月のシズク
mamico



 引越し告知

3月27日より、日記「月のシズク」は引越ししました。
エンピツからお越しの方は、ウェブログ版「月のシズク」にリンクを張り替えてください。

http://mamigon.jugem.cc/

エンピツに収めてある三年分のログは、新「月のシズク」の
右側にある[Link]より引き続き閲覧することができます。
今後とも、どうぞよろしく。



マミコ


2004年03月29日(月)



 春髪

実に6ヶ月、伸ばし放題だった私の髪は、数ヶ月前から既に壊滅状態だった。
肩甲骨の下まで伸びた髪は、毛先がバサバサで、全体にうねうね。
くせっ毛というより、くせのある生え方をしているので、伸びると
ボディパーマをかけたように、ワイルドかつダイナミックになっていた。

「うわーっ。どうします?」
挨拶もそこそこに私の髪をくしゃくしゃ触りながら、アサコさんが云う。
うわーっ、というのは、おそらく傷みきった髪に対する哀れみの意。
どうします?というのは、おそらく「バッサリいっちゃいます?」という
投げかけの疑問文。もしくは、「切らなきゃダメですね」という断言。

「いいです。もう、どうにかしてください」
鏡に映る私が、力弱く訴える。アサコさんは鏡の中で視線を合わせ、
ふっ、という感じにわらって「じゃ、いっちゃいますよ」と応えてくれた。

なんと、トータルで四時間かかった。もうこれは、手術だ。
消毒代わりにざっと洗髪し、外科手術を施すようにジャキジャキと傷んだ
部分を摘出し、輸血代わりに細かいハイライトをたくさん入れた。そして、
縫合するみたいなトリートメント、最後に包帯を巻くように丁寧なブロウ。

結果、私の髪は10センチ短くなり、10年ぶりに前髪ができた。
毛量は半分以下に減り、頭を振ると長めに作った前髪がさらさらと
降りてくる。思わず「うわーっ」と声が出る。
もちろん、感嘆文の、うわーっ。

大手術をし終えたアサコさんは、ヘアワックスを全体にすり込みながら
満足そうに「春ですもんね」と言う。へへへ、無事、春髪、できました。

2004年03月24日(水)



 小さなお客さん

数年前から、実家の庭先に「わらべかけこみの家」という、小さな看板が
掲げられている。とりたてて物騒な場所ではないのだが、民家ばかりなので
小さな子どもが登下校の際、何かあったら遠慮なく駆け込んできていいよ、
という他愛のないものだ。こんな看板が本当に役に立っているのかしらん、
と訝しがっていたところ、兄からかわいらしいメイルが届いた(以下、転写)。
---

午後三時ごろ、玄関のチャイムが鳴った。
「はーい」と返事をして玄関に出てゆくと、小学生の男の子がふたり立っている。
「どうしたの?」と声をかけようとしたとき、ひとりの男の子が、
「すいませーん、トイレ貸してもらえますか?」と大人びた口調で言った。
僕はちょっと微笑んで「どうぞ。廊下の突き当たりだから」と彼らを家にあげた。

彼らが順番にトイレを使っている間、僕は台所でミニサイズのシュークリーム
を用意する。「食べていきませんか?」と云うと、ふたりそろって「はい」と
嬉しそうに返事した。彼らは台所の椅子に座ってシュークリームを食べながら、
彼らが一年生だということ、今日が卒業式だったこと、そして、この家のチャイム
を鳴らしたのは初めてじゃないことを話してくれた。

「それじゃ、はじめてここに来たのはいつ?」
「えっと、前に変なおじさんが出たとき。おばあちゃんが入れてくれて
 お菓子とジュースくれたの。しばらくここにいていいよ、って」
不審者か、と僕は眉をひそめる。すると大人びた口調の子の方が、
「そのときもトイレをお借りしました」と恥ずかしそうに云った。

シュークリームを食べ終えて、僕にたくさんお話をしてくれた彼らは、はっと
気づいたように「かえらなきゃ」と云った。そして、「どうもありがとうございました」
と礼儀正しく挨拶し、来たときと同じように、元気よく玄関から出て行った。

一瞬、春の風が吹き抜けていったようでした。

2004年03月15日(月)



 ナチュラル・クロック

毎朝、決まった時間に子どもたちの声で起こされる。
それはもう、ひよこたちが「ピーチクパーチク」啼いているような声。
その甲高さが、私を、眠りの底から、いつ何時でも容赦なく引きずり出す。

