女の心をも救ったのでした。

職場では、無口で変わり者扱いされていたアダムでしたが、
教養が深く、生まれつきの心臓病を持っていたものの、
それに関して、お世話になった孤児院のシスターが話してくれた
不思議な逸話を子供さながらに信じているような繊細な彼に、
キャロラインはどんどん惹かれていきます。
けれどもそんなある日、思いがけない事件が…。

中島みゆきの古い曲で「遍路」というのがあり、
やはり男運のない女性が登場しますが、
何となく、あの歌を思い出してしまいました。
キャロラインは、余りにも愛情の深い女性なのでしょう。
そして、それを本当に受けとめ得たのはアダムだけでした。
キャロラインに連れられて、初めて見にいったアイスホッケーで、
飛んできたパックをアダムがうまくキャッチするシーンが
物すごーく個人的な解釈ですが、それを象徴していたと思います。

個人的にといえば、
1カ所だけ、どうしても納得いかないところもあるのですが、
それでも、好感度の高いこのカップルのために、
何とか理解しようという気にはなります。


2002年08月09日(金) ヴィドック

北半球の、春夏秋冬がくっきりした地域にお住まいの皆様、
毎日毎日暑いですね。

きょうも、記念日から誕生日から、いろいろひっぱり出せば、
因み映画はあるのですが、
この猛暑のもとで、一抹の冷静さを手に入れたとき、
「なんであれ見たんだっけ?」と思い返される、
そんな映画を、本日は御紹介いたします。
ビデオリリースされたので、ごらんになった方も結構いらっしゃいましょう。

ヴィドック Vidocq
2001年フランス ピトフ監督


監督のピトフは、『エイリアン4』のビジュアルクリエーターでした。
『エイリアン4』といえば、ジャン・ピエール・ジュネ監督作品で、
J.P.ジュネといえば、空前のヒットとなった『アメリ』も手がけた
あの人です。
おフランス映画という共通項だけでなく、
意外なところでアメリちゃんとつながってしまいましたが、
この映画は、もと大泥棒にして高名な探偵ヴィドックの失踪にまつわる
派手なアクションスリラーでした。
(謎解きの楽しみもありますが、はっきり言ってミステリー的技巧は
それほど凝らされていない気がします)

19世紀の小汚いパリの街。
ヴィドック(ジェラール・ドパルデュー)は、
ある3人の名士の殺人事件を追っていく中で、
鏡の仮面をつけた犯人に殺されます。
その後、彼の探偵事務所の共同経営者のもとに、
ヴィドックの伝記を書きたいという
自称作家の青年(ギョーム・カネ)があらわれますが、
彼が取材を進めていく中で、重要人物が次々と殺されていくのでした。
それもヴィドックを殺した、鏡の男の仕業?
でもって、その鏡仮面の正体は……???

今考えても、なぜこの映画をわざわざ劇場で見たのかが
全くわからないのです。
スピーディーでハラハラ、ドキドキ感があり、
目にも楽しい映画でしたが、普段は絶対に見ないジャンルです。
それでいて、「たまにはこういうのもいいなあ」と、かなり楽しみました。
今後も、この種の映画を積極的に見ることはまずないでしょう。

食べつけないものを食べて、「あ、イケる」と思ったものの、
「これで一生分食べたから、もういいや」と、
ちょっと大げさに表現したくなるような映画でした。
ただ、そういう映画のジャンルは、人によって違うとは思いますが。


2002年08月08日(木) ヘアスプレー

8月8日は、なんとデブの日なんですって。
そこで私が不謹慎にも思い浮かべてしまった映画は、
怪優ディバイン(肥満による心臓発作で1988年死去)の遺作でした。

そういうことを抜きにして、非常にラブリーなコメディーなので、
ぜひとも御紹介したいと思います。
(そういえば、8月8日は笑いの日でもあるとか)

ヘアスプレー Hairspray
1987年アメリカ ジョン・ウォーターズ監督


偉大なる変態監督J.ウォーターズは、
故郷ボルティモアを舞台にした映画をたくさん撮っていますが、
これもその1本です。しかも、設定は1962年の古きよき時代で。

おでぶちゃんのトレイシー(リッキー・レイク)は、
自分の容姿を全く気にすることなく、その堂々とした踊りで、
ダンスクイーンになり、憧れのテレビ番組のレギュラーの座を得て、
一躍人気者になります。
彼女には、優しいけれど少々時代遅れの母(ディバイン)がいましたが、
トレイシーの感化で、「60年代風のイケてるおばちゃん」に変身します。

おでぶだけれど、何ともかわいらしいトレイシーには
美少年の彼氏もできますが、おかげでやっかみの対象にもなります。
彼女を妬む美少女たちの嫌がらせを受けたり、
仲のいい黒人の友人ができたと思ったら、
白人と黒人は一緒に同じテレビ番組に出られないことを知ったりと、
適度なトラブルを抱えつつ、映画はハッピーエンドへと向かいます。

愛すべき悪趣味キャラクター大集合でしたが、
ウォーターズなりの“良識”を感じます。
ラストシーンでトレイシーが着るドレスの柄にも御注目を!

