猫の足跡
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2003年09月13日(土) TOYOTAより日産が好きなのに…

 午前中は、アルカサルとカテドラルを見学。

 スペインの中庭はとても気持ちがいい。スペインの光と影、熱狂と憂鬱、喧騒と静寂…こういう相反する要素の『内面』に属する部分を構成している気がする。静かで落ち着いた中庭では、とろけるような暑さの中でも、池からそよぐ涼風を感じることができるし、くつろぐには一番だ。特にここ、セビージャのアルカサルは、草気に彩られた中庭がいくつもあって思索的な雰囲気がある。青池保子の『アルカサル−王城』では、この居城を愛したペドロ王はどちらかというと直情径行的情熱家に描かれているが、本当は思慮深い(悪く言えば暗い)タイプの人だったのではないかと思ったりもした。

 さて、スペインの観光名所に共通する特徴として、順路がないことが挙げられる。春にバルセロナを旅したときには、サグラダ・ファミリアの塔で酷い目に遭ったが、ここもご多分に漏れず順路がない。まあ、人それぞれ見たいところがあるだろうから、お好きなようにどうぞ…ってことなのだろう。今回は、塔の中を上がったり下がったりしたわけではないから、写真を撮ったりしながらそぞろ歩きを楽しむことができた。

 そんな中、今旅行での実質初ナンパに遭遇(うわ〜、私ら女として大丈夫か?)。相手はアルカサルの警備員のおっちゃん。「案内してあげるから、あとでご飯食べようよ…」。観光地の警備員なんて、日本人見慣れてて、ガードが甘いなんて知り尽くしてるだろうから、冷たく丁重にお断りする。あ、おっちゃんと書いたけど、腹が出てなかったから、きっと年下だろう。それにしても、今回は女二人旅行だからだろうけれど、現地の人と話をする機会が少なかった。それとも観光地中心に回ったから、日本人が珍しくないのかな?

 アルカサルを出ると、もう陽が高くなっていて、気温ががんがん上がり始めた。次の目的地は、目の前のカテドラル…すぐに建物に入ることができるから、安心。と思っていたのに、入り口がどこだかぜんぜん分からない。入り口だと思っていくと出口だったり、入り口と書いてあるけど、よく読むと団体入り口だったり…。結局ほとんどでかい建物を半周してしまった。

 カテドラルはただひたすらでっかい。パンフレットによれば世界第三位の大きさだとか。ちなみにこれより大きいのはロンドンのセント・ポール寺院とバチカンだそうで…。同じパンフによれば、セビージャのカテドラルは「後世の人がキ**イだと思うようなでっかいのを建てよう!」ってコンセプトで造られたのだそうだけれど、その伝で行くとバチカンやセント・ポールは「超キ**イ???」

 カテドラルの見学をほぼ終えて、脇にあるヒラルダの塔に登った。この塔はいわゆる普通の塔にあるような螺旋階段ではなく、螺旋スロープをゆっくり登る仕組みで珍しい。階段じゃないから、これまで登ったことのあるヨーロッパの他の塔に比べて楽に上までたどり着いた。塔の上からは、ホテルのプールや街並がよく見え、闘牛場が大きくて、ちょっとびっくりした。一度は見るべきなんだろうか…闘牛。

 午前の最後は買い物。有名な馬具屋さんで、今は鞄なども売っている…というセビージャ版エルメス?へ。乗馬人口の違いが一番の理由なのだろうけれど、ヨーロッパはどこの国でも乗馬用品がとても安い。何でも日本の1/3くらいの値段で買える。最近ではちっとも馬に乗ることはなくなってしまったけれど、会社の馬好きさんのためにグローブを購入。赤と黒が可愛かったので、2つ買ってしまった。余った方は自分用にして、また乗ろうかな、などとも思う。

 T嬢はキーホルダーを購入。どれにするかすごーく迷った挙句、2つ買ってしまったりするところが好きだ。そういうときに飾らないっていうか、心のまま正直に動くT嬢ってとても好ましい。「あ〜こういう顔する人に、悪人はいないよな〜」って言うような顔をする。クールビューティをめざすT嬢には悪いけれど、実はその熱さが最大の魅力じゃないかと思う。こんなところで愛の告白をしてもしょうがないけど(笑)。

 この店でおもしろいものを発見。金属でできたS字というか鉤型というか…鎹(かすがい)の片っ方が反対向きになったような金具なんだけれど、何に使っていいのかよく分からないものがある。とりあえず、女性用の実用アクセサリーっぽいことは分かったけれど、どうにも分からないので、店員のおねぇさんに、「どうやって使うの?」と聞いてみたら、「机などに引っ掛けて、鞄をぶら下げるのよ」と実演してくれた。はあ、なるほどね〜。その場は感心して帰ってきてしまったけれど、買っておけばよかった。結構便利かも。

 お次はロエベに行く。界隈は高級ショップの立ち並ぶいい感じの広場。
 仕事用の鞄を買うぞ〜って思ってカードを握り締めてきたのに、品数が少なくてちょっとがっかりだった。お店のお姉さんはすごく好感の持てる人だったけど…。いわゆる海外のブランドショップでよく見られるように日本人をバカにする素振りも無く、「黒くて大きい鞄が欲しいのだけど。書類を入れたりするような…」というと、あれこれ出してきてくれて。う〜む、残念。仕方ないが日本で買うか。

 昼時になったので、一度宿に戻ってチェックアウト。その後はユダヤ人街を散歩して昼食。定番のサラダとトルティージャに加えて、今日は「闘牛の尻尾の煮込み」に挑戦。もちろん、本当の闘牛ではなくて単なる「牛テールの煮込み」なんだろうけど。味はよかった。こってりとろとろ。すごく太りそうでイイ。狂牛病なんてすっかり忘れて骨の髄をすすってしまった。まあ、どうせ頭には穴がいっぱい空いてるからもういいでしょう。

 ユダヤ人街の土産物屋を散策。ヘレスのビネガーやオリーブオイルなどを購入。お土産屋さんのいたるところに購入を断念したT嬢のエプロンがあって目に付く。ああ〜買ってプレゼントしちゃおうかなぁ…と何度も思う。
 ところで、何故だか分からないがスペイン土産は重いものが多い。ワイン、オリーブの瓶詰め、オリーブオイル、ビネガー、タイル…。軽くてかさばらない、そして安くて喜ばれるいい土産は無いものだろうか?