明け方近くまで仕事をしていたときなど、定刻にマンション階下で騒がれると
「お願いだから、もうちょっと眠らせてー」と叫び、布団をかぶりたくなる。
子どもの声は、なんだってあんなによく響くのだろう。

今朝は午前の早い時間に約束が入っていたので、私の方が早起きした。
ベランダで洗濯物を干していると、来た、来た。キャッキャッと高い
子どもたちの声が、どんどん近づいてくる。そして、通り過ぎたかと
思ったら、それは真下で止まった。

「キャー、こわーい」とか「ふかーい」とか、声が聞こえる。
身を乗り出して見ると、子どもたちがへっぴり腰で、マンション下の暗渠を
覗き込んでいた。鉄骨がむき出しになって、地下一階分、スカスカに見下ろ
せるのだ。あんなちっこい子どもたちには、奈落の底に見えるだろう。

不意にひとりが顔をあげ、「あっ、人がいるよ」と私を指差す。
騒々しいひよっこたちを撮影しようとカメラを構えた瞬間だった。
子どもたちは次々に「あっ、あっ」と私を見上げる。なんだかこっちが
気恥ずかしくなって、ベランダ越しに軽く手を振った。

「いつも騒がしくてすみませーん」若い保母さんが叫ぶ。
内心「まったくだよ」と思いつつも、笑顔で「いえいえ」と応えた私は、
まんざら子ども嫌いでもないらしい。



通り沿いの保育園の元気な園児たち。朝日に向ってゴー!なのです。

2004年03月11日(木)



 「女神の恋」

NHKの夜11時から15分ぽっきりの、連続ショートドラマ。
そろそろニュースの時間かしらとチャンネルを回すと、いつもこのドラマに
ぶち当たる。で、そのまま、ぼーっと15分間流しっぱなしにしてしまう。

ストーリーがいいとか、登場人物がステキとか、別にこれといってコメント
すべき内容ではないのだが、毎回「松本明子ちゃんて、可愛いな」と思う。
ちゃん付けして呼ぶのは失礼かもしれないが(確か30代半ばだよな)、いつまで
経ってもキュートさは消えない。ずいぶん前に、中山秀征さんと飯島直子さんで
「DAISUKI」という深夜番組をやっていたが、あの頃からぜんぜん変わってない。
出産までしたというのに、彼女のチャーミングさは健在なのです。

松本明子さんは、女優というより、性格俳優といったタレントさんだけど、
結局のところ、芸能界では、男女問わずバライティ組の方が息が長い気がする。
外見の美しさや恰好良さではなく、トークのテンポや、垣間見せる素顔が
魅力的じゃなければ、視聴者はつまらなく感じてしまうんだろうな。
「魅力」って、演技ではなかなか伝わらないものですし。

自分の歳が上がるにつれ、中堅どころと呼ばれる芸能人さんが気になってきた。
ふとした仕草や話し方、歳を重ねても自分に誠実な生き方をしている人たちって、
やっぱりステキだなと思う。ここ数年は石田ゆり子さんがとても気になる。
ふんわりした雰囲気の中に、凛とした強さを秘めた女性。現在、冬幻社のWeb
にて連載中の「お茶っコ日和」でも、その素顔が拝見できて、ファンとして嬉しい。

女性があこがれる女性って、やっぱりステキですよね。

2004年03月09日(火)



 暗闇栽培

♪きょーの夕食何にしよ、玉葱ぃタマネギあったかな♪
なんて鼻歌交じりに、ストックワゴンを覗き込む。立ち並ぶ2リットル入り
ミネラルウォーターの奥に、茶色の紙袋を発見。ああ、そういえば以前買い貯め
した野菜がここに、と手を伸ばしがさごそとまさぐって、ギャーと悲鳴。

私の指先が触れたもの。
しゃんとした生命感のあるもの。それは、たとえば水仙の茎のような。
ネットを突き抜けた長細いもの。それは、たとえば痩せ細った仔鹿の足。

んなわけはない。と気を取り直し、紙袋ごと、ごっそり取り出す。
上にかぶせてあった新聞紙を取り除き、のぞいたふたつの眼が捉えたもの。
「なんですか、これはー!」と、腰を抜かしそうになってしまった。

