vol.6 思うこといろいろ - 2001年11月27日(火) さきおとといのコンサートに行ったとき、師匠と直接会ったわけではないので、「ライブにはなかなか行けないけど、コンサートにはちゃんと行ったよ」という事後報告をして私の誠意を見せておかないと、と思ったので次の日にメールをしておいた。師匠からのレスが数日後の今日届いた。 この間の共演者達のことについて簡単に説明してくれた後、私のリサイタルについて「14日はあいていますので、行かせていただきます。楽しみにしています」と書いてくれた。わーい!がんばらなきゃ。なんか、うれしいな。これからお世話になる師匠が来てくれるなんて。あ、でも社交辞令かもしれない。けど社交辞令で「行きます」とまでは言わないよねぇ。 ジャズの人達にはもしかしたら解らないかもしれないけれど、クラシックの場合、世界を股にかけてコンサートツアーをするようなコンサートピアニストならともかく、音楽大学の先生や、私のような町のピアノ教師の場合、人前で弾く機会はだいたい年に2,3回、リサイタルのような大事業なら1年に1回もすればそれはとても大変なことなのである。リサイタルはたいがい2,3年に一度が多いんじゃないだろうか。つまりそれらのコンサートの収支が黒なのか赤なのかはあまり重要でなく、研究者が国内外の学会で発表するのと同じ価値なのである。 だからクラシック奏者の言うふだんの「演奏のお仕事」というのは、ピアノ以外のソロや合唱などの演奏会、あるいはオペラなどの稽古の伴奏者として、そうでなければレストランやホテルなどで「人口に膾炙した曲ばかり」の30分プログラムを3ステージくらいこなしてその日は終わり、そんな感覚である。バレエピアニストというのもあるな。 何が言いたいのかと言うと、つまり私は今リサイタルの準備で頭の中がそれ以外考えられないのである。終わったらほえ〜っとなって暫くピアノを弾く気力が出ないだろう。4年前の初リサイタルのときは、3ヶ月前から誰とも喋りたくなくなり、終了後1ヶ月は新しいレパートリーを増やす気力に欠けていた。 ということで、ジャズの師匠は見つけられても、レッスンそのものは、リサイタルが終わってからにしてもらうことになった。 ... vol.5 初めて聴く師匠の演奏 - 2001年11月23日(金) 先週のお試しレッスンがすんだ後、師匠は自分の演奏も聴いたことのない私がレッスンを頼んだことを不思議にまた不満に思っていたのか、「どこで僕のHPを知ったのですか」とか、「ライブ聴きに来てください」などと言っていた。「こないだCDの録音したんですよ」とも言っていた。それなのに、「あ、ライブねー、聴かせて頂きたいのはやまやまなんですけどぉ、その時間帯って私も仕事をしてるので、なかなか行けないんですよぉ」と、水を差してしまった。師匠は一瞬寂しそうな顔をした。でも、先日書いたとおり、私の(名前だけ)知っている大御所のギタリストとの共演、というよりもそれはビリー・ハートというジャズドラマーとの共演がウリのコンサートなのだが、そのチケットをその場で買わせてもらった。 そして、ついでに大胆にも今日会ったばかりなのに、来年1月14日にある私自身のリサイタルの宣伝を彼にしてしまった。もちろん招待券を渡したのだけど。 今日は、そのビリー・ハートとのコンサートの日だった。JAZZのコンサートなんて初めてだ。ホールも聞いたことのない初めて行くホールだ。だから駅から迷った。 あるところまで来て、どうもこの建物らしいのだが、何階だったっけ?地下かな?じゃ、ここから入るのか…あらら、これは18歳未満お断りのイケナイ映画館の入り口だわ。女の私が行くところじゃない。あ、でも見たことないからちょっと見てみたい気もするってか?あ、うそうそ、とにかく、えーっわかんない。どこから入るの? しばし悩んだ後、ホールはだいぶ上の階にあることがわかった。 中に入ると、そこは繁華街のホールと言うよりはどこかの村の古い公民館の講堂という感じで狭い。客席の後方にはアルコールとソフトドリンクが置いてあって、 何人かのお客さん達は手馴れたもので、ビールとかウイスキーをあおりながら開演を待っている。