 昼食後は川沿いを散歩。空港行きのバス乗り場を探すも、現地の人はあまり知らないようだった。幾人かに教えてもらった場所はそれぞれ異なっていて、しかも最終的にココかなというところも、かなり遠かったのであきらめた。あの、カルメンが働いていたと言うタバコ工場の脇らしい。最初、タバコ屋、タバコ屋っていうから、エスタンコでもあるのかと思ったら、工場のことだったとは…後で気が付いた。

 川沿いの船着場で、しばらく腹ごなしに休む。フランス人やドイツ人の観光客が川下りの船に乗るために、わらわらとやってくるのを観察したりする。欧州の観光客は圧倒的に中高年のリタイヤ組が中心だ。で、みんな夫婦仲良く、手をつないだりして歩いてくる。年をとっても愛情を確認しあう夫婦っていいと思う。日本の中高年夫婦に愛情がないって訳じゃないんだろうけれど、やっぱり表現が足りない気がする。口に出したり、行動で示したりしないと伝わらないものも多いんだけどな。

 宿に戻り、荷物を受け取って、タクシーを呼んでもらう。シエスタの時間だったので、なかなかタクシーが来ない。そして、やってきたタクシーは、乗った時点でタクシーのメーターに2EUROほど表示が…。う〜む。やばいかな〜と思って、運転手に「なんで料金が2euroかかってるの?」と聞いたら、「これは迎車料金なんだ、ホテルから迎えにきてくれって連絡があったから、そこまでの料金だよ」と説明してくれるまでは良かったが、その後、ずーっと、こっちが「vale、vale!もう、わかったから!)」と言っても収まらずに、ずっと愚痴っぽくしゃべり続けるのには閉口だった。半分以上というか、9割は理解できなかったけど、途中からタクシー会社の悪口だか政府の悪口だかになった段階で「もう、勘弁してくれ〜」という感じ。まあ、彼にしてみりゃ、シエスタの時間だというのに、わざわざ遠くから呼び出されて東洋の金持ち小猿2匹を文句も言わず乗せてやってるのに、文句言われる筋合いはないってか〜。


 さて、そんなこんなであっという間にセビージャの空港に到着。行きに見た印象とはまったく違い、初めて訪れる空港みたいな気がする。う〜ん、よっぽど、あの時はアタマがイッてたんだろうなぁ…。とちょっと反省。

 バレンシアへの空の旅、お供になるのは、まさか!といいたくなるような小さいプロペラ機(しかも40人乗りくらいの飛行機に、乗客は7〜8人…)。こんなのベトナムで乗って以来だわ〜。うひゃー。

 今日も空は良く晴れて、飛行機からは地上が良く見える。隣で爆睡しているT嬢を横目で見ながら、そういえばT嬢は「アンダルシアの空を携帯カメラで撮影して、待ち受け画面にする」といいつつ、いつも外出時に携帯を忘れ、結局アンダルシアの空は撮影できなかったなぁ、と残念に思ったりする。まあ、バレンシアでも青い空は満喫できるだろうけれど…。

 空から見るスペインの大地は壮観だ。アンダルシアは茶色くてだだっぴろい。そして、緑の山を越えて風景が変わり、地中海に向かうとバレンシアが近いのだろう、飛行機が高度を落として着陸態勢に入った。バレンシアのマニセス空港付近は高級住宅街なのだろうか?一戸建ての広い敷地の家ばかりが目に付く。なんとみんなプールつきだ!!!中にはテニスコートやバスケットコート付きもある!そんなに高くないんだろうか、だとしたら別荘に買いたいなぁ。宝くじ、当たらないかしら…。

 空港は、予想通り小さくて閑散としていてプロペラ機がよく似合う。この空港からバレンシアの選手達は各地に転戦するんだわ〜、しょぼーい、と思ったら、それをわざわざジャンボに乗って極東から観に来ている自分が悲しくも可愛くなって、一人で笑ってしまった。ああ、あたしってバカ。

 空港からタクシーに乗って、バレンシア唯一の(でも何故か3軒もある)デパート、エル・コルテ・イングレスで降りる。ここは夜10時まで開いているから、クロークに荷物を預けておけば、ご飯食べたり買い物したりゆっくりできるはずなのだ(あ〜、あたしって天才!)。案の定、地下にクロークがあって、荷物を預かってくれた。

 身軽になって、まずやることは…と、向かいにあるバレンシアのオフィシャルショップへ駆け込んだ。弊店まで約40分。ダッシュでバレンシアの新ユニ(自分用にアイマールのノンブレ(背番号)入り。姫のお嬢用にバラハのノンブレ入り)を購入。白地に両袖だけが黒くてまるでパンダみたいだし、胸にはでっかく赤字で「TOYOTA」と書かれているし、全く気に入らないデザインなのに、結局買ってしまった。お父様ごめんなさい、トヨタの応援しているわけではないのです…。

 地下でノンブレをアイロンプリントしてもらう間に、明日の試合のチケットも併せて購入。最初は中上段の席を案内されたが、せっかくT嬢もいることだし、できるだけ良い席で見たかったので、「もっといい席はない?」とお姉さんにお願いすると、「ちょっと端だけど」と言いながらもかなり良いカテゴリの席を探してくれた。メスタージャは傾斜があって、上のほうからでも見やすいスタジアムで、前回はかなり高い位置から見ても十分楽しめたけど、良い席ならもっといいだろうな〜とうれしくなる。チケット代45EURO。

 ショップを出て、夕暮れの街をラ・ロンハに向かった。世界遺産だそうだけど、ありがたみがちっともわからない建物だ。昔、絹の交易所だったそうだから、建築物としてよりも歴史性を重視されているのだろう。釈然としない感じで歩いていると、中の案内人のおじさんが親切にパンフを配りにきてくれた。単に観光客だから配っておけ、っていう対応ではなくて「わざわざ見に来てくれてありがとう、ここはいいところだろう!我が街を誇りに思ってるんだ」という感じで持ってきてくれる。バレンシアの人って、そういうところが観光客ずれしていなくて好きだ。

