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2002年07月31日(水) あの頃ペニー・レインと

あの頃ペニー・レインと Almost Famous
2000年アメリカ キャメロン・クロウ監督

映画作品群を乱暴に2つに分けるとすれば、
「嫌いと言うのに勇気の要る作品」と、
「好きと言うのが憚られる作品」が
ありますが、
この作品は、「胸を張って好きと言える作品」でした。
つまり「嫌いというのに(以下略)」に入れてもよさそうですが、
確かに、少なくとも「私にとっては」そういう分類ができなくもありません。
というのも、この映画自体は好きなんですが、
ある重要な部分が大嫌いなので、
おかげで完璧に堪能することができなかったからです。

1970年代、アメリカ。
ちょっと変わり者の大学教員エレイン(フランシス・マクドーマンド)を
母に持つウィリアム(パトリック・フィジット)は、
持ち前の聡明さで学校を飛び級(というよりはフライング)し、
母と衝突した姉アニタ(ゾーイ・デシャネル)の影響で
ロック好きになります。

ローカル紙に載った音楽評論が、
人気ライター、レスター(フィリップ・シーモア・ホフマン)に認められ、
名門誌『ローリング・ストーン』の依頼で、
ブレイク寸前(Almost Famous)のバンド、スティルウォーターのツアーに
同行することになりますが、実はウィリアムは、まだ15歳でした。

そんなツアーの中での、
いわゆるただの追っかけかと思いきや、
「グルーピーではなくてミューズ」だと自称する
謎めいた娘ペニー・レイン(ケイト・ハドソン)への淡い恋心や、
バンドのフロントマン、ラッセル(ビリー・クラダップ)との間に芽生えた
年齢も立場も超えた友情など、
甘酸っぱくて苦く、余りにも目まぐるしい、ある青春のヒトコマを描いた、
監督キャメロン・クロウの自伝的作品…なのですが、
この映画を堪能するためには、
映画の中でも多分、最も愛すべき存在であるものに対して
感情移入できるかどうか……とまではいかなくても、
好ましいと思えるかどうか、その辺が勝負の分かれ目ですが、
実は私にとって、その愛すべき対象が最も嫌悪すべき対象だったため、
「こいつさえいなきゃ満点なのに」とさえ思ってしまいました。
というか、その存在自体は「いなきゃ困る」のかもしれませんが、
本当に幻のような存在だったら、もっと映画が好きになれた気がします。

音楽が絡んだ小ネタでちょこちょこと笑わせてくれたり、
脇のキャラクター(ジェイソン・リーファルーザ・バーグ等)が
なかなかいい味わいを醸し出していたり、
感覚的には非常に「身近な映画」という印象なのですが、
「セーシュンは、遠きにありて思うもの、
そしてそして悲しくうたふもの」

などと、柄にもなくひねってみたくなる(これじゃ単なる盗作)
そんな作品でした。

1つ不満をいえば、ラッセルの本命の彼女、
もっとマシな人いなかったのかしら?と思いました。
ミュージシャンたるもの、港港に女アリというのはありがちですが、
そんな彼が特別視する女性とは、とても思えなかったのです。


2002年07月30日(火) ロミーとミッシェルの場合

1963年7月30日、女優のリサ・クドローが生まれました。
金髪でナイスバディでちょっとキツネ顔と、
高慢ちきな女性が似合いそうなルックスながら、
当たり役とも言えるのは、『フレンズ』シリーズで弾けっぷりを見せる、
個性的な(自称)シンガーソングライターフィビー・ブッフェ役でしょう。
そのせいか、映画出演もコメディーが多く、
いつも楽しませてもらえます。

ロミーとミッシェルの場合
Romy and Michele's High School Reunion

(ビデオリリース時のタイトルは『ロミー&ミッシェル』)
1997年アメリカ デビッド・マーキン監督

ロミー(ミラ・ソーヴィノ)とミッシェル(リサ・クドロー)は
高校時代からの親友同士ですが、
2人とも、どうもメインストリームには乗れず、
どちらかというと、いじめられっ子でした。

2人そろって田舎を出て、都会で気ままな生活をしていましたが、
ある日、高校の同窓会が開かれることを知ります。
それも情報源は、秀才ながら高校時代は変わり者と思われていた
ヘザー(ジャニーン・ガロファロウ)ですが、
ロミーが働いている駐車場に高級外車を偶然とめていたために
たまたま会話をする機会があり…という感じで、
すっかり差をつけられたことを実感しました。

が、10年間故郷を離れていたことは、
ロミーとミッシェルにとっては好材料です。
ふだんは着ないスーツに身を包み、知人に車を借りて、
「都会で成功した2人」を装って、自分たちをいじめていた連中を
ギャフンと言わせるのだと画策するのですが……。

キャストの見どころとしては、
ヘザーに愛され、ミッシェルに恋していた、
これまた変わり者の秀才サンディーを
何げにあちこちで見る顔アラン・カミングが好演しています。

80年代育ちにはたまらない音楽がたっぷりで、色彩も鮮やか。
目で、耳で、どちらでも楽しめるし、
自分なりの劣等感と自負心をあわせ持った人々が魅力的で、
ぱーっと明るい色の花を目の前で咲かせてもらったような、
そんな気分になれるコメディーです。


2002年07月29日(月) ファミリービジネス

毎月29日は「肉の日」だそうです。う〜ん、ストレート。
この手の「○○の日」にめぐりあうたび思うのですが、
多分、販促等の目的で設けられた日なんだと思いますが、
ならば、まずはその「日」自体を周知させた方がいいのではないかと。

それはともかく、こんな映画がありました。

ファミリービジネス Family Business
1989年アメリカ シドニー・ルメット監督


この映画で描かれたファミリーは、ちょっと風変わりです。
男三代、それぞれの持ち味が違うというのみならず、
人種的にもそれぞれ特徴がありました。

幾つになってもフラフラしている
アイルランド系のジェシー(ショーン・コネリー)は、
イタリア系の女性と結婚し、息子ヴィトー(ダスティン・ホフマン)をもうけ、
ヴィトーは、しっかり者のユダヤ人女性と結婚し、
精肉業をあくまでカタく営んで成功し、
頭脳優秀な息子アダム(マシュー・ブロデリック)も授かりました。

映画は、アダムが過越の祭り(ユダヤ人解放記念の祭礼)の儀式で
ヘブライ語のお祈りを見事にやってのけるアダムに、
家族じゅうで感心するというシーンから始まりました。
これが、理知的な雰囲気のブロデリックにぴったりです。
舞台はニューヨークですが、
アダムはボストンのマサチューセッツ工科大に通っていて、
祭礼のために帰省していました。

ヴィトーはアダムを心から誇りに思い、
アダムもヴィトーに子供として敬愛の念を示さないではないのですが、
アダムの憧れは、実はジェシーの方でした。
ヴィトーが忌み嫌ったジェシーのえーかげんな生き方が、
若いアダムの目には、粋に映ってしまったようです。
ジェシーも、息子ヴィトーとの折り合いの悪さは別として、
アダムの方は、大いにかわいがります。

そんな中、アダムが何を勘違いしたか、
大学のバイオ関係の研究をネタにした儲け話を
ジェシーに持ちかけますが、それは明らかに犯罪行為でした。
それにジェシーが乗っかるのはいい(?)としても、
ヴィトーまでが、愛するアダムを守るために加担することになり……。

はっきり言って、一番最初に見たときは、
それほどおもしろいと思えませんでした。
ところが、後々までとにかく「引っぱってしまう」映画でして。

何となく、民族性のようなものの描き方がステロタイプな気もするし、
見る者すべてが「期待しない方」に
ずんずんと突き進んでいるように見えるストーリー運びもナンだし、
これだけのメンツにS.ルメット監督で、
どうしてこうなっちゃったの?と思わせるには十分な作品なのですが、
本当に後になってから、随所随所を唐突に思い出し、
そう悪くなかったよなあという気になりました。
例えば、何かとトラブルを起こし、刑務所の常連さんであるジェシーが、
アダムが悪ぶってつき合っている年上のガールフレンド(不動産業)の
あくどい商売に腹を立てるシーンが傑作でした。
どうやら、犯罪にも美学を忘れてはいけないようです。

多分、サスペンスの秀作だと期待をしてしまうと×で、
ちょっと変則の家族の絆系だと思うと、こういうのもアリではと思える、
そんなところではないでしょうか。

さて、「そう悪くなかった」と思い返している私ではありますが、
実は、12年前に見たっきり、“再度確認”はしておりません。
実際に見たら、「ああ、やっぱ退屈だったな」というオチがつく可能性も
全く否定できませんけど、
未見の方、ばくちのようなつもりでいっちょ見てみませんか?