えーと、下に貼り付けた画像の物体が、暗闇でひそかに生息しておりました。
つまりは、ジャガイモの紫の芽が、タマネギのネットを突き破り、そのタマネギ
くんたちも、緑のつややかな芽を出していたのです。

日頃から、自分のだらしなさ加減は重々承知していたハズなのですが、
ここまで思い切ったことをやっていただくと、反省するより笑えてきて
しまって。その、植物たちの生命力を、ドカンと見せ付けられたようで。

こんなに成長してしまった野菜は、すでに料理に使えるわけもなく、
でもせっかく芽を出したからには、捨ててしまうのも残酷な気分にさせられ
るわけで。お隣さんの小さなお花畑に、これを埋めてしまっては、やはり
不法侵入者の不法投棄で犯罪者になっちゃうかしら。と、思案に暮れています。



ね、ね、すごいでしょ!(ちょっぴり、ヤケのやんぱちです)

2004年03月07日(日)



 能力不足のレスポンサー

「ラストサムライ」のレビューをあんな形で公表したことに関して、
それなりの反応が出てくることは予想していました(掲示板参照)。

どちらかというと、アメリカに同情的な部分を出してしまったが故に、
「キミはいったいどこの国の人なの?」というメイルをいただいたり、
「あんなクソ・ハリウッド映画に熱くなるなんて、バッカじゃないの?」
と云われたり。名誉のために弁明しておきますが、私は生粋の日本人で、
この国の文化をこよなく愛しています。アメリカかぶれではありませぬ。

でもね、いろんな人があれだけ議論というか、意見を書いてくれたことを
嬉しく思っているのです。それだけあの映画が、観ているひとの心をぐらぐら
揺さぶったから、その反応が言葉として溢れ出したんでしょ?「そうよね」という
同情文化に慣れた私たちにとっては、少々カゲキに映ったかもしれないけど。

過去の辛い歴史を言語化するって、ほんとにしんどい作業だと思います。
だって、その過去を恥じているから、思い出したくないわけでしょ?
日本だって、そういう過去はある。南京大虐殺や、従軍慰安婦問題など。
どれもまだ、日本国内では言語化できていませんよね。

最近、「脳」に興味を持って、その手の本をよく読んでいます。
記憶が貯蔵されるのは脳なわけだから、どんな記憶が脳のどこに仕舞われるの
かを知りたくて。養老孟司先生と古館伊知郎さんの対談集『記憶がウソをつく!』
を読んでいて驚いたのが、「アメリカと日本は、記憶をチャラにするリセット本能
を持っているところが似ている」と書かれていたこと。

イギリスが嫌になった人々が、本国を脱出してアメリカ国家を作ったように、
かつては日本も朝鮮半島や中国大陸から移住してきた人々によって形成された。
で、「大化の改新」以降、奈良、平安時代に続き、今度は武家政権が出てきた。
それが潰れ、室町になって...歴史をまとめて最期に大リセットしたのが江戸時代。
その後も、明治になってリセットし、戦後になってリセットした。
リセットされるたびに残ってゆく残滓を「和魂」と言った、と。

こんなことを書いたらまた「バッカじゃねーの」と罵倒されそうですが、
私たちも自国について知らないこと、直視できず終いのとこがたくさん
あるんじゃないかな。そんな無意識的部分に気づいただけでも、私はあの
映画を観てよかったなと思っています。掲示板にいただいたご意見に対しても、
何度も考えた上でレスポンスさせてもらいました(能力不足なのは認めます)。

人生の善い面、楽しい面ばかり見て生きていけたら、そりゃ楽だろうけど、
それはそれで不幸ですよね。たぶんおそらく。あー、私って根暗だわ(笑)

2004年03月05日(金)



 光と影の狭間に揺れるもの



「光と影の狭間に揺れるもの それを知りたくて チェロを弾く ただ 祈るように」

以前、あるチェリストが言った言葉だ。
まるで、眼球に付いた小さな傷のようだ。捉えようと眼を凝らすほど、
その傷はちろちろと動き回る。指先で触れることができない、幻影。

それを掴もうとするのを諦め、ひさしぶりにチェロを弾いた。
「よく音が響くね」と言われた、白い寝室で。ただ、祈るように。

【この画像は、ncのカイノショウさんにプレゼントしたイメージングです】

2004年03月03日(水)