 ラ・ロンハを出たら、日が暮れていた。旅の疲れが出る時期なのか、二人とも食欲があまりなかったので、今日は軽いご飯にしようと話していたら、市庁舎前広場からレイナ広場への間の目抜き通りにピンチョスの店発見。立ち食いだけど、小洒落たいい感じ。まだ新しい店のようで(春には無かった)、地元の人も興味深げにのぞいて行く。ガラス張りの窓際で赤ワイン片手に、美味しそうにピンチョスを食べていると、いいサクラになるようで、時々覗き込む人と目が合ってしまったりして可笑しい。美女2人が身体を張って宣伝したせいかどうかは知らないが、次から次へと人が入ってくる。ワイン2杯か3杯と、ピンチョスで適当に食べて、一人1000円くらい。安くて美味しいし、とっても良かった。上のフロアはちゃんとしたレストランみたいだったので、そっちもいつか行ってみたいなと思う。

 イングレスへ戻り、弊店間際のスーパーでお土産のワインを購入。結局、迷った挙句にK嬢向けに2本(一緒に飲む分と家で楽しんでもらう分)+実家向け1本購入。8EUROほどのバレンシアのワインと16EUROほどのリオハのグラン・レセルバ。お味はどんなものでしょう?

 バレンシアでの宿は、春にも泊まったホテル。前回と違い「rr」の音をちゃんと発音できたようで、聞き返されずにタクシーに乗ることが出来た。スペイン語の学習成果がちょっとは出たかな?と喜んだ。T嬢いわく「R音の話って誇張しすぎだと思ってたけど、こっちの人って、本当にすごい巻き舌でびっくりした」だそうで。…だから、いまだにルフェテ選手の名前も。バラハ選手のファーストネームもちゃんと呼べないのよぉ。くうううっ(涙)。スペイン語マスターへの道のりは遠い。

 このホテルは、本当にリーズナブルだ。いままでの宿の半分以下の値段で、このサービス。過不足の無いビジネスライクなところも好きだ。元病院だけあって全く情緒は無いけれど。これからも、ひいきにする予定。


2003年09月12日(金) 馬も人もでか尻なのだ。

 今日はヘレス観光。

 朝、国鉄駅までタクシーで出かけ、そこからアンダルシア・エクスプレスでヘレス・デ・ラ・フロンテーラに向かう。駅では、J嬢ご令息に頼まれたAVEの写真を撮ることが出来た。本当だったら、マドリーからここまでの間に乗るはずだったのが予定変更になってあきらめていた訳だから、良かった。

 電車は約1時間少々の旅だけれど、途中の風景はもう飽きるほど見たアンダルシアの草原。ずっとただそれだけ…本当に何も見るものがない。スペインって、土地が余っているんだなあとつくづくうらやましく思う(まあ、この乾ききった土地をもらってもしょうがないのかもしれないが)。

 ヘレスの駅を出ると、まだ朝方だけに一瞬さわやかだったが、あっという間にがんがん気温が上がっていった。駅から、旧市街までのバスに乗ろうとするが、バス停が分からない。う〜ん。方角的にはわかるんだけど、なんで、バス停が無いんだろう。地元の人に聞くと、「あっちだけど、歩いて行け」という。

 誰に聞いてもそういう答えだったのであきらめて歩くと、確かに、2〜3分で市内バスが集中している広場に到着し、そこから10分くらいで旧市街の広場に到着した(このあたりで、T嬢は地図もほとんど見ない私のヤマ感歩きにあきれている様子だった。ごめんね、でも嗅覚の方が正確なんだもん、たいていの場合)。こっちのバスは、ピンク色の車体に青い模様がちりばめられた、派手なカラーリングで、相鉄線で昔走っていたイケダマスオ号に似ている(ローカルネタだなあ)。

 旧市街のメインにある広場にはシェリーの黒い樽が積み上げられていて、ちょっとわくわくする。いちばんいい場所にまず広場をドンと作ってしまうヨーロッパの街づくりって、本当にいいなぁと思う。それだけで街に余裕ができるんだけどなあ。

 広場のツーリストインフォメーションで、王立馬術学校のショー日程をたずねると、今日はショーはないけれど練習が見られるとのこと。地図をもらって、しばらく歩く。この地図、建物がイラストで示されていてとっても分かりやすい◎。

 気温が更にがんがん上がる中を歩くこと10分程度。たどりついた乗馬学校は、そっけないが観光名所らしく、お客さんがちらほらと見えていた。入場券を買って入ると、普段ショーで使っていると思われる屋内馬場に案内された。座っていると観光案内アンケートの人がやってきて、アンケートをとった後「英語ツアー、スペイン語ツアー、ドイツ語ツアー、フランス語ツアーがありますが、どれに参加しますか?」と教えてくれた。ツアーが始まるまで、馬場のレッスンを見る。

 馬は、みんなすばらしい! サラブレッドとは全く違う、完成された乗馬馬の美しさを見せてくれた。柔らかそうな筋肉に被われ、すばらしく均整の取れた馬体には、本当にほれぼれとしてしまう。優美に、かつ力強くたわめられた首や、長い尾やたてがみも、太い胴も、立派としかいいようのない横幅のある尻も、王侯貴族の騎乗姿を描いた絵で見る馬のようで、馬に対する古典的な誉め言葉を体現している。はあ…としばしため息。

 一頭ずつ各自練習を行った後。本番さながらのリハーサルが始まった。音楽に合わせて隊列を組んだ人馬が演技を見せてくれる。このころになると、こちらも目が慣れてきて、馬の個性が見えてくる。
 真っ白な先導馬とジダン似(髪が…)の騎手は、さすがリーダー、ベテランの貫禄だった。練習なのに、すげーとため息が出るような一分の乱れもない動き。私は素人だけど、それでも一目でわかる段違いの凄さだ。一方、隊列の真中あたり、グレーの葦毛と乗り手は、ともにまだまだ若さ全開。すばらしい才能の片鱗は感じられるんだけれど、懸命さが少々空回りしてしまうところが、無性にほほえましい。ちゃかついている馬をうまいことなだめながらも、リハーサル最後の決め!でポジションを間違えてしまい、「あちゃーっ!」って顔をした騎手なんて、抱きしめたいわっ。
 
