月のシズク
mamico



 バッハは精神安定剤

「招待チケが余ってるんですけど、佐渡裕指揮の都響いかがですか?」
という魅力的なお誘いをいただき、昨晩、某郊外型公共ホールへ出向いてきました。

メニューは、
バーンスタイン:「キャンディード」序曲
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番
ストラヴィンスキー:「春の祭典」

というオイシイ出し物。ウキウキで会場入りしたんですが、残念なことに
ホールの音響がとっても酷い。まさにデッドなのです。響かないのです。
ステージ上では佐渡が派手に飛んだり跳ねたりとパフォーマンスしている
のですが、オーケストラの残響が届いてこないので、空回っている状態。
ちなみに、都響は第二群の若い編成でした。聞き手としても不完全燃焼。

帰宅後、むかむかの安定剤としてかけた曲は、バッハの無伴奏組曲。
深夜にもかかわらず、かなり大音量でアノ規則正しいテンポと残響を
聴いていたら、だんだん精神が落ち着いてきました。
不快を感じたら部屋に閉じこもってバッハをとにかく流し続ける。
うまく言えないけれど、バッハは外的にも内的にも作用してくれるんですよね。
私の隠し安定剤です。さっ、シゴトしよっ。



2002年07月30日(火)



 東京花火Day

理由あって今週は休日も研究室(4F)に缶詰モードなのですが、
午後8時過ぎに「ドドーン、ドーン」という音が遠くで轟いている。
ふと窓の外を見ると、ウワォッ、見えるのです。花火が。

同じ部屋の女の子を誘って、ふたりでベランダに出る。
右手に見えるのは隅田川の花火。中継ヘリも飛んでる。
やはり遠いので、ビルや木の後ろにちょこちょこと花火が見え隠れする程度。
それでも夏の風物詩を見られたことに、激しく感動するオンナふたり。

「ああっ!あっちも」と指さされて左手を見やると、なんと埼玉方面でも
花火が上がっているのが見える。こっち方面は建物も少ないので見渡しがいい。
確か今日は立川の昭和記念公園でも花火大会をやっているはず。
なんとまぁ、華やかで賑やかな東京の夜でしょう。

今年は花火をみることはないだろうな、と半ば諦めていたので素直に嬉しかった。
去年父が買ってくれた美しい浴衣、この夏は袖を通す機会があるのだろうか。
私は浴衣を着たときの、しとやかな心持ちを、とても気に入っている。



2002年07月27日(土)



 「恋とは堕ちるもの」

「恋とは、落とすものでも、落とされるものでもなく、堕ちるもの」

おぼろ豆腐と串焼き、それに冷酒が美味しい吉祥寺のダイニングで食事を
していたとき、不意に隣からそんなことを言われて、どきっとした。
どきっとしたのは、もちろん口説かれていると早合点したからとか
そういうことではない。反発しながらも、結構素直に「そだよな」と
同意を感じてしまったから。

計算高く恋愛戦に挑むのは、そ奴が既にどこかの時点で「恋に堕ちて」
しまった相手との位置関係を、確固たるものとする為だろうし、
「なんかカレに落とされちゃった」といぢらしく恋の罠にはまったように
公言するのも、ジブンがあっけなく堕ちてしまった事実をしおらしく隠蔽する
ためだろう。なんだかんだ言っても、恋は理屈じゃないらしい。

メンタルとは無関係な場所で、人は不意打ちを喰らうように恋に堕ちる。
支えるものもなく、加速度的に落下するので、そのスピードは凄まじい。
そして、自分でも操作不能になるらしい。ほほう。堕ちてみたいものです。


2002年07月26日(金)



 知らぬまにデビュゥ!?

