Experiences in UK
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2004年02月23日(月) 第28週 2004.2.16-23 英国の買い物事情

ロンドンもかなり日が長くなってきました。朝は7時前に日が昇り、夕方は5時半くらいまで明るさが残っています。ただ、寒さは厳しくて、最低気温氷点下の日が続いています。

(英国の買い物事情)
日本との比較においてイギリスでの生活で不便を感じる点のひとつが、買い物です。理由は2つあって、店がすぐ閉まることとコンビニエンス・ストアがないことです。
我が家から車で5分の圏内には、ASDA、WAITROSE、SAINSBURY、MARKS & SPENCERといった英国の代表的なスーパーがあり、比較的買い物には便利な環境にあります。しかし、24時間営業のASDAを除くと普段の閉店時刻は日本のスーパーよりも早く(7時くらい)、日曜についてはASDA含めて全てのスーパーが夕方5時には閉店してしまいます(ちなみに、英国で小売店に対する日曜の営業規制がようやく部分的に緩和されたのは90年代半ばのことであり、それまではほとんどの商店が閉まっていたようです)。
最近の日本のスーパーは土日関係なく10時頃まで開けているのが常識ですから、買い物時間に制約があるという感覚に慣れるまで時間がかかりました。さらに、日本にはコンビニという実に素晴らしいものが街の至る所にあるわけで、いつ何時思い立って買い物に行ってもそれなりの物が買えるというのは本当に便利なことだと痛感します。

ただし、実はイギリスにも日本のコンビニに似た小売店があります。
それは、ニュース・エージェントと呼ばれる形態の個人商店で、昔の日本でいう街のパン屋さん・お菓子屋さんを大規模にしたようなものです。日本のコンビニほどではありませんが、街を歩いているとあちこちで見かけます。こちらに来た頃は、小汚い店構えなので大したものを売ってないだろうと高をくくっており、また機械的に買い物ができる大型スーパーと違って、いかにも地元の商店という雰囲気だったため、ちょっと入るのに尻込みしていた面があったのですが、いったんここで買い物をするようになると、その利便性からなくてはならない存在なりました。
日用雑貨や食料品が所狭しと並べられていて、実はけっこう品揃えは豊富です。また、比較的早い時間から遅い時間まで開けているので、何かのついでなどにふらっと立ち寄って買い物をすることができて本当に重宝しています。ニュース・エージェントを利用すると、例えば休日の早い時間に朝食を買いに出かけたり、レストランで夕食を食べた帰りにちょこっと買い物をしたりということが可能になります。

(バスでの口論)
さて、久しぶりにバスでの話です。先日、バスで車掌と乗客が激しい口論をしていました。
車掌(conductor)のいる旧型バスでは、しばしば車掌と客の間で口論が発生します。これまでも何度か見かけましたが、原因は大体二つです。一つが、満員で車掌が乗車拒否した際に乗りたい客との間に起きる一悶着で、二つ目が、バスの進行をめぐる乗客との間のトラブルです(あと、運賃徴収をめぐるトラブルもあり得そうですが、たまたま私は見かけたことがありません)。
一つ目については、以前にも書きましたが、ロンドンバスには規則上の定員があり(2階は座席数が上限、1階は座席数プラス5名)、その数を超えた客が乗ろうとすると車掌が両手で通せんぼをして乗車拒否します。ピークタイムには、数台続いて拒否されるケースもあるため、イライラした客と車掌の間でしばしば口論が発生します。1階の定員のうちプラス5名分については、物理的にまだ乗れそうなケースが多く、実際に乗せてくれる車掌もいるという曖昧な基準であることから、不幸にも足切りの対象となった客としては文句の一つも言いたくなるというわけです。
今週、私が見かけたのは二つ目のケースです。バスの車掌の主な仕事は、乗客数のコントロール、運賃の徴収、運転手に対する発車の合図出しの三つなのですが、本件はこのうち3番目の仕事にかかわる問題です。
車掌は、停留所で客の乗降が完了するのを確認すると、ベルを二つ鳴らして運転手に発車オーライを告げます。時々、時間調整のためか、停留所でしばーらく止まっていることがあり、この時、急いでいる血の気の多い乗客がいると「はよ出せ」と車掌にくってかかることがあります。
先日は、ラテン系の浅黒い顔をした太った男性客が文句を言い始めました。車掌の激しい反論に対して男性客が「みんなもそう思ってるぜ」と言うと、呼応する客がいるのが面白いところです。近くに座っていた女性客(白人、太め)が、即座に振り向いて「その通り。なんでいつまでも止まってるの」と威勢良く加勢しました。他の客はニヤニヤして様子を眺めているのですが(私は一生懸命ヒアリングに集中していましたが)、こうなっては車掌の方が分が悪く、渋い顔でチンチンと2回鳴らしてバスを発車させました。