 英語ツアーは12時からだ、と教えてくれたのはいいけれど、結局始まったのは13時ごろだったのはスペインらしいご愛嬌。馬房や道具置き場に案内され、オリンピックの馬場馬術に出た馬とかを見せてもらって解散。これで7EUROは安いなぁ。

 その後、外の馬具屋でお買い物をして、博物館を見学。博物館でバレンシアーノという馬(もしくは馬の種類?)に出会って喜ぶ馬鹿1名。
 博物館をさっと見て、次は、ボデガに寄るもシエスタで見学はできず、ショップのみをちら見し、最後は隣の高級ホテルのカフェでお昼ごはん。いやー、サングリアは絶妙にうまいし、パスタ(なぜサラダの欄にあったんだろう?パスタ入りサラダだと思って注文したのに、ふつうのパスタが出てきた)も、サンドイッチも最高だし、カマレロはかっちょいいし。次回はここに泊まろうね、とT嬢と固く約束。

 ヘレスでは、現地在住者と見られるおばちゃん以外は、まったく日本人には出会わなかったけれど、すごく良いリゾート地って感じだ。F1ドライバーが好んでヘレスでテストするのも訳はない(笑)。次はここに滞在型でくるぞ〜。

 のんびりした後は、シエスタで人っ子一人見当たらないヘレスの町をふらふらと駅に向かう。午後3時過ぎで気温は40度…。嘘だと思いたいけど、町じゅういたるところにある温度計の全てが狂っているとしたら、それも暑さのせいだろうから、どっちでも同じだな…と錯乱気味に思う。てれてれ歩いて、ついでにスーパーで水とノート(サビオラ君が表紙だったので思わず購入。暑さで頭がおかしかったに違いない)を買ったところで時計を見たら、電車の時間にぎりぎりだということが判明。そこから急に早足で大汗かきながら駅に向かい、なんとか間に合ったものの、どっと疲れて帰りの電車では無言になってしまった私たち。めずらしく座れなかったし…。やっぱり、シエスタの時間帯にムリするものじゃないなと悟る。
 (旅行前、『もういい年齢だし、がしがし歩き回って疲れ果てるのはやめよう』とか言ってたねぇ…私たち)

 ホテルに戻って、屋上のプールで涼む。小さいお風呂のようなプールだけれど、水が冷たくて、本当に気持ちがいい。生き返るってのは、こんな感じだろう。旧市街中心のホテル屋上で、ヒラルダの塔を見ながら水遊びするのは、究極の贅沢だ…。

 プールで元気を取り戻したので、服を着替えて夕食に出る。ショッピングの中心街を眺めて歩き、こわれかけたサンダルの替わりに、夏物セール中の靴屋で派手派手しいブルーと黄色の縞模様のサンダルを購入。比較的足が大きくて幅広の私は、いつも靴屋で嫌な思いをするのだけれど、ここは大きい靴が多くてうれしい。T嬢は会社で配るおみやげ物を物色するも、あまり良いものにあたらない模様。安くて喜ばれるお土産探しって結構手間だし難しい。
 スペインで現在大人気のブランド『TOUS』には可愛い鞄やアクセサリーがたくさんあった。例によってショッピングが目的ではないけど、ちょっと欲しくなってしまった。K嬢とか好きそうだなあ…と思って、買おうかとも考えたけど、予算が許さなかった。次回ね(おいッ、また行くつもり?)♪

 夕食は、結局カテドラル近くのテラスレストランにした。いかにも観光客向けの店だけれど、選択としてはそう悪くはなかった(近隣全て満席で、運良く空いた席だったし)。冷えたカバという選択は、さらに正解。サラダ、トルティージャ(スペインオムレツ)、魚介のフリータス(フライ盛り合わせ)とも良く合った。それにしても…。この量はなんとかならないものか…。一人分の盛り合わせが、いわしサイズの魚6匹。アジサイズ4匹。イカリング10個って…。魚フライは、ふっくら揚がっていておいしいのだけれど、日本の魚フライのつもりで、骨ごと食べられるんだと思ったら大間違い。口中に骨が刺さって大変だった。食べちゃいけないんだったら、骨は取ってくれ〜って、そこまでスペイン人に期待しちゃ駄目か(笑)。

 こちらのサラダは、ドレッシングがかかっておらず、酢(北の方ではワインビネガー、こっちはヘレスのビネガー)とオリーブオイル、塩コショウの壜が出されて、自分で好みに応じて調味する仕組みになっている。あっさり系が好きな私は、いつも「お酢はたっぷり目、油は控えめ」にするのだが、どうしてもちょっとすっぱくなってしまう。今回はT嬢に調味してもらったのだけど、これがまた絶品。なんでこんなに違うのだろうか。好きだからって、攻めすぎちゃいけないのね…。

 食後のデザートについては、大きすぎて思い出したくないので、省略。T嬢はマヌー(英語読みではマグナム)たらいう、でっかい棒アイス(笑)。私はココナツアイス。食べても、食べてもまだ食べ終わらない…。食べてる間にどんどんのびてしまった出前そばのようだ。   


2003年09月11日(木) 同じカスタネットのはずなのに…

 朝、パラドールを出てバス停までタクシーで向かったつもりなのに、タクシーはセビージャに向かっている気配。慌てて途中で制してバス停へ。バスはたったの2EUROでセビージャへ行った。安いっ!旧共産圏みたいだ(まあ、あれは市電初乗り1円とかだったからなぁ)。ただし、安さには理由があって、揺れのためトランクがごろごろ車内をかけめぐってしまったのは、ちょいとお笑いだった。