2002年07月28日(日) 映画よろず屋週報 Vol16 2002.7.28

*****映画よろず屋週報 Vol16 2002.7.28*********************

特集「イギリスのような田舎へ行こう」

1866年7月28日、『ピーターラビット』シリーズで有名な
ビアトリクス・ポターが生まれました。
ロンドンの良家の引っ込み思案なお嬢様でしたが、
毎夏、避暑のためにイギリス湖水地方で過ごした経験が、
数々の傑作絵本を生み出す糧となったようです。
そこで、イギリス(イングランド・スコットランド・ウェールズ、
そして北アイルランド)の田園風景が見られる作品を
特集します。

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サマーストーリー A Summer Story
1988年イギリス ピアース・ハガード監督

ゴールズワージーの短編小説「林檎の木」の映画化。
都会からやってきたお坊っちゃま(ジェームズ・ウィルビー)と、
美しく清純な田舎娘(イモジェン・スタッブズ)の悲恋を、
オーソドックスに描いていますが、
彩りを添えたのは、やはり美しい田園風景でした。

ウェイクアップ!ネッド Waking Ned Devine
1998年イギリス カーク・ジョーンズ監督

小さな村で、
宝くじの超高額賞金に当たったショックで昇天してしまったネッドと、
憎めない村人たちの人間模様を描いた傑作コメディー。
舞台設定は「アイルランドの小さな村(飲んべえばっかり)」でしたが、
撮影は、オートバイレースでも有名なマン島で行われたとか。

シン・ブルー・ライン  The Thin Blue Line(テレビシリーズ)
1995年−96年イギリス ジョン・バーキン監督

『Mr.ビーン』でおなじみのローワン・アトキンソンが、
小さな署の警察署長を務めたポリス・コメディー
非行少年の更生キャンプでスコットランドに行ったメンバーが、
「ケルトの男」丸出しの猛々しいスコットランド人(キルト着用)に
レクチャーを受けるシーンがありましたが、
なかなか次の行動に移らない面々を急かすように、
スコットランド人がキルトの裾を上げ下げするシーンがスリリングです。
(注:キルトの下には“おぱんつ”を履かないって本当でしょうか?)

ウェールズの山
1995年イギリス クリストファー・マンガー監督

(これは取り上げたときにも書いたのですが、
原題がネタバレになるおそれがあるので、邦題のみ挙げました)
マザーグースのモチーフになりそうな、のどかにして激しいお話です。

永遠の夢 ネス湖伝説 Loch Ness
1995年イギリス ジョン・ヘンダーソン監督

UMA(未確認生物)について研究するアメリカ人学者が、
ネッシーの謎に迫るため、スコットランドに長逗留することになり…
題材から誤解されがちですが、決して「見世物」映画ではありません。
あったかく泣けます。

(番外編)
「アイルランドのやうな田舎へ行こう」(respect for丸山薫)
草原とボタン War of the Button
1994年イギリス ジョン・ロバーツ監督

南アイルランドを舞台に、2つの少年グループがボタンを取り合う
牧歌的な物語。フランス映画『わんぱく戦争』のリメイクです。

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お誕生日1週間(7月28日〜8月3日)
7/28 エリザベス・バークレー(1974)
7/29 ジャン=ユーグ・オングラード(1955)
7/30 リサ・クードロー(1963)
7/31 ウェズリー・スナイプス(1962)
8/1 アーサー・ヒル(映画監督・1922)
8/2 ピーター・オトゥール(1932)
8/3 マーティン・シーン(1940)


2002年07月27日(土) この愛に生きて

この愛に生きて  For Keeps
1988年アメリカ ジョン・G・アビルドセン監督


「80年代青春路線で」「モリー・リングウォルド主演で」
「高校生が妊娠しちゃって」「この邦題…」
はっきり言って、クサされるためにあるような作品なのですが、
(そう言うワタクシも相当偏見持ちであることを露呈しています)
これが意外と「悪くない」んですよ。バカにしたものでもないというか…

ダーシー(M.リングウォルド)とスタン(ランダル・バティンコフ)は、
優等生同士の人もうらやむカップルです。

愛し合う2人が、お互いともっと深く関わりたいと思う気持ちは、
一応自然な情動として理解しましょう。
でも、避妊を怠るのは感心しませんな。
ダーシーは、生理不順の治療のためにピルを呑んでいましたが、
スタンに「遊んでいる子」だと思われるのを恐れ、
肝心のときに呑まなかったので、
BINGO!で妊娠してしまいました。

家族ぐるみのおつき合いをしていた2人でしたが、
その家族たちにも打ち明けられないまま、
お腹の赤ちゃんは育っていきます。
悩んだ末、どうしても中絶に踏み切れず、
赤ちゃんを産むことを決意します。
先々の苦労を考えていないわけではないけれど、
ユニークな胎教を施したり、何だか楽しそうな若い2人には、
なんにも言えません。

数々の艱難に時にはへこみながらも、
若い2人は、生まれてきた娘や自分たちにとって何が「いい」ことか、
一生懸命模索し、ひたむきに頑張るのでした。

…という、さわやかな映画の展開がアダになって、
まるで「高校生よ、赤ちゃんを産もう!」
というメッセージを送っているかのようにとられ、
リングウォルド自らが、「妊娠しないようにしましょう」
“声明”を発表するオチまでつきましたが、
おできでもとるように中絶する娘っこがデカい面したり、
「流産」という形で安易に決着つけたつもりになっている映画より
(全部が全部とは言いませんけど)
ずっと不愉快のないものでした。


2002年07月26日(金) サイレントナイト/こんな人質もうこりごり

1959年7月26日、ケビン・スペイシーが生まれました。
オスカーに2回ノミネートされそれぞれ受賞した、
やたら勝率のいい賞男ですが、
主演男優賞をゲットした『アメリカン・ビューティー』と、
何かとカブってしまっているのに、
妙に吹っ切れた感じのするコメディーを御紹介しましょう。
少々、季節はずれではあるのですが…

サイレントナイト/こんな人質もうこりごり
The Ref / Hostile Hostages

1994年アメリカ テッド・デミ監督


はっきり言って、このタイトルだけで映画の総てを語っています。

クリスマスの晩に強盗を働く男ガス(デニス・リアリー)が
人質にとったのは、
離婚寸前でトラブルだらけ、口論の絶えない
夫婦(スペイシーとジュディ・デイビス)でした。
そこに、ディナーに招かれた親類縁者がやってきたり、
放校処分になりそうなバカ息子まで帰ってきたりして、
もうアンタ、1回聞いただけじゃ何が何だか…という状態です。
ただただ、コメディー以外の何を連想できましょう。

ちょうど『アメリカン・ビューティー』を、
もっと人間臭く、ベタベタにした感じです。
ナニゲに豪華なお食事シーンやら、
理解しにくい子供やらが登場するせいでしょうか。
スペイシーのキャラクターは、
こちらの方がかわいげがある気がしました。
紛らわしいことに、ジュディ・デイビスが、
『アメリカン…』で妻役のアネット・ベニングと系統が同じ顔ですからね。
さらにトリビアルなことを申し上げれば、
『アメリカン…』でのベニングの役名はCarolyn(キャロリン)、
この映画のデイビスの役名はCaroline(キャロライン)でした。


2002年07月25日(木) ハロルド・スミスに何が起こったか?