こうやって書くと、人間味あふれるのどかな田舎の光景のようですが、これは紛れもないロンドンのど真ん中で繰り広げられている日常なのです。
もっとも、これらは車掌のいる旧型バスならではのものであり、大勢を占めつつある新型のワンマンバスでは起こりえません。旧型バスの車体は、すでに約30年前に製造中止になっているらしいのですが、人気があるため(と雇用維持のため?)エンジンの取り換えなどメンテナンスをして今も走らせているそうです(どおりでよく故障する)。
私も、いつでも自由に乗降が可能で様々な人間模様を観察できる旧型バス・ファンの一人ですが、新型バスに乗るとその乗り心地に雲泥の差があることがよく分かります。このため、もし自分の路線のバスが旧型から新型に切り替わったとしても、気分的には悲しいもののそれはそれとして有り難いとも思っています。


2004年02月16日(月) 第27週 2004.2.9-16 nationとstate、英国のお城ベスト10

(ラグビー・6ネーションズ開幕)
この週末から、ヨーロッパにおける(あるいは北半球における)最大のラグビー大会である「6ネーションズ」が始まりました。英国の4チームとフランス、イタリアの各代表が戦う国別対抗戦です。「6ネーションズ」の歴史は古く、原型ができたのは1910年にさかのぼるといわれています。そもそもはイタリアを除く「5ネーションズ」で開催されており、イタリアの参戦により「6ネーションズ」になったのは、つい数年前のことです。
今大会のイングランドは、W杯の優勝メンバーからかなり変動があります。イングランドのラグビー史に残る強力なキャプテンシーでチームを引っぱったマーチン・ジョンソンがW杯優勝後に引退を表明し、新キャプテン(ローレンス・ダラリオ)の下での戦いになります。また、チームのもう一人の要だったジョニー・ウィルキンソンは、肩の手術に踏み切って今大会は欠場します。
昨年は完全優勝を果たしたイングランドですが、新メンバーになった今年はどこまでやれるでしょうか。

(nationとstate)
それにしても、例によって英国は4チーム(イングランド、ウェールズ、スコットランド、アイルランドの各代表)が出場するわけですが、これを堂々とnationsと言ってしまうのはすごいなあ、と日本人の私は思ってしまいます。辞書の解説によると、単に政治的統合としての国家を意味する言葉がstateであり、民族の共同体という面を強調する場合にはnationを用いるとされています。
学術的にはより厳密な議論が展開されます。ある本では、nationとはラテン語のnatio(おのずから生まれたもの)を語源とする言葉であり、種族や言語や歴史等の同一性に基づいた自然的単位と説明されています。一方で、stateとは主権や領土を有する社会制度のことを指し、両者は歴史的にはまったく別のものとして存在してきたのであり、概念として画然と区別されるとしています(以上、村上泰亮「反古典の政治経済学」より)。
nationとstateが歴史的必然性をもって融合されたのが近代の国民国家(nation-state)であり、実はそれはヨーロッパ(と日本)に固有の現象(歴史的例外)だったという解説は、近代国家論などで標準的な見解だと理解しています。一方で、多くの非近代国家は無理矢理「国民国家」を造らされたが故に、nationとstateの間のきしみが様々な場面で多くの悲劇を生んできました。ちなみに、その意味ではアメリカは、自然発生的なnationではなく理念に依拠したtrans-national stateということになります。
小難しい話になりましたが、私が「6ネーションズ」という言葉から思ったことは、イギリスという国はnationとstateの融合が不完全なままで現在に至っているヨーロッパの奇形児なのではないかということです。stateとは別個に、あからさまに堂々とnationがまかり通っている近代国家など他にあるのでしょうか。これはイギリスのしたたかさを表しているものであり、平然と二枚舌を使い分けられるところが、イギリスのイギリスたるゆえんかなと思ったりもします。