ところで、母親役だったディバインは、御存じのとおり“男優”です。
映画の中でも、それほど大きな役ではないものの、
もう一役、男性役を担当していました。
でも、何といっても母親役が魅力的でしたけど。

タイトル“ヘアスプレー”は、スプレーを使って髪にボリュームを出すことに
血道を上げるトレイシー(たち)の姿に由来する…んだと思います。


2002年08月07日(水) コリーナ,コリーナ

本日8月7日は「鼻の日」ということで、
鼻に触れるしぐさが何ともかわいらしい少女が登場した、
こちらの映画をどうぞ。

コリーナ,コリーナ Corrina, Corrina
1994年アメリカ ジェシー・ネルソン監督(兼製作・脚本)


愛妻を事故で失ったばかりの
CM音楽作曲家マニー(レイ・リオッタ)は、
母親の死のショックから一時的に言葉を話さなくなった
娘モリー(ティナ・マジョリーノ)を心配しつつ、
仕事の行き詰まりをとにかく何とかしなければと、
家政婦を雇う決心をします。
面接した中で比較的マトモだと思って雇った
ミリー(ジョーン・キューザック)は、
実はとんでもない勘違いオンナで、
「これも家政婦の務め」などと言いつつ、
夜中にマニーのベッドに忍び込んでくるのに閉口し、
新たに面接をしました。そこにやってきたのが
黒人女性コリーナ(ウーピー・ゴールドバーグ)です。

コリーナは、教養があっておしゃれで(料理はイマイチ)、
何よりも、モリーも閉ざしていた心をあっという間に開きます。
いつしか、マニーまでもが彼女に、
「頼れる家政婦」から一歩進んで「一人の女性」として
惹かれるようになっていくのですが、
まだ白人の黒人に対する偏見が強い時代のお話でして、
お互いの前途は明るいとは言えません。
モリーの「コリーナがパパのお嫁さんになればいいのに」
というかわいらしいお願いも、切ないものでした。

監督は、近作『I am Sam』も好評のジェシー・ネルソンですが、
この人って、物すごい凝り性なんではないかと思います。
(何かを創造する人は、大抵そうだとは思いますが)
それも、映像がどうの、
小道具・大道具がどうのということではなく、
人の心のありように対する「凝り性」というか、
いわば心理描写マニアという感じです。
こんな状況に置かれた人は、
こう感じるのが想像に難くないけれど、
一方では、こんな感情だってあり得るのではないか?
……というようなことを考えに考え抜いて、
脚本を書いたり監督したり、そんな感じの人ではないかと。
(それが成功したと感じるか、スベったと感じるかは
ただただ好みの問題というだけで)
特にそれを感じたのは、亡くなった妻(母)に対する
マニーとモリーの複雑な思い(愛情)を表現するシーンです。
正直、黒人差別の状況や、
それを超えたマニーとコリーナの関係などは、
添え物といっても過言ではないほどです。
(…と、少なくとも私は思いました)

ところで、鼻に触れるしぐさ云々ですが、
口を利かないモリーに、
「Yesなら鼻を触って、Noなら何もしないで」と、
コリーナがサインを決め、序盤はそれで“会話”を
成立させるのです。
サインの意味を知らない父親に「鼻をいじるな」と注意されて
しょげてしまうなど、
ちょっとかわいそうなシーンもありましたが、
これを最後まで引っ張るのかと思いきや、
モリーは存外早く口を利くようになります。
あらら……と、
最初は少々肩すかしを食らったような気になりましたが、
そのうち、そんな提案をするコリーナ一流のデリカシーを
認めたモリーが、
すぐ元気を取り戻して口を利くようになったとしても、
全く不自然ではないかな、と思えてきました。