先週末、一度だけ参加したワークショップで出会った編集者さんと食事した。
お久しぶり、という挨拶もそこそこに「はいっ」と手渡されたもの。
手帳サイズの小さく薄っぺらな冊子。タイトルは"Assemble le souffle"
日本語では「雲をあつめて」と言うらしい。

目次を開くと、なんとそこには私の作品があった。
5月頃に「何か書いてみませんか」と言われ、以前サイトに掲載した日常の断片を
適当に手直しして数編送ったことがあった。そのうちの2編が活字になっていた。
ものすごく忙しい時期だったので(というのは、もちろん言い訳なのだが)
全然読み直すこともないまま渡してしまった。今さらながら恥ずかしい。
おまけに、「200円で売っているんですよ」などとおっしゃる。
恥じ入っているのも束の間、「次回も掲載いたしますので」と畳みかけられる。

そして昨日、校正が入った原稿が送られてきた。
初回にだばっと送ったものから、また2編。「明日までお願いします」と言われ、
昨晩と今朝2回チェックして、家を出る前に送ってきた。

文章を書くのは楽しい。
常に私の生活の一部であったし、今後、きっと生きている限り言葉に頼るだろう。
でも、人様に(お金という代替物を介して)読んでいただくには、自信はない。
言葉を綴ることが、個人的快楽を越えたとき、私は自由に書けるか不安になる。


2002年07月24日(水)



 Tropic of capricorn (南回帰線)

雨に降られて帰ってきた。夏の雨はなまぬるく湿っぽい。
メールを開くと"Tropic of capricorn"というタイトルが表示された。
送り主は、懐かしい、というよりは、まだ懐かしいという領域にも達していない、
そのむかし、骨の髄まで馴染んでしまった友からだった。

いったい何処で何をしているのかもわからなかったのだが、
彼は「トップエンド」と呼ばれるオーストラリア最北の街、
ダーウィンにいた。昨日は南回帰線を越えたという。
オーストラリアに渡ってから住処を転々とし、今はツアーガイドをしているらしい。

「つい一週間前まではエアーズロックでツアーガイドをしていました。
めまぐるしく、本当に忙しい毎日でした。朝はサンライズツアー、
昼はトランスファー、そしてサンセットツアーに、スタートークツアー。
おかげで今ではすっかりスペシャリストです。星空も大分詳しくなったよ。」

なんだか眩暈がした。
自然の中に入っていくことと、人と接することと、太陽と人間を愛するひと。
現在の彼のシゴトは、彼の気質にむしろぴったりと合致している。
わたしがショックを受けてしまったのは、その域に彼が到達してしまったことだった。
彼の健康と人生と友愛を祝福するとともに、もうどれだけ手を伸ばしても届かない
場所に行ってしまったようで、正直なところ、なんだかすこし困惑している。


2002年07月23日(火)



 ナチュラルに目覚める朝

このところ、どんなに夜更かししても、朝、早く目覚めてしまう。
おそらく寝室が東向きのせいもあるのだろうけれど、朝日が容赦なく室内を熱するのです。
一応遮光カーテンなのですが、夏の強い日差しいは敵わぬ様子です。
「太陽光を浴びて目覚めるなんて、健康的ですばらしいじゃない」と友は言うけど、
未明にベットに入った朝など、3時間とかしか眠ってないわけで。。。

それでも、先日、ちょっといいことがありました。
4時半頃、まぶたを開けると、室内がやんわりとした不思議な青さに包まれていました。
パジャマのままベランダに出てみると、朝焼けの空の美しいこと。
うすい紫色と青色が線状に織りなされ、街並みが黒いシルエットになって
影のように浮かび上がっていました。静かで健やかで穏やかな朝の空。

夕焼けはよく見るけれど、徹夜でもしない限り朝焼けは見られないわけで。
神秘的とも言える朝の風景に見とれていたら、写真を撮るのも忘れていました。
いったいどれだけの人がこの朝焼けを見ることができたのだろう。
みなさんにもお見せしたかったです。



2002年07月22日(月)



 夏のアイテム

日本に帰ってきて、何がいちばん驚いたかというと、赤道直下のジャマイカ
よりも、灼熱地獄のN.Yマンハッタンよりも、ココ東京がダントツで暑いと
いうこと。というか、ココの暑さがいちばん鬱陶しいですね。息がくるしい。