(英国のお城ベスト10)
ところで、英国テレビの地上波には5つのチャンネルがあり、1と2がBBCで、その他が民放です。3チャンネル(ITV1)はスポーツに強く、4チャンネル(Channel 4)は教養系、5チャンネル(FIVE)はバラエティ系という印象です。
先日、5チャンネルで、英国のお城ベスト10という番組がありました。視聴者の投票などによるランキングのようでしたが、第10位から順番にお城の歴史や魅力を伝えていくという内容でした。英国のお城にはまだ行ったことがないので、非常に興味深く見ました。
ベスト3は、3位がティンタジェル城、2位がエジンバラ城、そして1位はウォーリック城でした(ベスト10の結果は、ココで見ることが可能)。
テレビで見ていて感じたのが、イギリスのお城は、ウィンザー城などを除いてほとんどが現在は遺跡みたいなものだと思うのですが、周囲の風景との調和という点では、いまもしっかり息づいているなあという点でした。いずれ実際に訪れて確かめてきたいと思っています。


2004年02月09日(月) 第26週 2004.2.2-9 ロンドンの道路

2月6日(金曜日)はエリザベス2世女王の即位記念日らしく(現女王の即位は1952年)、11月の議会開会式の時と同様に、正午から10分間弱にわたって、バッキンガム宮殿周辺で号砲の音が轟きました(Gun Salute to Mark Accession Day)。この轟音に慣れるということはありません。

(ロンドンの道路)
ロンドンでの車の運転で日本との違いを感じることはいくつかあるのですが、そのうちの一つとして、ロンドンは全般的に道路の整備状況が悪く、かつ地域によってかなり差があるということがあります。
日本の道路は、どんな田舎に行っても(場合によっては、田舎に行けば行くほど)、均質で滑らかなアスファルトの道が続いていることが常識であり、高速道路については何をか況やです。
ところが、ロンドンの道路は中心街でも粗雑な舗装道路が多くて、過去の補修工事によるアスファルトのつぎはぎやマンホール等による段差、小さな穴ぼこが随所にあります。時折出現する大きな穴ぼこにも常に気を配る必要があります。
そして、市内でも特定の地域に行くと、山間部の未舗装道路のような走行感覚の道もあります。道路の状態が悪い地域は、住宅など地域の環境自体がどこかすさんでいるようです。高速道路も同様で、こちらの高速道路は少しスピードを出すとハンドルが振動で大きく上下します(私のぼろ車のせいもあるのでしょうが、日本でもぼろ車に乗っていたので比較は可能です)。
どちらが良いかというのは、コストとベネフィットの兼ね合いで総合的に決まることなので簡単には言えませんが、コストを無視して考えると、日本の道路のすばらしさを実感します。ただ、コストが比較的分かりやすい高速道路については、無料で走れる英国の方がはるかにありがたいことは言うまでもありません。

(テニス・ラケット購入)
週末にテニス・ラケットを買いに出かけました。隣町のウィンブルドン中心部から少し離れたショッピング・モールで買ったのですが、驚くほど安かったです。セール期間中ということもあったのですが、WilsonとかHeadなど一流メーカーのラケットが10-20ポンド(2000〜4000円)で売られていました。かなり型落ちしたものだとは思いますが、それでも相当安いですね。
なお、私は割安感と手に取ったフィット感から、オールド・ファンの郷愁をそそるDonnayのラケットを買ってしまいました(もちろんグラファイト製のミッド・サイズのラケットであり、ウッド製ではありません)。例によって、日本での価格を調べようと思ったのですが、不明でした。Donnayのラケットなんて、もう日本では売ってないのでしょうか。ラケットにくっついていた宣伝をみると、いまだに1975-82,Bjorn Borgと書かれていて、その横にボルグの写真が載っているのです。こんな宣伝をしている時点で、もうこのメーカーは終わっていますよね。そんなメーカーのラケットを買っている私も相当酔狂と言えるでしょうが。
ラケットを買ったのは最近テニスをする機会があるためですが、もちろんこの寒い時期に屋外でプレーするわけではありません。うちから車で15分程度の場所にあるスポーツ・センターのコートを借ります。1時間のコート代は18.5ポンド(約3700円)程度で、スポーツに関しては何でも安く楽しめると聞いていたイギリスにしては意外と高いようにも思いましたが、屋内ですから致し方ないのでしょう。屋外コートだと数ポンドで借りることができるそうです。