ハロルド・スミスに何が起こったか?
Whatever Happened to Harold Smith?

1999年イギリス=アメリカ ピーター・ヒューイット監督

(ビデオ化タイトルは『ミラクルショー ハロルド・スミスに〜』)

昨日御紹介した『ドレッサー』で、
おネエっぽいドレッサー(付き人)を演じたトム・コートネイが、
椅子にかじりついてテレビを見るのが好きという、
変化を嫌う初老の男ハロルドに扮しました。

が、そんな彼は、実は超能力を隠し持っていました。
何事につけ派手なことが大好きなハロルドの妻アイリーンは、
超能力が発覚し、一躍人気者になった夫を(間違った方向で)見直し、
面倒が嫌いなハロルドはますますうんざり顔です。
そんな折、ある事件が勃発してしまい…

ネタバレを避けつつ、軸となるストーリーを話そうとすると、
こんな感じになってしまうのですが、
1977年という設定のダサかわいいイギリス某都市の街並み、
(ロンドンかと思っていたら、
『フル・モンティ』でもおなじみのシェフィールドだったようです)
当時の青少年の御多分に漏れず、
トラヴォルタに夢中なハロルドの息子ヴィンス(マイケル・リッジ)と、
彼が憧れる法律事務所の同僚ジョアンナ(ローラ・フレイザー)との
恋の顛末など、彩りもたくさんで、なかなか楽しい作品でした。

ところで、マイケル・リッジは1978年生まれ、
『ロック・ユー!』の鍛冶屋役でもおなじみのローラ・フレイザーは
1976年生まれですから、映画製作当時、それぞれ20代前半です。
そもそも2人とも童顔ということもあり、
アメリカ映画だったら、高校生を演じても全く違和感なしでしょう。
イギリス映画では、駆け出しとはいえ勤め人を演らせるんですね。
妙に納得してしまいました。

そうそう、超能力や超常現象がお好きな方には、
ちょっと嬉しいゲストも登場します。

コテコテでない、軽いタッチのコメディーが楽しみたいときにお勧めです。


2002年07月24日(水) ドレッサー

1929年7月24日、ベテラン監督ピーター・イエーツが生まれました。

ドレッサー The Dresser
1983年イギリス ピーター・イエーツ監督


“サー”の称号を持ち、態度のデカい大御所シェイクスピア俳優と、
彼に自分の持てる信愛のすべてを捧げているような
付き人(ドレッサー)ノーマンの、おかしくも悲しいお話です。

シェイクスピア俳優“サー”をアルバート・フィニー
ノーマンをトム・コートニーが、(ちょっとおネエっぽく)演じ、
2人そろって1983年度のアカデミー賞主演男優部門に
ノミネートされました。

ちょっとピンぼけ、な個人的な感想を書かせてもらえるのなら、
「尊敬とか信頼とかは、
自分の知らないトコでしてもらうのが気楽だなあ」

と思いました。

ああも「あなたに尽くします」と、献身的に世話を焼かれたり、
ヨイショされたりしたら(しているつもりもないのでしょうが)、
小心者としては、逆に態度が卑小というか、矮小というか、
とにかく恐縮してしまうことでしょう。
しかし、嬉しくなってしまうことに、
態度のでかい“サー”にとって、ノーマンはいて当然の存在です。
何せ、ヨイショされるのが仕事みたいなもんですから、
ますますつけ上がってしまうわけです。

「演技を堪能する」というのは、こういう映画のための言葉なのでしょう。
偉そうにふんぞりかえるフィニーと、
コートニーのくねくねした動きを見ているだけで、
ええもん拝みましたという心境になります。
二大女優共演というと、「女は競ってこそ華」の美の競演、
対する二大男優というと、
ハードなアクションものがどうしても主流になりますが、
男も「競ってこそ華」かもしれません。


2002年07月23日(火) アイリスへの手紙

本日7月23日は、文月ふみの日だそうです。
「ふみの日」自体も、
郵便局に縁のある人がわずかに知っている程度の、
それほどメジャーとはいえない日ですが、
7月の旧称「文月(ふづき・ふみづき)」も絡め、
7月23日には、特にさまざまなイベントがあるのだそうです。

アイリスへの手紙  Stanley and Iris
1990年アメリカ マーティン・リット監督


ゴッドファザーことドン・ビトー・コルレオーネの青年期にアル・カポネ、
野球選手のストーカーから娘を溺愛する元CIAまで、
何でも演ってしまうロバート・デ・ニーロですが、
時々発作的に、「ごく普通の愛すべき小市民」ってやつを
演じたくなるのか、そういう作品もぽつんぽつんと確認できますが、
これはまさに、そんな彼が拝める1本でした。

工場で働きながら2人の子供を育てるアイリス(ジェーン・フォンダ)は、
ある日、ひったくりに遭ってしまいます。
そのとき助けてくれたのは、コックのスタンリー(デ・ニーロ)でした。
彼は、年老いた父親と暮らしていましたが、その父が亡くなり、
字の読み書きができないことが発覚して、職jまで失います。

アイリスはそんな彼に、字の読み書きを教える役を買って出ました。
「先進国と言われる国で暮らす、いい年をした大人」が、
字の読み書きができないというのは、具体的にどういうことなのか、
同じ境遇の人でなければ、理解できませんよね。
子供と違い、新しいことを覚えるのは大変ですが、
スタンリーは熱心に食いついて覚え、アイリスも愛情を持って教え、
2人の間には、温かな関係が自然に育ってゆきます。

努力のかいあって、何とか読み書きを覚えたスタンリーは、
苦労人の社長に気に入られて新しい職を得、
仕事のために行った遠隔地から、アイリスに手紙をよこします。
それはアイリスが、「電話ではなく手紙をちょうだい」と言ったからでした。
記憶が曖昧で恐縮ですが、
このフレーズは、当時の郵便局のポスターに、
2人の名優のスチールとともに使われていたと記憶しています。

インパクトが弱いという言い方もできなくはないのですが、
嫌らしい後味が残らない、さわやかな好編です。
しんみりと見てみてくださいませ。


2002年07月22日(月) ロンドン・ドッグス

1968年7月22日、俳優のリス・エヴァンスが生まれました。
もともとの名前はRhys Evansという綴りなのに、
故郷ウェールズをこよなく愛し、芸名の表記もウェールズ風に
Rhys Ifansにしてしまったという人ですが、
そういう民族的なバックグラウンドを意識させる作品がなく、
(『ツイン・タウン』でやっとスコットランドが舞台という程度)
近年はアメリカ映画への出演が目立ちます。
こってこてのウェールズ訛の彼を見てみたいものです。

今日の作品は、彼「も」出演の、
イギリスの豪華スターが続々登場するコメディーです。

ロンドン・ドッグス Love, Honour and Obey
2000年イギリス ドミニク・アンチアーノ / レイ・バーディス共同監督


平凡な郵便屋さんジョニー(ジョニー・リー・ミラー)は、
自分の地味な人生に嫌気がさし、
美貌と切れる頭脳と闇社会へのコネを持った
幼なじみのジュード(ジュード・ロウ)に頼み込んで、
ソチラの世界へと足を踏み入れます。
そこに待っていたのは……刺激的な毎日と、
カラオケ好きの面々でした。