夏の必須アイテムというと、わたしの場合、帽子とサングラス。
去年までは白のコットン地のを愛用していたのですが、黒を友に勧められました。
曰く「(化学系学科所属の)妹が実験したところ、紫外線を強く遮断するのは、
白より断然黒の方なんだって。」ということで、夏場に暑そうに見える黒は、
紫外線対策には役立っているそうな。今年は麻地の黒の帽子をかぶっています。

ちなみに、サングラスも99.9%紫外線カット(本当か?)のもの。
色は濃いめの赤なのですが、おめめの弱いわたしは、これがないと外には出られぬ。
肌の方はこの旅で、うっすら日焼けしてしまいました。さすがに、ね。

しかし、なぜに西洋人たちは、ああもして肌を焼きたがる。
ジャマイカの日差しは痛いくらい強烈なのに、ビーチでは真っ赤に腫れ上がるまで
肌をさらけ出し日焼けに励むのは、例外なく白人たち。数年後ソバカスだらけに
なるのも気にしないのかね。バカンスの証拠、ってのはわかるけど。
そんなに虚勢を張らなくても、ねぇ。

日焼けは夏アイテムから外したい。もちろん、わたしの場合、ですが。


2002年07月21日(日)



 バックステージ・メモ

・・・すみません。少し気絶しておりましたが、なんとか復活。
この激動の一週間、個人的な覚え書きとして、以下記述いたします。ハイ。

■July 4th <<東京公演>>
アメリカ独立記念日。生粋のアメリカ人リンダおばさんのTシャツの胸には
きらびやかな星条旗。東京二日目、外は灼熱地獄。オペラシティでの東京公演日。
「タケミツトオル・メモリアル・ホール」の客席からリハをのぞき見る。ナイスな音響。
本番中は表でパンフ配り、裏で音楽監督の指示通訳、トラックの積み込みなど
多種多様な雑用に身を粉にする。終演後、15台タクシーに出演者を次々と詰め込み
代々木へ搬送。バゲコレの手配、翌日のスケジュール確認など終え、西新宿のホテ
ルに帰ったのが深夜1時近く。スタッフで最上階のバーでビールをあおる。
疲労困憊。明日は5時半起き。

■July 5th <<京都公演>>
朝食も摂らず代々木の宿泊施設へ移動。寝坊している生徒たちを片っ端からモーニ
ングコールでたたき起こす。容赦なし。バスで東京駅へ移動、新幹線に押し込む。
京都は、悪質なビニルハウスの中にいるような高温多湿ぶり。みなで溶ける。
ノートルダム女子大学の講堂で本番。フル回転で冷房をつけてもらうが、出演者
は盆地特有の暑さにぐったり。しかしいつもと変わらぬ素晴らしい演奏ぶり。
終演後、ホテルの最上階"Top of Kyoto"という名の回転レストランでパーティ。
ずるずると低速で回る風景にやや気分が悪くなるが、最終日のどんちゃん騒ぎが
楽しい。たくさんのヒトと記念撮影とハグをする。素晴らしい体験に感謝。
パッキングを済まし、未明に就寝。

■July 6th HA'MON 本番
7時半発の新幹線に乗り込むべく、関西空港組のガイジンたちを京都駅までアテンド。
移動中は死んだように眠り、正午頃に帰宅。チェロを担いで中央線に戻る。
リハ→本番はさすがに緊張感があり、まずまずの演奏でステージを降りる。
カメラマンのREIくんが「こんなとこで何してんの?」と声をかけてくる。
スタッフのカイノショウさんも「こんなとこで何やってんの?」と同じ台詞。
ははは。そんな場違いでしょうか。・・・でしょうな、とチカラなく笑ってみる。
終演後、打ち上げをご遠慮して、ココロの友、yukkoとタケとで焼き肉を喰らう。
瀕死状態のアタシを自宅まで搬送してもらう。サンクス、友たちよ。