なんじゃ、こりゃ。これってジャズコンサートのごく普通の形態なんだろうか。クラシックならホワイエに行って飲食するのであって、客席ではご法度だぞ。これじゃ、ジャズクラブの光景そのまんまじゃん。 開演に先立って、ビリー・ハートによるクリニックが始まった。師匠を含めてその日の共演者達がステージに出てきた。初めに出てきたのが、大御所ギタリスト。ファンが多いのか、顔を見せたとたん、「おぉ!」と聴衆に拍手で迎えられた。彼の名は実は高校生のときから知っていたが、顔と演奏にお目見えするのは今日が初めてだった。それにしてもみんな地味なカッコだな。普段着だろうか?数人のアマチュアドラマーがビリーに指導を受けた。 師匠はとても丁寧な音の出し方をしていた。私だったらもっとバンバン弾いてるかもしれない。でもインプロヴァイゼイションのことはよくわからないから、評価のしようがない。だから私の師匠選びは演奏なんか聴かなくったってどっちみちよかったんだ。 凄かったのはやはりビリー・ハート。途中ベースの弦が切れたので張替えるというアクシデントを時間的にカヴァーするため、彼の突然のソロが始まったのだが、スネアは張りのある快いアタックと残響で、ピアニシモでならすシンバルの音はウソみたいに優しくて、心地よい風が頬をさするようなそんな感じだった。 クラシックに限らずライブの音空間の醍醐味を感じた数分間だった。 ... vol.4 その日がやってきた - 2001年11月16日(金) 私が教えてもらおうと思ったその人は、某楽器店の音楽教室でも教えているとかで、彼の自宅に通うよりもそっちのほうがずっと便利なので、月謝は割高になるけどそこに決めようと思った。実はその教室は、学生時代から、そしてピアノ教師としてそろそろ中堅どころになってきた私が一番関わりたくないとずーっと思いつづけてきたヤ○ハ音楽教室である。もっとも便宜上そうしているだけのようだ。観念するしかないな。 で、そこの体験レッスンに行って師匠と直接会ってみて、レッスンの雰囲気やJAZZピアニストそのものの感触?を確かめてみたかった。それが今日だった。 新しい師匠会うのはとてもドキドキ、ワクワクしていたけど、教室に行く途中、次第に緊張してトイレに行きたくなった。予定より早く着いてしまったのを幸いに、受付の若いお姉さんに挨拶だけしてトイレに走った。そのときピアノ室の中にえんじ色のシャツを着た師匠らしき人が座って指ならしをしているのがドアのすりガラス越しにぼうっと見えた。その人はメールでしか話した事のない、顔も声もよく知らない人なのに、お互い名前と存在だけ知っている、なんか出逢い系サイトで出会った男の人に初めて会うみたいでなんか変な感じ。あ、でも私決してやった事ないからね、出逢い系サイト。 トイレから戻ってきたら、受付の横の小さなテーブルのところに、若いお兄さんが遠慮がちに座っていた。(あれ?えんじ色着てるけど、だあれ?) 受付のお姉さんが「こちらが○○先生です」と、そのえんじ色を紹介してくれた。 あら、まぁ!40代の妻子持ちだと思っていたのにセンセイ若いじゃーん! これはちょっとした誤算。既婚か未婚かわかんないけど、この際そんなことはどうでもいい。Photoのひたいの面積で判断したワタシが失礼な女だったのだ。あとで受付の女の子に「先生ってもっと年上かと思ってた」と言うと、彼女は彼の年齢を教えてくれた。なんと同い年だった。 その誤算にすっかりうろたえた私は、緊張が増してしまって、師匠とはちっとも話がかみ合わなかった。「以前ラプソディ・イン・ブルーを弾かれたんでしたっけ?」と過去の事を聞かれたのに、今日弾く予定の曲名を聞かれたのかと勘違いし、「え?そんな難しいの弾けません」などと言ってしまった。家に帰ってから自分の間違いに気がついた。よっぽど緊張していたようだ。 この日は家でショボショボ弾いていたガーシュインのオリジナルピアノ譜のLISAを弾いた。めちゃくちゃあがってちっともうまく弾けない。ぼろぼろ。「ここの左手の10度のところ、音がとんでるのによく弾けますね。