とにかく、カラオケです。
親分レイ(レイ・ウィンストン)がカラオケ命で、
手下たちもそれに従い、ノリノリで歌いまくります。
(ジュードの艶っぽい歌声には惚れ惚れしますよ)
彼には女優をしている若い恋人サディ(サディ・フロスト)もいて、
結婚する予定になっていました。

この映画の大きな特徴の1つに、まるで子役みたいですが、
「役名(ファーストネーム)と役者名が同じ」というのがあります。
些細なことではありますが、それがバディ・ムービーとしての特徴を
非常によくあらわしているようで、
血で血を洗うギャング間の抗争も描かれている、
映画のモチーフそのものにかかわらず、
何ともアットホームな雰囲気を醸し出していました。

といっても、本日これを取り上げるとっかかりとなったR.エヴァンスは、
「Matthew マシュウ」という役名なのですが、
彼の役どころは、訳あってレイたちの一派といがみ合うことになる
敵さんの構成員でした(本当は仲良くしたいのにぃ)。

イギリス映画にありがちな、何が言いたくてつくった映画なのかが
全く見出せない、非常にいいかげんな作品です。
結論を言えば、バカな若者が己の功名心(スケベ心)で行動すると、
周りの者は本当に迷惑しますよ〜というような展開になりますが、
これが「まともな」映画人がメッセージとして選ぶこととは
とても思えません。
そういういいかげんさを楽しめる方にのみお勧めいたします。

ジョニー、ジュードの二大美男子のまぶしさと、
いい人も悪い人もお任せのレイ・ウィンストンの貫祿、
私生活ではジュードの愛妻であるサディの小悪魔的な魅力……
などについて触れた後に残るのは、なんかパッとしない、
むさかったり貧弱だったりするおっさん方なのですが、
皆さん、なかなかキャラクターが立っています。
ちょっと毒のある、繰り返しの小ネタで笑わせてくれるのが、
さりげなくマザーグース的、かも。


2002年07月21日(日) 映画よろず屋週報 Vol15 2002.7.21

*****映画よろず屋週報 Vol15 2002.7.21*********************

特集ロビン・ウィリアムズ

1952年7月21日、
コメディアン出身の俳優、ロビン・ウィリアムズが生まれました。
敢えてコメディアン出身の、と書いたのは、
コメディアンとしての人気がかえって裏目に出てか、
「彼の主演作は当たらない」という、信じられないようなジンクスが
かつてのアメリカにはあった…という話を聞いたことがあるからです。

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ガープの世界 The World According to Garp
1982年アメリカ ジョージ・ロイ・ヒル監督

母ジェニー・フィールズ(グレン・クローズ)の強引な妊娠により
この世に生をうけたT.S.ガープ(ウィリアムズ)の数奇な運命を、
1カット90秒以内でテンポよく描いた、コミカルで物悲しい人間ドラマ。
原作は、「アメリカで最も稼いでいる純文学作家」とウワサの
ジョン・アーヴィング。

グッドモーニング・ベトナム Good Morning, Vietnam
1987年アメリカ バリー・レビンソン監督

ベトナム戦争下で、兵士の士気高揚のためにアメリカから派遣された
DJエイドリアン・クロンナウアー(ウィリアムズ)は、
その爽快なしゃべりっぷりと、人懐っこい性格で、
兵士のみならず、地元の人々にも溶け込みますが…
(一部、先週の使い回しであることを、
指摘される前に自己申告いたします…)

いまを生きる Dead Poets Society
1989年アメリカ ピーター・ウィアー監督

1950年代、自らの出身校でもある名門進学校に赴任した
型破りな英語教師キーティング(ウィリアムズ)は、
彼を慕う生徒たちから、ホイットマンの詩に因んで、
「キャプテン(船長)」と呼ばれていました。
因みにもとになった詩の「キャプテン」は、リンカーンをうたったもの。

ハドソン河のモスコー Moscow On The Hudson
1984年アメリカ ポール・マザースキー監督

熊をほうふつとさせる髭面のウィリアムズが、
興行でやってきたアメリカに亡命する旧ソ連のサーカス団員を演じた、
愛すべき隠れた名作(日本未公開)。
http://www.enpitu.ne.jp/usr6/bin/day?id=68046&pg=20011108

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お誕生日1週間(7月21日〜7月27日)
7/21 ロビン・ウィリアムズ(1952)
7/22 リス・エヴァンス(1968)
7/23 ダニエル・ラドクリフ(1989)
7/24 ジェニファー・ロペス(1970)
7/25 マット・ルブランク(1967/ドラマ『フレンズ』ジョーイ役)
7/26 ケヴィン・スペイシー(1959)
7/27 ジョナサン・リース・マイヤーズ(1977)


2002年07月20日(土) 映画の中のTシャツ

7月20日はTシャツの日だそうです。
Tがアルファベットの20番目であること、
「海の日(海の記念日)」に似つかわしいことを根拠とし、
愛知県のアパレルメーカーが提唱したとか。

映画を見ていて、
登場人物がおもしろいTシャツ着ているなあ、などと気をとられ、
ストーリーの流れに置いていかれた経験ってありません?
……とまではいかなくとも、
映画の中に、おもしろいデザインのTシャツを見て、
ああいうのはどこで買うんだろうと素朴に驚いたり、
欲しくなったりすることは、しばしばありますね。


ノッティングヒルの恋人
 Notting Hill

1999年アメリカ ロジャー・ミッチェル監督

小さな旅行専門書籍店を営むウィリアム(ヒュー・グラント)と、
世界的に有名なハリウッド女優アナ(ジュリア・ロバーツ)の
『ローマの休日』的恋愛を描いたラブ・コメディ。
ウィリアムの同居人スパイク(リス・エヴァンス)が、
デートに着ていくのに、イカれたデザインのTシャツを選ぶシーンが
ありました。

ハンナとその姉妹 Hannah and Her Sisters
1986年アメリカ ウディ・アレン監督

ハンナ(ミア・ファロー)、ホリー(ダイアン・ウィースト)、
リー(バーバラ・ハーシー)の三姉妹を中心に描かれる、
悲喜こもごもの人間群像劇の傑作。
リーの同棲相手である画家フレデリック(マックス・フォン・シドー)は、
自分の絵を買おうとするロックスター、
ダスティ(ダニエル・スターン)の横柄な態度に腹を立てましたが、
大抵の日本人は、彼のTシャツに描かれた漢字1文字を見て
大笑いしたことでしょう。

踊れトスカーナ! Il Ciclone
1996年イタリア レオナルド・ピエラッチョーニ監督

田舎町に住むまじめな会計士レバンテ(レオナルド・ピエラッチョーニ)が
6月のある日、嵐(Il Ciclone)のようにやってきたスペイン美女軍団、
中でも最もキュートなカテリーナ(ロレイナ・フォルテーザ)に恋をして…
作中レパンテが着ていたTシャツにも、意外な日本語が。
一体どこで買ったのでしょうか。
(ところで、この映画の英語タイトルって、The Cycloneだったとか。
絶対、アクション映画と勘違い人がいたことでしょう)


依頼人 The Client
1994年アメリカ ジョエル・シュマッカー監督

ある事件の鍵を握る人物が自殺を図るのを
見てしまった少年マーク(ブラッド・レンフロー)が、
身の安全を確保するため、
1ドルで弁護士レジー・ラブ(スーザン・サランドン)を雇います。
マークは(まだお子ちゃまだというのに)
お気に入りのバンド、レッド・ツェッペリンのTシャツの着こなしが
妙にさまになっていました。