2002年08月05日(月) 映画よろず屋週報 Vol17 2002.8.5

*****映画よろず屋週報 Vol17 2002.8.5*********************

皆さん、こんにちは。
毎週日曜日配信…と言っておきながら、恥ずかしながら
1日遅れで発送いたします。しばしおつき合いを。

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特集「歌わん哉」

今からきっかり40年前の8月5日、マリリン・モンローが亡くなりました。
(8月4日に亡くなり、翌日発見の説あり)
亡くなった後何十年も、映画ファンに拘らせる謎の死というのが、
不謹慎ながら、「興味を抱かずにはいられない女性」の最期として、
妙にしっくり来るような……。
といいつつ、生きていれば70歳をとうに超え、
さぞや「妖艶なおぱあさま」になっていたろうなと思うと、
その姿も見たかった気がします。

本日は、彼女と同様、映画の中で俳優が
すばらしい歌声を聞かせてくれる映画を御紹介いたします。
(歌手が本業かも、という方もいらっしゃるけれど、
まあ細かいことは気になさらないでくださいませ)

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お熱いのがお好き Some Like It Hot
1958年アメリカ  ビリー・ワイルダー監督

どちらかというと、ジャック・レモンとトニー・カーティスの女装コンビが
見物の映画ではありますが、
モンローの愛らしい歌声(“ランニング・ワイルド”など)も、
ぜひとも楽しみたい1本です。

デュエット Duets
2000年アメリカ  ブルース・パルトロウ監督

パルトロウ監督の愛娘グウィネスが、
オリジナルシンガーのキム・カーンズとは全く違うアプローチで、
“ベティ・デイビスの瞳”を聞かせてくれます。
……というより、グウィネス・パルトロウのお父様が監督している、
と言った方が、通りがよそさうですね。
作中、グウィネスの不良オヤジ役を演じるのは、
あのヒューイ・“ダミ声”・ルイスでした。

ロンドン・ドッグス Love, Honour and Obey
2000年イギリス
ドミニク・アンチアーノ / レイ・バーディス共同監督

カラオケ大好きマフィアによる、ずっこけ抗争劇
美青年ジュード・ロウ、あなたは歌もうまいのか!
天は(与える人には)二物どころでなく与えるのですね…。

オー・ブラザー! O Brother, Where Art Thou?
2000年アメリカ ジョエル・コーエン監督

1930年代のアメリカ南部を舞台に、
ホメロスの「オデュッセイア」をモチーフにしたコメディー。
どこか、大昔のコーエン兄弟作品『赤ちゃん泥棒』をほうふつとさせる
おマヌケさがあります。
濃い二枚目の代名詞ジョージ・クルーニー、あなたの声は渋いっ。
本当に“カントリー映え”する、何とも言えない美声です。
肩の力が抜けたふうな歌い方も心地よいものです。

ブリムストーン&トリークル Brimstone & Treacle
1982年イギリス リチャード・ロンクレイ監督

役者としては仕事を選んでいない音楽界の大御所スティングの
初主演映画で、日本ではとりあえずビデオで見られます。
病気で体が不自由な娘のいる家に入り込む、
不気味な詐欺師マーティン・テイラー役の彼が、
野良仕事中に口ずさむわらべ歌が、さりげなくてすてきでしたが、
実は、映画自体はそれほど強力にお勧めしません。


ペギー・スーの結婚 Peggy Sue Got Married

1986年アメリカ フランシス・コッポラ監督
今や大スターのニコラス・ケイジ氏は、
『ワイルド・アット・ハート』に先んじて、こちらでまずプレスリーしてました。
(でも、そんなに上手じゃないところがまたよい)

ロジャー・ラビット Who Framed Roger Rabbit?
1988年アメリカ ロバート・ゼメキス監督

トゥーンと実写(ボブ・ポスキンスほか)の組み合わせで見せた
クライムコメディー。
主人公ロジャー・ラビットの奥さんは、
どこか危険な雰囲気で妖艶なジェシカ・ラビットでしたが、
彼女の歌のパートを、
元スピルバーグ夫人のエイミー・アーヴィングが担当しました。
(地のしゃべりの部分はキャスリーン・ターナーでしたが、
彼女の歌も聞いてみたかったなあ)

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お誕生日1週間(8月4日〜8月10日)
8/4 ビリー・ボブ・ソーントン(1955)
8/5 キャサリン・ヒックス(1951『ペギー・スーの結婚』など)
8/6 ミシェル・ヨー(1963)
8/7 シャーリーズ・セロン(1975)
8/8 ダスティン・ホフマン(1937)
8/9 メラニー・グリフィス(1957)
8/10 ロザンナ・アークェット(1959)
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2002年08月03日(土) デルフィーヌの場合

