A Will
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2013年07月25日(木)




郵さんが風邪を引いた。

LINEのスタンプが深刻さを壊して、
可愛くて、郵さんらしいな、と思う。


白熊のアイスが食べたいと言うから、
スーパーで買って行ったら、
郵さんはベッドで寝ていた。


長くて細い手足を器用に折り畳んで、
眼鏡をしたまま寝ていたから、
わたしを待っていたのだと、すぐに解った。


郵さんの顔が好きだ。
カリカリ細い手足も。
笑うと出来る皺も。
柔らかい癖毛も。

優しくて、けれど冷たくて、
わたしを好きでいてくれて、
けど、放っておいてくれて、

きっと、こんな素敵な人、他にいない。



郵さんは、目を覚まして、
身体中が痛いと言いながら、白熊アイスを食べた。

わたしは郵さんにぴったりくっついて、
郵さんがテンポ良く、
氷菓を掬って口に運ぶのを見ていた。


熱っぽい、と言っていた割りに、
郵さんはあんまり熱くなくて、わたしの手のほうが、ほかほかしていた気がする。



ごめんね、と郵さんは言って、また寝た。



こんな人、他にいない。


たとえば、わたしは彼のことが好きだけれど、
彼が郵さんより素敵だなんて思ったことはない。




寝ている郵さんの手を握った。
夢うつつで、その手を握り返される。


明日、郵さんの風邪が治りますように。



2013年07月02日(火)




以前、彼にある話をしたら、
時々、それをネタとして話を振ってくる。


無神経だなとは思っていたけれど、
他愛ないもののはずで、
笑って流せば、それで済むことでもある。


「また、されたらどうする?」



笑えば、済む。

笑って、困ったふりをして、解んないって。



けど、我慢ならなかった。
もう、耐えられなかった。


殺してもらう。

物騒な言葉に、彼の笑顔が途切れた。


「殺してって頼むわ」


解ってほしいわけじゃない。
慰めてほしかったわけでもない。

けど、こんな話をされて平常心でいられるほど、
強くもない。



伸びた彼の手を振り払う。

触らないで、と言った自分の声の低さに、
自分で驚いた。


怒るなよ。

彼の声と手が、まとわりつくようで、
それが嫌で、逃げるように背中を向けた。




怒ってなんかない。

悲しかったわけでも、腹が立ったわけでも。



だけど、彼の顔を見られない。



解ってる。

他愛ないもののはず。
傷付けようと意図したわけじゃない。


でも。いやだ。



笑えない。
笑って済ませる、なんて無理だ。


なんで、話したんだろう。
話したら、こうなるって解ってたのに。





仕事中、遠くへ行くことばかり考えてた。



遠くへ。出来るだけ遠くへ。
もう、誰も追いかけて来れないくらい遠く。



夢も見ないほど。


そんな場所、あったら良いのにな。


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