2002年07月19日(金) マンハッタン・ラプソディ

毎月19日は「トークの日」です。
1986年、NTTが語呂合わせで制定した日ということで、
電話の使い方にクスっとさせられるこちらを。

マンハッタン・ラプソディ
The Mirror Has Two Faces

1996年アメリカ バーブラ・ストライサンド監督


せっかくのいい原題に、またテキトーな邦題。
映画の中身も、あれ、そういうことが言いたかったんだっけ?と
何か途中で趣旨違っちゃったとしか思えないところも
ないではないのですが、
まあ、よろしいんじゃないでしょうか。
なかなかよくできたコメディーでした。

知的でハンサム、女性にもてもての
大学教授グレゴリー(ジェフ・ブリッジズ)は、
もて過ぎが災いし、すっかり「美女恐怖症」になってしまいました。

一方、姥桜のような母ハンナ(ローレン・バコール)と、
美人で少々軽薄な妹クレア(ミミ・ロジャーズ)に
コンプレックスを覚えつつ、性格も頭脳も◎の
これまた大学教授ローズ(バーブラ・ストライサンド)。

2人は出会い、恋をして結婚しますが、
何しろ、グレゴリーがローズに惚れたのは、
中身のよさと、外見の冴えなさによるところが大きかったので、
ローズが「彼のために美しくなりたいわん」などと
柄にもないことを考えてしまうと、
「これは僕の求めた妻ではないっ」と引いてしまい……

唐突ではありますが、
私は「こどもチャレンジの」(ベネッセ)のTVCM中で、
1つ嫌いなバージョンがあります。
子供「運動会で1等になれるかなあ?」
母 「何等でもいいんだよ、頑張れば」

ちょっとちょっと、カアちゃん。
「なれるかなあ」と言っているのに、「何等でもいいんだよ」って、
齢4つか5つ(推定)の自分の子供の可能性を見限っちゃっていいわけ?
これが「褒めて育てる」教育とやらいうものの一環ならば、
「1等になれなかったら家に入れんぞ」
と、大人げないスパルタを発揮する親の方がずっと好みです。

この映画のローズも、決してブスではありません。
(B.ストライサンドは鼻が大きいだけで、
やっぱりその辺の女性よりははるかに魅力的だと思うし)
ただ、ファッションが野暮ったくて、
艶っぽい母と妹に比べて分が悪いというだけでして。
賢明なるグレゴリーは、一応そのことに気づきはしますが、
トドのつまりが「中身も、本当は外見も良い」女性に向かって、
「人間、見た目じゃないんだよ」と言ってしまう失礼さ。
近作では、その辺のマヌケさを貫いてつくった作品で、
『愛しのローズマリー』なんてのもありましたけど。

とはいえ、名優2人が粋なセリフとシチュエーションで
大人のラブコメディーを鮮やかに見せてくれる作品ではあります。

そうそう、電話のシーンですけど、
美女(とのセックス)に自信喪失気味のグレゴリーが、
いかがわしい電話サービスにコールするシーンがなかなか笑えます。
……声だけはかわいいって女性も結構いますものね。


2002年07月16日(火) 冬冬の夏休み

何だかやってきてしまった台風の爪痕や進路も気になり、
そうそう浮かれてもいられないのですが、
もうすぐ子供たちは夏休みですね〜。

冬冬の夏休み 冬冬的假期
A Summer At Grandpa's

1984年台湾 侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督


台北に住む冬冬(トントン)は、小学校を卒業し、
夏休み明けには中学生という少年です。
母の病気入院に伴い、妹ティンティン(漢字が出てこない…)と一緒に、
田舎で医者をしている母方の祖父の家に預けられることになりました。

叔父の昌民も一緒ですが、彼はちょっとワガママな恋人・碧雲も
一緒に連れてきて、彼女の歓心を買うことばかり考えているので、
てんであてになりません。
途中で下車した碧雲を追って、列車に乗り遅れてしまった叔父を尻目に、
冬冬たちは冷静に目的駅にしっかりと降り、
駅前で遊んでいた少年たちと、
自分のラジコンカーと少年たちの1人が持っていた亀を交換し、
あっさりと仲良くなりました。

こんな感じで、冬冬は遊び相手に事欠きませんが、
まだ幼い女の子であるティンティンは、少年たちから邪険にされます。
が、知的障碍があり、けったいな服装をして、すぐに人を叩くので、
子供たちが「おっかない変な女」として遠巻きに見ている
寒子という女性が、ひょんなことからティンティンのピンチを救ってくれ、
2人は仲良くなりました。

ほか、碧雲や寒子が妊娠したり(父親はそれぞれ違いますが)、
話題の強盗事件の犯人たちが昌民の幼なじみで、
かくまっていることを知られてしまったり、
静かな田舎町でも、それなりに派手な事件が起きていることが、
子供たちの目を通しているせいか、非常に淡々と描かれています。
ところどころで登場する、冬冬が母親あてに書く手紙や、
祖父母の会話に出てくる母親の病気の経過など、
さりげなくも丁寧な描写のおかげで、安心して見られました。

本筋とは余り関係ないものの、興味深いシーンもありました。
出発の駅で、冬冬が学校の同級生と線路越しにする会話。
「東京のテーマパーク(ディズニーランドか?)に行くんだ」
「いいなあ」
15歳になったら、国を出られないぞ
「僕も来年連れていってもらおう」
かなり不正確ですが、こんな感じでした。
15歳になったら……徴兵制の関係でしょうか。


2002年07月15日(月) トーチソングトリロジー

今日は思いつきで1本。いつかは取り上げたいと思っていた作品でした。

トーチソングトリロジー Torch Song Trilogy
1988年アメリカ ポール・ボガート監督


この映画の脚本と主演を兼ねたハーベイ・フィアスタインは、
(変な言い方ですが、演技じゃなくて)本物のゲイだそうです。
『ミセス・ダウト』で、ロビン・ウィリアムズに特殊メイクを施す役でしたが、
そういわれてみると、ああいうゲイ色の薄い役でも、
ちょっとオネエっぽい感じはしました。

アーノルド(成人役H.フィアスタイン)は、幼い頃から
母親(アン・バンクロフト)の目を盗んで化粧をするような少年でした。
今はナイトクラブで働く、いわゆるドラッグクイーンです。
ある日、「同好の士」が集まる店で知り合った小学校教師に、
何か特別なものを感じますが、
彼はいわゆるバイ・セクシャルで、社会的な体裁を考えたのか、
女性と結婚してしまいました。

が、心から愛し合える相手を真摯に求める彼の前には、
その数年後、うぶなアラン(マシュー・ブロデリック)があらわれます。
もともと自分がゲイだと思っていたわけではないアランも、
アーノルドの真心に触れるうちに、次第に彼を愛するようになり、
2人はいつしか“結婚”し、養子をとって育てようとしますが、
幸せの絶頂の中で、やるせないような悲劇に見舞われ……

ゲイ・ムービーと呼ばれる分野が確実にあり、
またそれを愛好する人も多数います(できのいい作品が多いし)。
そして、「いい映画だったなあ」と感じた作品は、大抵の場合、
男女の恋愛と何が違うんだろうという思いが残ります。
ごっついアーノルドが、若くてかわいらしいアランを本当にいとおしみ、
アランもアーノルドを純粋に愛し、妬けてしまうほどでした。

いわゆるゲイの人々が差別されるのに、「非生産性」などという
もっともらしい言葉がしばしば持ち出されます。
でも、暴言承知でいえば、
2ちゃんねる用語で言うところのDQNな男女が一緒になって、
バカで周囲に迷惑かけるしか能のない子供を産み育てるくらいなら、
子供にこだわらず、自分らしく生きている好ましいカップルや、
養子という選択肢を柔軟に受け入れるアーノルドのような人々の
存在の方が、よほど貴重という気がします。