2004年02月02日(月) 第25週 2004.1.26-2.2 雪のロンドン、チーボ・コーヒー

(雪のロンドン)
今週水曜、この冬初めての本格的な雪が降りました。本格的といっても、夕方から3時間ほど降っただけで、積雪3センチといったところでしょうか。最近は毎年のように平気で30センチ程度のドカ雪が降っていた東京であれば、降ったうちに入らないくらいです。
しかし、この3センチの積雪でロンドンの交通は半ば麻痺状態でした。我々が帰宅する時間帯には、ロンドン北部のいくつかの地下鉄駅(地上にある)がすでに閉鎖されており、地下鉄は当然のように多くの路線がdelayとなっていました。道路渋滞も甚だしく、私が乗ったバスもずーとのろのろ運転でした。パットニー・ブリッジを通る際に横手の鉄橋をみると、地下鉄(パットニー近辺では地上を走っている)の車両が橋の上で停止しているのが見えました。
雪に弱い東京ということがよく言われていましたが、ロンドンは東京の比ではないようです。

(チーボ・コーヒー)
話は変わりますが、オフィスと最寄りバス停とのちょうど中間地点にあるホテルの中に、道路に面したほんの少しのスペースを間借りして小さなコーヒー・ショップが店を構えています。Tchibo(チーボ)という名のドイツ生まれのコーヒー・ショップで、欧州を中心に世界展開しているチェーン店です。最近ロンドンでも「スタバ」等の米系コーヒー・ショップが急増中ですが、Tchiboは老舗のコーヒー・チェーン店で、ロンドン進出は91年頃のようです。
チーボの店内は、カウンターの向こう側に店員が1人いて、こちら側に客が3人も並べば満員になる程度のささやかなスペースです。外に丸いテーブルがひとつだけ置いてあるのですが、朝の時間帯に訪れる大抵の客は、コーヒーを手に持ったままそそくさと近くの職場に向かいます。
私はここのコーヒーの味にすっかり魅了されてしまっており、バスを降りてからチーボに立ち寄ってコーヒー1杯と時々クロワッサンを買い求めるのが、こちらに来てからの朝の日課になりました。いつもいる店員は、スペイン出身の30代半ばくらいの女性レッケル(英語読みではレイチェルとなるらしい)で、基本的に無愛想なのですが仕事の手際はしっかりしています。いちど彼女が体調を崩して休みをとった後に「いなかったね、どうしたの?」ときいてから、ときどき天気の話くらいはしてくれるようになりました。

(1杯の値段で2杯)
このチーボが最近「1杯の値段で2杯のコーヒー」というキャンペーンを始めました。そのため、近隣オフィスの人たちは、職場の同僚の分と併せてコーヒーを2杯ずつ買っていくのが常態となりました。私は、コーヒーをシェアする同僚も見あたらないし、1人で2杯飲む気もないので、これまで通りに「1杯の値段で1杯のコーヒー」を買い求めておりました。
ある日、職場の同僚にこのキャンペーンの話をしたところ、私はすでに店員とは顔見知りであり、毎朝ここに私が立ち寄ることを彼女はよく知っているのだから、「1杯の値段で2杯」の2杯を今日の分と明日の分に分ける権利を主張することも可能なのではないかと言われました。1杯が1.75ポンド(330円程度)と比較的高価なので、コスト半減はかなり魅力的です。
そこで、ある朝、その通りに主張してみたところ、レッケルはあっさりと受け入れてくれて、私の要求どおりに回るような仕組みもその場で考えてくれました。要求を呑んでくれるにしてもいい顔はされないであろうことを覚悟していたので、その柔軟かつ合理的な対応にちょっとびっくりしました。
というわけで、2月に終了するキャンペーン期間中は、1日おきに無料のおいしいコーヒーを飲んで出勤することがでるようになりました。


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