 至極順調にセビージャのバスターミナルに到着。荷物を預け、再びバスに乗ってコルドバへ行くことにする。待ち時間で、セビージャのスペイン広場を散歩。回廊では、ヒターノ(ジプシー)がカスタネットを巧みに操ってぜんまい仕掛けの牛のぬいぐるみを売っている。カスタネットができないと意味無いのに、その牛が欲しくてしょうがなくなってしまう。余裕を持っていたはずなのに、半円形の回廊をふらふらしていたら、すごい時間になってしまい、最後はバスターミナルまで小走り。私らってば(苦笑)。多分、私が各都市のモニュメントがあるのをみて、バレンシア(アルファベット順だから、Vは端っこ)まで見たいと思ってしまったせいでしょう。ごめんよ〜T嬢(→とか言いつつ、「バスに間に合わないっ!!!」って容赦なく走らせる私ってば鬼畜)。

 ぎりぎりで乗りこんだバスはなかなか快適だった。本当だったら昨日行ってたはずなのに…という気持ちは棚上げにして、しばし旅を楽しむ。風景は一面荒涼たるアンダルシアの農地?荒地?(どっちなんだろう???)。う〜んっ、堪能(ってか、もういいよ、って気分。隣でT嬢は気持ち良さそうに寝ていた)。グァダルキビル川を渡り、ローマの塔を横目にして街に入ると、ようやく「ああ、まともな観光になったなあ」と感慨深い気持ちに浸ることが出来た。

 バスターミナルからはまず旧市街にバスで入り、アルカサルへ。入り口が分からずにぐるぐる壁をまわる。それにしても暑いっ!!!!市内そこらじゅうにある温度計は、気が付くと38度だの何だのと理解不能な気温を示している。空は青すぎるし(果たして雲って単語はスペイン語にあるんだろうか?)、日差しは強すぎるし。この私が、日差しを避けて日陰を選んで歩くなんて!

 アルカサル内部は案内表示が良く分からないので、とりあえずなめて進む感じ。この辺はツアーで行けば色々説明してくれていいんだけど…。アラブ風呂も、単なるほらあなって印象だしねぇ(教養がないのがばれちゃうね、笑)。その後、庭園でしばらく休息。こういうのができるのは個人旅行ならではなんだけど、両方を満たすには、私のスペイン語上達(&ツアコン力アップ)しかないのかしら。

 庭園は、噴水が涼しそうで良いけれど、それ以外はとにかく暑い。暑い。暑い!!!!日本では古臭いような黒くてごついサングラスをしていても、普通以上に空が青く美しく見えてしまうこの晴天って!

 アルカサルを出て、日陰を求めながらさまよい歩き、昼ご飯にたどり着く。T嬢がガイドブックで探してくれたレストランでお昼の定食(っていうかプリフィクスのランチね。昼定食とプリフィクスのランチ…内容は同じでもなんでこんなに字面の印象が違うんだろう?)。アンダルシア地方の名物ガスパッチョ、肉団子のメニューと、トマトスープ、メルルーサのメニューをシェアする。ちょっと良さげなレストランだけあって、赤ワインがおいしいし、サラダが別途になっていてうれしい。ガイドブックに載ってるだけあって(または観光地にあるだけあって)まわりは観光客ばかりだけど。…ってか、地元民はこんな暑さの中、出歩かないんだな、きっと。

 食後はゆっくり歩いて、その後メスキータ(旧イスラムモスク)へ。赤と白の石で作られたアーチが無限に連なっているのを見て、ちょっと伏見稲荷を思いだしながら、神の領域を堪能。それにしても、イスラム建築の彫刻技術はすごい。宝物殿にあるキリスト教のきんぴか秘宝が、成金の遠吠えに見えてしまう。

 その後散歩したユダヤ人街の「花の小道」は大したことが無かった。暑さのせいか、ろくに花も無いし、観光客がうろうろしているだけ。コルドバの観光名所なんだけどね。行き止まりになった噴水のまわりに団体の日本人がわらわらと固まっているのは、ちょっと醜悪。まあ、ツアーだから、一番キレイなところをスポット的に見に行くのはしょうがないけど。この通りにのみ日本人観光客が集中するらしく、みやげ物店に日本語の看板が並ぶ。他の所ではまるで相手にされていないだけに、「ああ、ツアーでやってきて、この一角だけでちょっとフリーになるんだろうなぁ」と思う。街をふらふらと歩くのは楽しいのにもったいない(時間と体力が必要だけど)。

 みやげ物店で、T嬢にフラメンコで良く使う赤と黒の水玉模様のエプロンを薦め、T嬢も気にいって購入しようとした。おばちゃんは「5euro(cinco euro)」と確かに言ったのに、レジで「15euro(quince euro)」と言われて断念。なんで〜?可愛いエプロンだったのに。あれで裸エプロンするT嬢はさぞ見モノだろうに…ナイスバディTシャツの次の持ちネタにして欲しかった(いや、誉めてるんだってば!ホント!)。

 そうこうしている間にいい時間。タクシーに乗りこんで18時のバスにやっと間に合わせる。タクシーのおっさんは、「バスターミナルに行ってくれ」という私の言葉に「6時のバスに乗るの?じゃ、急ごうねぇ」とのたまい、アクセルを踏み込む。いや、急がなくっても、あなたのその腕前なら十分間に合うと思うんですが…。話題をそらそうと「暑いですねぇ、毎日こんななの?」と聞くと、アクセルはそのまま、後ろを振り返り「毎日だよ!、6月から9月いっぱいずっとこうさ」というすばらしいお返事をいただく。ひえ〜っ。っていうより、前向いてね、おじさん。

 帰りのバスでは爆睡。気が付いたらセビージャだった。
 ホテルは旧市街のど真中。由緒ある建物で、高級ホテルだけあってフロントがしっかりしている。チェックインの時に、市内の地図や観光バスの案内、フラメンコのタブラオ(ショーを見せる店)案内をしてくれた。偶然にもタブラオは私がいきたいと思っていた『エル・アレナル』だったので、その場で予約してもらう。タブラオは夕食付きで59EURO。高いけれど、まあ、一度は行かないと。

 ショーは、早めの9時からの回にしたけれど、一応、日暮れてからの外出となる。旧市街だからできればタクシー利用のほうが良いのだろうが、フロントで歩いて2〜3分だと言われたので、歩いていく。ほとんど川に近いところに店はあった。それにしてもまだまだ暑い。