ところで、アーノルドは結局、ティーンの少年を養子として迎え入れます。
この子が軽い問題を起こしたりしますが、
身柄を引き取りにいくアーノルドの、愛と怒りに満ちた姿は、
おとんとおかんの両方の役を立派に体現しています。
また、息子のすべてを認めることができない母の苦悩ぶりを、
A.バンクロフト(myアイドルおばさま)が好演していました。
人が人を愛することと育てることの純粋な意味を考えさせられます。


2002年07月14日(日) 映画よろず屋週報 Vol14 2002.7.14

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特集「求人広告」

1872(明治5)年、
『東京日日新聞』に日本初の求人広告が掲載されたことに因み、
本日7月14日は求人広告の日だそうです。

そこで、映画の中の求人広告や尋ね人広告を
ちょっと思い出してみました。

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クリエーター Creator
1985年アメリカ アイバン・パッサー監督

愛妻を亡くした天才科学者(ピーター・オトゥール)は、
妻の「再生」をもくろみ、クローン実験のために
卵子を提供してくれるメリー(マリエル・ヘミングウェイ)と知り合い…
人を愛するっていいなあとストレートに伝える、
隠れた名作。終盤の尋ね人広告が泣かせます。

ゴーストワールド  Ghost World
2001年アメリカ テリー・ズウィコフ監督

風変わりな少女イーニド(トーラ・バーチ)が
ダサダサで憎めないオタク男シーモア(スティーブ・ブシェミ)と
知り合ったのは、新聞の恋人募集欄でしたが、
ちょっと使い方が違うような…

チェブラーシカ Cheburashka
1969年(ほか) ロシア(旧ソ連) ロマン・カチャーノフ監督

第1話「こんにちはチェブラーシカ」から…
街角の掲示板に張られた「交換」や「募集」のための張り紙は、
“悪ふざけをする年金生活者”ことシャパクリャクばあさんのいたずらで、
すべて頭に「НЕ」(ロシア語の否定の接頭語)をつけられ、
「交換しない」「募集しない」に書き換えられてしまいました。

ラブetc.Love, etc
1996年フランス マリオン・ベルノー監督

恐れ入りますが…この特集のために見ておこうと思いつつ、
見るのを忘れていました。
シャルロット・ゲンズブール主演の恋愛モノだということと、
Love, etcというのが恋人募集欄の名称だということは
わずかに知っていました。
レンタルビデオ店で見かけたとき、ちょっとエロチックな映画として
カテゴライズされていたので、「そういう気分」のときに見たいものです。

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お誕生日1週間(7月7日〜7月13日)★は故人
7/14 アナベラ(1904−1996 映画『巴里祭』主演)★
7/15 イレーヌ・ジャコブ(1966)
7/16 フィビー・ケイツ(1963)
7/17 ドナルド・ササーランド(1934)
7/18 エリザベス・マッガバン(1961)
7/19 アンソニー・エドワーズ(1962)
7/20 ナタリー・ウッド(1938−1981)★
IMDbを参考にしています。

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2002年07月13日(土) すてきな片想い

私こと当日記サイト管理人ユリノキマリ、本日34歳になりました。
ええ、なりましたとも。
というわけで、16歳の誕生日を思い出し、こんな映画を。

すてきな片想い Sixteen Candles
1984年アメリカ ジョン・ヒューズ監督


80年代半ば、「リングレッツ」などという、
彼女のまねっこファションを生み出すほど支持された、
モリー・リングウォルド主演作です。
(もっとも、リングレッツという言葉が生み出されたのは、
厳密には2年後の『プリティ・イン・ピンク』だったかと)

目前に迫った姉(美人♪)の結婚式のおかげで、
記念すべき16歳のバースデーを家族みんなから忘れられてしまった
サマンサ(M.リングウォルド)は、
思う人には思われず、思わぬ人に思われて…の典型的なパターンで、
憧れの上級生ジェイク(マイケル・シェフリング)には振り向いてもらえず、
うっとうしい下級生ジム(アンソニー・マイケル・ホール)からは
妙に懐かれと、レンアイに関しては冴えない毎日でした。
ジェイクには、「美人で、体にハンディのある弟の面倒見もいい」という、
結構な評判のガールフレンドがいて、
自分の入る余地なし、と諦めてはいるのですが、
実は、恋人との関係をちょっと見直しつつあるジムは、
サマンサの熱い視線に気づいていたのでした…

昔からよくわからない表現に、
「あなたの想いが通じる」「〜が伝わる」「〜に気づいてもらえる」
というのが、=両思いになる意味で使われているというのがあります。
たとえ伝わったとしても、正直迷惑な想いというのもあるのでは?
この邦題、原題から考えると少々とんちんかんな感じもしますが、
実はなかなかのセンスを持った人がつけたことがうかがわれます。
何しろ、
「サマンサは、ジェイクが自分に興味を持っていることに気づいていない」
のです。
お互いが片想いというのは、
最もくすぐったくて心地いい関係ではないかと思います。

16歳の誕生日を忘れられるという、軽くみじめな気持ちや、
「このバカ、何とかして」と言いたくなるほど厚かましいジムの存在も、
ただの添えものエピソードではなく、後のフォローもばっちりです。
散漫に見えて、なかなかよくまとまった、青春恋愛スケッチでした。

今を時めくジョーン&ジョン・キューザック姉弟も、
全く別のシーンとはいえ、小さな役で出演しています。
結局、この映画で最もメジャーになったのがこの人たちという事実も、
80年代のラブリーな遺産として、愛すべき要素を与えています。


2002年07月10日(水) 恋人たちの食卓

1871年7月10日、作家のマルセル・プルーストが生まれました。
あの超長いことで有名な『失われた時を求めて』を書いた人ですが、
「長い/タイトルが有名」な文学作品というのは、
よほどの読書家でもない限り、
大抵の人がまともに読んでいないというのが相場です……
などという言い訳をするまでもなく、私は当然読んでおりません。

が、第一編『スワン家の方へ』の中の余りにも有名なくだり、
「紅茶に浸したマドレーヌ」のことは、辛うじて知っていました。
味覚と結びつく記憶について、鮮やかに表現していますが、
その味覚をもしも失ってしまったら?(それも料理人が!)
……そんな映画がありましたので、御紹介します。

恋人たちの食卓 飲食男女 Eat Drink Man Woman
1994年台湾
 アン・リー監督
※この呼称についてはデリケートな問題ですが、とりあえずこちらにしまし


近年は、『グリーン・ディスティニー』の大仕事はともかくとして、
なぜかアメリカでの活躍が多いアン・リー作品です。
作中、名料理人を演じるラン・シャンは、
1991年『推手(すいしゅ)』1993年『ウェディング・バンケット』
と、
同監督の映画で、それぞれに味のある父親役を演じていたため、
本作とあわせて「父親三部作」などと言われることもあるようです。

さて、今度の“お父さん”チュは、ホテルのレストランの名コックで、
男手1つで3人の美しい娘を立派に育ててきました。
長女ジェン(ヤン・クイメイ)は、お固く見られがちな高校教師ですが、
人並みに、すてきな男性との出会いを熱望しています。
次女チェン(ウー・チェンリン)は、航空会社のキャリアOLで、
そこそこうまくいっている恋人がいました。
三女ニン(ヤン・ユーウェン)は、
ハンバーガーショップでバイトをする女子大生で、
しょっちゅう彼女にデートをすっぽかされている男の子に
同情するうちに、惹かれていきます。