 今更ながら、「ラスト・サムライ」雑記

(昨日に引き続き)えーと、しつこいようですが「ラスト・サムライ」。
アカデミー賞が残念な結果に終わってしまったので、上映も早々に打ち
切られるんでしょうね。今ですら、公開しているシアターは少ないし。

私は今年に入ってから観にいきました。
一回観て、中一日「悶々もんもん」という感じで考え込んで、翌日また観に
いきました。もんもんしていたのは、映画の内容に納得がいかなかったから
ではなく、その真逆で、「うわっ、スゲエ」と素直に感動してしまったから。

で、一度目を観た直後から、「これは文章に残さなければ」とひとりで盛り上がり、
その確認のためもう一度観たのでした。嫌な客かもしれませんが、二度目は
メモ帳とペンを持参して、涙ふきふきしながら、シャコシャコと暗闇の中で
メモっていました。今、手元にそのメモがあるんですけど、ミミズが紙の上を
這いずり回っています。私以外の人がご覧になったら、ほぼ解読不能です。

批判や重箱のスミをちょんちょんするような指摘はたやすい。
私はね、どんな作品でも「よかったな」という箇所を見つけるのが好きです。

個人的には(観た方はわかると思うけれど)、オールグレン(トム)が、見張り
として付きまとう寡黙なサムライに「よし、キミをボブと呼ぼう。何でそんな
顔してるんだ。ははーん、オンナみたいなスカート(袴のこと)を履かされた
からだろ」と独りごちる場面。それと、新政府に囚われた勝元(渡辺謙)を
救い出すとき、行く手を阻む警備の者に通訳のグレアムが「この方(トム)
を誰だとお思いになる。アメリカ合衆国大統領であられるぞ」と嘘ぶく場面。
二回とも声を立てて笑っちゃいました。

観た人それぞれが、いろんな感想や解釈を持っていいと思うんです。
私もちょっと真面目に書きたくなりました。少々肩が凝るような文章かも
しれませんが、私は批評家でも映画評論家でもないので、「オメェ、
よくも偉そうにずけずけと」と云われても困っちゃいます。

それでも興味あると云っていただける方、
[Sketch]→[Faculty]→[#4]から長文覚悟でドゾ。

2004年03月02日(火)



 メイビー、雪?

ぶっちゃけやりたい放題なドラマだと判りつつも、毎週見てしまう月9「プライド」(フジ)。
母親にキャストアウェイされた心傷少年ハルくんの次は、2年も待ちぼうけをくらった
アキちゃんが、恋人夏川によるDV(ドメスティック・バイオレンス)ですか(苦笑)
ワンパターンな脚本から脱皮できない、野島伸司の十八番ですな。
ところで、冬の名がつく登場人物は今後出るのだろうか?冬彦さんとか。

これだけ「あり得ない」プロットを繋ぎ合わせても、とりあえず視聴率だけ
好調にかっさらえるのは、まさかドラマ王者キムラさんが健在だからか?
いや、別に何も期待しちゃいませんよ。竹内結子ちゃんスキだし。
他局の日9、蒲田昼メロ殺人事件簿連続11回苦し紛れオンエアより、
見ていて数段気持ちがいいし。スマスマでお口直しできますし(うわっ、毒)

・・・ちょっとムシの居所がよろしくないようで、失礼しました(ぺこり)。

それはそうと(どうと?)、東京地方、雪が降りましたね。
積もりはしなかったけれど、朝から午後の早い時間まで、結構本気モードで
降っていました。三月に入ってから雪が降るのは、東京では珍しいんじゃない
かしら。水気をたっぷり含んで、べちゃべちゃした雪だったけれど、空気が
ぴりっと張り詰めて、何度も「まだ降ってるかなー」と窓辺に寄っておりました。

私は花粉症のアレルギーを持っていないのだけれど、花粉症の方は、こういう
日は有難いのでしょうね。この時期、頻繁にCMされる「花粉症対策グッズ」の
ための、「花粉飛びまくり映像」は、症状を持ってない私でも怖れおののきます。

話は飛びますが、アカデミー賞助演男優賞にノミネートされた渡辺謙さん、
残念でしたね。私は「ラスト・サムライ」を二回も観に行ったクチなので
本気で受賞していただきたかったです。全編、美しい演技で魅了されました。

2004年03月01日(月)
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