 店は狭い穴蔵のようで席は12卓くらい。ドイツ人らしき8人グループの他はすべて個人観光客。地元風の人は見られないが、まあ客層的には悪くない感じに思える。席は、正面真中よりちょっと奥のなかなか見やすいところ。食事はいくつかアンダルシア料理が並ぶ中から、ガスパチョと魚のソテーを注文する。暑くて、冷たいものとあっさりしたものが食べたくなってしまった。T嬢も同様だった模様。冷えたシェリーが注がれて、やがてステージが始まったが、まわりはカマレロが忙しく立ちまわっていて、なんだか落ち着かない。

 はじめにギターの男性2名とカンテ男女各1名の4人がステージに現れ、2名の若いダンサーが白い衣装で踊り始める。二人とも細身ですっきりした顔立ち。一人はヒターノ系、一人は北アフリカの血が入っていると思われるエキゾチックな美人。腕も、ふくらはぎも鍛えあげられて、それでいてしなやかで美しい。
 カンテ(歌)は、この店の売りである泣きの入った泥くさい感じで、すごく良い。あっという間にひきこまれてしまい、もう、あとは食事などろくに入らない。最初気になったカマレロも、視界の端に消えてしまった。

 次に現れたのはもうちょっとベテランの女性ダンサー2名。こちらは華やかな感じ。次は男性ダンサー。力強い手足の動きと、正確なステップに見惚れるも、前のドイツ人観光客が、笑いモノにしていて、カマレロに怒られたりちょっと興ざめ。まあ、笑う気持ちもわからないでもないけれど…。目の前に松崎しげるがやってきて、遠い目をしながら胸をはだけて足腰キメキメで踊ってるようなものだもの。でも、ちゃんと見てれば格好いいのに、すごいのに!

 先の女性ダンサーが4人組で出てきて一人ずつ踊った後は、土管のような腹と胸をゆらしながら、黒いシンプルなドレス…といえば聞こえは良いが、単なるアッパッパーともいえる服を身に付けたおばちゃんがステージに上がった。当然のことながら、歌は腹から絞りだす声で迫力があってすごい。で、このおばちゃん、ただの歌い手かと思ってたら、実はダンサーで、歌が終わったら踊り始めた。これが、まあ、なんというか、「フラメンコは体じゃなくて、魂で踊るんだ」と言われるとおり、ステージから踊りの心が伝わってくるようなダンス。靴音まで何もかもすばらしかった。

 最後は、ダンサーが入れ替わり立ち変わり出てきて、盛り上がって終わる。出口で、袖から戻ってきた若いダンサーとすれちがったので、「とても印象的だった」と伝えると顔をほころばせて「うれしい、ありがとう」と返してくれた。えへへ〜。

 あっという間の1時間30分。いわゆる「フラメンコ」のイメージを変えてくれる体験だった。やはり、本物を見なくちゃね〜と、思う。ただ、次に行くとしたら、絶対ドリンクのみにしよう。料理はおいしかったけど、ろくに食べる間もなかったから。

 余韻に浸りながら、部屋まで歩いて帰る。市内はまだまだ観光客が多く出ていて、11時でも宵のうちという感じで危険は感じなかった。ホテルの部屋は、赤系でまとめられた可愛い内装。通り側(スペインではこっちが良い)でバルコニーの付いた良い感じ。ただ…、最初冷えすぎていたエアコンが、途中から妙に効かなくなってちょいと困った。一応、少しは効いているのでフロント呼んで直してもらうのもな〜というレベルで、結局放置したのだけれど、2泊目などT嬢は暑くてあまり眠れなかった模様。

 寝る前に、屋上のプールを偵察に行くと、そこはBARになっていた。ライトアップされたカテドラルとヒラルダの塔を見ながら屋上で飲む酒は気持ち良さそうだったけど、明日に備えて就寝。


2003年09月10日(水) 怒りのスペイン入国

 5時起きして、シャルル・ド・ゴール空港へ。ここまでは順調。荷物のチェックインも無事完了…。ところが、いざ搭乗しようとすると、ボーディングパスとマニフェスト(確認書)を出せと言われ、一騒動。

 ??????

 昨日の夜、「明日はこのボーディングパスで乗れます。この確認書はマドリーの空港で次のセビージャ行き搭乗券を発行するのに必要ですからなくさないでください」って言われたよ、JALのにーちゃんに。なのになんで書類が必要なのさ?

 「絶対やだ、これは次のセビージャ行きのものだから。昨日、今日の分はAFに出した」と言っても、AFのスタッフは首を縦には振らないし、JALに電話して確認しろって言っても、「この電話は内線専用だからできない」っていうし。「半券に確認書不要のサインがしてあったはずだから、機械を開けて確認してくれ」って言ってもダメだし…。

 結局、数十分ゴネまくり、怒りまくった挙句、AFのスタッフに「俺がテレックス打って保証してやるから、このまま確認書を俺に渡してマドリーに行ってくれ」と言われ、泣く泣く従う。きっと、こんなにーちゃん個人の保証なんてクソの役にも立たないんだろうけど。そういう間にどんどん時間は過ぎていく。これじゃあ、次の便にも乗り遅れだわ〜。もう。マドリードの空港でJALのスタッフ吊るしあげて手続きさせるしかないなあ…。と怒りつつあきらめムード。怒っているから英語はろくに使えないし(時制とかめちゃくちゃ)。



 怒りも冷めやらず機内に乗りこんだら、スッチーのねぇちゃんが「大丈夫ですか?何か問題でも?」とおっしゃる。「ええ、山ほどの問題が!」と吐き捨てるように言う(単なるやつ当たりだなぁ)と、「私に何かできる?」と更にやさしい言葉を…。「何もないわ」と結局答えてしまったけど。ごめんね。

 この騒動のせいでマドリード到着も遅れ、次の乗り継ぎに間に合うか、ちょっと心配。だいたい、旅行の最初からなんでこんな思いしなきゃいけないのよ!プンプン!

 空港に着くと、驚くべきことにAFのスタッフが私たちを待っていた。エライ!