チュは、自慢の料理を毎晩日曜日、家族のためにつくり、
豪勢な晩餐をするのを習慣としていましたが、
実は、もう子供ではない三姉妹は、この習わしにうんざりしていました。
それぞれ、もっと大事なものがある年頃です。

チュの悩みは、つかみにくくなった娘たちの気持ちばかりではありません。
実は、料理人でありながら、味覚障碍になっていたのです。
長年の勘で何とか料理をつくり、
味見は信頼できる長年の仕事仲間に任せていました。

恋人=恋する人、という意味ならば、なかなかいい邦題だと思いますが、
恋人=カップル(の片割れ)と考えると、ちょっと見当違いに響きます。
ちなみに、恋するのは何も三姉妹ばかりではなく、
隅に置けないことに、チュ父さんも「恋する人」の1人です(相手は内緒)。

食の喜びと悲しみ、出会いと別れをユーモアたっぷりに、
そして繊細に描いた好編ですので、ぜひともお試しくださいませ。


2002年07月09日(火) ナック

昨晩、日本テレビ系の『世界まる見え!テレビ特捜部』を見てましたら、
ダブルベッドをそのまま車に改造して走っているイギリス人の映像が
紹介されていました。
この人は以前、サイドカーがわりに?バスタブをつけたバイクも
つくっていましたが、
「女性受け」を考えてダブルベッドカーを試作し、
結果……隣で寝てくれる女性は未だなし、とのことです。

ベッドカーといえば、この愛すべきおばかさんの暮らす国の映画で、
似たようなシーンを見たことがあります。
本日は7月9日で、ちょうど語呂合わせにもなっておりますし、
不思議な運命の巡り合わせ(ご大層な…)も感じ、こちらをどうぞ。

ナック The Knack... and How to Get It
1965年イギリス リチャード・レスター監督


一連のビートルズ映画と、『スーパーマン2/3』などでおなじみの
リチャード・レスター監督作。
一言で何と説明したらいいかわかりませんが、
オフビートな感じが好きな人にはたまらないコメディーです。

生真面目な小学校教師のコリン(マイケル・クロフォード)は、
アパートを持っています。
家賃収入を期待して借家人を募集しますが、
「坊さんか、マジメな女性」という希望(どういうんだ…)とは裏腹に、
もともとの借家人で、ナンパ男のトーレン(レイ・ブルックス)が、
お仲間のトム(ドーナル・ドネリー)を住まわせてしまいます。
女性に人並みの興味を持ちつつ、おくてなコリンは、
トーレンやトムのいろんな意味での自由奔放さに迷惑します。
そこに、謎の家出娘?ナンシー(リタ・トゥシンハムト)がやってきて、
いよいよ訳のわからないハチャメチャに巻き込まれます……

イギリスのオリジナルタイトルは、ただの“The Knack”で、
“... and How to Get It”は、アメリカでのタイトルのようですが、
全体で「コツ…ナンパの」というようなニュアンスになり、
なかなかうまいと思います。

ハチャメチャの中に、キャスターのついたベッドで
ロンドンの街中を走り抜けるというのがあったのですが、
それを見て、苦々しげに「モッズめ!」とつぶやくじいさんが
何とも言えず好きです。
いつか真似してみたいもんだと思っていたら、
嬉しくなっちゃうことに、スーツ姿でスクーターに乗り、
携帯でしゃべりながら向こうからやってくる輩が!
(ファッションは、いわゆるモッズではなかったのですが、
30歳(当時)の女じいさんは、そういう細かいことにはこだわらず)
果たして「モッズめ!」をつぶやくチャンスをゲットしました。
でもそれは、正統派モッズを汚す発言だったかもしれません。

この映画はカンヌ映画祭の最高賞であるパルムドールも
受賞していますが、
「そういう」基準で映画をごらんになる方にはお勧めしません。
正直、どうしてこれが獲ったのか、さっぱりわからないのです。
(そして、いつものことながら↑これは褒めているつもりです)

モッズといえば、
ほぼ同じ時代設定のイギリス映画『さらば青春の光』もおすすめです。
(後々、何らかの形で取り上げたいと思います)

あ、モッズとは何か、説明するとヤボくさくなってしまいそうですが、
いいページを見つけましたので、こちらを読んでみてくださいませ。


2002年07月07日(日) 映画よろず屋週報 Vol13 2002.7.7

*****映画よろず屋週報 Vol13 2002.7.7*********************

皆さん、こんにちは。
7月です。来週これをお届けする頃には、
私は1つ年取っています…

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特集「自転車」

1901年7月7日、
イタリアの映画監督ビットリオ・デ・シーカが生まれました。
ならば、デ・シーカ監督作品で特集すべきところですが、
恥ずかしながら、『自転車泥棒』と『昨日・今日・明日』の
2本しか見ておりません。
そこで、デ・シーカ特集は後の機会に譲るとして、
『自転車泥棒』の切ないラストシーンを思い出しつつ、
同時に、映画の中の小道具としての自転車に着目してみました。

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自転車泥棒 Ladri Di Biciclette
1948年イタリア ビットリオ・デ・シーカ監督

プロの俳優ではなく、素人を起用して撮られた、
ネオ・レアリスモの代表作。
第二次大戦の敗戦国イタリアで、かつかつの生活を強いられた一家。
ある家の主人は新品のシーツを質に入れ、
ビラ張りの仕事のために必要な自転車を手に入ますが……

グッドモーニング・ベトナム Good Morning, Vietnam
1987年アメリカ バリー・レビンソン監督

ベトナム戦争下で、兵士の士気高揚のためにアメリカから派遣された
DJエイドリアン・クロンナウアー(ロビン・ウィリアムズ)は、
街中で見かけたアオザイ美人を追っかけて
自転車を全力で漕ぐような、「憎みきれないろくでなし」でした。

あなたがいたら 少女リンダ Wish You Were Here
1987年イギリス デビッド・リーランド監督

最愛の母を亡くして以来、素直になれないリンダ(エミリー・ロイド)、
スカートの裾をはしょって自転車で海辺の道を走ります。
何とも垢抜けない雰囲気が、いとキュート。


ライフ・イズ・ビューティフル La Vita è bella
1998年イタリア ロベルト・ベニーニ監督

グイド(ロベルト・ベニーニ)愛用の自転車は、
結婚後も一家を乗せて大活躍でした。

E.T
E.T. the Extra-Terrestrial

1982年アメリカ スティーブン・スピルバーグ監督

自転車で空を飛びたい!というよりも、
自転車で学校に行けていいなあ…と思った14の冬でした。
(うちの学校は、特殊事情がないと、自転車通学が認められず)

Dearフレンズ Now and Then
1996年アメリカ レスリー・リンカ・グラター監督

世間的評価の高さにもかかわらず、
『スタンド・バイ・ミー』にノレなかった方に敢えてお勧めしたい、
女の子たちの『スタンド・バイ・ミー』(個人的にはその評にも異議あり!)
クリスティーナ・リッチー、トーラ・バーチ、ギャビー・ホフマンと、
錚々たる顔ぶれの、正真正銘の少女時代が拝めます。
彼女らが、1970年当時のヒット曲に合わせて
自転車を駆るシーンが印象的です。

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お誕生日1週間(7月7日〜7月13日)★は故人
7/7 ビットリオ・デ・シーカ(1901−1974年)
7/8 ケビン・ベーコン(1958)
7/9 トム・ハンクス(1956)
7/10 スー・リオン(1946※キューブリック版『ロリータ』主演)
7/11 ビル・コスビー(1937)
7/12 シェリル・ラッド(1951)
7/13 ハリソン・フォード(1942)
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2002年07月05日(金) のび太の結婚前夜

本日7月5日は、相方と私の12回目の結婚記念日です。

で、結婚といったらこれでしょう。
(と言い切るには葛藤がありますが、まあ、一応)

