海を進む
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私は夏になると元気になる。と自分で思い込んでいる。 どんなに忙しく飛び回っても平気。何も食べなくたって平気。 だからどんどん痩せて、洋服を買うのが大好きになる。 私のクローゼットは毎年夏服ばっかり増える。 そしてほとんど毎年、夏は好きな人がいる。片思いだけど。 ブレーキを緩めるというか、ハードルが下がるというか。 その好きな人には、ちゃんとけじめをつけたこともあるし、 秋が来て元気じゃなくなると、自分の中でどうでもよくなってしまったこともある。 だからかー。何年も一人の人のことがずっと好きだったことってあんまりない。 誰とも付き合ったことないしね。 そろそろ今年も夏が来る。 このぐらいの季節の自分の心の切り替えがけっこう大切だと、この何年かは思ってる。 さあ、そろそろ急に元気になろうって。 変な思い込み。 でもやっぱり今年も夏の世界に切り替わりたい。
お昼過ぎに、ベッドで横になっていたらいつの間にか眠っていた。 たぶん、今年結婚する友人のことを考えていたせいで、自分に彼氏ができる夢を見た。 目が覚めるともう部屋は暗くなっていて、あーあ、今週の休みも寝て終わっちゃった、と 思って起き上がって、冷蔵庫のグレープフルーツジュースを飲んだ。 口内炎が痛くて、涙が出そうになった。
会社で他の人が席を外していて私が部屋に一人のとき、ある非常勤の男の人が 真っ青な顔で入ってきた。 「いやー、ほんっと申し訳ないんですけど、こんなこと言うのはアレなんですけど、 あのー、いや、申し訳ない、ちょっとアレなんですけど・・・・」 という長い長い前置きの後、お金を貸してほしいと言われた。 なんでも、喫茶店でお金を払おうとしたらお金がなく、下ろしてこようとしたら、 カードがなかったとか。 今払わなくちゃいけないお金もなく、今日家に帰る電車代もないそうな。 仕方ないなー。私だってお金ないけど、お茶代と電車代くらいなら貸そう。 「じゃ、この千円どうぞ。」 とお財布から差し出すと、 「あ、千円・・・」 「私今日千円しか持ってないんですよ。」 「いやー、千円じゃちょっと・・・。」 結局、銀行のキャッシュカードがバッグの中から見つかったようですけど。 お金を全く持たずにお店に入ってしまった彼もみじめな思いをしたと思うけど、 千円しか持ってなかった私も、なぜかみじめだった。 そんなところで財布の中身大公開するつもりなかったのにー。
もっと余分なものや無駄なものを一つ一つ楽しみたい。 今は会社に行って帰ってくるだけで精一杯。 安いピアスをいーっぱい集めていて、ピアスをするのが大好きだったのに、ずっとつけてない。 家の近くの大きい公園をウォークマンで音楽聴きながらフラフラ歩くのが大好きだったのに、 もうずっと行ってない。 大きなスーパーの1階から6階まで眺め回して、ある時は結局何も買わないとか、ある時は 必要ないようなこまごました物をいっぱい買ったりしていたのに、今は食品売り場で 野菜ジュースを買うだけ。 何年か前って「行く行くはやりがいのある人類のためになる大きな仕事をして、日々笑ったり 泣いたり、充実した人生を送りたい」なんて、漠然としたことしか考えなかったけど、 人生や生活の大部分は生産性が無くて面倒なことなんだと最近は思う。 だから仕方がないってわけじゃなくて、それこそが楽しいところ。 例えば電車とかの移動時間って短いほうがいいように思うけど、どこでもドアなんかがあったら、 かえって忙しくなるような気がする。 とりあえず、今度から電車の中で音楽でも聴こ。 そうめん食べたい。
心が踊ることって、無い。 全部全部底の底のほうに沈殿してしまったみたい。 このまま明日もあさっても来年も再来年も、何も変わらないのかな。 そう考えるとゾッとする。 明けない夜はない。止まない雨はない。生きていることはあまりにも素晴らしい。 今はそんなこと信じられないけど、頭ではそう思っていよう。
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