 「JALのスタッフに連絡してあります。AFのカウンターで電話ができますから直接話してください」と言ってカウンターまで案内されただけだったけど、ちょっとほっとした。日本語で当事者のJALと交渉できるのはうれしい。AFに文句つけても、彼らのせいじゃないから、どうしようもないし。

 で、JALマドリー支店と電話。担当者と話をするも、経緯を理解してもらうのに時間がかかる。しかも先方は正直、ちょっと足りない…。こういうトラブルがあったら、私なら先にフランスの支店と連絡をとって、事実関係を抑えておくけどなぁ。何度も同じ話をさせられた上、「これからパリに連絡を取って、このあとどうするか検討しますから」などと言われ、ちょいと意識的に切れてみる…が 結局、予定していたセビージャ行きの便には乗れず、次の便になる。ひどいっ!

 セビージャ行きの書類を手配するのに、空港に担当者がいないんだそうで(怒)そのまま待機させられる。「こういうことになって、私たちの旅程はめちゃくちゃです。ホテルや鉄道の予約キャンセル分、その後の遅れを取り戻すためのタクシー代などの補償をお願いしたいので、責任者の方にきていただけるんでしょうね」と切れ気味に伝えたのだけど、やって来たマネジャーとやらがこれまた酷かった…。

 「私では、なんともお約束ができません。そもそも、私はまだ出勤時間前なんですよ、会社にも出ていないのに電話だけでかけつけて、何も分かる訳ないじゃないですか!」と逆切れしやがった。この女。

 あなたの出勤時間って、私たちに関係があるのかしら?会社の代表として出てきたんだったら、そういう個人の事情を持ちだすって、決してしてはいけないことなのではないのかしら?トラブル対応に名刺も日本での対応連絡先も準備してこないって何事?ホントにマネジャーなのか??こんなのが?

 結果、時間もないし、帰国便のときにパリでお話を…とかいう「パリ支店に丸投げ」になって、次の便でマドリー発。荷物は先の便で出てしまっているので取り置いてもらうようにしたけれど、多分どっか行ってるんだろうなぁ。無事だといいなぁ。

 午後2時。セビージャに到着。予想したとおり、荷物はナシ!ロストバゲージの窓口に行くと、「IB(イベリア航空)の窓口は隣よ」と言われる。でも、お隣の窓口は閉まっているんだけど…。

 半分やけで窓をガンガン叩くと、中からお姉さんが顔を出してくれた。「no sale mi equipage.
荷物が出てこないんですが」というか言わないかのうちに、目に飛び込む私たちのトランク。あった!と喜び、「puedo llaver mi equipage? 持ってっていい?」と聞くと、笑顔で「vale!(OK)」の返事で別の人とおしゃべり。おいおい、確認しないのかよ…。スペイン的だなあ。そして、鍵がついていないポケットが、しっかりと全部ファスナー開けっぱなしになっているのも、すげー、スペイン的だ。そんなところに大事なもの入れるかっ!!ボケッ!

 それにしても、トラブルはエネルギーを使う。いいかげん疲れたので、T嬢に頼んでタクシーでそのままカルモナのパラドールに向かうことにしてしまった。贅沢だけど。

 高速道路をタクシーは150キロ近くで爆走。運転手は無口なお兄さん。約30キロの距離なのに、15分ほどでカルモナに到着。街に着くと「ここがカルモナだよ aqui es carmona 」と教えてくれ、更に、パラドール近くの眺めの良い場所で騒いでいると、「te quieres ver aqui? 降りて見たい?」と停まってくれるあたりはなかなかいい人なのかも。

 カルモナの街は、白い壁で狭い坂道。そこを上がって開けた山の上に、あの、ドン・ペドロ王の居城が
パラドールとなって私たちを待っていた。

 石造りの堅固な城。部屋は駐車場に面してはいるものの、窓枠やベッドカバーが凝った内装。さすがにそこそこいい値段を出しているだけに、バスルームもアメニティも充実…と思いきや、シャンプーがない。あれ?そういえば、こっちって、シャンプーとバスジェルが一緒だったかも。部屋のセーフティボックスの鍵が、クレジットカードの磁気を通す仕組みで、カードを金庫に入れることができないってのはどうかと思ったけれど、スペイン人にとって、カードって貴重品じゃないのかね?

 とりあえず、少しくつろいだ後で街を散歩することに決め、プールへ。移動ばかりだったので運動不足をなんとかしたいし。プールは、城の1Fからちょっと庭を降りたところにあった。途中のあずまやもなかなか素敵で、ここで休憩するのもいいなあ、と思う。日差しはじりじりと猛烈だけれど、風が通る日陰では
とても快適に過ごせるのではないだろうか?

 あずまやから外を見ると、アンダルシアの青い青い空の下に、乾いた土地がどこまでも広がっている。地平線、ってこういうのをいうんだ…。と息を呑むような眺めだ。中世の王様は、こうやって我が領土を眺めたんだろうか?

 プールの水はとても冷たくて、足がつりそうになるけれど気持ちがいい。しばらく泳いではデッキで体を乾かし、日陰で休む…を繰り返す。本当に日差しが強いので、肌が焼けるようだ。
私はもともと陽を浴びるのが大好きだが、最近はできるだけ焼かないようにしている(だって、焼けた後がしわしわかさかさのET肌になるんだもん、年齢には勝てないわ)。今回も日焼けチェックのために指輪をしているのだが、これはキケンかも!同行のT嬢に、「私が馬鹿な日焼け行動に出ていたら注意してね〜」とお願いし、苦笑(というより、さんざんバカに)される。

 プールでは、T嬢が惜しげもなく披露したナイスバディが注目の的だった。いや〜、カップルで来ている人ばかりだったけど、間違いなく全員がT嬢に「おおおっ!」という熱い視線を浴びせていた。

 いや〜、すごいよ、カンクンで買った『ナイスバディTシャツ』の威力は!!そして、それをここぞとばかりに着こなしてしまうT嬢の勇気(?)には脱帽。

 750Mほど軽く泳いでプール終了。帰りにあずまやでくつろいでいると、黒い中猫(子猫と親猫の中間)が寄ってきた。かまって欲しくてそばに来るくせに、可愛がろうとすると逃げる、で、あきらめるとまた近くを走り抜けてちょっかいを出す…。う〜ん、人なつこい野良の典型だわっ!う〜〜かわいいっ。
逃げたそうにしながらも結構素直にT嬢に抱かれているところもまた可愛い。草むらに潜んで遊びたがっているので、素手で遊んだら、小さい傷をいっぱい作ってしまった。そういえば、抱いてたT嬢はノミに食いつかれていないだろうかとちょっと心配になる。

