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2002年03月26日(火)   三月は深き紅の淵を

やはり、人間というのはフィクションを必要とする動物なんだ。まさに、その一点だけが人間と他の獣を隔てるものなのかもしれない。(p.55『待っている人々』)


「(前略)物語は物語自身のために存在するの。物語は一人で歩いていき、次々と新しい伝説のベールをまとっていくの。(後略)」(p.213『出雲夜想曲』)


――見つかった。
――何が?
――永遠が。
――海と解け合う。
――太陽が。(p.291『虹と雲と鳥と』)


「(前略)もしかするとあたしたちはまたどこかで会えるかもしれない――また別の世界で――別の三月の国で――」(p.428『回転木馬』)


恩田陸:三月は深き紅の淵を,講談社.



2002年03月23日(土)   オルガニスト

《ぼくは音楽になりたい》(略)
「君はそれを望むのか。本当にそれでいいのか」
《ja――ぼくはそれを望む。これほどぼくに似つかわしい運命があるだろうか。オルガニストになれないなら、人間に戻りたいとは思わない。ぼくは音楽に──オルガンになりたい》


山之口洋:オルガニスト,p.348,新潮社.



2002年03月19日(火)   メルカトルと美袋のための殺人


「……君には解ったのか」
「当然だよ。私はメルカトルだからね。(後略)」


麻耶雄嵩:メルカトルと美袋のための殺人,p.45,講談社.



2002年03月18日(月)   未完成


まずいことに、この国が未完に思えてきた。
工程を大幅にはしょった、実は未完成の船に乗り込んでしまっているような心地になってくる。
結局俺は感じたままを口にした。
朝香二尉は笑う。
「未完なら、一度母港に戻ってみるのもいいかも知れないね」
彼は言った。
「わたしは不良品でないことを祈りたい」   (抜粋)


古処誠二:未完成,p.300,講談社.



2002年03月17日(日)   少年達の密室


悔やんでもどうにもならないこと。
出口がないこと。
それらこそが、人間の感じる最大の苦痛──。


古処誠二:少年達の密室,p.215,講談社.



2002年03月16日(土)   UNKNOWN


「(前略)君たちがこうして、我が国の空を監視してくれているから、わたしたちは安心して生活できるんだね」(略)
「これなら怪獣が現れても平気だ」


古処誠二:UNKNOWN,p.67,講談社.



2002年03月15日(金)   アリソン


『じゃあ、もしもわたし達が勝ったら──』
『……君達が勝ったら?』
『一緒に、宝探しにこない?』


時雨沢恵一:アリソン,p.285-286,メディアワークス.




2002年03月14日(木)   貘夢奇談


「(前略)忘れられなくても苦しい。だが忘れても苦しい。……そして、その苦しさや悲しみを背負いながら、人は生き続けていくんだ。何故だかわかるか?」(略)
「そんな苦しさとか悲しさが、人の心を優しくしてくれるからだよ。(後略)」


椹野道流:貘夢奇談,p.285,講談社.



2002年03月13日(水)   ビートのディシプリン SIDE1[Exile]


「(前略)試練か。それは自分がなんなのか知らない者にも訪れるものなのかな?」
「生きていることが試練である以上、それを免れるものはこの世にはいないと思うね」


上遠野浩平:ビートのディシプリン SIDE1[Exile],p.15,メディアワークス.



2002年03月10日(日)   冬に来た依頼人


「そう。好きに生きて」
背筋がぞくぞくするような答えだった。


五條瑛:冬に来た依頼人,p.127,祥伝社.



2002年03月09日(土)   断鎖 《Escape》 R/EVOLUTION 1st Mision


愛の囁きにも似た甘さで男は言葉を続けた。
───革命を起こしてみないか。歪んだ愛情でがんじがらめになったこの国に、無垢の自由を、野性の新風を、そして新たなる緊張と誰も予想しえなかった未来を与えてやろうじゃないか。


五條瑛:断鎖 《Escape》 R/EVOLUTION 1st Mision,p.10,双葉社.



2002年03月08日(金)   夢の中の魚 Fish in the dream


「君の還る海は、故郷の海じゃない。もっと広い海だ。僕がいる海だ」


五條瑛:夢の中の魚 Fish in the dream,p.336,集英社.



2002年03月07日(木)   スリー・アゲーツ The Three Agates 三つの瑪瑙


「(前略)この石は人の血を要求しない石だよ。(中略)この人懐っこさと無垢で単純な色彩は、まるで親が子に向ける無償の愛情のようだとは思わないかね?」


五條瑛:スリー・アゲーツ The Three Agates,p.202,集英社.



2002年03月06日(水)   青き旗の元にて


瞳の奥で、風に翻る青い統一旗が見える。鮮やかなブルーで一つに塗り潰された朝鮮半島。そこは北も南もない祖国だ。


五條瑛:青き旗の元にて,p.96.
『日本推理作家協会 編:事件現場に行こう 最新ベスト・ミステリー カレイドスコープ編,光文社.』所収



2002年03月05日(火)   エナメルを塗った魂の比重 鏡稜子ときせかえ密室


これは……人生と一緒なんだ。
リセットもリスタートも無理。
僕たちは直進するだけなんだからさ。そうだろう?


佐藤友哉:エナメルを塗った魂の比重 鏡稜子ときせかえ密室,p.300,講談社.



2002年03月04日(月)   屍鬼(五)


「君が甦ったこと自体が、とても酷いことなんだよ」(略)
「けれども、生きるということは結局のところ、存続のための存続に奉仕するということなんだよ。ただ存続のためだけに存在する、その虚しさを抱えて、それでも諦めずにいるということなんだ」(略)
「あがく、ということ……」
「そう、ぼくは思う」


小野不由美:屍鬼(五),p.451,新潮社.



2002年03月03日(日)   屍鬼(四)


「(前略)わたしたちは屍鬼で、ここは狩り場だわ。人は獲物。それ以上の意味なんかない。(後略)」


小野不由美:屍鬼(四),p.343,新潮社.



2002年03月02日(土)   屍鬼(三)


「祝福された土地と、されない土地。楽園と流刑地―――世界がそうやって二分されると、流刑地の外は楽園だってことにならない?」


小野不由美:屍鬼(三),p.274,新潮社.



2002年03月01日(金)   スノウ・グッピー SNOW GUPPY


「(前略)そろそろ我々と───いや、わたしと───一緒に泥を被る覚悟を決めてもらえないだろうか。汚れた仕事をする人間がいなければ、グッピーは育たない。あれは、わたしたちの夢だったはずだ。(中略)今度こそ一緒に、歩いて欲しい」


五條瑛:スノウ・グッピー SNOW GUPPY,p.386,光文社.






ゆそか