本日8月3日の花は白い日日草、花言葉は「友情」だそうです。
友情をテーマにした映画というと、相当数ありますが、
こんな作品はいかがでしょう。

デルフィーヌの場合 Mauvaises frequentations
(英語タイトルはBad Company)
1999年フランス ジャン・ピエール・アメリス監督

フランスで実際に起こった事件がもとになった作品だそうです。
理想的な家庭に育った生まじめな15歳の少女
デルフィーヌ(モード・フォルジェ) は、
ちょっと不良っぽい転校生オリビア(ルー・ドワイヨン)と仲良くなり、
彼女のつてで出席したパーティーで知り合った
ロラン(ロバンソン・ステヴナン)という少年に一目惚れします。

遊び人のロランは、純なデルフィーヌと興味本位でつき合いますが、
だんだんに彼女のひたむきさを疎ましく思うようになります。

問題の多い境遇で、何もかもにうんざりしていたロランの夢は、
ジャマイカに行くことでした。
そこで、デルフィーヌ、ロラン、
そしてオリビアとその恋人の4人でジャマイカに行こうと提案し、
その資金をつくるために、デルフィーヌたちを利用するのですが……。

デルフィーヌとオリビアが資金繰りのために始めた「お仕事」は、
およそ15歳の娘っこにふさわしいものではありませんでした。
好きな男の子の夢のために、
好きでない多くの男の子に、いわゆる尺八を施すというのは、
一体、何がなせるわざなのか?
ビデオジャケットを見たら、
「愛がどうだこうだ」と戯言が書いてありますが、
まあ、愛ではありませんね。勘違いもいいところです。
それでいて、彼女の15歳という年齢を考えると、
何に愛という名前をつけるべきかがわからない…というのも
わからないではありません(納得はできないけれど)。

映画的に救いになっているのは、
事件が起きた後も変わらない、デルフィーヌとオリビアとの友情や、
デルフィーヌを控え目に見守る映画オタク少年の存在です。
救いのない感じのお話に、妙な清涼感を与えていました。


2002年08月02日(金) アニマル・ファクトリー

1977年8月2日、俳優のエドワード・ファーロングが生まれました。
『ターミネーター2』でデビューした美少女のような美少年も、
もう25歳なんですねぇ。
そこで今日は、はっきり言って駄作(かもしれない)ながら、
彼のその「あえかな」と表現したい美貌が生きてしまった
こちらをどうぞ。

アニマル・ファクトリー Animal Factory
2000年アメリカ スティーブ・ブシェミ監督

個性派役者の代名詞のようなブシェミが監督し、
自らも出演しています(刑務所職員の1人という役)。
この場合の“Animal Factory”とは、ずばり刑務所のこと。

有力者の息子ながら、大麻不法所持で挙げられ、
見せしめのように実刑を食らってしまうロン(ファーロング)は、
その華奢な体つきと整った顔だちで、
あっという間に刑務所で「話題の人」となります。
ロンも、みんなが自分のお尻の穴を狙っていると(下品)
十分わかっているので、
親しげに近づいてきたアール(ウィレム・デフォー)に対しても
最初は警戒するのですが、
彼が刑務所内ではちょっとした顔であり、
本当に純粋な好意から親切なのだとわかってくると、
自己防衛の意味もあって、だんだん打ち解けるようになります。

職員から、変な奴に言い寄られないかと変な心配をされたかと思うと、
一転、騒動を起こして危険人物視されたり、
お坊っちゃまだった彼は、刑務所内で「成長」していきますが、
そのうち、アールと組んで脱獄を計画し……。

最近、何となく精彩が上がらない感じだったミッキー・ローク
なかなかユニークな役で好演していました。
お好きな役者が1人でも出ているようでしたら、
ちょっと試しに見てみる…という程度の気持ちで
ビデオやDVDを探してみてくださいませ。
(期待に胸膨らませて見るほどのものではありません)
私は、全体に流れるあの無責任な感じが
そう嫌いではないのですが。

ちなみに、上記に名前を挙げた以外では、
洋画の本数をこなしていると、必ず1本くらいは
この人の出演作を見ていそう、というほどよく見る顔である
シーモア・カッセル
スノッブなインテリが似合っちゃうジョン・ハード、
凶悪犯を演じるために(というか、マジムショ帰り?)
生まれてきたような御面相のダニー・トレホなどなど、
なかなかの豪華キャストです。


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