これ、手が届いたら一度に掴むところなんですけど、届かない人が多いから楽譜ではこんな風に書いてあるのかな…」あまりのひどさに余程言う事がなかったのか、そんな誉め方をしてくれた。10度のアルペジオなんて普段ごく当たり前に弾いてるのに。そんなこと誉めてもらったら却ってみじめだ。そして言うには、私の弾く付点のリズムはいかにもクラシックらしくカタイのだそうだ。そうだろうな。ジャズ・ハノンって本に「ジャズにおける付点のリズムは3連符のように弾かれる」みたいなこと書いてあったもんな。クラシックでそれやったら、「付点が甘い」って注意されるけど。 で、師匠は今後のレッスンの展望を「枯葉」を使って説明してくれた。 今の私には扱えないジャズのコードが次々現れて、まるで魔法を見ているようだった。彼の手は大きかった。手の小さい自分を久しぶりに再認識して、少し淋しくなった。 今日はトミー・フラナガンが亡くなったそうだ。 ... vol.3 すばやい?行動力 - 2001年11月10日(土) 先月、インターネットでジャズピアノ情報を探した。「ジャズ何でも掲示板」みたいなのが見つかったので、「誰か教えてください…云々」とカキコしておいた。 しかし、数日たってもレスがない。確かによく考えてみると、自分だってピアノ教師である。そんなの見て「私が教えましょうか」ってわざわざ返事書いたりせえへんわ、そんなん。 で、JAZZ RINGなるものがあることを知った。確かにクラシック系のRINGがあるのだから、JAZZがないのはおかしい。で、そこでさっそく探してみることにした。 すると、自分の住む関西圏の通える範囲で教えている人のHPを何件か見つけた。高校出てすぐ修行した人とか、普通の大学に通いながら修行した人とか、音大で作曲を専攻してた人とか、バークリーにまで行った人とか… 確かにバークリーは魅力的ねぇ。でも、私が習う目的は、何もジャズのピアノ教師になりたいとか、はたまた無い才能振り絞ってジャズピアニスト目指すとかではない。いうなればピアノ教師、あるいはピアノ弾きとしての「知的興味」である。理論を押さえて、スウィングできて、即興などのアレンジがそこそこ出来るようになればそれで万々歳。私の本分はやっぱりクラシックなのだから。 で、自分が習いたい先生の必要最低条件を考えてみた。 1.ジャズピアニストとして食べている人…これはあたりまえか。一番避けたいのが「ジャズもクラシックも教えます」という人。絶対中途半端に決まってるよね。 2.若すぎず、年寄りすぎず…なんか50代以上のバリバリの人だと、こっちが気が引けてしまう。かといって、あんまりフレッシュすぎて、やたらとヤル気満々で教えてもらうとしんどい。これは過去の自分がそうだったから。40代そこそこのピアニストとしてアブラがのりかかった人がちょうどいいかな、と思った。ア、でも自分の将来のだんなは年上より年下がいい… 3.妻子持ちの男性。つまり当然ピアニストとして妻子を養えるだけの活動をしている人。もう一つ利点があるとすれば、先生の家でレッスンの場合、家のなかに奥さんがいてくれたほうが、余計な誤解をされずにすむ。(考え過ぎ?) 4.乗り換えなしで電車で通えること…遠いと続かないし。 それである一人のジャズピアニストが浮上した。エッセイがいくつか書いてあって、ピアノや音楽に対して繊細に感じているような文章だった。これは大変よい。しかも普段のライブではないちょっとしたコンサートの共演者に、私の知る某大御所ギタリストの名前があった。この人とするなら、間違いないのね、きっと。 Photoはどう?あんまりはっきりと写ってないね。ちょっとひたいの面積がキはじめてるような…顔もはっきり写ってないけど、この写真で判断する限り四十路だよな。 さっそくメールを送ってみた。数日後にあたりのよい返事をもらった。ちょっと嬉しかった。それが先月のことである。3週間くらい考えて、やっぱり弟子にしてもらおうと決心し、会ってもらうことになった。 ...
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