 午後5時半すぎ。まだまだ日差しは暴力的だけど街に向かう。まだシエスタなのか、街には人の気配がまるでない。人気のない白い壁の狭い道をくねくねと進むのは、ちょっと不安でおもしろい。古い街だけあって教会がたくさんあるけれど、ちゃんとした観光地ではない田舎なので街の案内もなく、何がなんだかわからない。スペイン語も辞書ナシで全部訳せるわけじゃないし。ごめんよ〜T嬢。

 そんななか、妙に子供がぞろぞろと出てきて、ある場所に向かって行く。なんだろうと思って付いて行くと、そこは教会でみんなで楽しそうに歌を歌っていた。歌のお姉さんみたいな人が、ギターを弾いて、すごく楽しそうだ。よく分からなかったけれど、教会のお祭り週間にあたっていて、そのイベントの一環のようだった。

 教会を出て、ちょいと買い物をしてバス停を探したりした後、広場に向かう。広場には特設舞台が設置されていて、準備が始まっていた。広場には先ほどの教会で歌を歌っていた子供達だろうか?大勢の子供がいて、お子様チェス大会なども行われていた。各自がチェス盤の前で先生を待ち、先生が一手ずつ指して回る方式だ。みんな、真剣な顔つきで駒を動かしている。男の子ばっかりの中で、メガネをかけたちょっと頭の良さそうな女の子が一人がんばってて、なかなか微笑ましい。

 広場の端っこにあるBARのテラス席でビールとワインを飲む。結局結構歩いたので、冷たいものが美味しい。広場に次々とやってくる人達を見ながら、T嬢に「スペイン人の体型は“いやん、ばかん、どかん”だ」という自説を実例ベースに展開し、おおむね了承を得た。本当にこっちの人はなぁ…。子供のうちから、腹とケツのボリュームがぜんぜん違うし、ティーンの女の子も惜しげも無くローライズのジーンズからむちむちの腹をはみださせて、堂々と「あたしって、セクシーでしょ」って顔しているし。奥様達は、何を言わんや…。

 私たちがそんな話をしているとは知る術もないであろう子供達は、広場で楽しそうに遊んでいる。特設舞台でちょっと前座音楽が流れるだけで、たわわな腰を振って踊る小学生たちって…かわいらしすぎる。T嬢は、テラスにいた小学生の一人から声かけられてたのが、これまた微笑ましい。

 約20時。日暮れも近くなってきたので、夕食をとりにパラドールに戻る。レストランの入り口テラスから、ちょうど夕陽が沈む光景を見ることができた。すごいよ〜、もし、これ以上に感動することがあるとしたら、それは、太平洋のど真ん中に浮かぶ船の上で見る夕陽とか、サバンナで象の群れを背景にした夕陽を見るとか、南極、サハラ砂漠、エベレストの頂上で見る夕陽とかしかないと思う(あ、けっこうあるなぁ…笑)。

 案内された夕食の席は、一番奥の良い席だった。でも、あまりに良い席で、カップル向けの横座りって…。一瞬、「hay una otra mesa? 別の席ない?」って聞きたくなった。まあ、かなりにぎわってたから、仕方なく、そこに座ったけど、う〜むむむ。いや、私たち、ラブラブだけどさ…。恥ずかしいじゃん。

 夕食は、まあまあ、ってとこかしら。くたびれてたからワインをハーフにしたけど、結局足りなくて降るボトル頼んでいい気分になっちゃったのって、どうなのかしら? T嬢は肉のでかさにかなり困ってたけど。それにしても、こっちの人は、あんだけ食べて、ポストレ(デザート)はブッフェだからねぇ…。胴体の太さで負けるわけだわ(決して勝ちたいとは思いませんが)。我がアイマール君も、こんな甘いもん毎食食べてるのかしら?スペインに移籍してから急に首と胴がたくましくなったのは、ポストレのせいじゃないと言ってくれ〜!お願いだから、将来、マラドーナのようにはならないでくれ…(とはいえ、落ちぶれても現在の姿がどんなになってるか、日本にまで知れ渡るマラドーナってやっぱり偉大だけどさ)。

 で、ワインも飲んで、スペイン流ごはんをたくさん食べて、「食事が終わったらもう一度街に出て、特設舞台の行く末を見よう」って行ってたのはどこへやら、あえなく轟沈。通常はT嬢よりも先に私が「ぶ〜ん」とベッドに倒れこむのだけれど今日は珍しく同時。明日からは、順調な日々になりそうな予感。


2003年09月09日(火) またもやスペイン日記。

前回6月分の更新以来、何をやってたんだか…と大反省。
まあ、とりあえずまたスペインに行ってきましたので、旅日記をUP。

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 初日の成田で足止めを食らう。燃料ポンプの故障だかで1時間半の出発遅延。シートベルトまで閉めた状態で長時間待たせるな〜。

 結果、1時間遅れでパリに到着したものの乗り継ぎ便には間に合わず、残念ながらスペインに足を踏みいれることができないまま空港近くの宿に1泊することに…。夕食、朝食付きで、翌日の便も手配してくれたので、それほどわがままは言いたくないけれど、お宿はひどかった。狭い、バスタブも、アメニティもない…。ちっちゃい石鹸1コって何よそれ、って感想。周辺も何もないし、長時間のフライトでくたびれたので、サッカーのEUROドイツ−アイスランド戦を見て、ご飯食べて就寝。明日こそ、何事もなく旅行ができますように。

 ちなみに、ドイツ−アイスランドは0-0の引き分け。しょーもない試合でした。そんな中でもクローゼはやっぱりかわいい。あの首(っていうかうなじね)の長い感じが好きだわ〜。相変わらずヘッド一辺倒でしたけど(笑)。


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