2003年02月28日(金) |
陰陽ノ京/渡瀬草一郎 |
++ 時は平安。陰陽道の名門に生まれたにも関わらず、家業である陰陽道を捨て、文章道を選んだ一人の青年がいた。青年の名は慶滋保胤。 保胤は大陰陽師・安倍晴明の依頼に応じて近頃都に現れた外法師の素性を調べ始める。だが、それはとてつもない怨念と呪いが渦巻く事件へ保胤を導くきっかけに過ぎなかった……!(表紙折返しより抜粋) ++ 第7回電撃ゲーム小説大賞の金賞受賞作です。 まぁ、簡単に言ってしまえばちょっと前にはやった陰陽師ものなんですが、それだけじゃないかんじが。 この中で、男を呪い殺そうとする女性がたくさん出てくるのですが、こわいです。髪の毛にまつやに塗って、それに火をつけて、人形に釘をカーンカーンと…。いつの時代も女性はこわいものです。 これからの注目は吉平くんと貴年くんの微妙な関係のゆくえですかね。
「人は、間違わずに済むようにはできていないぞ」 保胤は肯いた。 少しだけ、背負っていた物が軽くなったような気がした。
渡瀬草一郎:陰陽ノ京,p.345,角川書店.
2003年02月26日(水) |
クビツリハイスクール 戯言遣いの弟子/西尾維新 |
++ 「紫木一姫って生徒を学園から救い出すのが、今回のあたしのお仕事」 「救い出すって……まるで学園がその娘を拘禁しているみたいな言い方ですね」 人類最強の請負人、哀川潤から舞い込んだ奇妙な依頼に従って私立澄百合学園、またの名を≪首吊高校≫に潜入した「ぼく」こと“戯言遣い・いーちゃん”は恐るべき殺戮の嵐に巻き込まれる――。(裏表紙より抜粋) ++ 例の密室本企画のうちのひとつです。 今回は(も?)、いーちゃんが哀川さんの掌の上で踊らされちゃってます。しかも澄百合(女子高)の制服まで着せられちゃって…。でも、いーちゃんの女子高生スタイルはかなりかわいい(哀川さん談)らしいので、哀川さんったらさすがの人選&審美眼。 作中で亡くなってしまいましたが、≪闇突≫ちゃんとか≪策師≫ちゃんもすごいすてきキャラです。女子高出身者として、うなづけちゃう雰囲気もありでした。
「(前略)お前にしか頼めない用事があるんだけど。引き受けてくれるかな?」 「勿論です。お任せください。戯言遣いはあなたのために死にましょう」
西尾維新:クビツリハイスクール 戯言遣いの弟子,p.14,講談社.
2003年02月23日(日) |
クビシメロマンチスト 人間失格・零崎人識/西尾維新 |
++ 鴉の濡れ羽島で起こった密室殺人事件から二週間。京都、鹿鳴館大学。「ぼく」こと“戯言遣い・いーちゃん”が級友・葵井巫女子とその仲間たちと送る日常は、古都を震撼させる連続殺人鬼“人間失格・零崎人識”との出会いによって揺らめき脆く崩れ去っていく――。そして待ち受ける急転直下の衝撃。(裏表紙より抜粋) ++ 相変わらずわかりません、主人公いーちゃんの本名。 前作にも増して、無気力かつやるならやらねばないーちゃんですが、この人の過去ってどうなってるんでしょうね。人のひとりやふたり殺してそうですが、きっと殺しているんじゃなくて、周りの人間が死んでいっているだけなんでしょう。それもそれで怖いですけど。 それにしても人類最強の請負人哀川潤さんは、あれですね。妖怪シリーズの榎木津礼二郎とメルカトルシリーズのメルカトル鮎を足して、さらに戦闘力をアップさせた、みたいな。すごいです。 この巻の私的ツボは、いーちゃんのご隣人浅野みいこさん。いったい何着甚平をもってるんですか?
ぼくは最後に問うた。 お前はお前の存在を―― 「きみは人殺者としての自分の存在を許すのかい?」
西尾維新:クビシメロマンチスト 人間失格・零崎人識,p.321,講談社.
2003年02月22日(土) |
クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い/西尾維新 |
++ 絶海の孤島に隠れ棲む財閥令嬢が“科学・絵画・料理・占術・工学”、五人の「天才」女性を招待した瞬間、“孤島×密室×首なし死体”の連鎖がスタートする! 工学天才美少女、「青色サヴァン」こと玖渚友(♀)とその冴えない友人、「戯言遣い」いーちゃん(♂)は、「天才」の凶行を“証明終了”できるのか?(裏表紙より抜粋) ++ 第23回メフィスト賞受賞作です。 座談会本読んで、あのめちゃくちゃに言われていた投稿者が…、と思うと読まずにはいられなかったのです。う〜ん、講談社ノベルスってば商売上手。 このシリーズ、なんと作家さんもイラストレータさんも80年代生まれとか。若いですね。 そんな若い感覚バリバリ。言葉遣いとか、キャラクタとか。 どこまでついていけるか、と思いつつ読み始めたのですが、一気読み。わかったようなわからないようなウンチクも、玖渚ちゃんの使う専門用語も、全然じゃまになりませんでした。 もう出ているものは全て購入済みなので、早く読まなきゃです。 今後気になるのは、玖渚ちゃんといーちゃんの関係、いーちゃんの本名でしょうね。
「誰が一番最初に気付くか試したかったの。ちょっとした悪戯。理由なんてないわ」(略) 天才なんてたいしたことないのね。 イリアさんはそう思っているのかもしれない。 そしてこれからも、そう思い続けるのだろう。
西尾維新:クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い,pp.345-346,講談社.
