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2003年08月30日(土)   恋刃〜Lancet 〜(5)/五條瑛


革命シリーズの第4弾。
雑誌「小説推理」の連載5回目。
ついにサ様登場!?(先月、そろそろサ様が…と言っただけにびっくりでしたが)
バラ、血色のワイン、ブーゲンビリアに続いて、今回はソルデムを抱えての登場。
そして亮ちゃんに餌付け。
このミッションで、サ様が何をしたいのか未だに謎ですが、相変わらず神出鬼没。そして意外と貢くん(死語)で、やっぱりエロっちい。



あいかわらず両目は覆われたまま、亮司は闇の中にいた。このままずっと俺の目を隠し続けてくれればいいのに。亮司はぼんやりとそんなことを思う。そうすれば、他のものを見ないですむ。この手だけをみて、この声だけを聞いていればいいなら、人生はいまよりずっと楽だろう。(小説推理10月号p.282)



2003年08月26日(火)   十二国記シリーズ/小野不由美


読み終わったものを読み返すことの少ない私が、何度も何度も読み返しているシリーズがこれ。
文庫本、なぜか2冊ずつ(しかも講談社文庫、X文庫WHそれぞれ)、つまり計40冊(魔性の子を入れれば42冊)持ってます。
それを今回、シリーズ一気読み。
ああ、やっぱりいいです。

シリーズは以下のとおり。

魔性の子(新潮文庫)
月の影 影の海(講談社文庫版上下巻、WH版上下巻)
風の海 迷宮の岸(WH版上下巻)
東の海神 西の滄海
風の万里 黎明の空(講談社文庫版上下巻、WH版上下巻)
図南の翼
黄昏の岸 暁の天(WH版上下巻)
華胥の幽夢

十二国記シリーズは、十二の国と十二の王と十二の麒麟の話。
麒麟は天啓によって王を選び、王は仁道をもって国を治める。
麒麟は天意と民意の象徴であり、その慈悲によって王を補佐する。
王が道を誤り、民を虐げると麒麟は失道の病に罹り、国は傾き、やがて麒麟・王は身罷る。
という世界が舞台。

私は、初めて読んだシリーズが「魔性の子」だったためか、シリーズ中のいちおしキャラは泰麒蒿里(高里要)。これは1○年間不動。
なので当然、好きな話も「風の海 迷宮の岸」。次いで「黄昏の岸 暁の天」。
「風の海 迷宮の岸」は、王を選ぶまでの泰麒の苦悩する様子が痛いし、王を得た幸せな姿も、今後泰国に訪れる悲劇を思うと痛々しいです。その悲劇後の痛々しい姿が、「黄昏の岸 暁の天」の泰麒。
新刊で、泰麒と泰国が救われることを切に望むのみです。



「(略)王のそばにいることが嬉しくない麒麟はいないし、王と別れることが辛くない麒麟もいない。王と麒麟は離れてはならないものなのですから」(小野不由美:風の海 迷宮の岸,p.338,講談社)

「(略)麒麟が主と離れることは、とても不幸なことです。王がお側にいなければ生きていられないのですもの。国のため、民のためにあるのは、むしろ王です。私たちはその王のためにあります。王のものなんだもの……」(小野不由美:黄昏の岸 暁の天,p.334-345,講談社)




2003年08月20日(水)   グッドラック 戦闘妖精・雪風/神林長平


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突如、地球への侵攻を開始した未知の異星体ジャム。これに対峙すべく人類は実戦組織FAFをフェアリィ星に派遣、特殊戦第五飛行戦隊に所属する深井零もまた、戦術戦闘電子偵察機・雪風とともに熾烈な戦闘の日々を送っていた。だが、作戦行動中に被弾した雪風は、零を機外へと射出、自己のデータを最新鋭機へと転送する――もはや人間は必要ないと判断したかのように。(裏表紙より抜粋)
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わりと読み返さずに前へ前へ読み進むタイプの私には珍しく、何度も戻ったり、本を閉じて反芻したりしながら読みました。
<改>のときに感じた、零と雪風(人間と機械)の相克のような関係は、本当に読んでいて苦しく、不安にさせられました。ストーリィの中だけでなく、機械はいつか独自の意識や知性を持ち、人間は機械から必要とされなくなり、排除されていくのかもしれない、と感じたのです。
それが、今回は救われました。
<改>の終わり方から、どうしてもいい方向にこの関係は進まないだろうと思っていたから。
たとえ、機械が意識・知性を持つようになっても、それが人間を侵すものではないし、むしろ互いに補完(この言葉ってアレを連想しますよね)し合うことのできる関係になれるのだと…。
今回のラストシーンで零と雪風は出撃していくわけですが、その続きが、ジャムとの闘いの結末が読みたいです。切に続編を。



「雪風と深井大尉は、互いに自己の一部なのだ、ということ。互いに自分の手足であり、目なのよ。二つの、異なる世界認識用の情報処理システムを持っていて、互いにそれをサブシステムとして使うことができる、新種の複合生命体。これは人間ではないし、機械でもない。他者と認めつつ、それはまた自己の一部でもあると意識するのは、人間にとってはさほど珍しい現象ではない。高度な意識作用だわ。」(p.479-481より抜粋)


神林長平:グッドラック 戦闘妖精・雪風,p.479-481,早川書房.