■July 7th <<三回忌>>
またしても4時起き。というか、ほとんど寝ていない。吉祥寺からリムジンバスで
羽田へ移動。今日は祖父の三回忌、ちなみに七夕さんやねぇ。移動中はとにかく眠る。
とどこおりなく法事が終わり、日本料理屋で宴が催される。さすがは日本海の幸。
うまし。うまし。たがしかし、本格的な夏の暑さに焼身寸前。祖父の夢をみる。
足を軽くひきずりながら歩く足音が背後から聞こえた。あれは祖父の歩く音だろう。
金縛りに遭う。金縛りとは、身体が眠っている状態で、精神が覚醒しているときに
起こる状態なのだろう。叫ぼうとしても声がでなかったが、すべて憶えている。

■July 8th <<自宅へ帰還>>
とにかく眠り続け、夕方の便で東京へ帰還。羽田でコーヒーをずるずると飲んでいた
ところに、友からメール。なんと今月末の名古屋でのライブが当たったという。
ひとり小躍り。日帰りの強攻策。前日に京都で学会発表をし終えたうちのセンセも
合流するという。なんだか激しい夏の予感。自宅に帰宅。部屋の内部は荒れ放題。

■July 9th <<ふたたびパッキング>>
実は11日からジャマイカ/N.Yへ行くのです。(笑)
実家からトランクを持ち帰り、3週間ホテル生活した小型トランクから荷物移動。
赤道直下の紫外線に恐れながら、ドラックストアで日用品のお買い物。
セール中のショップをのぞき、バカンス用のぴらぴらワンピもお買いあげ。
やや円高傾向にあるのが、せめてもの救い。

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・・・すんげぇ長い日記。"What for?"なんて言わないでね。
ということで、またしても旅に出ます。ので、しばらく不在にします。
もしかしたら、どこかでこっそり実況中継始めるかも(笑)。

夏始動。みなさまも体調にはお気をつけください。
チャーオ☆


2002年07月09日(火)



 さて、ツアー

タチの悪い温室の中を歩くような湿度の高さにへばりながらも、
東京/京都のファイナル・ツアーに同行してまいります。

「せめて、ニンゲンに、なりたーい。サル、だから」

と、真面目な日本語とうそぶいて教えてしまった悪戯好きな通訳。
顔を合わせると必ずリピートしてくれるカナダ少年よ、悪りぃ。

「あざぶじゅばーん(麻布十番)」

を色っぽく言ってくれるフランスの講師先生。
お願いだからその台詞はタクシーの中では言わないでおくれよ。

「超イケてる」

"Very Good"の日本語訳を、ほぼ全員に刷り込んでしまったぜ。
別に間違いではないでしょ?(笑)

・・・わたし、きっと来年は呼ばれないわね、こんな仕事してりゃ。
では、いってきまーす。



2002年07月04日(木)



 余韻

3週間めに突入したホテル生活も明日で終了。
移動遊園地さながら東京に移動します。

拘束時間が長かったり、食事にありつけなかったり、不平不満をぶちぶち
投げつけられたりもしたけれど、環境とスタッフの人柄に救われました。
この仕事を楽しいと思ってしまったアタクシ、今後の身の振り方も再考すべし。

昼間、ムシムシとうだる暑さの中、生徒たちは元気に芝生でサッカーに汗を流す。
弦楽器奏者ばかりなので、ま、足の一本や二本くらい故障しても問題ないか、
などと悠長に観戦+参戦する。休憩時間に激しく肉体を動かすと、すばらしく
ストレス解消になるという。そうだよね。ひねもす暗いホールに幽閉なんて
憂鬱よね、と深く同意してしまう。外はさんさんと太陽が降りそそいでおります。

今夜、京都の本番を終えた大友氏を待って集合写真を撮ることが決定し、
私も明朝東京に戻ることにした。明日の午前中に大学に戻れば大丈夫かな?
みんなと一緒にすごした、ぐにゃぐにゃ笑顔をキヨタネさんに撮ってもらお。

そろそろホテルの仮設オフィスの撤収です。
なんとまぁ、すっかり生活観が染み付いたこの空間。
しかし、ホテルのコテコテ中華料理はもう勘弁です。(苦笑)




2002年07月02日(火)
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