2003年02月21日(金) |
玉響に散りて 封殺鬼シリーズ25/霜島ケイ |
++ 地上に破滅をもたらす凶星との戦いを目前に、本家に戻ったふたりの鬼たちだったが、弓生は依然として人間への不信感募らせる。一方で、神島、御影、秋川の三つの家も互いの溝を深めたまま、人々の絆はもはや失われたかに見えたその時、死の床にあった神島家当主、隆仁の最後の命令が下った。二人の鬼と本家の行く末までも大きく揺るがすこととなる、その決断とは!?鬼つかいの死は果たして人々に何をもたらすのか―――?(折返しより抜粋) ++ 半年ぶりの新刊、封殺鬼シリーズの25巻です。 隆仁氏、今まではあんな暴走しまくってる次期当主(息子)をなんで野放しに…、と思っていましたが、すごい人です。 自分の命をかけて死にかける使役鬼と内に妖気を溜め込む息子を救うんですから。 これで達彦も少しは目が覚めたでしょうか。 私的にはもっと、達彦と眞巳の対決が見たかったのですが、まぁ本家がまとまってくれればそれにこしたことはないです。 それにしても、この巻読んでやっとこのシリーズの主人公は聖じゃなく弓生なんだとわかりました。 鬼と言っても、はるか昔は人間だったふたり。長い生の中で多くの人と会い、死を見送って、人間以上に人間で、人間を知るふたり。なんかシリーズが終わりに近づいている感じがすごくしますが、ラストにはわだかまりなく笑っているのでしょうか…。
「(略)人間なんてもんは、しょせん自分にしかなれねえんだ」 別の生き方を選ぶことが困難であったとしても、その生き方しかなかったなどということは、ありえない。何も選ばなかったか、今の生き方を自分で選んでいたか、そのどちらかだ。
霜島ケイ:玉響に散りて 封殺鬼シリーズ25,p.161,小学館.
2003年02月06日(木) |
密室本 メフィスト巻末編集者座談会/講談社ノベルス編集部 |
雑誌メフィストで巻末に掲載されている、メフィスト賞の選考座談会をまとめたもの。 この本は非売品で、2002年に講談社ノベルス20周年ってことで発表された、メフィスト賞受賞者による“密室本”を5冊購入するともれなくプレゼントしていただけるものです。 雑誌メフィストを読まない私ですが、この座談会だけ立ち読みしようかと思ってます。おもしろいんだもん。 ついでにこの本、まだ読んでいないメフィスト賞受賞作を読みたくさせますね。
(前略)人間の愛憎なんて現実で充分、そうではなくて読んでいる間だけでもエンターテイメントの世界に連れていってくれるものがいいなあ。
講談社ノベルス編集部編:密室本 メフィスト巻末編集者座談会,p.13,講談社.
2003年02月04日(火) |
GOTH リストカット事件/乙一 |
予告どおり手を出してしまった乙一氏の連作短編ハードカヴァ。 この本は、 “このミス2003”をはじめ、いろんなとこで大絶賛されてますが、評判以上のおもしろさでした。 これまで読んだことのある作家さんの中で、短編の魅力は乙一氏がダントツですね。 “僕”とそのクラスメイト森野夜の周囲におこる猟奇的な事件。 女性バラバラ殺人事件の「暗黒系」、手首切断蒐集の「リストカット事件」、犬が噛み殺される「犬」、森野の過去「記憶」、棺桶に閉じ込め生き埋めにする「土」、殺された姉の声を求める「声」。 この本では、猟奇的な殺人事件を犯す人間は、生まれついてそういう性質をもっている、として描かれているのですが、各話に登場する犯人よりも、むしろ“僕”の方が怖いです。 淡々と語られ、騙られます。きっと最後まで展開は読めないでしょう。
愛情ではありません、これは執着というのですよ(「声」)
乙一:GOTH リストカット事件,p.319,角川書店.
2003年02月02日(日) |
QED 竹取伝説/高田崇史 |
あいかわらずこのシリーズはすごいですね。 好みが分かれるシリーズだと思うのですが、私は断然好き。おもしろいというよりも、“すごい”んです。高田氏の考察力というか、話の展開力というか…すごいです。 奥多摩のふたつの村に伝えられる笹姫様の祟り。ここでは竹が光り、それを見た者がハンドルをとられ事故死する。そして笹姫の手毬唄になぞらえたような殺人事件がおきる。 笹姫の祟りは本当にあるのか。笹姫とかぐや姫に共通するものは。笹姫と竹取物語の謎に迫る。 竹取物語の作者が×××で、かぐや姫モデルが××××、そんなこと考えたこともありませんでした。 海外の童話もですけど、童話やお伽噺っていうのは、その作品の作られた時代を反映しているもの。 つまり物語を深読みすることで、その時代がみえてくるわけです。でも、それなりの知識がないとできないわけですが…。 それにしても、このシリーズ、やたらカクテルが出てくるので、おいしいカクテルが飲みたくなりますね。
「(略)一つの価値観からだけ世界を見ていると、真実は闇の中に隠れてしまう――(中略)というよりも、価値観の数だけ世界が存在するということでしょうか(後略)」
高田崇史:QED 竹取伝説,p.276-277,講談社.
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