2003年08月11日(月)   戦闘妖精・雪風<改>/神林長平


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南極大陸に突如出現した超空間通路によって、地球への侵攻を開始した未知の異星体<ジャム>。反撃を開始した人類は、<通路>の彼方に存在する惑星フェアリィに実戦組織FAFを派遣した。戦術戦闘電子偵察機・雪風とともに、孤独な戦いを続ける特殊戦の深井零。その任務は、味方を犠牲にしてでも敵の情報を持ち帰るという非情かつ冷徹なものだった――。(裏表紙より抜粋)
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積読解消月間(いつの間に…)につき、読み始めたのですが、こんなに面白いなら早く読んでおけばよかった。2年間も…。
私、あまり得意でないのでSFは読まないのですが、すごくよかったです。
人間と機械の垣根、進歩した機械が人間の想像・理解を凌駕するリアルさ、主人公・零の雪風への執着も、とても痛々しく、硬質。さっそくこの続編も読みます。



「(略)雪風は恋人なんかじゃない。娘だ。彼女は成長した。いつまでもおまえの言うなりになってはいないぞ。覚悟しておけ。おまえはいずれ、雪風にとって邪魔者になる。無理解で馬鹿な父親など無用だ」


神林長平:戦闘妖精・雪風<改>,p.277,早川書房.



2003年08月05日(火)   くらのかみ Zashikiwarashi/小野不由美

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「四人ゲーム」。まっくらな部屋の四隅に四人の人間が立ち、肩を順番に叩きながら部屋をぐるぐる回るゲームだ。とうぜん四人では成立しないはずのゲームを始めたところ、忽然と五人目が出現した! でもみんな最初からいたとしか思えない顔ぶればかり。――行者に祟られ座敷童子に守られているという古い豪壮な屋敷に、後継者選びのため親族一同が呼び集められたのだが、跡継ぎの資格をもつ者の食事にのみ毒が入れられる事件や、さまざまな怪異が続出。謎を解くべく急遽、少年探偵団が結成された。もちろんメンバーの中には座敷童子も紛れこんでいるのだが…。(箱裏より)
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久しぶりの小野先生の新刊。もう2ヶ月も前から予約しちゃってました。
この本、講談社ミステリーランドっていう新しい講談社のシリーズ。テーマは「かつて子どもだったあなたと少年少女のための“ミステリーランド”」。
なので、フォントも大きいし、漢字に読み仮名ふってあるし、文章は易しいし、挿絵あるしで、かなり子ども向けな印象です。なのに、執筆陣は大人向けミステリーを書かれるかなり豪華な方々。子ども向けにしては、ちょっとお値段も立派だし、装丁も子どもにはもったいない立派さ。
「かつて子どもだった」大人を強烈に意識してるかんじのシリーズですね。
ちなみに、今回がシリーズ第一回の配本。お金さえ続けば、全部買いたいくらい惹かれています。
さて、内容ですが…、さすが小野主上!
子ども向けの易しい文章で、あの屍鬼を書いた方とは一見思えないのですが、読んでみて「ああ。小野先生だ」と感じました。
読み終わって改めて気づく伏線の多さ、心理描写の巧さ、そして子ども向けと侮れないホラー&ミステリ色の濃さ。さすがです。これを読んで、少年少女(小学校中・高学年?)はどう感じるんでしょう。
私的には、三郎にいの大人な部分と子どもの部分がとっても気に入りましたけどね。(だけじゃないですが…)



「富は、よいことを与えてくれるし、悪いことを呼び寄せもする。気をつけていないと呑みこまれてしまう。得体がしれなくて、油断のならないお化けみたいなものだ。」


小野不由美:くらのかみ Zashikiwarashi,p.311-312,講談社.



2003年08月03日(日)   3way Waltz/五條瑛


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大型旅客機の墜落から16年後の夏――大惨事の背後に隠された策謀の存在が浮上した。折しも、事故に深く関わったと見られる北朝鮮の女工作員<由沙>が東京に出現し、にわかに防衛庁、米軍、北朝鮮、さらに正体不明の男たちが暗闘を始める。時を同じくして、墜落で母を亡くした遺児恭祐の身辺も激変した。新任保護司の異常な介入、不審なビル火災、ついには父浩太朗が何者かに殺された!狙われた亡き母涼子の遺品に隠されたものとは?外務省内の抗争も絡んだ三つ巴の諜報戦(スリーウェイ・ワルツ)を、最後まで踊り続けるのは誰だ?(裏表紙より抜粋)
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ごじょセンセのジャンルは、スパイものとかハードボイルドとかそんな括りに入るのだと思いますけど、家族について考えさせられるものが多いです。それと日本って国の甘さ。これもそう。
いろんなものを削ぎ落として、残るのっていったい何なんでしょうね。私にとって、それが国でないことは確かですけど、家族ではあるかもしれません。
さて、今回のヒーロー(すでにヒロインではないでしょう!)由沙姐さん。かっこいいです。あれだけ強く自分のすべきことを確信して、それに従って動けるなんて、すてきです。今回は、由沙姐さんのひとり勝ちと言ってもいいのでは。
ところで、ごじょセンセの鉱物シリーズの既読者にとって、おいしいシーンがかなりありました(むふ)。
はっきり名前は出てきませんでしたが、髪の長いアナリストって絶対に葉山さんだし、腹黒い新聞記者って洪さんだし、葉山さんがエディさんのダンヒルを忌々しそうにしているのはきっとサ様のせいだし。
おいしいですねー。



「あんたは、自分の生き方を自分で決めることができるのよ。(略)」


五條瑛:3way Waltz,p.327,祥伝社.






ゆそか