のび太の結婚前夜
1999年日本 渡辺歩監督


ここ4年ほど、劇場版「ドラえもん」は3本立てが定番ですが、
大抵、ドラえもんずが大活躍の短編、
「ちょっといい話」の中編と来て、ここでまず休憩が入り、
メーンの長編というスタイルで上映されています。
なので、中編が終わった時点で
一旦劇場内が明るくなってしまうのですが、
これが涙腺が弱い人種にとっては、結構きついんですよね。
(三十面下げて、べしょべしょに泣いているのを見られるのは…)

のび太(声:小原乃梨子)は、
「私がついていないとなにもできないから」という情けない理由で、
憧れのしずかちゃん(野村道子)がお嫁さんになってくれるという
自分の未来を既に知っていますが、
完璧少年の出来杉君とお芝居の練習をする彼女を見て、
「本当に僕たちは将来結婚できるんだろうか?」と不安になります。
そして、ドラえもん(大山のぶ代)に頼み、
2人の結婚前夜へとタイムトリップしたら…

ごく短い原作に、
お人好きののび太が迷い猫を保護するエピソードなどが
盛り込まれていて、微笑ましく見ることができます。

原作で一番の泣かせどころは、
一種のマリッジブルーに陥ったしずかちゃんに、
父親が「彼(のび太)はいい青年だと思う」と
激励の言葉を与えるシーンでしたが、
映画化もまた、ここのところの描写が卑怯の極みでした。
この映画のスタッフに、
実写版で「嫁入り前夜の娘」の画を撮ってもらいたいと、
マジで思いました。
大好きなパパを置いて嫁に行くというのは、
幸せに育ったひとり娘の試練なのでしょう。

ジャイアン(たてかべ和也)やスネ夫(肝付兼太)も、
映画版では、びっくりするくらい「いい人」になってしまうのが
もともとお約束ではありましたが、
この「結婚前夜」でも、友情に厚いいい奴らに徹し、
はっきり言って、違和感があるほどですが、
たまにはこういうのも悪くないと思います。


2002年07月04日(木) デーヴ

本日は、いわゆる「ID4」、アメリカ合衆国独立記念日ですが、
記念日サイトを見ていたら、おもしろいことが判りました。
1826年 ジョン・アダムズ (2代)、 トマス・ジェファーソン(3代)、
1831年 ジェームズ・モンロー (5代)と、
3人のアメリカ歴代大統領が、この日亡くなっているのです。

そこで、「映画になりやすい職業」の1つである、
合衆国大統領が主人公の、この作品を。

デーヴ Dave
1993年アメリカ アイバン・ライトマン監督


日本ではコメディー映画全体の評価が低いせいか、
期待しないで見たらおもしろかった」
という声が上がりやすい作品ってありますけど、
これもその1本だと思います。
(つまり、良質のコメディーだということです)

ある日、就任中の大統領が病に倒れます。
が、悪徳政治家丸出しの彼が、絶体絶命のピンチになったことで、
足元をすくわれることをおそれた側近たちは、
とりあえず「身代わり」を立てることにしました。
白羽の矢が立ったのは、大統領に顔はそっくりだけれど、
政治には全く無縁のコメディアン、デーブ(ケビン・クライン)でした。

周囲は、とりあえずは場をしのぐためにぴったりの、
操り人形のような存在だと思っていましたが、
根が愛すべきお調子者である彼は、だんだんその気になってきて、
親しみやすい性格と行動力で、国民の人気を得ていきます。
夫が入れ代わっていることに気づかないほど仲が冷えきっていた
大統領夫人(シガーニー・ウィーバー)も、
徐々に惚れ直すようになります。

が、もちろんそんな展開を期待していない周囲は、
目障りになってきたデーブを陥れるために暗躍し……

達者な役者、良心的なつくりの洒脱なコメディーということで、
フランク・キャプラ映画のリメークか何か?と思ってしまいますが、
仮にそうだとしても(まあ、オリジナルだと思うのですが)、
ヘボい人がつくったらヘボい映画になるだけですから、
一流の人たちのいい仕事として、お勧めの1本と言いたいと思います。


2002年07月03日(水) 卒業白書

1962年(IMDb準拠)7月3日、トム・クルーズが生まれました。
『7月4日に生まれて』の主演男優は、実は3日生まれでした。

卒業白書 Risky Business
1983年アメリカ ポール・ブリックマン監督


かつてセックスシンボルと呼ばれし男トムが、
まだハタチそこそこの頃に出演した、
「17歳少年の脱・童貞物語」ですが、
『アメリカン・パイ』や『グローイン・アップ』のシリーズとは違った
ちょっと変わった味わいのあるコメディーでした。

イエール大学へ進学志望(一応)のジョエル(T.クルーズ)は、
両親の留守をいいことにはめを外し、
きれいで頭のいい娼婦ラナ(レベッカ・デモーネィ)と関係します。
はめの外し過ぎでオヤジさんのポルシェを湖に沈めてしまい、
えらいこっちゃ!となったとき、
ラナの提案で、ヤバい商売(Risky Business)に手を染め、
お金を工面しようとしますが、さてさて、うまくいくでしょうか?

トムとレベッカは、この後映画を地でいくように恋に落ち、
しばらくつき合っていたという話もありますが、
何というか、彼の結婚・恋愛遍歴を見ていると、
趣味に一貫性がないなあと思います。(美人という以外の共通項がない)

作中、上にワイシャツ、下パンツ一丁のスタイルで、
エアギターに口パクで「名演奏」を見せるというシーンがありましたが、
これは、1999年の『25年目のキス』で、
デビッド・アークェット(ドルー・バリモアの弟役)が
プロム用の扮装として採用していました。
人を選ぶコスプレですが、なかなかチャーミングです。

大スターの、いわば青の時代を覗き見て、
(そう呼ぶほどビンボーではなかったでしょうが)
恥ずかしくも甘酸っぱい気分に浸りたいとき最適な1本です。
日本では辛うじて公開されたという程度の扱いですが、
アメリカではそこそこ気持ちのいいヒット作だったようです。


2002年07月02日(火) 裏窓

1997年7月2日、名優ジェームズ・スチュワートが亡くなりました。
(享年89歳)

裏窓 Rear Window
1954年アメリカ アルフレッド・ヒッチコック監督


現代だったら、
この邦題で上映されることはないだろうなあという気がします。
もっともったいぶった、その上ピントはずれなタイトルになるか、
原題を片仮名読みして「リアウインドー」で、
自動車の話かと思った、みたいな、
そんな間抜けなことになっていたでしょう。

足を骨折して退屈しているカメラマン、ジェフ(J.スチュワート)が
退屈しのぎに隣のアパートを覗いていて、
そこである事件に気づくというだけの話なんですが、
とにかくうまい!
サスペンスフルで、洒脱で、ユーモラスで、
実はヒッチコックを「説教臭い気がして嫌い」な私ではありますが、
この映画だけは、
ヒッチコックに限定せずにすべての映画ひっくるめても、
かなり好きな部類です。

ジェフの美しい恋人ステラをグレース・ケリーが演じていますが、
ただ美しい、華を添えるだけの役ではなく、
意外な行動力を見せ、魅力たっぷりでした。
また、個人的には、何しろおばさま大好きなので、
口うるさくジェフの世話を焼いていた
看護人役のセルマ・リッターも印象的です。

あくまで覗き見るジェフの視線で映画が撮られていて、
カメラはアパートの一室を一歩も出ませんが、
それでも、これだけのことができるんだなーと、
ひとえに感心するためだけに見るのも一興ですが、
キャラクターの魅力に負うところの大きい映画ではないかと思います。


ユリノキマリ |MAILHomePage